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第1部・反ユダヤ主義
じつは、映画「もののけ姫」での説明がこの理解に役立つ。
ユダヤとは、宗教?民族?
(1)<<故郷喪失者>>
(2) ディアスポラ(離散)
(3)一神教
(4)巨大財閥
(5)長い差別の歴史
西欧文明のふたつの源泉
= ヘレニズム + ヘブライズム
コレ!
宗教の原始形態
アニミズム (自然崇拝)
人間と神のあいだ
に絶対的なカベは
存在しない。
たとえばゼウス、インドラ、辰の子太郎・・・
これらは雷を司る神であり、雷とともに雨の恵みの神である。
ユダヤ教の特徴 = 一神教
有名な旧約聖書でさえ、最初の段階では一神教ではなく、
多様な神々(多くの場合に自然崇拝)を信仰する多神教だったことが伺われるが・・・
たび重なる戦争 → ディアスポラ(民族離散)
↓
どんな場所にいても信仰できる神を必要とする。
● 神は必ずしも神殿にいなくていい。
● 場所にとらわれないということは身体をもたなくていい。
●身体をもたないので心/身のカベをのりこえ、心を覗き込む能力をもつ。
● 空間に縛られないということは時間にも縛られない・・・
・・・と、徐々に超越的な能力が想定されるようになっていく。
(「歴史を支配する神」)
偏在する、人格をもった全能の唯一神
(他宗教とくらべると明らかなように極めて特殊な存在)
そうした特殊な宗教
を育ててきたユダ
ヤ民族は市場に関
係して生きてきた。
↓
専業状態
巨大財閥
●貨幣=ケガレ
●不労所得
●金融業 → とりたて
●反感―差別
近代以前のユダヤ民族
民族離散 → 市場で生き延びる
→ 各地に散らばっているため
外交で活躍することができた。
差別されても役割、居場所があった
→ 伝統的差別はよくないもので、今なお残る差別は是正されるべき。
だが、それは<<民族絶滅>>をめざすようなものではなかった。
↑
何が<<飛躍>>を生んだのか?
そして近代化の過程で・・・
経済が社会の中心となるなかで、
● 地位向上
● 特権化
● 国家との癒着
→さらなる巨大財閥化が可能になる。
差別や圧迫はむしろ弱くなるようにみえた。
ユダヤ資本のスキャンダル
だが、近代以降、ユダヤ民族とそれ以外のひとびとは
同じ土俵で競争しなければならなくなった。
↓
競争の激化
↓
勝ち組と負け組への分化
↓
勝者であり経済システムのシンボルであるユダヤ民族
に対する敗者の憎悪は却って強まっていく。
19世紀末にバブル経済の好景気があり、「夢」がばらまかれたが、
やがて経済が破綻し、すべてがインチキだったと判明した。
そんななかでパナマ運河疑獄事件が起きる。
ユダヤ資本が関与し、じつはインチキな計画で遅延を繰り返し、結
局工事すらしなかった。巨大汚職スキャンダル―これが伏線となる。
同化ユダヤ人
ユダヤ人の側で溶け込む努力、非ユダヤ人の側で受け入れの努力があった?
「きみはユダヤ人なのに一生懸命に同化しようとしている」
「きみはユダヤ人なのにいいヤツだ」
↑ 一見すると理解ある態度のようだが、
じつは差別感情を温存するものでしかない。
貴族のサロン(社交界)
・・・ユダヤ受け入れがもっともすすんだ場所だが、
● 犯罪を喜ぶ風潮・・・犯罪者を喜ぶようにユダヤ人を受け入れる
道徳的退廃と感覚まひ = 世紀末の時代精神
ドレフュス事件(1894)
よく並び称せ
られるブーラ
ンジェ事件は
性質が違う
ユダヤ人将校にスパイ容疑
じつは「えん罪」
だが、法的手続きをすっ飛ばして投獄する。
そして、誤審が誰の目に明らかになってから
も、フランス社会はそれを訂正しなかった。
ユダヤ人=敵
敵であれば何をしてもいいという感覚
「フランス人のフランスを!」と叫ぶ声
ドレフュス事件では、
フランス革命以来の「法の支配」の伝統が
軽々と踏みにじられた。
これが「全体主義のリハーサル」となった。
<<無法状態>>に慣れ、受け入れる土壌となった。
誰がユダヤ人を排斥しようとしたか?
→ モッブ(<<故郷喪失者>>)
モッブは第Ⅱ部以降のキーワードのひとつ(→あとで説明)
<<故郷喪失者>>たるモッブが同じ<<故郷喪失者>>たるユダヤ人を憎悪する
ユダヤ人の権利を守ろうとした者は?
→ 国民に広く訴えかけた作家・ゾラ
→ そして「たったひとりで」戦った政治家・クレマンソー
アーレントはクレマンソーを評価する
(∵ ゾラのやり方には大衆を煽動するヒトラーに似たものが感じられる・・・)
そして「黄金の安定期」(作家・ツヴァイクの言葉)へ
世紀末に吹き荒れた反ユダヤの嵐はいったん収まる
反ユダヤ主義の3段階
①伝統的なユダヤ差別/②世紀末の反ユダヤの嵐
だが、全体主義における反ユダヤ主義はそれ以上のものだった。
舞台はフランス
→ 通常、全体主義の問題はドイツだけの問題だと考えられているが、
アーレントは西欧全体の問題と捉えている。
いくつかの伏線
→ 資本制の問題、故郷喪失者の登場、たったひとりで戦うこと・・・etc
つぎなる課題
→そして、反ユダヤ主義の3段ロケットはいかにして第3段階へと移行
していったか?
「差別はよくない」という教訓だけでは反ユダヤ主義のさまざま
な段階が理解できない。また、それらの「悪」や「敵」と戦うにして
も、何とどう戦えばいいかがわからないのではないか?
→ 講義のテーマ:「悪の諸類型」