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平成24年度小・中学校教育課程
大分県研究協議会
(中学校国語)
平成24年12月27日
大分県教育庁義務教育課
本部会の協議事項の確認
生徒の社会生活に必要な基礎的な国語の
能力を高める視点から
より具体的な評価規準を設定して
言語活動の充実を図る授業改善をどのように
すすめるか
おおむね満足できる状況に
到達できたか
判断できる評価規準の設定
P (具体的な姿)
D 指導事項・言語活動の具体化
生徒に示す本時のめあての具体化
C 確かな見取りと
A それに基づいた適切な指導
(特にCの状況への支援)
評価の時期・場面
方法
・こんなことができ
ればいいんだな
・こんな条件で書け
ばいいんだな
・この課題の答えを
見付けるために読
めばいいんだな
1時間完結型
授業の充実
国語科授業改善は着実にすすんでいるけれど・・・
実践に見られるいくつかの問題点
1 読むことにおいて、
言語活動は設定している。
しかし、従前の授業から改善されていない
2 評価に関して
・指導事項が多すぎる
・指導していないことも評価をしようとする
・評価の観点(領域)がずれてしまう
・評価規準が具体的でないため、本時のめあてが達
成できたのか分からない
・本時のめあてと評価に整合性がない
・1時間に設定する評価が多すぎる
3 指導に関して
・Cの生徒への手立てが、関心や意欲を高めることだけ
1 国語科における言語活動の充実とは
例:書くことの単元
ワークシー
トに書く
メモをとる
課題設
定や
取材
構成
記述
話し合う
推敲
交流
相手や目的を明らかにして報告
課題 や記録、意見文や手紙等を書く
設定
課題
解決
「単元を貫く言語活動」を設定しているようでも・・・
【1次】
学習課題
の明確化
学習計画
の明確化
既習事項
の確認
【2次】
*「目的」はさておい
て、とにかく書かれて
いる内容を正しく読
み取らせる
【3次】
単元はじめに
提示した
振
言語活動
り
内容を読解 返
り
できたから
もう大丈夫!
ここが課題解決の過程になっていないので
単元を貫いているとはいえない
読むことの言語活動を設定した授業で見られるエラー
導入で言語活動は提示したものの
それきりで、単元の終末に突然現れる
「走れメロス」を場面毎に詳
しく読んだから大丈夫!
さあ、今から「走れメロス」の
批評文を書くよ!
え~また読み
返さないといけ
ないの・・・?
ここで初めて目的を
もって読む
膨大な時間がかかってしまう・・・
読むことの単元構想のポイント
■ 言語活動とつながる目的をもって
読めるようにする
■単位時間のそれぞれの学習活動が単元を
つらぬく言語活動と繫がる
一つ一つの学習活動が意味あるものに
(課題解決の過程として機能するように)
■他の場面でも言語活動を生徒が自力で遂行
で きるように単元を通して指導
単元を貫く言語活動の構想
例:「走れメロス」を読んで批評する(3学年)
【1次】
【2次】
既習の小 ①全文を読み、批評する目的で、語句の
説の批評 効果・表現上の工夫をとらえる
を提示 ②場面の展開の仕方や登場人物の設定
の仕方を確認し、理解しやすかった場面、 振
り
学習と計 しにくかった場面を取り出す
画を提示 ③取り出した場面を基に細部の叙述や作 返
品全体の構造を批評する
り
既習事項 ④交流
読書へとつなげる
の確認
【3次】
課題意識 ⑤他の作品の展開や表現の工夫を評価
の高揚 し、メモする。
指導したいことを指導できる言語活動を設定する
指導事項
学習活動
①表現の技法や抽象的な
概念を表す語句,慣用句
や漢語表現などに留意し
ながら文章を読む
②話の展開の仕方,場面や
登場人物の設定の仕方
をとらえ,気になったり,
感じたりしたことを書き出
す。
③細部の叙述や物語全体
の構造について自分なり
の批評を書く。
②文章の展開の仕方、場
面や登場人物の設定の
仕方をとらえ、内容理解
に役立てる(イ)
③文章の構成や展開、表
現の仕方について評価
する(ウ)
①慣用句や四字熟語、和
語・漢語・外来語などの
使い分けに注意し、語
感を磨き、語彙を豊か
にする(伝国イ(イ))
目的に応じた読みの着眼点を指導する
