B 型肝炎ウイルスは

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Transcript B 型肝炎ウイルスは

ウイルス肝炎
VIRAL HEPATITIS
中国医科大学附属第二病院伝染病科
李智偉
概 念
 ウイルス肝炎は、その原因となるウイルスの型から、A型、
B型、C型、D型、E型肝炎等に分類され、このうち、慢性
肝炎から肝硬変、肝がんへと移行する可能性があるのは、
B型、C型肝炎です。
 A型肝炎はウイルスは急性肝炎を引き起こしますが、慢性
化することは無い。
 B型、C型肝炎ウイルスの感染で、肝がん等への移行が心
配となるのは、感染が持続する場合です。持続感染の状態
にある人を「キャリア」と呼んでいます。B型肝炎ウイル
スに感染してキャリアとなる例は、出生時や乳幼児期に感
染した場合が多いとされ、成人で感染した場合はまれとい
われています。C型肝炎の多くは、感染した年齢にかかわ
らずキャリアとなる場合が多いとされています。
概 念
肝炎ウイルスに限らず、サイトメガロウイルス(CMV)
やEBウイルス(EBV)など、様々なウイルスが肝炎を
引き起こすが、これらのうち、肝細胞内で増殖するウイル
スを肝炎ウイルスと呼び、現在、A型肝炎ウイルス(HA
V)からE型肝炎ウイルス(HEV)までの5種類が確認
されている 。
ウイルス肝炎は、全身伝染病である。主な臨床症状は、全
身だるい、食欲不振、肝腫大、肝臓機能異常、黄疸等。
概 念
慢性B 型肝炎を放置すると、病気が進行して、肝
硬変、肝がんへ進展する場合があるので、注意が必
要です。
A型肝炎とB型肝炎はワクチン で予防ができる
病 原 学
肝炎ウイルスの分類
肝炎ウイル
ス
HAV
科
HBV
HDV
HEV
ピコルナウイルス ヘパドナウイル フラビウイルス
ス
未分類
カリシウイルス
粒子径
28nm
36nm
27-32nm
遺伝子
プラス1本 二重鎖
鎖RNA
DNA環状
プラス1本 マイナス プラス1本
鎖RNA
環状1本鎖 鎖RNA
RNA
遺伝子長
7.8kb
3.2kb
9.5kb
1.7kb
7.5kb
外被蛋白
(-)
HBs抗原
E1, E2
HBs抗原
(-)
芯蛋白
VP1-VP4
HBc抗原
core
HD抗原
?
同定年
1973
1965
1989
1977
1983
潜伏期
2-6週
2-6ヶ月
2週-6ヶ月 -
2-5週
慢性化
0.1%
1%
70%
80%
0%
劇症化
<0.1%
1-2%
<0.1%
2-20%
2-5%
感染経路
経口感染
血液感染
血液感染
血液感染
経口感染
