レンズの焦点距離の計算など

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Transcript レンズの焦点距離の計算など

計測情報処理論(5)
収差論の入門
講義予定(5)

レンズ系の設計と計算



3次収差(ザイデルの5収差)について


レンズ系における焦点距離の計算
近似と収差について
球面収差,非点収差,コマ収差,
像面湾曲,歪曲収差
色収差について


倍率色収差,縦色収差
色収差と分散・色消しレンズと異常分散ガラス
理想レンズの条件と収差

理想レンズの条件
物体の1点から出た光線は,レンズ通過
後再び1点に集まる
 光軸に垂直な平面物体の像は,レンズ
通過後,平面上に構成される
 光軸に垂直な平面物体の形状は,歪む
ことなく相似形の像となる


これらの条件からずれることを収差と呼
ぶ
ザイデルの5収差

入射光が1点に集まらない
球面収差
 コマ収差


像が平面にならない
非点収差
 像面湾曲


像が歪む

歪曲収差
縦
縦収差と横収差
縦収差(軸上収差)
例:球面収差

横
横収差
例:コマ収差
収差は,縦収差と横収差の二種類に分類できる
縦・・・光軸方向(奥行き方向)
 横・・・像高方向(画像面内の方向)

球面収差(1)
球面収差
(縦収差)
h
入射高 h に起因する縦収差
入射高 h の違いによって結像点が縦にずれる
現象(画面中心の像の劣化の要因となる)
 球面レンズの場合,必ず発生する
(非球面レンズで解決可能)
 画面中心での量として記述される

球面収差(2)
球面収差のコントロール(1)
• レンズの変形
(ベンディング)
• レンズの屈折
率と厚みのバ
ランス
• レンズの分割
(薄いレンズ2
枚へ分割など)
• 凹レンズと凸レ
ンズの組み合
わせ
球面収差のコントロール(2)
球面収差の例(1)
球面収差の例(2)

焦点距離 50mm に対し 0.1mm

前後各 0.05mm F1.4 なので
おおよそ許容錯乱円程度
歪曲収差
歪曲収差
(横収差)
像高(画角)によって結像点が横にずれる現象
(画面全体が歪む)
 入射高 h=0 (中心光束のみ)
 通常の写真用レンズで許容されるのは 2% 程度
まで


たる型収差のほうが目立ちにくく,好まれる
歪曲収差(2)
像面湾曲
像面湾曲
(縦収差)
像高(画角)によって結像点が縦にずれる現象
(画面周囲のピンぼけを発生させる)
 入射高 h→0,つまり球面収差は関係ない


ただし,どの方向から極限を取るかによって変
わってくる(次項の「非点収差」参照)
M
S
非点収差
非点収差
(縦収差)

入射高の方向によって結像点が縦にずれる現象
(入射高を h→0 としたとき)
像高方向//入射高方向 メリディオナル像面
 像高方向⊥入射高方向 サジタル像面

非点収差(2)

メリディオナル (meridional)


子午線の・経線の
サジタル (sagittal)

矢の・矢じり状の
非点収差(3)
非点較差

感性的には,M像とS像は近いほうが良い

像の「流れ」を生じにくい
コマ収差
コマ収差
(横収差)
(メリディオナルコマの例)

入射高によって結像点が横にずれる現象
入射高//像高 メリディオナルコマ
 入射高⊥像高 サジタルコマ

コマ収差(2)
軸上色収差
軸上色収差
(縦色収差)
h
縦に発生する色収差
 波長によって(ガラスの屈折率が異なるため)
焦点距離が変化する現象
 画面中央の像が劣化する

倍率色収差

倍率色収差
(横色収差)
画角によって画像の大きさが変化する収差

画像の周辺部で色のにじみを生じる
(中心部は無関係)
色収差の補正

分散の違う2種類のガラスで色収差を相殺

ただし非線形成分は相殺できない
光学ガラスの定数
新種ガラス
戦中戦後
分散
イエナガラス
1890異常分散ガラス・
蛍石 1970-

初期の光学ガラス
基本的には2つの定数(屈折率・分散)で表す
二次色収差の補正
色収差
の補正
ザイデル5収差の分類
原因
単
色
収
差
色
収
差
縦収差
横収差
入射高
(光束の太さ)
球面収差
コマ収差
像高
(画角)
像面湾曲
非点収差
歪曲収差
軸上色収差
倍率色収差
収差の実例(1)
収差の実例(2)
レンズの設計
r1
r2
d1
n1

r4
r5
r6
d2
d3
d4
d5
n3
n4
n5
n6
n7
全ての面は球面か平面とする


n2
r3
非球面はごく特殊,簡単に設計できない
レンズの設計パラメータは有限
各面の曲率
 面の間隔
 面の間の屈折率(空気は 1.0)

