Transcript 重力波で - LIGO
アインシュタインの重力波で聴く 宇宙の調べ スタン ウイットコム 山本博章 カリフォルニア工科大学 重力波で探る宇宙 平成21年5月30日 1 ニュートンの 万有引力の法則 (1686) 『自然哲学の数学的諸原理』 2 ニュートンの 万有引力の法則 (1686) 2つの物質が 同じ力で引き合う 3 ニュートンの 万有引力の法則 (1686) 非常に成功した理論 地上及び天体の当時の問 題をほとんど説明した » 彗星の離心軌道 » 潮の干満 » 月の軌道の太陽の重力によ る摂動 ガリレオ、コペルニクス、ケ プラーの仕事の集大成 4 しかし、計算が合わ無い事が1つと 説明出来ない事が2つあった 観測された水星の近日点移動が ニュートンの理論の計算値より 43秒早かった ニュートンの万有引力はどうして起こるのか? なぜ、重力が瞬間的に伝わるのか? 5 一般相対性理論 革命的な発想 19世紀の、時間と空間が別 々で絶対的だ、 という考えを捨て去る 時空 = 空間三次元 + 時間 時間と空間の概念は相対的 AIP Emilio Segrè Visual Archives 6 一般相対性理論 革命的な発想 重力は力ではなく、時空の性質 質量、即ちエネルギーが局在すると時空が歪む 物質は、この歪んだ時空の最短距離を取る様に運動する 水星の近日点移動を説明 A B 7 アインシュタイン理論の 新しい予言 光は、太陽の様な重い物 体の側を通ると曲げられ る 本当の星の位置 地球 見かけ上の星の 位置 地球 太陽 © Royal Astronomical Society 太陽と星の間の角度に逆比例 日食の時にのみ、観測出来る 8 アインシュタインの予言の確証…. イギリスの著名な天文学者、アーサー・エディ ントン卿は、1919年5月29日の皆既日食の 時、ヒヤデス星団を撮影する為に遠征した 観測された 偏差 © Science Museum/Science and Society Picture Library 偏差が無い場合 0 ニュートンの予測 0.87秒 アインシュタイン 1.75秒 プリンシペ島 1.61 ± 0.30秒 ソブラル 1.98 ± 0.12秒 9 相対性理論の 素晴らしい検証 科学の革命 宇宙の新理論 ニュートンの考えが覆される London Times,1919年11月6日 6 November 1919 ロンドンタイムズ Illustrated London News 22 Nov 1919 10 新しい予言: 重力波 オタワのユーサフ・カーシュ撮影 提供 AIP Emilio Segre Visual Archives 光の速度で伝わる 時空のさざ波 11 重力波の痕跡は T 1974年まで h e 見つからなかった ラッセル A. ハルス 二重パルサー PSR 1913 + 16 を発見し研究 Source: www.NSF.gov 12 ジョゼフ H.テイラー Jr 中性子星 連星 PSR 1913 + 16 我々の太陽と同じ位の重さだが 直径がたったの20キロメートル 17 / sec ~ 8 hr 2つの中性子星が軌道上を運動している •100万 km離れている 一般相対論の予測 • 一周あたり3mm落ち込む • 軌道周期の変化率 13 重力波の証拠! ノーベル賞 軌道周期の変化(秒) of Orbit (seconds) Advance No GWs 軌道周期の変化の観測値 と一般相対論による計算値 の比較 General Relativity Prediction 一般相対論の予測 Year 年 14 重力波が通り過ぎる時、 何がおきるか 空間の円周上に物質 があるとする 何の力も受けず、重力 波の影響だけ受けると する 15 重力波が通り過ぎる時、 何がおきるか 重力波がこの面内に入 って行くとする 物体間の 距離の変化(dL)は 最初の距離(L) に比例する 16 重力波の源 17 強い重力波を出す為の条件 ほとんどどんな物でも、運動する物は重力波を 出す しかし! 