42nm
HCV
50-60nm
一、A型肝炎ウイルス(hepatitis A virus, HAV)
IRES
1A
1B
1C
1D
2A
2B
2C
3A 3B 3C
3D
AAAA 3’
5’
VP4 VP2
VP3
VP1
px
5’ NTR
P1
感染性、抗原性、免疫原性を決める
P2
P3
3’ NTR
HAVの電顕写真
HAV
 HAVは直径27~32nmの正20面体粒子で、ウイルス
遺伝子は1個の読みとり枠(ORF)を持つ約7500塩基
長のプラス鎖RNAです。
 ピコルナウイルス科、ヘパトウイルス属に分類されて
います。熱に対する強い抵抗性を有する。
 エーテル、酸(pH3.0)に対しても安定であるが、100
℃5分間の加熱処理によっては不活化される。
A型急性肝炎の臨床経過
二、 B型肝炎ウイルス(hepatitis B virus, H B V)
Hepatitis B Virus
大型の丸い粒子がB型肝炎ウイルス。HBV キャリ
アの血液の中には、このように細長い桿状粒子や
小型球形粒子がたくさん共存している。
Dane顆粒
HBsAg
HBcAg
HBV DNA
DNAP
 HBVはヘパドナウイルス属の一種で、直径42nmの球
状粒子であり、デーン(Dane)粒子とも呼ばれる。
 直径27nmのコア(core)粒子と、これを被う外穀(エン
ベロープ)の二重構造と成っている。
 エンベロープはリポ蛋白で、B型肝炎表面抗原(HBs抗
原、オーストラリア抗原とも言う)を有する。
 HBs抗原は、デーン粒子(HBV)とは別個に、血中に
直径22nmの小型球形粒子あるいは管状粒子として、
それぞれHBVの500倍~1000倍、50倍~100倍
の濃度で血中に存在している。
 HBs抗原には主として4つのサブタイプ(adr、adw、a
yw、ayr型)があり、その型は各地城に特徴ある分布
を示している。
 感染源や感染経路が複数考えられる場合、HBVのサ
ブタイプを検査することにより、感染経路の推定するこ
とができる。
 コア粒子は肝細胞の核内で産生され、表面にB型肝
炎コア抗原(HBc抗原)を有する。
 肝細胞の細胞質中でエンベロープに覆われることによ
って、デーン粒子(HBV)がつくられる。
 コア粒子は血中には存在しないが、コア粒子内の蛋
白であるHBe抗原は血中に出現することがある。
 血中のHBe抗原の量は、産生されるデーン粒子の量
を反映している。
 また、コア粒子の内部には2本鎖環状のHBV-DNA、
DNAポリメラーゼが存在している。
 HBV遺伝子は約3200塩基対からなる環状2本鎖DNA




