統合的知能王エージェント の構築に向けて

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Transcript 統合的知能王エージェント の構築に向けて

退官記念最終講義
統合的知能エージェント
の構築に向けて
岡田 直之
九州工業大学情報工学部
2003年3月7日
目 次
言語概念の体系的分類
動図形の自然言語理解
知識処理と情緒処理
心の統合的モデル
1.はじめに
• 人工知能(AI)研究の歴史は,他の研究
主要カテゴリ
分野と同様,多様化(diversification)と
専門化(specialization)の繰り返し
• 自然言語処理
1960年代初頭• パターン認識
• 学習
2000年代初頭• 問題解決,など
人工知能学会のカテゴリゼーション
•基礎・理論
1.はじめに
探索,プランニング,論理,知識表現,推論,ファジィ理論,不確実性推論,
アルゴリズム,計算量など
•学習と発見
帰納学習,演繹学習,戦略学習,類推,概念学習,事例ベース推論,デー
タマイニング,テキストマイニング,Webマイニング,知識発見,発見科学など
•知識情報インフラストラクチャ
• 人工知能(AI)研究の歴史は,他の研究
知識獲得,知識共有,ナレッジ・マネージメント,知識ベース管理,知識データ
ベース,オントロジー,エキスパートシステム,構築方法論,インターネット標
準化,Web検索,Webインテリジェンス,Webマイニング,Webコミュニティ,コ
ミュニティ支援,推薦システム,セマンティックWeb,Webサービス,デジタルラ
イブラリ,XMLとメタデータなど
分野と同様,多様化(diversification)と
•AIアーキテクチャ・言語
専門化(specialization)の繰り返し
•エージェント・分散人工知能
1960年代初頭
•創発システム
2000年代初頭
超並列人工知能,AIアーキテクチャ,AI言語,ソフトウェア設計,プログラミング
など
協調問題解決,エージェントの構造と機能,エージェント間通信,エージェント
ネット,学習エージェント,エージェント社会,人工社会と経済,エージェントプロ
グラミングなど
人工生命,進化的計算,遺伝的アルゴリズム,免疫システム,強化学習,適応
学習システム,コネクショニズムなど
•自然言語
自然言語理解,自然言語処理,対話処理,意図・談話理解,コーパス,機械翻
訳,情報検索・抽出,音声認識・理解,音声対話処理,音声言語処理など
•パターン理解
画像認識・理解,シーン理解,動画像処理,視聴覚心理モデル,パターン組織
化・検索など
•認知と身体性
知能ロボット,移動体知能,認知アーキテクチャ,シンボル・グラウンディング,
認知科学,ユビキタスコンピューティングなど
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1.はじめに
• 人工知能(AI)研究の歴史は,他の研究
分野と同様,多様化(diversification)と
専門化(specialization)の繰り返し
1960年代初頭
2000年代初頭
• ときには立ち止り,振り返り,整理し,更な
る発展に向けて”統合”することも肝要
統合に向けてのアプローチ
• AI研究の2本柱
自然言語理解(NLU)とパターン認識
- 共通点
人の知能をブラックボックスと見た
とき,入出力を通じて内部機能を解
明するのに好個の素材
- 相違点
NLU: 主に記号処理による系列的,
中枢的理解
パターン認識: 主に信号処理によ
る並列的,末梢的理解

