広域低炭素社会に向けた都市と農村連携による国際互恵型 分散型

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Transcript 広域低炭素社会に向けた都市と農村連携による国際互恵型 分散型

日本外務省
平成20年度日中研究交流支援事業
第1回「和諧社会綜合示範区建設」日中合作研討会
広域低炭素社会に向けた都市農村連携による国際互恵型
湖州市分散型エネルギーの総合利用とシステム分析
(湖州市分散型能源的综合利用与系统分析)
周 瑋生
仲上健一
任 洪波
地球環境研究総合推進費 H20地球環境問題対応型研究課題
都市・農村の地域連携を基礎とした低炭素社会のエコデザイン
(FY2008-FY2010)
1. 背景
• 分散型エネルギーとは、これまでのような原子力発電所、火
力発電所などの大規模な集中型発電所から各家庭、各事務
所に電力を配るという従来のものとは異なり、文字通り各地
域においてエネルギーを作って、それをその地域で活用して
こうというオンサイト型エネルギーを指す。分散型エネルギー
は各地域に導入していくものであるので、地域の共生、地域
との関わりといった部分がキーポイントになる。
• 分散型エネルギーは、コージェネレーション(CGS)に代表さ
れる燃料投入型、太陽光発電や風力発電などの自然エネル
ギー型、廃棄物発電などの未利用エネルギー型、蓄電池な
どの電力貯蔵型に分けることもできる。CGSとは、燃料を用
いて発電するとともに、その際に発生する排熱を冷暖房や給
湯、蒸気などの用途に有効利用する省エネルギーシステム
である。
• 中国では、分散型エネルギーの発展はまた初歩段
階である。近年、風力発電、バイオ燃料、太陽光発
電が急速に発展しており、再生可能エネルギーの
開発利用は中国のエネルギー需給問題の緩和、環
境汚染の軽減、エネルギー構造の調整、経済成長
モデルの転換、社会主義新農村建設を促進するた
めの重要な手段になっている。しかし、太陽光発電
と風力発電は主に中国西部の農村非電化地域で導
入されている。また、バイオマスエネルギーも主に
農村部で伝統的な燃焼技術を利用されている。
2.目的
• 本研究の目的は、広域低炭素社会を実現するため、中国の
典型的な地域において、都市と農村連携による国際互恵型
エネルギー・資源システムを提案することである。
• 本研究では、分散型エネルギーシステムの企画・基本計画
初期段階において、技術情報や現行の料金システム及びエ
ネルギー需要量を踏まえ、地域にとって最も経済的なエネル
ギーシステムの解析モデルDER-PLANを構築する。具体的
には、季節的・時間的に変動するエネルギー需要量をバラン
スよく満すように設備の運用方策を考慮しながら、年間総コ
ストが最小となるように設備容量を決定するというものである。
その上に、解析モデルを利用して、中国浙江省湖州市に適
用するケーススタディーを行い、分散型エネルギーシステム
の導入可能性を分析する。また、シナリオ分析によって、分
散型エネルギーを導入に影響に及ぼす因子を解析して、有
効な利用法について検討する。
3.研究方法
広域低炭素
農村部
都市部
商用電力
中
バイオマス
国 太陽エネルギー
電力
風力
熱
ガス
太陽エネルギー
都市ゴミ
都市農村連携
技 技術 資
術 転移 金
日
本
技術
国際互恵
資
金
CDM
資金
図1 分散型エネルギーシステムの影響限界
炭
素
商用電力
一次エネルギー
化石燃料
再生可能
エネルギー
エネルギー変換
エネルギー需要
従来設備
電力
再生可能
エネルギー技術
地域電力
ネット
冷房
コジェネレー
ション
暖房
ボイラ
給湯
産業副産物
排出量
環境
図2 分散型エネルギーシステムの概念図
計画段階
設計段階
配置図( CAD)
コスト最適化の技
術・最適設備容量
選択
デマンドサイド需要
熱、電力負荷
市場情報
(燃料料金、
投資の利率等)
導入可能
性検討
事
業
性
分
析
技術情報
(コジェネレーション、
太陽発電等)
図3 解析ツールのイメージ図
配送ネットワーク
における配管サイ
ズ・圧力の最適化
省エネルギー・環
境性評価
最
適
な
設
計
4.ケーススタディ及びデータベースの
整備
図4 湖州市のイメージ
電力消費量(G W h)
1200
900
600
300
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
月
図5 湖州市月別電力消費量
10
11
12
電力消費量(G W h)
3