であり
1)外被蛋白をコードしているPreS/S遺伝子
2)コア蛋白(HBc抗原)とHBe抗原をコードしているPreC/C遺伝子
3)DNAポリメラーゼ・逆転写酵素・5‘末端結合蛋白
(primase)などをコードしているP遺伝子
4)X蛋白をコードするX遺伝子の4種類のORFからなっ
ています。
B型急性肝炎の臨床経過
 HBs抗原
HBs抗原が陽性であれば、現在、HBVに感染してい
ることを示す。
HBVの急性感染では、HBs抗原は肝障害に先だっ
て、血中に出現する。
HBVキャリアでは、HBs抗原が6カ月以上引き続い
て検出される。
ただし、HBs抗原はHBVそのものではなく、HBVを
構成する蛋白の一部に過ぎないので、感染性はない。
 HBs抗体
HBs抗体が陽性であれば、過去にHBVの感染を受
けたことがあるものの既に治癒し、免疫を獲得してい
ることを示す。
通常この場合にはHBs抗原は認められず、HBVは
既に体内から消失していて、他人への感染性はない
ことを意味する。
 HBe抗原
HBe抗原が陽性であれば、血中に多量のHBVが存
在し、感染性が強いことを示す。
逆に、HBe抗原が陰性であれば、血中のHBV量は
少なく、感染性が弱いことを意味する。
 HBe抗体
HBe抗体が陽性であれば、HBe抗原とHBe抗体が
同時に血中に現われることはないので、血中にHBV
量が存在しないか、存在してもごく少なく、感染性は低
いことを示す。
HBe抗原は血中から検出されなくなり、代わってHBe
抗体が現れる。このHBe抗原からHBe抗体への交代
をセロコンバ-ジョン(sero-conversion)という。
 HBc抗体(IgG型)
HBc抗体価が高値(200倍希釈血清でのEIA法又
はRIA法による阻止率70%以上、HI法で26倍以上)
の場合には、1回の検査でもHBVキャリアであると
推定できる。
B型急性肝炎では発症から2~6ケ月までIgM型H
Bc抗体が陽性となる。B型慢性肝炎でも陽性化する
ことがあるが、陽性化しても、その抗体価は低い。
 HBcAgは、血中に存在しない。肝細胞核内に
存在する。
三、 C型肝炎ウイルス(hepatitis C virus, H C V)
Hepatitis C Virus
capsid envelope
protein
c22
protease/helicase
33c
RNA-dependentRNA polymerase
c-100
NS5
5’
core E1
E2
hypervariable
region
NS2
NS3
NS4
NS5
 C型肝炎ウイルス(HCV)はフラビウイルス科に属す
る直径35~65nm(平均約55nm)の小型RNA型ウ
イルスである。直径約33nmのコア(core)と、これを
被う外殻(エンベロープ)の二重構造を有している。
約9、400塩基から成る一本鎖RNAを待ち、そのほ
ぼ全域にわたる塩基配列が決定されている。
Serologic Pattern of Acute HCV Infection
with Recovery
anti-HCV 4-8 W
Symptoms +/-
HCV RNA
Titer
1-2 W
ALT
Normal
0
1
2
3
4
Months
5
6
1
Time after Exposure
2
3
Years
4
四、 D型肝炎ウイルス(hepatitis D virus, H D V)
HDV
1977年RizzettoらによりHDVがコードする唯一の蛋白
であるδ抗原抗体系が発見されました。HDVはヘパド
ナウイルス遺伝子または蛋白質の存在下でその生物
活性を示す特殊な肝炎ウイルスです。直径36nmの大
きさでHBVの表面蛋白抗原で覆われ、約1.7kbの環状
一本鎖RNAとδ抗原蛋白質を内蔵しています。
HBV - HDV Coinfection
Typical Serologic Course
Symptoms
ALT Elevated
anti-HBs
IgM anti-HDV 30-40d
HDV RNA
HBsAg
Total anti-HDV
Time after Exposure
三、 E型肝炎ウイルス(hepatitis E virus, H E V)
Hepatitis E Virus
Hepatitis E Virus Infection
Typical Serologic Course
Symptom
s
IgG anti-HEV
ALT
Virus in stool
IgM anti-HEV
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
1
Weeks after Exposure 0
1
1
1
2
1
3