知能の両輪
- “知識”と“情緒”は互いに車の両輪
の関係
- 一方を欠くと他方は十分機能しない.
• 取り組みの姿勢
- 対象世界において, 要素の基本的
性質および複合体の構造を解明
- 得られた理論は実験によって検証,
評価
- 難しい課題でも正面から取り組む.
- 自ら考える(先行研究は,参考にすれ
ど,拘束されず).
2.言語概念の体系的分類
 言葉は”心の窓”
知能の解明とその応用において,言語のも
つ意味内容,換言すると概念体系はもっ
とも重要な取り組みの課題
 意味表現に対する初期の提案
C.J.Fillmore’68 Case grammar (格文法)
M.R.Quillian’68 Semantic network
(意味ネットワーク)
岡田&田町’69 意味情報の表現と抽出
R.Schank’72 Conceptual dependency
(概念依存性)
Y.Wilks’75 Preference semantics
(優先意味論)
体系的な言語概念の分析はなかった.
語彙概念の分析
 概念のカテゴリ
- 人の形成概念は,森羅万象に及ぶ.
- 言語の立場からは5種類のカテゴリ
物,属性,事,空間・時間,および
その他
- ただし漠然としたカテゴリゼーションで,
計算論的な定義が求められた.
 概念形成過程に基づく計算論的定義
- “物”とはなにか?
知覚器で量および質を知覚できる個体
図2.1
視覚器で知覚できる物---山
- “状態”とはなにか?
基本的には,いくつかの物の間の静的
な相互関係
図2.2
状態----車の“中”の人
- “属性”とはなにか?
状態の特殊な場合で,基本的には“対象”
と“基準”と間の“差”
差
~
対象
基準
図2.3 ”対象-基準”対---(山が木より)高い
- 差を捉えるには,“物差し”が必要
“高い“の物差し:
高さ (垂直方向の長さ)
この物差しが,いわゆる”属性”を与える.
- “事”とはなにか?
基本的には,”前”状態から“後”状態への
“変化”
変化
前状態
前-状態
後状態
後-状態
図2.4 事象の”前-後“状態対--(人が車から)出る
- 一般的に事象では,変化の“連続的
過程”が大切
- “空間”および“時間”とはなにか?
基本的には,物,属性,あるいは事象を
“位置づける.“
空間:場所の面から
時間:経過の面から
 概念のフレーム表現
- 概念一般
(w, (c1, c2, ---, cf))
(v/a, (evt/attr, (c01, c02, ---, c0j)),
(agent, (c11, c12, ---, c1k)),
(object, (c21, c22, ---, c2l)),
(origin, (c31, c32, ---, c3l)),
------(location, (c51, c52, ---, c5p)),
(time, (c61, c62, ---, c6q)))
図2・5 事象/属性概念の格フレーム表現
(出る,
(evt,
(exist_in_before(Agt), exist_in_after(Agt),
exist_in_before(Org), exist_in_after(Org),
inside_in_before(Agt,Org), move(Agt),
outside_in_after(Agt,Org)),
(agent(Agt), (thing, movable)),
(origin(Org), (thing, has_inside)),
(time(Tm), (before, after)))
 要素概念
対応する語との関連においてそれ以上
分解できない概念
 複雑な概念
要素概念を合成あるいは変形して得ら
れる概念
 複雑な概念の形成
”語構成論”を参考,発展
- 複合概念
タイプA: 二つの要素概念が論理的
あるいは構文的に結合
タイプB: いくつかの要素概念がスク
リプトを構成
- 派生概念
一つの要素概念から派生
(悔しい,
 複雑な概念の形成
(目標に向けてプランを立てる,
要素概念から複雑な概念を形成する規則は?
実現の可能性大, [期待]),
(”語構成論”を参考,発展)
(プランに沿って実行する,
- 複合概念
あと一息で失敗, [驚き], [悲しみ]),
タイプA: 二つの要素概念が論理的
(繰り返し実行する,
多大の努力による疲労,
[悲しみ]),
あるいは構文的に結合
(放棄を決断する,
タイプB: いくつかの要素概念がスク
できて当然のことができない,
リプトを構成
[怒り], [驚き], [悲しみ]),
すぐに忘れられない)
語彙概念の分類
 なぜ分類が必要?
- 機械処理に向けた概念データの蓄積
- 提案した分析理論の妥当性の検証
 分類の対象
- 日常の言語生活で使用頻度の高い,
約3万2千語(国立国語研究所編:
分類語彙表より)
2.1530
出入り
出る 出す 出過ぎる 出直す さし出す
出ししぶる 出しあう
はみ出る はみ出す あふれ出る あふ
れ出す
-------入る 入れる
いる 立ち入る 乗り入れる 踏み入れる
押し入る 分け入る 忍びいる
--------
–
分類のアルゴリズム
語の形態も考慮したアルゴリズムを導入
start
派生概念分類
複合概念A分類
複合概念B分類
要素概念分類
end
図2.6
事象概念の分類手順

分類の結果
川
全体・部分
属性
事象
N11
N12
(川の部分)
(~する川)
N13
(~である川)
流れる
淀む
深い
本
本流
支
底
面
上
中
浅い
下
川底
上流 下流 淀み
支流
川面
中流
激流
瀬
瀞
川底
水源 河口
図2.7 物概念のネットワーク
小川
清流
大川
急流
表2.1
番号
0・00
0・01
1・00
1・01
1・02
1・03
1・04
1・05
1・06
属性/事象の要素概念
サブカテゴリ
精神/精神変化
感覚/感覚変化
位置/変位
向き/向き変化
形/変形
質/変質
量/変量
光/光変化
色/色変化
つづく
属性/事象
楽しい/怒る
寒い/痛む
深い/落ちる
斜めだ/裏返す
鋭い/曲がる
柔らかい/腐る
多い/減らす
暗い/光る
赤い/赤らむ
1・07 熱/熱変化
1・08
1・09
1・10
1・11
1・12
2・00
2・01
3・00
4・00
力・勢い/力・勢い変化
音/音変化
発生・出現・消滅
開始・終了
時間/時間変化
継続
有様
抽象
その他
熱い/冷やす
強い/強まる
けたたましい/歌う
あらわだ/現れる
出し抜けだ/始まる
すぐだ/過ぎる
絶え絶えだ/続く
うららかだ/そびえる
等しい/適する
表2.2
タイプ
v(sbj)
v(sbj,org)
v(sbj,goal)
v(sbj,ptn)
v(sbj,std)
v(sbj,obj)
v(sbj,obj,org)
事象概念の格フレーム
例
(水滴が)落ちる
(煙が煙突から)出る
(太郎が郵便局に)行く
(トラックがバスと)ぶつかる
(子が親に)似る)
(通行人が枝を)折る
(運転手が荷台から積荷を)降ろす
v(sbj,obj,goal) (児童がランドセルに教科書を)入れる
v(sbj,obj,inst) (人がさじで砂糖を)すくう
v(sbj,obj,att)
その他
(人がそよ風を涼しく)感じる
表2.3
位置関係の要素概念
サブカテゴリ
関 係
向き
上/下,前/後,左/右,横,隣
領域
内/外,側,周囲,沿い
全体・部分 表/裏,端,隅,奥,底, 先,
頂,へり,中,心
交差・接触 交わり,接触
時間
時間の関係
特定の時間
時点
期間
時刻 時機 季節 時代 生涯
図2・8 時間の要素概念の上位構造
 統計データ
実際に分類した概念の数
物概念
自然物,人工物概念など
属性概念
要素概念
複合概念A,B
派生概念
(つづく)
4,200
440
1,340
280
事象概念
要素概念
複合概念A,B
派生概念
空間・時間概念
1,200
1,850
670
1,800
-------------合計 117,800
以上の他,約1万1千概念についても同
様の手法で分類できる見通しを得た.
評 価
 提案した分析理論により,日常の言語
生活に必要な語彙概念3万2千の,
約7割が把握可能
 残りの3割は,理論を若干拡張すれば
把握可能
 自然言語理解に必要な基礎データが
体系的に解明,蓄積できた.
主な研究発表
1973 岡田, 田町:自然語および図形解
釈のための単純事象概念の分析お
よび分類, 電子通信学会論文誌,
Vol.56D,No.9, pp.523-530.
1980 N.Okada: Conceptual Taxonomy
of Japanese Verbs for
Understanding Natural Language,
Proc. COLING'80, pp.127-135.
1991 岡田: 語の概念の表現と蓄積,
電子情報通信学会.
3.動図形の自然言語理解