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
2
1
0
1
3
5
7
9
11
13
時刻
15
17
19
21
図6 湖州時刻別平均電力消費量
23
電力需要
電力供給
燃焼発電
ガス化発電
メタン発酵
太陽光発電
風力発電
系統電力
木質系
バイオマス
農業系
バイオマス
畜産系
バイオマス
太陽
エネルギー
風力
エネルギー
化石
資源
図7 地域電力供給システムのモデル図
1
春
夏
秋
冬
日射量(kW /m 2)
0.8
0.6
0.4
0.2
0
1
3
5
7
9
11
13
時刻
15
17
図8 時間ごとの平均日射強度
19
21
23
4
春
夏
秋
冬
風速(m /s)
3
2
1
0
1
3
5
7
9
11
13
時刻
15
図9 時間ごとの平均風速
17
19
21
23
表1 推計バイオマスの種類
木質系
林地残材
竹林残材
果樹剪定
茶園剪定
農業系
稲わら
もみ殻
麦わら
トウモロコシ
畜産系
牛
豚
鶏
表 2 木質系バイオマスのエネルギー賦存量
伐採量・面積
廃材の発生率
発熱量(kJ/kg)
エネルギー量(GJ)
林材
73878 m3
15%
18800
322920.7
竹材
3838876 m3
5%
18800
5376729.7
茶畑
8256 hm2
4 t/hm2
18800
620851.2
果樹
12341 hm2
3 t/hm2
13600
503512.8
表 3 農業系バイオマスのエネルギー賦存量
作付面積
発生原単位
発熱量
エネルギー量
(hm2)
(t/ hm2)
(kJ/kg)
(GJ)
稲
97344
5.4
13600
7148943.4
麦
6357
3
13600
259365.6
トウモロコシ
2538
10
13600
345168
表 4 畜産系バイオマスのエネルギー賦存量
排泄物原単位
牛
養豚
鶏
ガス発生係 メタン含 メタン発熱
エネルギー
頭数
(kg/頭/日)
数(m3/kg)
有量(%)
量(kJ/m3)
量(GJ)
7267
17.9
0.03
60
37,180
31774.8
821400
5.9
0.03
60
37,180
1183808.5
18284000
0.136
0.03
60
37,180
607414.1
表 5 分散型発電設備の性能値とコスト
技術
使用寿命
(年)
初期投資
管理費(固定) 管理費(可変) 効率
(万円/kW) (円/kW/年)
(円/kWh)
(%)
直接燃焼
25
44
35600
1.17
28
ガス化
25
68
18200
1.18
36
メタン発酵
25
80
70600
14.6
25
太陽光発電
30
50
2300
0
13
風力発電
30
20
6200
0
-
バイオマス
• 系統電力の価格は、湖州市電力局の電気料
金表から算出し、8.9円/kWhと設定する。
• 農業バイオマスは農家から購入して、価格
は0.9円/kWhと仮定する。木質系バイオマス
は市内から購入して、2.0円/kWhと設定する。
また、家畜糞尿は農家から無償で入手すると
仮定する。
5.解析結果
表 6 設備構成と年間供給電力量(経済性目標関数)
設備
容量(MW)
年間供給量(GWh)
直接燃焼
1.0
9.1
ガス化
87.2
763.7
メタン発酵
14.5
126.6
太陽光発電
0.0
0.0
風力発電
0.0
0.0
系統電力
2606.9
8685.6
表 7 設備構成と年間供給電力量(環境性目標関数)
設備
容量(MW)
年間供給量(GWh)
直接燃焼
0.0
0.0
ガス化
1809.7
1457.7
メタン発酵
46.4
126.6
太陽光発電
1150.5
1676.4
風力発電
0.0
0.0
系統電力
2314.3
6324.2
3
電力需要(G W h)
農業燃焼
畜産
農業ガス化
太陽光
木質燃焼
風力
木質ガス化
系統電力
2
1
0
1
3
5
7
9
11
13
15
17
19
21
時刻
図10
時刻別平均電力供給量(経済性目標関数)
23
3
電力需要(G W h)
農業燃焼
畜産
農業ガス化
太陽光
木質燃焼
風力
木質ガス化
系統電力
2
1
0
1
3
5
7
9
11
13
15
17
19
21
時刻
図11
時刻別平均電力供給量(環境性目標関数)
23
200
年間エネルギーコスト(十億円)
買電
初期投資
運転費用
150
81.2%
100
2.5%
50
従来システム
分散型エネルギーシステム
(経済性目標関数)
分散型エネルギーシステム
(環境性目標関数)
図12 年間エネルギーコスト
100
