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女性ファッション誌ビジネスの現状と課題
~雑誌売上高と付録の関係を中心に~
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木津円花
まえがき
最近ファッション雑誌に付録が付いているのを書店でよく見か
ける。雑誌の「おまけ」ともいえる付録だが、人気ブランドの
バッグや化粧ポーチなど、とても付録とは思えないほど豪華な
ものが目につく。付録目当てに雑誌を購入する人も少なくは
ないようだ。そのため各社の付録競争が激しくなっているよう
に思える。
 近年、広告低迷など雑誌不況により多くの雑誌が休刊に追い
込まれている。そんな中でも、2008年から部数を伸ばしてい
るのが「sweet(スウィート)」「InRed(インレッド)」など宝島社
が発行する女性ファッション誌だ。この売上好調の鍵を握るの
が先ほど述べた「豪華な付録」である。この付録と売上の関係
性について調べ、考察していく。

女性ファッション誌の歴史①
1970年代 影響力の強い女性誌の創刊
「anan」「nonno」「JJ」が創刊
アンノン族として大旋風を巻き起こし、
ガーリッシュ系が誕生。
キーワードは「モテ」るファッション。
1980年代 バブル
「CUTiE 」「CanCam」「ViVi」創刊
竹の子族が登場し、一世を風靡した。とにかく
奇抜で独特のストリートファッション→お洒落っ子
系の誕生(CUTiE)。 「CanCam」「ViVi」は
お姉系という系統。
女性ファッション誌の歴史②
1990年代 バブル崩壊
ギャル誌 有名3誌「egg」、「Cawaii!!」、「Popteen」
バブル崩壊でボディコンが衰退し、コギャルブーム
が起こる。肌が小麦色であったり、ミニスカ等の
肌を露出したファッションが流行。
2000年代 雑誌不況と多様化
バブル崩壊後は景気の悪化に伴い、雑誌不況に
陥り、休刊になったものもある。読者目線の新しい
スタイルが台頭する。「小悪魔アゲハ」「BLENDA」
など。また、付録つきの雑誌が登場し、各社の競争
が激しくなった。 宝島社発行「sweet」などが有名。
女性ファッション誌出版各社の付録競争
宝島社
集英社
小学館
付録と売上の関係性
男女別で見ると、
男性56.1%に対し、
女性は67.3%と3人に2人が
付録目当てで雑誌を
購入したことがあるようだ。
年代別で見ると、
30代では7割(72.1%)を超
えているものの、
20代と40代は5割台(20台
55.1%、40台57.5%)と開き
が出た。
どんな付録が目当てで購入したか?
1.1%
6.4%
9.5%
36.9%
CD-ROM
バッグ・ポーチ
筆記用具
アクセサリー
靴下・下着
17%
各出版社売上推移
50
45
40
35
30
宝島社
25
集英社
20
小学館
15
10
5
0
2007下期
2008上期
2008下期
2009上期
宝島社各雑誌の売上推移
(ダイヤモンド社調べ)
sweetの事例
1993年3月創刊
「一生“女の子”宣言!」をキャッチコピー
可愛いもの至上主義を提案
「今、何歳であろうが、女の子であり続けたい」と願う女性をターゲット
*ターゲットを絞らない
男性からモテるためのファッション
あくまで着る本人が満足するガーリッシュなスタイル(自分流)
2004年から戦略的に付録をつけ始める
2010 年1 月には105 万部を刊行し、メディアでも話題
日本一のファッション誌に!!
売上好調の理由
①マーケティング会議
「一番誌戦略」
雑誌作りから流通、販売、プロモーションなど雑誌が読者の手
に届くまでのすべてのプロセスについて話し合う会議のこと。
自社商品の価値向上と他誌との違いを明らかにし、雑誌を「商
品」としてしっかり売ろうという取り組み。宝島社の各雑誌で月
に1度必ず行われている。
テーマ
どうすれば1号1号の雑誌を商品として確立させて、
もっと多くの読者を獲得できるか?
議題
「定価」「部数」「どういった付録を付けるのがベストか」「表紙の作
り方」などで、各誌ともカテゴリーの中での一番誌を目指した。
例えば…
表紙の誌名に重なる高い位置に付録の
写真を出すことで付録の内容が何なの
かが一目で分かるように変更。
「固定された定価がない」こと。例えば、前号で780円
だった雑誌が、今回は650円、次号は730円と変動して
いく。ほぼ130円のレンジで毎号変動する。これは特集
や付録内容によっては値上げするため。
1号1号の雑誌を商品として確立させる
売上好調の理由
②本物志向の付録
“付録も商品のひとつ”
毎号につける付録が必ず各雑誌の人気上位ブランドとコラ
ボした製品 (CherやJILLSTUARTなど)
編集部が独自で企画し、サンプルを作りブランドを展開して
いるメーカーとデザインなどのすり合わせを行う。
読者層の好みを理解
ショップで買えない人気ブランドのオリジナルアイテムが
1カ月限定で手に入る
実用的なアイテムが多い(トートやポーチなど)
消費者の意識
Q) 多くの人が活用している付録を使う事について
 好みが同じであると思う
 付録だから同じものを持っていても仕方ない、気にしない
一方で不満の声も多い…
 人とかぶりすぎて嫌
 付録だとすぐ分かって恥ずかしい
Q)今後付録つき雑誌は
増えてほしい?
yesの意見が多い!!
Q)どんな付録がほしいか?
 キッチングッズや化粧品のサンプル等
ファッション誌とは少し違うジャンルの付録
ブランド価値
ブランド価値は劣化しない?
付録の作りがしっかりしていて本格的
ブランドイメージを損なわない
ブランドのPRツールとして活用
企画~チェック・完成
まで半年かかる場合
もある!!
多くの人が同じブランドアイテムを持つ
ブランド認知させる(流行っている?)
ブランドに興味をもたせる
雑誌を購入しない理由
今後の戦略
お金を払う価値のある内容の雑誌を作る
価値ある雑誌??
若い世代に支持され
近年台頭してきた雑誌を例に… ‘08年から一気にブレイク
「SEDA」「BLENDA」「小悪魔ageha」などギャル系
age嬢と呼ばれる
モデルが紙面を飾る
自分流
つまり…
本当に店や街で流行っているものを特集
読者の視点を重視した内容
読者モデルを活用
「自分流」を意識したスタイル
キッチングッズや化粧品サンプル等の新しい付録
あとがき

付録が雑誌の新たな購買動機に結びついている

新しいジャンルの付録の必要性あり(ネットとの差別化も)

付録ビジネスは、効率の良い流通組織である、といった見方
もできる

誌面の品質向上の必要性(いかに買いたいと思わせるか)

今後、大きな鍵となるのは、「強い部分をいかに活用しながら
新たな市場を生み出していけるか」