先駆者 R.A.Kirsch
- AIの揺籃期,図形と言語はまったく異な
る情報源と考えられていた.
- これを否定,共通の意味表現で統合処
理を提案[Kirsch64]
- しかし,言語の側からは,文の意味を
支配する述語(動詞)の大半が“変化”
を表現
- 彼は,変化の重要性に気づかず,静止
図形のみ扱った.

動図形理解の初期の取り組み
N.Badler 75 Temporal scene analysis
線画系列の自然言語記述
(図形の側からの接近)
M.Minsky75
Frame theory
図形に限らず,普遍的なデータ
構造の提案

本研究のアプローチ
- 意味内容
事象概念のサブカテゴリの中で,もっ
とも数の多い”変位”に注目
- 入力図形
手書きの線画像(前-後状態対)
- 処理手法
ボトムアップとトップダウン解析の
組合わせ
- 出力文
日本語および英語の単文

処理の流れ
start
線画像読み取り
雑音除去
ボトムアップ
要素図形の認識
生起事象の予測
要素図形間の構造解析
トップダウン
生起事象の理解
文生成
end
図3.1
画像系列の自然言語理解
ボトムアップ過程

線画像読み取り
TVカメラを用いて,8角形走査に
より線分を追跡し,読み取る.
(a) 8角形走査
(b) 8角形走査による線分追跡
図3・2 線分追跡

雑音処理
特に,“手書き“に基く雑音に注
目し,それらを除去する.
(a) 処理前
(b) 処理後
図3・3 処理例

要素図形認識
線画像を“グラフ“とみなして,入力図
形とテンプレートの,ある節点対を出
発点とし,あたかも”波紋”が広がるよ
うに両者の節点間の対応付けを行う.
P1
q1
P2
P3
q2
q3
P4
P5
(a) 入力
q4
(b)テンプレート
図3・4 波紋的パターンマッチング
q5
- 波紋的パターンマッチの課題
雑音の影響で,波紋の進行が行き詰る.
- 対応
局所的: 手書きに基く雑音を詳細に
調査して対応(前述)
大局的: 波紋的パターンマッチを数段
にわたって繰り返す.
トップダウン過程
- 脈絡(contents)と注視(attentional focus)
一連の脈絡においては,出現するすべて
の物や事象が認識されるわけではなく,
注視された対象のみが認識される.
この性質を利用して認識の効率を高める.
- 注視の規則
1.タスクの実行中,その目標に関係
するもの
2.危険なもの
3.好きなもの
4.位置や形などが急に変化した場合
--------
((S,物), 時間経過((T0,T1),保存(S,(T0,T1)))
移動する
+((OX,物),存在(OX,(T0,T1)))
+上下の移動(S,(T0,T1))
+(S,自力
で移動可能
V2
V1
+下方への移動
(S,(T0,T1))
+((S,足を持つ),
歩く姿勢
(S,(T0,T1)))
下がる
歩く
+((S,向きを持つ),
前進(S,(T0,T1)),
接近(S,OT,
(T0,T1)))
行く
降りる
図3・5
V3
+(接触(S,OT, T1))
+((OF,
内部あり),
内(S,OF,(T0,T1))
出る
外(S,OF,
(T0,T1))
+((S,動物),
(OF,乗物))
触る
+短い時間
経過((T0,T1))
ぶつかる
変位事象の意味ネットワーク
- 生起事象の予測と検証
(出る,
(evt,
(exist_in_before(Agt), exist_in_after(Agt),
exist_in_before(Org), exist_in_after(Org),
inside_in_before(Agt,Org), move(Agt),
outside_in_after(Agt,Org))
(agent(Agt), (thing, movable)),
(origin(Org), (thing, has_inside)),
(time(Tm), (before, after)))

構造解析
いくつかの手法
- 数値計算
- 論理演算
- 記号処理
- テンプレートマッチング
方向ベクトル
移動ベクトル
図3・6
数値計算 - - - 前進
Sj
Si
図3・7
“内外”
- Metzgerの法則
ゲシュタルト心理学における,複雑な線
図形の認識
滑らかな線分: 2つの線分が180度で
接すると連続して知覚されやすい.
取り囲み: 輪郭線で取り囲まれた部分
は,そうでない部分より認められやすい.
(a) 複合図形
(b) テンプレート
図3・7 記号処理----ゲシュタルト
手法に基く分節、認識
(a) 入力
(b) テンプレート
図3・8 テンプレートマッチング - - -“走る”姿勢

