ランダム俳句を使った 俳句実作指導

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Transcript ランダム俳句を使った 俳句実作指導

ランダム俳句を用いた俳句創作

Haiku made by using random haiku 野浪正隆 Nonami Masataka

季語 花筏(はないかだ)

• 季節 春 • 場所 川の水面 • もの 桜の何枚か の花びら • 出来事 花が散 る・落ちる・流れる・ 繋がる

季語 虎落笛(もがりぶえ)

• 季節 冬 • 場所 戸外 • もの 柵など • 出来事 寒風が吹く・柵など に当たって音がする

季語の力

俳句理解において • 季語を探して季節を答えさせるのは、とりあえ ずの俳句理解。 • 季語が含意している多様なイメージに気づく ことが必要。 • 俳句表現において 季語が持つイメージが強すぎるので、どう使う かが工夫のしどころ。頼るだけでは駄目。

ランダム俳句 とはなにか

• http://www.osaka kyoiku.ac.jp/~nonami/awk/gendai.cgi は近現代俳句を使ったランダム俳句のページであり、 開くと次ページのような画面が現れる。 でどうぞ。

ランダム俳句のしくみ

• これは、近現代の俳句 3203 句 河豚宿は 此許よ此許よと 灯りをり ひとの陰 玉とぞしづむ 初湯かな 秋の谷 とうんと銃の 谺かな : 黒船の 黒の淋しさ 靴にあり 校門の 陰に春暮の 卵佇つ 美しき 学校あらば 草朧 阿波野青畝 阿波野青畝 阿波野青畝 攝津幸彦 攝津幸彦 攝津幸彦 を5・7・5に切って俳人の名前を付けたデータ(区切りは Tab )から、上五・中七・下五 のそれぞれについてランダムに 選び出し、俳句らしき5句を元の句とともに表示する。

ランダムに生成する句の量

• この 3203 句を使ってランダムに生成する句の量が どれほどの数かというと、 同じ語が使われていない場合 3203 × 3203 × 3203 = 32860246427 句 一人が一句1秒でチェックしたとして、 32860246427 秒 ÷ 547670773 分 ÷ 60 秒 = 547670773 分 60 分 = 9127846 時 9127846 時 ÷ 380326 日 ÷ 24 時 = 365 日= 380326 日 1041 年 かかるほどの量である。 つまり、充分な量である。

gendai.cgi

ページの本体である gendai.cgi

は以下のように簡単な awk script でできている。 1.

俳句テキスト gendai.txt を読み込む。 2.

上五・中七・下五・俳人名をそれぞれの配列にセッ トする。 3.

乱数を三つ作って、俳句三句を選び出し、 4.

5.

最初の句から上五を、二番目の句から中七を、最 後の句から下五を取り出して合成し、表示する。 それを五回繰り返す。

それらしい俳句にする工夫はしない。

• • 季語がない・複数現れる 切れ字がふたつある などをあらかじめチェックして表示しないように するのは、意味がないと考える。人間がチェッ クすればいいのであるし、表示しなかった句 の中にいい句があったかもしれないから。

「ランダム俳句」を使って

• この「近現代俳句を使ったランダム俳句」を筆 者は日常使っている。一日中家に籠もってい て自然観察ができなかった日や家の中に俳 句で表現したい題材が無いときなど、重宝す る。 • 俳句を作っては、電子俳句帳 http://www.cc.osaka kyoiku.ac.jp/~nonami/nikki/diary.cgi

に残している。

電子俳句帳

学生にランダム俳句を使って俳句を 実作させる

• • • 大学のインターネット端末 自宅・下宿のインターネット端末 インターネットカフェ からランダム俳句のページを呼び出して、ランダム 俳句を参考にして、俳句を実作させ、課題提出用の 掲示板に発表させる。 http://www.osaka-kyoiku.ac.jp/~kokugo/nonami/ bbs/ tnote.cgi?book=gairon

課題提出用の掲示板

2006 年 国語学概説・概論 受講生 62417 の俳句 初夏の俳句 ランダム俳句 日焼け止め 店頭飾り 夏感ず 新作の 水着が並ぶ 百 貨店 首そろえ 「私を買って」と 浴衣たち 夜桜や力満ちゆき命咲く 冬河に花の匂もさらさらと 春すでに古鏡の如くぼや けゆく

