Transcript 動詞の必須成分(1)
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本
語
文
法
第四章 用言
上海外国語大学
日本文化経済学院
講
座
用言というのは
活用する自立語
体言
動詞
飲む、起きる、
くる、する
形容詞
赤い、うれしい
形容動詞
静かだ、堂々たり
動詞の必須成分(1)
動詞が伴う補語には、必ず必要とするものと状況
を説明するために補助的に添えられるものがある。
昨日、公園で太郎が次郎を殴った。
一項動詞
明日、雨が降るだろう。
二項動詞
田中さんが花子さんと来月結婚するそうだ。
車が突然バスにぶつかった。
三項動詞
田中さんが昨日小林さんに手紙を送った。
動詞の必須成分(2)
二項動詞では対象への働きかけの強さ(他動性)が
目的語の格表示と大きく関係している。
「殺す、壊す、殴る」など対象に直接接触して変化を
与えるものは目的語は「を」で示される。
犯人が拳銃で被害者を殺した。
「似る、賛成する」など対象との関係を表すものは目
的語は「に」で示される。
私はその計画に賛成しかねます。
「わかる、できる」など対象に働きかけず、主体の状
態を表すものは目的語は「が」で示される。
いくら聞いてもその意味がわからない。
動詞の状態性(1)
動詞は状態的なもの(状態動詞)と非状態的
なもの(変化動詞、動作動詞、出来事を表す
動詞)に分けることができる。
(1)状態動詞は、「テイル」をつけることが
できない。(いる、ある、できる、動詞の可
能態など)
田中さんは中国語を{×話せている/○話せる}。
動詞の状態性(2)
(2)第四類動詞は、いつも「テイル」とと
もに用いられる。(似る、そびえる、優れる、
富む、(赤い頬/長い髪)がするなど)
井上さんは長い髪を{×する/○している}。
富士山が高く{×そびえる/○そびえている}。
動詞の状態性(3)
(3)継続動詞に「テイル」がつくと、「動
作・出来事の継続」を表す。 (食べる、読
む、勉強するなど)
田中さんはレストランで夕食を食べている。
林さんは新聞を読んでいる。
ただし、副詞などが関与すると、「動作結果
の継続」を表すこともある。
吉田さんは、夏目漱石の小説をたくさん読ん
でいる。
動詞の状態性(4)
(4)瞬間動詞に「テイル」がつくと、「動
作結果の継続」を表す。 (死ぬ、落ちる、割
れるなど)
教室の窓ガラスが割れている。
汚染がひどいので、川の魚がたくさん死んで
いる。
ただし、副詞などが関与すると、「動作の繰り返
し」を表すこともある。
汚染がひどいので、川の魚が次から次へと死ん
でいる。
動詞の方向性(1)
遠心的方向性
ウチ 話し手>聞き手>第三者 ソト
求心的方向性
(1) 「あげる、くれる、もらう、よこす」は動詞
自体が方向性を持つ動詞で、「あげる」は遠心
的方向性をその他は求心的方向性を持つ。
昨日私は友達の田中さんに手紙を{×よこした
/○送った}。
動詞の方向性(2)
対象を移動させるという意味を持つ動詞は、従属
節の中で用いられる場合や伝聞を表す形式を伴う
場合を除いて、原則として遠心的方向性をあらわ
す。
母が私にみかんを{×送った/○送ってくれた}。
田中さんが私に電話を{×かけた/○かけてく
れた}。
動詞の意志性
動詞は意志的な意味を表すことができる動詞(意
志動詞)と表すことができない動詞(無意志動詞)に
分けられる。
芥川龍之介はたくさんの小説を書いた。
ここにきれいに書いてください。
ほかの事を考えていて、間違った字を書いた。
ほかの事を考えていて、字を間違えた。
×字を間違えましょう。
学生が注意しているか確かめるために、わざと字
を間違えた。
動詞の自他対応(1)
動詞はヲ格の目的語を取らず、直接受身にならな
いもの(自動詞)とヲ格の目的語を取り、直接受身に
なるもの(他動詞)に分けられる。
自動詞には、意志的自動詞(走る、泳ぐ)と非意志
的自動詞(割れる、落ちる)に分けられる。後者には
形態・意味的に類似した他動詞を持つもがあり、こ
れを自他の対応があるという。この場合、自動詞は
ある出来事が自然に起こったように表す一方、他動
詞は、それが人間などの意志的な動作によって引
き起こされたように表現する。
動詞の自他対応(2)
自他対応があるとき、自動詞は自然力の影響など
によって起こった出来事や他動詞が表す動作の結
果を表す。
風でドアが急に閉まった。
山田さんがドアを閉めた。→ドアが閉まった。
昼間になるにつれて、気温が高まった。
ストーブをつけて、部屋の温度を高める。→部屋の
温度が高まった。
自他対応の形態上の特徴(1)
1. aruで終わるものはすべて自動詞であり、 aruを
eruにかえると他動詞になる。
2. reruで終わるものはすべて自動詞である。
3. suで終わるものはすべて他動詞である。
自他対応の形態上の特徴(2)
1. aru VS eru 型
上がる
上げる
あたる
つかまる
つかまえる しずまる
しずめる
もうかる
もうける
かえる
かわる
あてる
自他対応の形態上の特徴(3)
2. reru VS su 型
隠れる
隠す
こぼれる
こぼす
流れる
流す
外れる
外す
3. reru VS ru 型
売れる
売る
割れる
割る
破れる
破る
折れる
折る
自他対応の形態上の特徴(4)
4. ru VS su 型
写る
写す
裏返る
裏返す
転がる
転がす
覆る
覆す
5. eru VS asu 型
荒れる
荒らす
枯れる
枯らす
焦げる
焦がす
漏れる
漏らす
自他対応の形態上の特徴(5)
6. u VS –asu 型
動く
動かす
飛ぶ
飛ばす
沸く
沸かす
泣く
泣かす
7. iru VS osu 型
起きる
起こす
落ちる
落とす
降りる
おろす
滅びる
滅ぼす
自他対応の形態上の特徴(6)
8. u VS –eru 型
開く
開ける
浮かぶ
浮かべる
片付く
片付ける
沈む
沈める
9. eru VS u 型
聞こえる
聞く
砕ける
砕く
裂ける
裂く
煮える
煮る
「てくれる」と「てもらう」の使い分け
。
授受関係を表す動詞の例外的用法(1)
(1)てやる
「てやる」は話者の強い決心を表すことができる。この場合、
その後によく「ぞ」、「たい」などがつく。
いつか偉くなってやる!
この野郎、ぶん殴ってやるぞ。
馬鹿にしたやつらをいつか見返してやりたい。
(2)てもらう
授受関係を表さない「てもらう」は「困る」「う(よう)か」などと
共起して、マイナスの意味を表すことがある。
そんなことをしてもらっては困る。
やれるものなら、やってもらおうか。
授受関係を表す動詞の例外的用法(2)
(3)てくれる
「てくれる」は、方向性という視点から見れば、授受関係を
表す場合と同じにもかかわらず、話者にとっては消極的で
ある用法がある。この場合、文末では、よく「ものだ」「の
だ」で感動を表したり、「な」「ね」で他人への非難を表した
りする。
とんでもないことをしてくれたんだ。
俺の顔によくも泥を塗ってくれたな。
。
。