単文の生成
事象ごとに与えられている格フレー
ムに動詞と名詞を埋め込む.
実 験


要素的線画の認識
約150の手書き線図形の認識
図形系列の言語理解
前状態
後状態
1)人(4)が移る.
2)人(4)が通る(1).
3)人(4)が歩く.
4)人(4)が進む(1).
5)人(4)が家から出る(1)
図3・10
6)人(4)が車に向かう(1).
7) 人(4)が車に 行く(1).
8)人(4)車に来る(1).
9)人(4)が 車に寄る.
10)人(4)が車に近寄る.
11)人(4)が車に迫る.
前-後状態対の言語理解
t=t0
t=t3
t=t0
t=t1
t=t2
t=t4
人(4)が家の中にいる.
t=t5
t=t3
----------------
----------------
t=t1
t=t2
人(4)が家から出る(1)
t=t4
人(4)が車に乗る(1)
t=t5
----------------
車が走る(2)
車が木にぶつかる
----------------
鳥(1)が木から離れる(1)
人(3)が車から降りる(1)
----------------
図3・11 図形系列の言語理解
評 価
要素的線画の認識
約150の要素的線画の,88%を正しく
認識.95%まで改善可能.
雑音を含む,節点数が数十の線画認識
に有効
 意味内容
変位を対象としたが,心理的事象を除く
ほぼすべてのサブカテゴリに応用
可能(→[Badler75])


歴史的意義
動図形の理解を言語の側から体系的
に理論化する,世界に先駆ての取
り組みとなった.
主な研究発表
1976 岡田,田町:動図形の意味解釈とその
自然語記述---意味分析,電子情報通信学
会誌(D),Vol.J59-D,No.5,pp.331-338.
1979 N.Okada: SUPP---Understanding
Moving Picture Patterns Based on Liguistic
Knowledge,Proc. IJCAI,pp.690-693.
4.知識処理と情緒処理
知と情
“智に働けば角が立つ.情にさおさせ
ば流される.意地を通せば窮屈だ.
とかくに人の世は住みにくい.”
漱石@草枕
情緒の研究は,心理学や生物学では活
発. AIでは,なぜ遅れたか?
- 知識だけでも大きな課題で,情緒まで手
が回らない.
- いわゆる”非論理的”な対象で,コン
ピュータに馴染まない.
- 倫理的な領域に立ち入るのは,はばから
れる.
AIにおける初期の取り組み
自然言語理解が中心
J.G.Carbonell’80
個性に基づく物語理解
W.G.Lehnert’81
情緒に基づく物語要約
Pfeifer & Nicholas’85
“割り込み”に基づく情緒の機構解明
岡田’87
言語理解における情緒モデル
本研究のアプローチ
- 生起と反応
一般的性質とアルゴリズムの解明
- 情緒と知識の関係
役割分担の明確化
情緒概念の分析
Plutchikの多因子分析論
- 進化論の流れを汲む[Plutchik60]によ
ると,情緒には”基本情緒”とそれらの
“変形,合成情緒”とがある.
- 基本情緒
対極をなす8種類:
喜び/悲しみ,受容/嫌悪,驚き/期待,
怒り/恐れ
基本情緒の生起特徴の分析
- 児童レベルの形成概念を対象として,イ
ソップ物語などを素材に分析
- 主な特徴
生理的快/不快
心理的快/不快
目標実現---情報収集
計画
結果
対人関係---仲間意識
優劣
(喜び(
現状態は前状態よりも好都合(
生理的(内的な快; 外的な快);
心理的(
目標実現(
情報収集(思惑通り; 発見; 判明);
計画(立案);
実行結果(完遂; 獲得; 有効));
対人関係(
仲間意識(同意; 同感; 協力; 仲直り);
優劣関係(優越; 賞賛; 服従; 厚遇; 保護)));
その他))))
図4.1 喜びの階層的特徴
複雑な情緒
(悔しい,
(目標に向けてプランを立てる,
実現の可能性大,[期待]),
(プランに沿って実行する,
あと一息で失敗, [驚き], [悲しみ]),
(繰り返し実行する,
多大の努力による疲労, [悲しみ]),
(放棄を決断する,
できて当然のことができない,
[怒り], [驚き], [悲しみ]),
すぐに忘れられない)
図4.2 “悔しい”のフレーム表現
情緒の生起
生起のタイプ
- 反射的(reflective)
外界からの突然の刺激や体内の際立っ
た生理変化に基づいて無意識的に生
起. とっさの反応を引き起こす.
- 塾考的(deliberative)
意識的な認知過程を経て生起. 入力に
応じ推論過程を経て反応を引き起こす.
反射的処理
1) 情報の収集
外的/内的知覚器で刺激を受理
2) 生起条件とのパターンマッチ
粗い認識と短時間でのパターンマッチ
熟考的処理
1) 情報の収集
脈絡における“注視”に基づいて外界,
内界の情報を収集
2) 情報の解釈
快/不快,損/得などの価値評価に沿っ
た解釈
3) 生起条件とのパターンマッチ
多様で,浅いレベルの条件によるパ
ターンマッチ
情緒の強さ
図4.3 強さの変化
情緒の反応
一般的傾向
“快”をもたらす入力刺激に対して
は促進的,また“不快”をもたらす
それには抑制的な反応を示す.
反応のタイプ
- 自由型
- 制約型
自由型
入力に対し素直に情緒を生起させ,その
生起要因に促進的/回避的行動をとる.
時には,実行中のタスクを放棄するこ
ともある.
制約型
タスクに課せられた情緒状態に沿って振
舞い,時には自己の情緒を抑制する.
知識との関係
言語表現
知識は動詞,情緒は形容詞
客観と主観
知識は,知り得たこと(情報)の蓄積
情緒は,情報の主観的解釈,評価
情緒による評価
快なるものは高く,不快なるものは低い.
評価のパターン
人の性格や個性を形成
実 験
寓話の世界の主人公の模擬
- 行動過程における自由型
目標実現の過程で生起した情緒を音楽
に自動変換する(後に提示).
- 対話過程における制約型
相手を勧誘するタスクにおいて自己の
気持ちを抑制する.
悔しさ
記憶
喜び
悲しみ
怒り
内的な快 思惑通り
情緒
情緒
・・・
対人関係
目標実現
情報収集
計画
発見
・・・
・・・
驚き
心理的
生理的
・・・
完遂
獲得
・・・
・・・
実行結果
・・・
賞賛
・・・
現状態
行動ログ
行動予定
行動結果
批評
生理メモリ
エピソード
プラン生成
行動
発話文理解
認識
記憶
推考
表出
言語
図4.4 情緒生起サブシステム
模擬対話
ポン太(P)がコン吉(K)を勧誘
K1
P2
K3
P4
K5
P6
K7
やあ.
こんにちは.
どこへ?
川へ魚釣りに.
面白そうだね.
それで君は?
館の池に水を飲みに.のどがから
から.
(つづく)
P8
K9
P10
K11
P12
K13
P14
K15
館はあぶないよ.
どうして?
さっき通ったら人声が聞こえたよ.
ほんとう? どうしよう,困ったな.
僕と一緒に川へ行かない?
遠いよ.
でも水がつめたくて,おいしいよ.
じゃあ,行こう.
冷たくて,おいいしよ
dialogue model
persuade_to_abandon(E-Plan)
understand
(E-PLAN)
tentative_
acceptance
(R-PLAN)
persuade_to_abandon(E-Plan)
understand_drawback
(R-PLAN)
persuade_to_abandon(E-Plan)
utterance planning
intention recognition
accept(R-PLAN)
persuade_to_accept(R-PLAN)
deny_drawback(R-PLAN)
refuse_for_drawback(R-PLAN)
inform(E-PLAN)
inform_advantage(R-PLAN)
---
---
---
action planning
seek_advantage(R-PLAN)
emotion
---
seek_drawback(R-PLAN)
seek_drawback(E-PLAN)
---
language analysis
(E7) “I’m going to the pond
in the mansion to - - -.”
(E13) “Well, it’s far.”
language generation
message flow
top-down prediction
dialogue state tracking
dialogue state transition
(R14) “But the water there is
cold and tasty.”
(R12) “Why don’t you
come to the river with me?”
図4・5 談話解析と心理解析のインタラクション
評 価
概念分析
児童レベルの基本情緒の性質が明ら
かになった.
生起処理
“非論理的”とされた情緒の,生起アル
ゴリズムを明らかにした.
反応処理
行動と対話を例に取り,複雑な反応の
機構を明らかにした.
歴史的意義
AIにおいては,情緒も,知識同様に重要
な課題であることを啓蒙した.
主な研究発表
1987 岡田: 知識と情緒の表現,情報処
理九州シンポジウム講演集,pp.47-65.
1997 徳久,岡田:パターン理解的手法に基
づく知能エージェントの情緒生起,情報処
理学会論文誌,Vol.39, No.8,pp.2440-2451.
5.心の統合的モデル