年間CO2排出量(億トン)
90
9.4 %
80
34.0 %
70
60
50
従来システム
分散型エネルギーシステム
(経済性目標関数)
図13 年間CO2排出量
分散型エネルギーシステム
(環境性目標関数)
2500
直接燃焼
ガス化
メタン発酵
バイオマス消費量(GWh)
2000
S1:経済性最適化
S2:環境性最適化
1500
1000
500
0
S1
農業系
S2
S1
S2
木質系
図14 年間バイオマス消費量
S1
畜産系
S2
6.シナリオ分析
5000
農業系
畜産系
木質系
バイオマス消費量(GWh)
4000
3000
2000
1000
0
0
0.5
1.0
1.5
木質系バイオマス価格(円/kWh)
図15 木質系バイオマス価格低減の影響
2.0
系統電力
バイオマス
太陽光発電
年間電力供給の内訳(%)
100
75
50
25
0
10
20
30
太陽光発電の初投資(万円/kW )
40
図16 太陽光発電の設備費の変化の影響
50
年間電力供給の内訳(%)
農業燃焼
100
農業ガス化
林業燃焼
林業ガス化
畜産
太陽光
風力
系統電力
75
50
25
0
0
5
10
15
20
炭素税価格(円/kg-C )
図17 炭素税の導入に及ばす影響
25
30
年間電力供給の内訳(%)
農業燃焼
100
農業ガス化
林業燃焼
林業ガス化
畜産
太陽光
風力
系統電力
75
50
25
0
0
1
2
3
4
5
6
排出権価格(円/kg-C O 2)
7
図18 CDMの導入に及ばす影響
8
9
10
年間電力供給の内訳(%)
農業燃焼
100
農業ガス化
林業燃焼
林業ガス化
畜産
太陽光
風力
系統電力
75
50
25
0
0
20
40
60
電気料金の増加率 (%)
図19 電気料金増加の影響
80
100
7. 結論
•
•
•
•
•
本研究では、広域低炭素社会に向けた都市と農村連携による国際互恵を着目し
て、地域分散型エネルギーシステムを提案した。また、地域に適した分散型エネ
ルギーシステムの形成のためには、地域にとって最も経済的なエネルギーシステ
ムの解析モデルDER-PLANを構築した。解析モデルを利用して、中国浙江省湖
州市に適用するケーススタディーを行い、分散型エネルギーシステムの導入可能
性を分析した。解析の結果、以下のことが明らかになった。
① 現状において、経済性目標関数まだ環境性目標関数に関わらず、系統電力
はシステムの主要電源となっている。分散型エネルギーの導入は有限である。
② 経済性目標関数を満たすとき、設備投資が高いまた地域の気候条件が悪い
ため、太陽光発電と風力発電は全く導入しない。導入した分散型エネルギーはす
べてバイオマスである。
③ 経済性目標関数を設定するとき、分散型エネルギーシステムの年間総コスト
は2.5%削減できて、CO2排出量は9.4%削減できる。一方、環境性目標関数を満
たすとき、CO2排出量は34%削減できるが、年間総コストは81.2%増加する。
④ 対象地域内での木質系バイオマスの利用可能量が多いですが、価格は相対
的に高いため、経済性の視点から導入されていない。
•
•
•
•
•
•
つまり、現行の状況により、分散型エネルギーシステムは良い環境性を持ってい
るが、経済的なメリットは有限である。導入支援策がない場合、経済性が低いた
め分散型エネルギーの普及が進まない。したがって、経済的な視点から分散型
エネルギーシステムの経済性を高める施策を考案し、因子分析を行った結果、以
下のことが明らかとなった。
① 木質系バイオマス価格の低減に連れ、木質バイオマスの導入量次第に増加
する。価格は1.0円/kWh以下まで減少すれば、地域の木質バイオマス賦存量は
すべて利用される。
② 設備投資が太陽光発電の導入に対する一つ主な障害である。設備投資が30
万/kW以下に減少しなければ、太陽光発電の導入容量は次第に増加する。
③ 炭素税の導入は分散型エネルギーシステムにとって相対的にメリットが得ら
れるが、絶対コストが増えてしまう。炭素税の上昇に伴い、分散型エネルギーの
導入量は次第に増加する。
④ CDMの導入は分散型エネルギーシステムにとって絶対的にメリットが得られ
る。排出権価格の上昇につれ、分散型エネルギーシステムの導入量は次第に増
加する。排出権価格は8円/kg-CO2以上になると、約34%の電力需要は分散型
エネルギーより提供される。
⑤ 電気料金の増加は分散型エネルギーシステムの導入に積極的に促進するこ
とができる。電気料金は現況の180%以上になると、分散型エネルギー供給電力
の割合は約34%になった。