HEVのウイルスゲノムは1989年、HCVとほぼ時期を同じくして同定されまし
た。

直径約30nmのウイルス外被を持たない小型のRNAウイルスです。患者あ
るいは感染サル糞便を用いた免疫電子顕微鏡では27~34nmの粒子として
観察されます。

HEVゲノムは約7.2kbのプラス一本鎖RNAで3‘末端にポリアデニル基を持っ
ています。この中には、5’末端からORF1, ORF3, ORF2の順にORFが一部
重複しながら配列しています。

ORF1は非構造蛋白質をコードし、N末端側からメチルトランスフェラーゼ、シ
ステインプロテアーゼ、RNAヘリカーゼ、RNA依存RNAポリメラーゼのモチー
フがあります。

ORF2は構造蛋白をコードしています。
その他
新たな非A~非E型肝炎ウイルスの候補として1995年にSimons
ら、1996年にはLinnenらがGBV-C/HGVを報告しました。
また、1997年には真弓、岡本らによって、原因不明の輸血後急
性肝炎例の血中からTTVが発見されました。
GBV-C/HGVはフラビウイルス科に、TTVはサーコウイルス科
に属していますが、これまでのところ肝炎ウイルスと認知される
に至っていません。これらのウイルス感染が、肝疾患の発症と
どのように関連するのかについては今後の研究の進展を待た
ねばなりません。
肝炎ウイルスマーカーの臨床的意義
HA抗体
過去のHAV感染
IgM・HA抗体
A型肝炎時とその後数ヶ月
A型肝炎
肝炎ウイルスマーカーの臨床的意義
HBs抗原
HBV感染状態
HBs抗体
過去のHBV感染,防御抗体
HBc抗体
B型肝炎
低抗体価
過去のHBV感染(多くの場合HBs抗体陽性)
高抗体価
HBV感染状態(ほとんどの場合
HBs抗原陽性)
低抗体価
IgM・HBc
抗体
HBe抗原
B型急性肝炎時とその後数ヶ月,B型
慢性肝炎の急性増悪期
高抗体価 B型急性肝炎時
血中HBV多い(感染性強い)
肝炎例では肝炎の持続性,HBV
増殖マーカー
HBe抗体
HBV DNA
HBV関連DNA-p
血中HBV少ない(感染性弱い),肝炎例
少ない
血中HBV量を示す.抗ウイルス効果の指標
HBV増殖のマーカー
肝炎ウイルスマーカーの臨床的意義
C型肝炎
HCV抗体
現在,過去のHCV感染
HCV core抗体
HCVの増殖と関係
HCVRNA
HCVの存在・抗ウイルス効果の指標
HCV コア抗原
HCVセロタイプ(ゲノタイプ) HCV遺伝子群別・抗ウイルス効果
の指標
デルタ(D型)肝炎
(デルタ抗体)
E型肝炎
HE抗体
低抗体価
過去のHDV感染
高抗体価
HDVの持続感染状態
E型肝炎時とその後
疫
学
A型肝炎の疫学ー感染源
 感染源とは患者と不顕性感染者だけである
 感染者の感染力が強いのは、黄疸症状の出現の前
の2週間で、便中へウイルスの排出が多い。
 HAVの糞便中への排泄は、臨床症状が出現する2~
3週前から血清ALTが極値に達するころまでの潜伏期
の後半から発病初期にかけて起こる。
A型肝炎の疫学ー感染経路
 通常は、HAVを含んだ糞便に汚染された食物、水を経口的に
摂取することにより感染する(糞口感染fecal-oral infection)。
 A型肝炎ウイルスが、糞便に汚染された水や氷、野菜や果物、
またカキなどの魚介類を介して、経口的に感染します。 汚染さ
れたサラダ、冷凍食品、貝類など十分加熱されていない食物に
ついては、注意が必要。
 血中にもHAVが出現するが、その量は糞便中に比べて、はる
かに少なく、また出現期間も短いため、血液を介して感染が生
じることはない。
A型肝炎の疫学ー感受性
 HA抗体陰性の人
 人類はHAVに敏感である
B型肝炎の疫学ー感染源
 急性B型肝炎と慢性B型肝炎患者
 キャリア
B型肝炎の疫学ー感染経路
 感染経路としては、血液、血液製剤(輸血用新鮮血を含
む。)のほか、血液が付着することがある医療器具、カミ
ソリ、歯ブラシ、タオル等などを介しての感染が考えられ
る。
 感染経路としては、非経口感染、それも輸血、注射その他
の医療行為、あるいは針等を用いる民間療法や刺青等に伴
う感染が主要な経路である。
B型肝炎の疫学ー感染経路
 B 型肝炎ウイルスは、主として感染している人の
血液が他の人の血液の中に入ることによって感染
します。また、感染している人の血液中のB 型肝
炎ウイルスの量が多い場合は、その人の体液など
を介して感染することもあります。
B型肝炎の疫学ー感染経路

HBVは血液・体液を介して感染します.その考えられる経路として,

キャリアの母親からの母子感染(その殆んどは出産時に産道を通ると
きに感染)

性行為による感染

注射,輸血,針治療等,医療行為による感染.

麻薬のまわし打ち.

入れ墨.