心の全体像
- 心の振舞いは,奥が深くかつ幅が広い.
- あまりの深さと広さのため,全体像の
把握は,”不可能”に近い困難さを伴う
とされてきた.

統合的モデルへの要請
- 計算可能なモデルであること
コンピュータにより,模擬,実現できる.
- 心理学的諸機能が説明できること
知覚,認識,欲求,本能,情緒,推論,判断,
プランニング,創造,学習,記憶,忘却,表
情,行動など
- 生理学的諸機能と対応付け可能なこと
神経細胞の機構や振舞いなど
従来の提案
- M.Minsky’85 The Society of Mind
マルチエージェントシステムとして
の心

- 岡田’87 心のモデル
心の領域と階層に基くモデル
-
P.N.Johnson-Laird ’88 An Intoroduction to Cognitive Science
認知科学的知見の体系化

本研究のアプローチ
- 計算技法
心の全体をカバーできる自律分散方
式を採用
- 機能のカテゴリ
諸機能を整理し,いくつかのカテゴリ
とそれらの間の関係を明確化する.
- 知識のレベル
生理レベルの信号から概念レベルの
記号までを階層的に対応付ける.
心のモデル

計算技法
- Minsky流のマルチエージェントシステム
- ”μエージェント“と呼ばれる,自律分散
マイクロプロセッサを導入し,それらの
集合体として各種機能を実装
μagent(
name(名称),
domain(所属領域),
input(活性化条件を示す入力メッセージ),
execution(実行プログラム),
memory(記憶データ),
description(振舞いと結果の記述),
output(出力メッセージ))
図5.1 μエージェントのフレーム表現

活性化連鎖
μエージェント群の“活性化連鎖”に
よって,心の諸機能が実現される.
認識
推論
行動
図5.2 活性化連鎖

機能のカテゴリ
種々の機能は,基本的に次の6つのカテ
ゴリ(領域)で把握できると見做す.
- 認識: 内/外界からの入力信号を受理し,
その内容を事実として把握
- 推考: 入力に基く推論,設計,創造など,
狭義の“思考”活動
- 情緒: 欲求を含む内外の入力を主観
的に評価し,出力に向けて示唆
- 表出: 推考の結果に基き,入力への
反応としての表情,音声,動作など
- 記憶: 心理活動に必要なデータを提
供すると共に,データを受理し,蓄積
- 言語: 心理活動の記述