感想や批評に
関する
語彙の使い分
けの例
是
・どこから、
どのように判断して
「すばらしい」のか
感
想
批
評
非
言い表し方を例示
・読み手に~という効果
を与えている
・~という点が巧みだ
・~という疑問を与える
・~という点で矛盾して
いる
2 国語科の評価の観点について
国語への
関心・意欲・態度
①話す・聞く能力
②書く能力
③読む能力
言語についての
知識・理解・技能
どの単元でも評価
忘れものや発言の回数ではない
単元の指導事項に設定した
ことのみ評価
*指導事項を絞る
通常①②③のうち1領域
複合単元の場合は2領域3領域
の場合もある
どの単元でも評価
*指導事項に対応したもの
3 複合単元(領域の関連)について
例
【読む】
課題を設定して
図書資料で調べる
【読む】
・筆者のものの見方や
表現の工夫を読み取る
・事実と感想、意見等と
の関係を押さえて読む
【話す】
調べたことを材料と
してスピーチする
【書く】
事実と意見・感想な
どを区別して表現
や構成を工夫して
解説文を書く
領域を組み合わせる方が効果が大きいと判断する
場合は複合単元もある
複合(関連)単元構想上の注意点
■付けたい力(指導事項)が絞られていないこと
が少なくない
→十分に指導されないまま活動がすすんでしまう
※年間指導計画
■単元が大きくなりすぎる。時間がかかる
→複合にしないで、切り離して、次の単元の導入
で「既習事項の想起」として扱うことも可
■指導していないこと、生徒があり合わせの力で
活動していることに対して評価規準が設定される
ことがある
■関連単元ではないのに、評価の観点が混在して
しま う
付けたい力を絞る・・・単元の指導事項の重点化
ポイント:年間指導計画で確認しながら
マトリックス型の
年間指導計画表
を!
指導事項
単元名
・1年間で全く指導しな
い項目がないように
・バランスのよい指導
をめざす
・単元に軽重をつける
関連単元ではないのに・・・評価の観点が適切でない
話題を決め、必要な事柄に
ついて本で調べ、メモする。
話すこと
話題設定や取材
課題を決め、インタビューで
材料を集めながら自分の考
えをまとめる
書くこと
課題設定や取材
本や文章を読んで考えたこと
を発表しあい、
自分の考えを広げる
読むこと
自分の考えの
形成
ポイント:学習指導要領で指導事項のどれ
にあたるか常に確認・指導事項を評価
ポイント:単元構想表等で評価の観点を確認
『走れメロス』を読んで批評する
単元名
目標
言語活動
~構成や展開,表現の仕方を評価する~
『走れメロス』を読んで,細部の叙述や物語全体の構造について批評することができる。
読むことの指導事項
『走れメロス』を読んで批評する(第3学年 C読むこと (2)ア)
指導事項
ア
イ
重
点
単元の評価規準
文脈の中における語句の効果的な使い方など、
表現上の工夫に注意して読む
全文を読み、批評する目的で、語句の効果・表現上
の工夫をとらえ、メモする
文章の論理や展開の仕方、場面や登場人物の設
定の仕方をとらえ、内容の理解に役立てること
場面の展開の仕方や登場人物の設定の仕方をワー 話の展開の仕方、場面や登場人物の設定の
クシートにまとめ、理解しやすかった場面、しにくかっ 仕方をとらえ、気になったり、感じたりしたこ
た場面を明らかにする
とを書き出している。
文章を読み比べるなどして、構成や展開、表現の
仕方について評価すること
ウ
エ
学習活動
○
理解しやすかった場面やしにくかった場面を基に細 細部の叙述や物語全体の構造について自分
部の叙述や作品全体の構造を
なりの評価を書いている。
◎ 批評する文章を書く
文章を読んで人間、社会、自然などについて考え、
自分の意見をもつこと
グループで批評文を読み合い、他の人の批評と比
べて、『走れメロス』に対する自分のものの見方や考
え方を振り返る。
目的に応じて本や文章などを読み、知識を広げた
り、自分の考えを深めたりすること
学校図書館で好きな小説を探して読み,場面の展
開や表現の仕方を評価して,気が付いたことをメモ
する
オ
評価しない
ポイント:指導と評価に整合性をもたせる
単元で育てたい力
(指導事項)
単元の評価規準
(指導事項の対応)
育てたい力にぴったりな
言語活動の選定