医療従事者に於ては,キャリアに使用した注射針やメスの誤刺事故,
或は体液・血液による汚染事故等による感染.
B型肝炎の疫学ー感染経路
 具体的には、以下のような場合には感染が起こることがあります。
 注射針・注射器をB 型肝炎ウイルスに感染している人と共用し
た場合
 B 型肝炎ウイルス陽性の血液を傷のある手で触ったり、針刺し
自己を起こした場合(特に、保健医療従事者は注意が必要で
す。)
 B 型肝炎ウイルスが含まれている血液の輸血、臓器移植等を
行った場合
 B 型肝炎ウイルスに感染している人と性交渉をもった場合
 B 型肝炎ウイルスに感染している母親から生まれた子に対して、
適切な母子感染予防措置を講じなかった場合
B型肝炎の疫学ー感染経路
 通常の生活に於いて感染する危険は殆んど有りません.
 勿論,一緒にお風呂やプールに入ったり,握手をしたり,
一緒に食事をしたりといった事では感染しません.
 これは,唾液など体液に検出されるHBe抗原の量が血液中に
比べ極端に少なく,また正常な皮膚,粘膜からはウィルス
の侵入がないと考えられている事,
 また,間に媒体(水,食事等)がありそれにより希釈される
ことにより更に感染の危険性が減少するという事からで
す.
B型肝炎の疫学ー感染経路
 現実として,会社,学校等での感染の報告
はありません.
 この事を良く理解せずに誤解や偏見を持っ
ている方がいまだに多いのが残念でなりま
せん.
B型肝炎の疫学ー感染経路
HBs抗原を指標としたスクリーニングが行われるようになった
1973年以降は、HBVによる輸血後肝炎は激減した。現在発
生する輸血後肝炎の大部分はC型肝炎ウイルスによるもので
ある。
HBe抗原陽性キャリアと寄宿舎等で集団生活を営んだとしても、
HBVに感染することは通常考えられない。
出産に伴って感染することが多かったが、1985年に母子感染
防止事業が始まってからは、出産に伴う感染は著しく減少した。
母親以外の同居家族から感染することもあるが、その頻度は低
い。
B型肝炎の疫学ー感受性
 抗HBs陰性者は敏感です
C型肝炎の疫学ー感染源
 急性C型肝炎と慢性C型肝炎患者
 キャリア
C型肝炎の疫学ー感染経路
 C 型肝炎ウイルスは、主として感染している人
の血液が他の人の血液の中に入ることによっ
て感染します。
 血液感染
(母子感染、性行為感染はきわめて稀)

具体的には、以下のような場合に感染が起こることがあります。

C 型肝炎ウイルスが含まれている血液の輸血等を行った場合

注射針・注射器をC 型肝炎ウイルスに感染している人と共用した場合

C 型肝炎ウイルス陽性の血液を傷のある手で触ったり、針刺し事故を起
こした場合(特に保健医療従事者は注意が必要です。)

C 型肝炎ウイルスに感染している人が使用した器具を、適切な消毒など
を行わずにそのまま用いて入れ墨やピアスの穴あけなどをした場合

C 型肝炎ウイルスに感染している人と性交渉をもった場合(ただし、まれ)

C 型肝炎ウイルスに感染している母親から生まれた子供(ただし、少な
い)
C型肝炎の疫学ー感染経路
HCVを含む血液の輸血や血液製剤によって感染するが、針刺し事故、
薬物常用者による注射針の連続使用、消毒不十分な医療器具を用いた
医療行為、臓器移植などによっても感染する。家族内感染、母児感染
の例もあるとされているが、その頻度は低いと考えられている。性的
接触(異性間、同性間を問わない。)も感染経路の一つとして考えら
れてはいる。
C型慢性肝炎患者や無症状のキャリアの血液にも感染性があり、やは
りHCVが存在すると考えられる。
しかし、チンパンジーの感染実験によれば、血中のHCVのウイルス
量はHBVに比べ格段に少なく、感染性はHBVよりもかなり低いこ
とが知られている。
C型肝炎の疫学ー感受性
 皆の人は敏感です
D型肝炎の疫学
D型肝炎はB型肝炎と似ていて、HDVがB型肝
炎ウイルスキャリアーに重感染するかある
いは急性B型肝炎に同時感染して生じます。
E型肝炎の疫学
 E型肝炎の患者発生はA型肝炎と同じく秋にピークに
達するが、東南アジアでは雨期に、特に広範囲の洪
水の後に発生する。伝播は糞口経路、主に水系感染
で引き起こされる。
肝炎の発症機序
肝炎の発症機序
 肝炎ウイルスによる肝炎発症の機序は、ウイルス自体が肝
細胞を破壊するために起こるのではなく、肝細胞内で増殖
しているウイルスに対する生体の免疫反応によって、ウイ
ルスだけではなく肝細胞も一緒に障害を受けてしまうこと
による。
B型肝炎の発症機序
 B型肝炎の発症には,自然免疫や細胞性免疫など
獲得免疫が,ともに重要な役割を果たし,自然免
疫は早期のウイルス制御を,獲得免疫は感染肝細
胞の排除を含めた,最終的なウイルス制御を行っ
ている.この獲得免疫による感染肝細胞排除が肝
障害の発現をもたらす.持続感染は,ウイルス排
除機構が十分に機能しない状態で成立する.細胞
性免疫の抑制が主な原因と考えられるが,自然免
疫,さらにはウイルス側の因子も関与する.