2006 年 国語学概説・概論 受講生 62409 の俳句 初夏の俳句 ランダム俳句 空の川 仲良く泳ぐ こい のぼり 五月雨が 地面に落書き 水溜り 風薫る 大教からの 夏 景色 大空に 鎌倉の冬 帰路 の栄(はえ) くらがりに 東西南北 月 明り 水晶の 降る雪何を きざ すなり

2006 年 国語学概説・概論 受講生 62408 の俳句 初夏の俳句 ランダム俳句 にじむ汗 じっと見上げた 青空だ せみしぐれ あつきだいち に こだまする 風が走り 山を緑に 染 めてゆく せりせりと 松のはろかに 夕汽笛 寒灯や おもひおもひの 余生かな 木にのぼり 月光に会う 城の秋

初夏の俳句

大学一回生が初めて作った俳句としてはこん なものであって、 • • 「ストレートすぎて物足りなさがある。」 「気持ちをダイレクトに述べているのは俳句 とはいわない。」 という指導を2・3回してやっとまともな俳句に なってくる。

ランダム俳句

• • ランダム俳句を使って作った方が直感的に俳 句らしいと思える。 なぜかを考えた。

ランダム俳句を使うと俳句らしくなる理由(仮説) • • • • • 学生の実態 俳句鑑賞能力は高い 俳句のテーマ設定力は低い 「俳句の語彙」使用力は低い ランダム俳句を使うと 俳句のテーマ設定が与えられる(自分のテーマに気 づく。あ、こういうのが書きたかったんだ) 「俳句の語彙」が与えられる(あ、こういう具合に使う んだ) となるのではないか。

ランダム俳句を使うと

• • • テーマ設定が与えられ、俳句の語彙が与えら れる。 難点は抽象的になりがちなところ。その俳句 にどういう意味をつめていくかということを考 えさせることと、描写の練習をしていけば、 もっといい俳句ができる。 ランダム俳句の持つ不完全さが、創作意識を 刺激する ( もっとこうすればいい、など ) 。

小中学生には、

• • 大学生には、ある程度の鑑賞力があるので 利用できるが、小・中学生には厳しいだろう。 元になる俳句データを小中学生むきに改変 する必要がある。子供の俳句を集めてデータ にするなど。

ランダム俳句を作った感想に使われたキーワード 順位 8 9 10 1 2 3 4 5 6 7 使用頻度 144 俳句 87 作 84 思 78 自分 48 ランダム俳句 47 言葉 42 意味 37 合 37 組 36 難 語

ランダム俳句を作った感想に使われたキーワード 順位 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 使用頻度 33 句 31 感 30 面白 28 表現 27 見 27 楽 24 考 19 使 18 出 17 中 語

62417 の感想 • 自分で一から俳句を作るとなると、どうしても 単調な情景、ありきたりな言葉しか浮かんで きません。でも今回のランダム俳句では、一 見まったく関連のないように思える言葉から、 情景を想像し、普段の自分ではなかなか作 れないような俳句を詠めたので、すごく面白 かったです。

• 62409 の感想 は じめ先生がランダム俳句を作るようにお題を出し たときは,「なんか面白そうやけど,ただ組み合わせ たらいいだけやけん簡単じゃわ」と思った。でもいざ やっ てみるとかなり難しかった。クリックする度に並 ぶ俳句が異なるので,さまざまな俳句を読むことが でき楽しかった。普段は絶対使わない語句で,自分 なりのセ ンスで俳句を作る経験は初めてだったので, 違和感はあったけど俳句ができたときは嬉しかった。 自分で俳句を作るときは情景を思い浮かべながら 作るけど,ラ ンダム俳句はできてから情景を思い浮 かべるので,新たなワールドができたみたいでおも しろかった。

62408 の感想 • • • ランダム俳句をつくろうと思い、ページを開いて見 てみると、なんかへんな俳句ばかりだったので見て いるとおもしろく、これはないやろ~とか思いながら 更新ボタンを連打していたので、なかなか作業が進 みませんでした。 気を取り直して真剣にやろうとすると、もともとの俳 句が実はすごくうまい表現を使っていることに気づ き、組みかえるといまいちな表現になってしまうので、 結構苦労しました。 上手な表現の一部を使うと、自分もなかなかいい 俳句をつくったんじゃないかという気になりました。 (気のせいですが)

ランダム俳句の事前に

• • • 自然に対する観察力を高めておく 言葉に対する感受性を高めておく 言葉から世界を描き出す想像力を鍛えておく が必要。

俳句の言葉の ランダムな組 み合わせから、 新たな俳句が できあがる。 ちょうど、花筏 のように。