身体的機能
以下の2つを加える.
- 知覚器:外界の入力を受理する5感と
内界の入力(乾き,飢えあるいは時計
など)を受理する器官
- 効果器:顔の表情,音声の発生,手足
の動作,などを制御する器官
言語
情緒
記憶
推考
認識
表出
心(脳 )
知覚器
(渇き,飢え,…)
(情景,言葉,…)
効果器
身体
外 界
(行動,言葉,…)
図5.3 機能のカテゴリ---心の領域
言語
情緒
記憶
推考
認識
表出
心(脳 )
事象認識部
知覚器
構造理解部
(渇き,飢え,…)
(情景,言葉,…)
属性認識部
効果器
内部状態認識部
身体
物認識部
外 界
(行動,言葉,…)
図5.4 認識の部分領域
情緒
言語
欲求生起部
情緒生起部
記憶
推考
認識
表出
心(脳 )
知覚器
(渇き,飢え,…)
(情景,言葉,…)
効果器
身体
外 界
(行動,言葉,…)
図5.5 情緒の部分領域
行動推論
実現可能性
管理部
プランニング部
対話推論
プラン展開制御器
割り込み制御器
存在性、ほか
危険性
言語
情緒
記憶
プラン生成器
推論部
模擬器
評価器
推考
認識
知覚器
(渇き,飢え,…)
(情景,言葉,…)
・・・・・・・・・・・・・・・・
認識・人間の存在性・交差点1
認識・滑る可能性・池1
表出
認識・人間の存在性・館1前1
心(脳 )
認識・転ぶ可能性・池1
認識・人間の存在性・館1の池1
認識・落ちる可能性・池1
認識・人間の存在性・池1
認識・溺れる可能性・池1
効果器
認識・人間の存在性・猟師小屋1前1
認識・風邪をひく可能性・池1
認識・人間の存在性・館1のぶどう棚1
身体
認識・凍死する可能性・池1
認識・人間の存在性・橋1の東1
認識・滑る可能性・館1の池1
・・・・・・・・・・・・・・・・
外 界
・・・・・・・・・・・・・・・・
(行動,言葉,…)
・・・・・・・・・・・・・・・・
図5.6 推考の部分領域
言語
情緒
記憶
表情部
認識
動作部
推考
表出
心(脳 )
移動部
知覚器
(渇き,飢え,…)
(情景,言葉,…)
効果器
身体
外 界
(行動,言葉,…)
図5.7 表出の部分領域
言語
エピソード部
情緒
記憶
自然界モデル部
人間界モデル部
推考
認識
プランの知識
行動プラン
対話プラン
表出
心(脳 )
情緒生起の知識
心的状態推論の知識
情緒,上位特徴
心的状態推論規則
知覚器
(渇き,飢え,…)
効果器
生理的
(情景,言葉,…)
外 界
悲しみ
喜び
身体
悔しさ
心理的
・・・
怒り
驚き
・・・
対人関係
目標実現
(行動,言葉,…)
情報収集
計画
図5.8 記憶の部分領域
実行結果
・・・
・・・
・・・
言語
情緒
記憶
語彙部
推考
解析部
認識
文法規則部
生成部
表出
心(脳 )
談話解析器
知覚器
効談話生成器
果器
形態素・構文解析器
意味解析器 身 体
(渇き,飢え,…)
(情景,言葉,…)
外 界
形態素・構文生成器
意味生成器
(行動,言葉,…)
図5.9 言語の部分領域

知識のレベル
知識の抽象化過程,換言すると概念の
形成過程に沿ったレベル化
- レベル1 生データ
知覚器で受理したあるいは効果器を
動かす,生のアナログ信号
生理機構とのインタフェース
- レベル2 知覚的/運動的特徴
生データの形状を留める,デジタル
的特徴
- レベル3 概念的特徴
知覚的特徴を表現する記号
- レベル4 要素概念
概念的特徴を束ねて構成される概
念.多くは単語表現される.
- レベル5 概念系
要素概念が合成されたフレームや
ネットワークなど.あるものは単
語表現される.
行く
Agent
連結概念
Origin
内部の
あるもの
動くもの
要素概念
is_a
is_a
人間
車
買い物をする
ものを得る
現金/カード
店
....
Ni
Vi
Ai
家
行く
高い
構成する
概念的特徴
屋根がある、
壁がある、
部屋がある
....
中から外への
移動,
主体はもの,
....
長さの差,
主体は垂直方向,
....
関連づける
, ,…
知覚的特徴
抽出する
生データ
,
…
,
(内界)
視覚
(外界)
,
(物質)
…
,
(事)
(属性)
図5.10 知識のレベル---心の階層
心の振る舞い

“イソップワールド“プロジェクト
-
イソップ物語の環境やそこに登場する
主人公を素材
-
児童レベルの心理的ならびに物理的
活動のシミュレーション

ものがたり
とても暑いある日のこと,きつねがあちこち歩き回っていまし
た.---. 庭の隅に,ぶどうでおおわれた高い棚がありました.
---“このぶどうをいくつか食べてやろう.” --- それできつねは,ぶ
どうめがけてとびつきました.---何度もためしたにもかかわ
らず,彼の足は一番低い房にもとどかなかったのです.--自分の失敗を認めるかわりに,きつねは甘い紫色のぶどう
にほえかかりました.“やいぶどう,お前は,きっとすっぱ
いに違いないから,食べてやらないぞ.”