C型肝炎の発症機序と HCV 持続感染
 C型肝炎ウイルス(HCV)を特異的に認識する細
胞障害性T細胞は,HCV 感染を終息させようとす
る生体防御にかかわる反面,肝細胞を破壊して肝
炎の発症や重症化の原因となる.HCV は抗原性が
低く,さらに HCV 自体も宿主の免疫抑制作用を
有するため,HCV 感染は持続化すると考えられ
る.生体での HCV に対する免疫応答を詳細に検
討することは,HCV の排除や肝炎の沈静化を目指
した治療法の発展や,HCV 予防ワクチンの開発に
有用である.
 ウイルスが直接肝臓に毒素を放出して障害
を起こすことにより、ウイルスに感染した
肝細胞からウイルスを排除しようとして免
疫機構が働き、ウイルスに感染した肝細胞
までまるごと破壊してしまうために起こり
ます。
メカニズム
感染性
HBV顆粒
感染性
HBV顆粒
細胞膜
肝細胞
部分
二本鎖DNA (-)-DNA
逆転写
小胞体
エンベロップ
包む
A(n)
cccDNA 転写 mRNA
細胞質
細胞核
翻訳
病理学
 肝細胞の風船様変
 点状壊死
 片状壊死
 屑様壊死
 橋接壊死
 リンパ細胞浸潤
片状壊死
肝細胞の風船様変(右側しるし)
繊維化と結節形成
脂肪変
病態生理学
 黄疸
 肝性昏睡
 出血
 急性腎不全
 肝肺症候群
 腹水
臨床所見
ウイルス肝炎
急性肝炎
黄疸型
無黄疸型
慢性肝炎
軽度
中度
重度
劇症肝炎
急性
亜急性
於胆型肝炎
肝硬変
慢性
 急性肝炎を起こす肝炎ウイルスは、A型、
B型、C型、D型、E型の5種類存在しま
すが、D型はB型との共存を必要とします。
C型肝炎は他の急性肝炎と比較して自覚症
状が軽い疾患です。
 急性肝炎
 前駆期:感冒様症状(発熱),消化器症状(悪心,嘔吐,
下痢)
 黄疸期:食欲不振,全身倦怠感,黄疸,尿濃染
 回復期:自覚症状消失
 劇症肝炎
 肝性昏睡
 慢性肝炎
 軽度は原則として無症状
 まれに倦怠感,関節痛,右季肋部通など非特異的な症状
 肝硬変
 進展すると肝不全症状(黄疸,腹水,肝性昏睡)
急性A型肝炎
潜伏期 :15-50日、平均28-30日。
 症 状 :[不顕性感染]症状は出現しないが、検査値は異常値を示
すことがある。症状の出現は年齢に左右され、6歳未満の子供では、70
%で症状がなく、それ以上では、通常症状があり、70%以上で黄疸が
見られる。
 B型急性肝炎では、感染しても肝炎とわかるような自覚症状がみられ
るのは、急性肝炎になった人の20~30%です。多くは、肝炎と気づか
ないまま治癒します。B型急性肝炎の症状としては、食欲不振、吐き
気などの消化器症状、全身の倦怠感(だるさ)、黒褐色尿や黄疸(おうだ
ん)などがみられます。黄疸は、肝臓病特有の症状で、白眼の部分が黄
色くなり、さらに全身の皮膚が黄色になります。
また、B型急性肝炎で、まれに劇症肝炎を起こすこともあります。劇
症肝炎は、急性肝炎の悪化したもので、急激に肝細胞が壊死(えし)に
陥り、意識障害などがみられます。B型慢性肝炎では、通常ほとんど
自覚症状はありませんが、ときに肝炎が急激に悪くなることがありま
す。そのときには、疲れやすい、だるい、食欲がない、尿の色が濃く
なるなどの症状が現れることがあります。