強い重力波を出すためには: 大きな質量 速い運動(大きな加速度) 観測可能な重力波の源は宇宙の規模 18 中性子星 連星 ハルス、テイラーの連星パルサーの様な系 エネルギーを重力波の放出で失う 互いにらせん状に運動し落ち込む » 最初はゆっくり » 2つの中性子星間の 距離が縮まるにつれ、 早くなる » 最後に衝突して合体する 19 中性子星 連星 重力波で、らせん状に引かれ合って落ち込んで いく時、何が起こっているか調べる事が出来る » 最初ゆっくりした周期で、それが早くなってゆく » ゆっくりと振幅が大きくなる 各々の星の質量, 軌道, 場所, 距離 最後の瞬間は 一分ぐらい 20 ブラックホール 中性子星の代わりに、ブラックホールが対にな っている連星もあるだろう » 非常に重い星から出来た連星? » その様な系の確証はまだ無い 非常に強い重力波源 重力波が、ブラックホール を探る唯一の手立て 21 ブラックホールの衝突 ブラックホールはこの宇宙の中で 非常に単純な構造を持った物の1つだが、 同時に最も謎に満ちた物でもある » 完全に次の3つの数で表される 質量 螺旋運動 スピン(回転数) 電荷 合体 収束 重力波は、 ブラックホールの ぎりぎりの所まで 探る事が出来る。 22 超新星: 我々の宇宙で起こる、 もっともエネルギッシュな出来事の1つ 太陽の7倍以上の質量を持つ 星が、その全ての水素を燃や し尽くす 残りの燃料を燃やし尽くす過 程で赤色巨星となる 芯が潰れて中性子星となる 潰れていく過程で、星の外の 方が弾き出される 2〜3日、銀河系全体と同じ 位の明るさを持つ 1000億の星と1個の超新星 23 超新星からの重力波? 超新星からの光の眺めは素晴らしいが、 それだけではその原因はあまり分からない 超高速運動 » 核の崩壊は非常に急激(一秒よりはるかに短い) 重い星 強い重力波を 出す為の条件を 全て備えている Simulation: Ott 2006, Ott et al. 2007 Visualization: R. Kaehler, Zuse Institute/AEI 24 回転する中性子星(パルサー) 中性子星は超新星のなれの果て 太陽の約1.4倍の重さだが、直径はたったの20km 磁場の強さは、地上の一番強い磁場の10億倍であり、 高速で回転している ラジオの波長の非常に周期的な電磁波を出す 3mm位のでっぱりがあれば、 綺麗な正弦波的な重力波を放 出する。 25 ビッグバンの ‘ささやき’ 宇宙の初期のシグナル ビッグバン 特異点 今の地 球 100億年 1秒 10万年 Cosmic 宇宙マイクロ波 microwave background 背景放射 26 ビッグバンの ‘ささやき’ 宇宙の初期のシグナル 佐藤教授のお話に続く 27 重力波の検出 28 重力波が通り過ぎる時、 何がおきるか 重力波を記述する 一番大切な量: 強度(DL/L) 周期 29 光を使った重力波の検出 マイケルソン 干渉計 極端に効果を誇張しています!! 非常に強い波の強度(DL/L) は約 10-21 L = 1 km, => DL = 10-18 m 30 10-18 メートルとはどの位短い? 1 メートル 1 / 1万 髪の毛~ 100 ミクロン 1 / 100 光の波長~ 1 ミクロン 1 / 1万 原子の大きさ 10-10 m 1 / 10万 原子核の大きさ 10-15 m 1 / 1000 重力波検出器 10-18 m 31 重力波検出器の 全世界ネットワーク LIGO GEO Virgo TAMA/LCGT • 確かな信号取得 • 信号源の場所の特定 AIGO 32 未来への課題 重力波の存在は疑う余地は無い その検出は、今まで科学者が取り組んできた中 でも、最もやりがいのある物の1つである 重力波は我々に新しい宇宙を見せてくれる 思っても見なかった様な物が隠されているだろう! 33