推考
(p水を探して飲む,
(タイプ1,(もし回りに水があれば,それをのむ)),
(タイプ2,
((もし住処にいるなら,水がめの水を飲む),
(もし野原にいるなら,
((住処に帰って,水がめの水を飲む),
(橋の下に行って,小川の水を飲む)),
(もし山にいるなら,清水に行って,それを飲む))),
(タイプ3, (検索(容器,水)),検索(場所,水))))
図5・11 プランオペレータ

活性化連鎖---領域の内外
言語領域
のどを潤
したい
情緒領域
推考領域
管理部
目標
「のどを潤
す」
プランニング部
プラン
「果物を食べ
プラン
プラン展開制御器
る」
「水を飲む」
割り込み制御器
記憶領域
プラン知識
自然界推論
心的状態推論
プラン生成器
渇き
認識領域
模擬器
表出領域
評価器
推論部
池に水があ
るだろう
知覚器
池に人間は
いないだろう
すみかの水
瓶に水があ
る
図5・12 処理の流れ
効果器

活性化連鎖---領域の内外
言語領域
情緒領域
推考領域
管理部
プラン
「館の池に水を飲
割り込み制御器
みに行く」
プラン展開制御器
プランニング部
記憶領域
プラン知識
自然界推論
館の池に移動
心的状態推論
プラン生成器
認識領域
模擬器
評価器
表出領域
推論部
知覚器
効果器
図5・12 処理の流れ

活性化連鎖---レベルの間
事象_人が車から出る
レベル5
レベル4
レベル3
レベル2
レベル1
概念_人
概念_人
概念_車
概念_車
----
----
c_特徴_頭
c_特徴_頭
c_特徴_胴
c_特徴_胴
----
----
p_特徴_内部″
p_特徴_外部
p_特徴_頭
p_特徴_頭
p_特徴_胴
p_特徴_胴
----
----
(前状態イメージ)
図5・13
(後状態イメージ)
格枠_出る
c_移動
p_移動
(前後状態対)
前-後状態対の認識

自律分散と中央集権
Q. 自律分散方式に,中央集権の管
理機構は不要か?
A. 割り込みやプラン展開などには,
制御μエージェントが必要.
言語領域
情緒領域
推考領域
管理部
記憶領域
割り込み制御器
プラン展開制御器
プラン知識
自然界推論
心的状態推論
処理の一時中
プランニング部
断
移動を中断
プラン生成器
認識領域
模擬器
表出領域
評価器
推論部
ズドンッ!
しゃがんで
草むらに隠れる
知覚器
図5・14 割り込みの例
言語領域
情緒領域
危険なもの
は
認識されない
推考領域
管理部
割り込みから
復帰
記憶領域
割り込み制御器
プラン制御器
中断したプラン
を再評価
プランニング部
プラン知識
自然界推論
心的状態推論
プラン生成器
認識領域
模擬器
表出領域
評価器
推論部
しゃがんで
草むらに隠れる
知覚器
図5・14 割り込みの例
言語の役割

心の中のできごとを“記述”する.
- 意味生成過程
非言語的なμエージェントの活動を言
語の深層格フレームで表現
- 談話生成過程
意味生成された一連の深層格フレー
ムを構造化ならびに要約する.
記述過程
- 意味生成---μエージェントの活性化

欲求「潤い」を生起する
目標「のどを潤す」を
生成する
プラン「水を飲む」を
展開する
情緒
認識
言語
推考
知覚器
渇きが高い
記憶
表出
効果器
プラン「館の池の水
を飲む」を生成する
プラン「館の池の水
を飲む」を実行する
池に行く
図5・15 活性化連鎖
言語領域
解析部
生成部
談話生成器
短期記憶
意味生成器
μagent(
name(μエージェント名),
domain(領域名),
input(入力部),
execution(実行部),
記憶領域
情緒領域
memory(記憶部
認識領域
推考領域
表出領域
図5・16 意味生成
description(処理の内容),
output(出力部),).
- 談話生成---局所的構造化
欲求:渇き
目標:[潤す,[[agt,コン吉],[obj,のど]]]
プラン: [潤す,[[agt,コン吉],[obj,のど]]]
プラン: [飲む,[[agt,コン吉],[obj,水]]]
[生起する,[[agt,コン吉],[obj,[欲求,渇
き]]]]
[生成する,[[agt,コン吉],[obj,[目
標,
[潤す,[[agt,コン吉],[obj,の
[展開する,[[agt,コン吉],[obj,[プラ
ど]]]]]]]
ン,
情緒
言語
記憶
[飲む,[[agt,コン吉],[obj,水]]]]]]]
[生成する,[[agt,コン吉],[obj,[プラン,
[飲む,[[agt,コン吉],[obj,水],[loc,館の
池]]]]]]]
認識
推考
表出
[実行する,[[agt,コン吉],[obj, [プラン,
[飲む,[[agt,コン吉],[obj,水],[loc,館の
池]]]]]]]
効果器
知覚器
[行く,[[agt,コン吉],[dst,池]]]
[高い,[[sbj,渇き]]]
プラン: [飲む,[[agt,コン吉],[obj,水],[loc,館の池]]]
プラン: [移動する,[[agt,コン吉]]]
プラン: [行く,[[agt,コン吉],[dst,池]]]
行動: [行く,[[agt,コン吉],[dst,池]]](失
敗)
プラン: [飲む,[[agt,コン吉],[obj,水],[loc,住処]]]]
プラン: [飲む,[[agt,コン吉],[obj,水],[loc,河原]]]]
プラン: [飲む,[[agt,コン吉],[obj,水],[loc,人家]]]]
プラン: [食べる,[[agt,コン吉],[obj,水分の多い果物]]]
図5・17 局所的構造化
-
大局的構造化
シナリオの重要部分として,以下に注目
( i ) 初期設定
( ii ) 欲求・情緒と最終目標
( iii) 具体的企画と実行結果
( iv) 企画を変更させる欲求、情緒、認識
あるいは行動
( v ) 最終目標実現のための最終行為と
結果
要約レベル
レベル1: (ii)および(v)
レベル2:(i)~(v)
レベル3:(i)~(v)にすべてのプランの
展開とその評価結果を追加
レベル4 :ネットワーク全体
レベル1
レベル2
レベル3
欲求:渇き
目標:のどを潤す
レベル4
欲求「渇き」を生起する
プラン:のどを潤す
プラン「水を飲む」を
展開する
認識
言語
推考
知覚器
渇きが高い
記憶
表出
効果器
プラン:水を飲む
プラン:館の池の水を飲む
目標「のどを潤す」を
生成する
情緒
欲求:渇き
最終目標:のどを潤す
最終行為:ぶどうにジャンプ
欲求:渇き
最終目標:のどを潤す 結果:失敗
具体案:館の池の水を飲む
結果:失敗
企画変更:ぶどうを取る
最終行為:ぶどうにジャンプ
結果:失敗
プラン「館の池の水
を飲む」を生成する
プラン「館の池の水
を飲む」を実行する
プラン:移動
プラン:池に行く
行動:池まで行く(失敗)
プラン:すみかの水瓶の水を飲む
プラン:河原の水を飲む
プラン:館の小屋の水瓶の水を飲む
プラン:水分の多い食べ物を食べる
池に行く
図5・18 生成結果
実 験