[前触れ症状]平均5-7日、時に1日から2週間以上。食欲不振、嘔気、
嘔吐、腹痛、気分不快、発熱、頭痛などがよくみられ、悪寒、咳、下
痢、便秘などが見られることもある。
 15%は黄疸に先立つ前触れ症状は見られない。
 [黄疸期]数日から1ヶ月間。体全体が黄色く染まって見える黄疸が現
れる。普段は白い眼球の白目の部分が黄色くなり目立つ。黄疸の前に
暗色の尿が出現することもある。前触れ症状は消えたり長引く。すべ
ての症状は2ヶ月未満で消えるのが通常です

 回復期:自覚症状消失
 予
後 :A型肝炎の10-15%は、症状が長引いたり、再発
し6ヶ月に達する。急性肝炎を起こすが、慢性肝炎にはな
らない。感染し完治すれば、一生涯にわたる免疫を獲得す
る。感染源としてA型肝炎ウイルスを持ち続けるようなこ
とはない。
慢性肝炎の定義
 臨床的には6ヶ月以上の肝機能検査値の
異常と肝炎ウイルスの感染が持続してい
る病態.
 組織学的には門脈域の細胞浸潤,線維化,
肝実質内の肝細胞の変性・壊死所見を認
める.
 自己免疫異常,薬剤,アルコール,代謝性
疾患は除外.
肝性脳症
•羽ばたき振戦
•脳波所見 :三相波,徐波化
合併症
 肝性脳症
 消化管出血
 肝腎症候群
 感染
診
断
予
後
 疫学
 臨床証拠
 病原学診断
治
 一般的治療
 アンチウイルス治療
 対症療法
 その他
療
B 型肝炎の治療法には、大きく分けて、肝庇護療法、抗ウイルス療法、そし
て免疫療法があります。
 急性B 型肝炎は、急性期の肝庇護療法により、ほとんどの人で完全に治癒
します。しかし、急性B 型肝炎を発症した場合、まれに劇症化して死亡する
場合もあることから注意が必要です。
 HBV キャリアの発症による慢性肝疾患(慢性肝炎、肝硬変など)では全身
状態、肝炎の病期、活動度などにより、治療法の選択が行われます。
 抗ウイルス療法には、インターフェロン療法、インターフェロンと副腎皮質ス
テロイドホルモンの併用療法、ラミブジン内服などがあります。免疫療法に
は、副腎皮質ステロイドホルモン離脱療法、プロパゲルニウム製剤内服な
どがあります。また、肝庇護療法には、グリチルリチン製剤の静注、胆汁酸
製剤の内服があります。