屈折現象
光は電磁波である
 誘電体中を伝搬する光は Maxwell 方程
式(波動方程式)に従う

→媒質内の伝搬速度(屈折率に反比例)
に応じ,媒質の境界面で反射・屈折が生
じる
 →金属などの導体は,電場の固定端(磁
場の自由端)となるため,反射が発生す
る

電磁波と偏光

電気ベクトルと磁気ベクトルは直交する

ファラデーの法則などから
H 磁気ベクトルの
振動方向
波の進行方向
(エネルギーの流れ)
K
E
電気ベクトルの
振動方向

電気ベクトルの振動方向を偏光と定義する
反射と屈折の原理

n1
屈折率=伝搬速度の逆数
真空中の伝搬速度を1とする
 伝搬速度が遅いほど屈折率
が高い
 屈折率は透磁率と誘電率に
より決定(Maxwell)
1
v

 光速は,

μ:透磁率,ε:誘電率

1 1'
n2
2

界面では波の位相が不変
界面での反射・屈折
反射の法則:
1 1'
n1
1  1'
屈折の法則またはSnellの法則:
n2
sin 1 n2

sin 2 n1
2
n1
空気
n2
ガラス
n1
空気
n1  n2
1   2
n1 sin1  n2 sin2
レンズ各面での屈折

用語
O : レンズ面の中心 P: 物点 P’ : 像点
 u, u’ : vergence angle s, s’ : 交点距離
 r : 曲率半径

各変数の関係
r
s-r
n sin i  n sin i
r sin i  (s  r ) sin u
r sin i  (s  r ) sin u
u  u  i  i
h  r sin   r sin(u  i)
近似による簡単化
h は十分小さいとする(近軸光線)
sin(x)  x に置き換えることが出来る
n sin i  n sin i
r sin i  (s  r ) sin u
r sin i  (s  r ) sin u
u  u  i  i
(1)
(2)
(3)
(4)
ni  ni
ri  (s  r )u
ri  (s  r )u
u  u  i  i
導出(1)
(1)
(2)
(3)
(4)
ni  ni
ri  (s  r )u
ri  (s  r )u
u  u  i  i
(3) より
ri  su  ru
su  r (i  u)
1 1 u
 
s r i  u
他方,(4) より計算した
i  u  u  i
だから,さらに
を代入して
1
u

s r(i  u)
また(2)から r(i+u) は
r(i  u)  su
これを置き換え,また
分子に (4) を代入すると
1 u  i  i

s
su
また(1)より
i 
n
i
n
n
u

(
1

)i
1
n

s
su
また(2)から
s 
i  u 1
r 
となるので,さらに
1 1
n s

 1  (1  )( 1) 
s s 
n r

1 s n s n 
  
 
s  r n r n 
となり,最終的に次の式を得る.
1 n 1 1 n 

 1  


s n s r  n 
レンズ全体の計算
r1
r2
d1
n1

n2
r3
r4
r5
r6
d2
d3
d4
d5
n3
n4
n5
n6
n7
前の界面から順番に計算していけばよい

以下の式で x を増やしながら順に計算
nx 
1 nx 1 1 
, sx1  sx  d x

 1 
sx nx1 sx rx  nx1 
焦点距離
1.
2.
先の式で sx, s’xを順に全て計算する.
焦点距離は次の式で与えられる.
s1  s2  s3    sk
f 
s2  s3    sk

像点(レンズ最終面から像までの距離=バック
フォーカス=s’k)から f だけさかのぼったところ
が後側主点となる.
例題

Hyper Omni Vision の球形風防の半径を20cm,
厚みを 2mm とする.材質の屈折率を1.5とした
とき,風防そのものの焦点距離はいくらか.
コレ
解答
1 1 1
1 
1


1 
s1 1.5  200  1.5 
より S’1 は 600[mm]
より S2 は 598[mm] となり,内面は r=198[mm] となるので
1 1.5 1
1  1.5 


1  
s2 1 598 198 
1 
より S’2 は -59202[mm]
焦点距離は
600 59202
f
598

より f = -59400 [mm]
同心球面を両面に持つガラスは僅かに発散の
(凹レンズの)パワーを持つ

この場合,無限遠の像は 59.4m 先に見える
ザイデルの5収差
各収差と画像計測

寸法,形状計測
横収差が重要
しかし一般の写真レンズは,横収差はあまり重
視されていない(ひずみが大きい)
(シャープさのほうが重視される)
コピー機,航空写真等のレンズは非常に優秀
 歪曲収差量は中心光束で表示されているため,
絞り込むと正しい値となるが,絞りを開けると(他
の収差により)像の重心位置はずれる