推考領域
推論部1
インタプリタ
システム構成
PC4台,インタプリタ15個
推考領域
推論部2
推考領域
推論部3
推考領域
推論部4
PC1 : Turbo Linux 8
(CPU:Intel Pentium4 2.53GHz, メモリ:512MB)
情緒領域
言語・
記憶領域
推考領域
管理部
推考領域
プランニング部
PC2 : Turbo Linux 8
(CPU:AMD AthlonXP 2100+ 1.73GHz, メモリ:512MB)
LAN
認識・
表出領域
推考領域
推論部5
推考領域
推論部6
推考領域
推論部7
PC3 : RedHat Linux 5.2J
(CPU:Intel Pentium4 2.26GHz, メモリ:512MB)
図5.19
推考領域
推論部8
推考領域
推論部9
推考領域
推論部10
メッセージ・
サーバー
PC4 : RedHat Linux 5.2J
(CPU:Intel PentiumII 700MHz, メモリ:512MB)
システム構成図
図5・20
スナップショット1
図5・21
スナップショット2
図5・22
スナップショット3
図5・23 アニメーション

出力----きつねの独り言
今日はとても暑い。今、交差点から300m手前のけもの道
にいる。のどが渇いている。危ないことをしないで急いで
渇きをいやしたい。
水のある所を探そうかな。池を覚えている。どれか一つを
探そう。B池を思い出した。イソップワールドにある。猟
師の小屋が側にあった。彼は危険だ。B池は危ない。そ
こへ行くのはやめよう。
水分の多い食べ物を食べようかな。果物を探して食べよう。
イチゴを食べよう。それは春に取れる。今夏だ。イチゴを
食べるには良くない季節だ。それを食べるのはよそう。
-------------
評 価




μエージェント数が1万以内なら,本
自律分散方式で実装可能である.
認知科学で議論される諸機能は,6
つのカテゴリで一応説明できる.
生データレベルに,生理面とのインタ
フェースを設けた.
心の統合理論において,実証を伴う
初めての研究である.
表5.1 Minsky および Johnson-Laird との比較
Minsky ’85
岡田 ’87
JohnsonLaird ’88
アプローチ ボトムアップ
トップダウン
トップダウン
機能(領域) 多
6
6
レベル
多
5
多
計算技法
自律分散
自律分散
チューリング
マシン
実験的
検証
なし
あり
なし
項目
主な研究発表
1990 N.Okada and T.Endo: Story
Generation Based on Dynamics of the
Mind, Computational Intelligence, Vol.8,
No.1, pp.123-160.
1996 N.Okada: Integrating Vision, Motion,
and Language through the Mind,
Artificial Intelligence, Vol.10, pp.209-234.
6.今後の課題と応用
課題
-
知覚器および認識機能の拡充
構文解析機能などの自律分散化
表情や動作機能の拡充
自律移動ロボットへの実装
応用
-
児童の遊び友達
教育支援エージェント
フレンドリな秘書
障害者,老齢者のパートナ
- 認知科学および人工知能の統合
化研究推進のためのプラット
フォーム
6.むすび
物,属性,事象,空間・時間などの
概念を体系的に分析,分類し,データ
ベース化した.
画像系列の変化を理解し,自然言
語で記述するシステムを構築した.
基本情緒を分析,分類し,その結果
を行動と対話のタスクに導入した.
6種類の機能と5つのレベルをもつ心
の統合モデルを提案し,約1,200の
μエージェント群で実装した.
以上により,人工知能ならびに認知科
学の基盤となる理論が構築できた.