インターフェロン治療
一般的に開始後数週間は入院して毎日注射
↓
副作用の程度が落ち着けば外来で週3回注射
期間 半年間(~1年間)
インターフェロン療法の
効果に影響する因子
1.
2.
3.
4.
5.
血液中B、C型肝炎ウイルス量
B、C型肝炎ウイルスの遺伝子型
感染からの期間(繊維化の進展度)
インターフェロン投与方法
個人差(体質)
このうち1、2の影響が大きい
インターフェロン療法の効果に影響する因子
1. C型肝炎ウイルス量
bDNA法で1Meq/ml以上
アンプリコア法で100Kcopies/ml以上
少ない
HCV-RNA量
多い
有効多 インターフェロン療法の効果 有効少
インターフェロン療法の効果に影響する因子
2. C型肝炎ウイルスの遺伝子型
serogroup
genotype
1
1a
有効 少
1b
1c
2
頻度少
頻度少
有効 多
有効 多
2a
2b
2c
3
4
5
6
3a
3b
4a
5a
6a
INFの効果
頻度少
インターフェロン療法の効果に影響する因子
3. 感染からの期間(繊維化の進展度)
短い
感染からの期間
長い
軽い
繊維化の程度
強い
有効多 インターフェロン療法の効果 有効少
インターフェロン療法の効果に影響する因子
4. インターフェロン投与方法
多い
長い
投与量
少ない
投与期間
短い
有効多 インターフェロン療法の効果 有効少
多い
副作用
少ない
インターフェロンの副作用
投与量が多ければ多いほど、投与期間が長ければ長
いほど高くなる傾向にある
発熱:ほとんど必発
全身倦怠、食欲不振、関節痛、筋肉痛、吐き気、脱毛、
神経障害(頭痛、眩暈、しびれ感、振戦)
インドメタシンなどの解熱鎮痛薬を前投与する事により
軽減可能
精神症状(IFNβの方が比較的少ない)、
甲状腺炎、自己免疫疾患、心筋症、
心不全、腎不全、眼症状、糖尿病、
間質性肺炎(小柴胡湯との併用)
インターフェロン治療の新展開
①リバビリン併用
②コンセンサスインターフェロン
③ペグインターフェロン
リバビリン(レベトール)
インターフェロンとの併用で、インターフェロンの効果を
増強する(単独ではC型慢性肝炎に対して効果はない)
重要な副作用
・ 溶血性貧血(ほぼ全員)
→程度の強いものでは減量や休薬が必要
・ 奇形児ができる可能性が有り、子供が欲しい人は
飲んではいけない。
・ 精子にも奇形の悪影響がある
→投与後6ヶ月以上は避妊が必要
・ インターフェロンの副作用も増強
コンセンサス・インターフェロン
(アドバフェロン)
・ 各サブタイプのIFN-αのアミノ酸配列の
共通部分を合成した遺伝子組み換え製剤
・ 高ウイルス量の1b型において16.7%の
ウイルス除去効果
・ 副作用が軽いので他のインターフェロン
よりも多量の投与が可能
(一回1200万~1800万単位)
・ 皮下注射(利便性が高い)
ペグインターフェロン(PEG-IFN)
・ 従来のIFNより長時間作用(週に1回の注射でよ
い)
・ 副作用が少ない
・ 効果はIFNα-2bと同等?
・ 欧米ではリバビリンとの併用が標準的治療に
・ 週一回一年間投与で臨床試験中
・ 日本での発売は数年先?
・ PEG-IFNα-2b+Ribavirin vs IFNα-2b+
Ribavirin
臨床治験開始中
予
防
 衛生環境の改善
 ワクチン
 免疫グロブリン
 1)手をよく洗う。
 2)料理はよく加熱して食べる。85度より高い温度で1分
以上加熱でA型肝炎ウイルスを不活化できる。
 3)予防接種に不活化ワクチンがあり、日本で認可されて
いるワクチンでは、対象者は16歳以上であり、三度の接種
(1度目の接種の2-4週間後に2度目の接種をし、さらに半
年後に3度目の接種をします。)で約5年間の免疫が獲得で
きる。
 4)免疫グロブリンが使われることがあります。A型肝炎
ウイルスとの接触から2週間以内であれば免疫グロブリン
の使用で防御効果が期待できる。