言語活動の展開に必要な力
育てたい力
身に付いている力
評価する
評価の対象に
しない
本時の評価規準
(単元の評価規準の具体化)
(本時の目指す姿)
本時の主眼・ねらい
本時のめあて
ポイント:評価場面や箇所を絞り、具体的な
評価規準を設定する
例:物語の朗読台本の作成(中1)
評価する箇所を絞り込み、評価規準を設定
B 前向きに進んでいこうとする「私」の決意を読
み取り、それが読み方の工夫や理由に表れ
ている
※明るい声・力強く・「きっと」以降を高い声で
A 「私」の決意に加え、「自分に言い聞かせる」
「自分を励ましている」ことを感じ取り、それが
読み方の工夫や理由に表れている
※「大丈夫~」一語一語ゆっくりと・力強く
全国調査を参考に
「星の花が降るこ
ろに」で朗読台本
を作成
評価の対象とする
箇所を絞る
朗読の仕方
理由
スピーチの評価の工夫
指導者
話し手
評価項目を
絞って評価
発言者と主張
のみ記録
発言がそれて
いないか観察
発言の根拠を
記録
タブレットで
録画
グループディスカッションの相互評価
参考になる資料
■言語活動の充実に関する指導事例集
*文部科学省HPよりダウンロードできます
■評価規準の作成、評価方法等の工夫改善の参考資料
(国立教育政策研究所 教育出版)
*国立教育政策研究所HPよりダウンロードできます
■全国学力・学習状況調査の結果を踏まえた
授業アイディア例
*国立教育政策研究所HPよりダウンロードできます
■全国学力・学習状況調査の4年間の調査結果から今後
の取組が期待される内容のまとめ
(国立教育政策研究所) 購入できます
研究協議会のおわりに
国語科における言語活動の充実とは
【学習指導要領解説】
各領域においては、基礎的・基本的な知識・技
能を活用して、課題を探究することができる国語
の能力を身に付けることができるように、内容
(2)に言語活動を具体的に例示している。
各学年の内容の指導に当たって、(1)に示す指
導事項を(2)に示す言語活動を通して指導する
ことを一層重視したためである。
情報を活用する力
自ら課題を設定し
解決できる力
協力して
解決する力
評価の面から授業を見るポイント
①どんな力をつけようとした授業か?
②評価規準をどう設定したか?
③評価時期をどこに設定したか?
(いつ、評価したか?)
④評価方法として何を用いたか?
⑤「努力を要する」状況の児童生徒は誰だったのか?
⑥⑤に対してどのような手立てが講じられたのか
⑦実際の記述等と評価の蓄積
評価に焦点を絞った授業研究
廿日市立大野中学校の例
授
業
前
授業者が提示
・本時で身に付けさせたい力
・中心となる学習活動
・評価規準と評価場面・方法
授
業
中
・参観者がグループに分かれ、
4人程度の生徒 を担当し、観察
示された評価規準に沿って評価
授
業
研
究
・グループ毎・・それぞれの生徒の評価のすりあわせ
・全員で・・Bと判断した生徒の姿をもとに
Cと判断された生徒の姿と適切な指導
の有無
Aと判断された生徒の姿のキーワード
を示し、交流
各種学力調査の結果を活かそう
①教師が過去の問題を実際に解いてみる
②「話すこと・聞くこと」「読むこと」の単元においても、
条件を設けて「書く」活動を取り入れる
(80~200字程度)
・・・書くことでは評価しない。書き慣れさせる。
③根拠を挙げて説明する活動を重視する
図書館を活用
④「目的に応じて、本や文章を比べて読むなど効果的
な読み方をする」学習活動を設定する
比べて読む・見出しや目次を読む・リードを読む等
書くことの条件の例
・時間 ・字数 ・文章の形態や種類
・文体(常体・敬体・一人称・三人称)
・テーマ ・対象 ・使用語彙
・要約 ・引用(グラフのデータ等も) ・事例
・技法 (反復・倒置・比喩・反語等)
・構成 (頭括型・尾括型・双括型、
現在→過去→現在)等
・比較して ・関連づけて
・事実と意見を区別して
めあてを設定するときに条件を明示
→ 評価規準の明確化
【根拠を書くために必要な力】
■グラフや表を読み取り、数値等を使って
言葉で正確に説明する力
■意見の根拠となる部分を適切に
引用する・要約する力
■自分の体験や読書経験を簡潔に説明
する力
言語活動の過程でこのような
ことを書く活動を設定しよう