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矮新星の早期スーパーハンプを用いた
降着円盤の再構成
植村誠(広島大学)、加藤太一、前原裕之、大島誠之(京都大学)
早期スーパーハンプとは?
様々な天体の早期スーパーハンプ
(Kato , et al. 2002)。
Edge-onの天体ほど振幅が大きい?
• WZ Sge型矮新星に特有の短時間周期変動
– 連星軌道周期に(ほぼ)等しい
– ダブルピークの光度曲線
• 降着円盤の縦方向の構造を見ている?
– 円盤の幾何構造を反映
矮新星 V455 And の早期スーパーハンプ
(Matsui, et al. 2009)
• TRISPEC/かなたと岡山MITSuMEによる、g’,V,Rc,Ic,J,Ksの6バン
ド同時測光観測
• ハンプ成分が赤い
→円盤外縁(=低温部)が膨張して変動の光源に
明るくなる
赤くなる
多バンド同時観測の成果!
光度曲線から円盤構造を再構成
• 時系列情報→円盤の方位角方向
• 色情報→円盤の動径方向
外側の低温部が
盛り上がっていたら、
明るさ
赤い光は小振幅
青い光は大振幅
時間
明るさ
内側の高温部が
盛り上がっていたら、
赤い光は大振幅
青い光は小振幅
時間
ベイズモデルの詳細
モデル
円盤高さh(i,j)の事後分布をベイズ推定
事後分布
入力
尤度関数
事前分布
*尤度関数 (観測とモデルの光度曲線で定義)
多バンドの光度曲線
明るさ
*事前分布
(局所的により滑らかに)
(h=0.1r の円盤をデフォルトに)
時間
*実際の推定はマルコフ連鎖モンテカルロ(MCMC)を使う。
*円盤の温度分布は標準円盤モデルを想定して、
出力
円盤高さのマップ
人工データを使ったデモンストレーション
• 期待通りの結果
– 外側の構造は外側に、内側の構造は内側に、それぞれ再構成。
– 事前分布の効果で、仮定した構造よりも滑らかな構造に。
伴星
伴星
伴星
伴星
矮新星 V455 Andのデータから再構成
極大5日目
• 極大5日後の5バンド
(g,V,R,I,J)データ
円盤高さ
伴星
• 主・副の極大をつくる
構造+内側への「腕」
構造
• 円盤外縁の最大高さ
は、h/r = 0.20。
g
V
Rc
円盤高さ/半径
Ic
伴星
J
矮新星 V455 Andのデータからの再構成
極大3日目
円盤高さ
•
極大から3日目の2バンド(V,J)データ
– データ数が少ないのでより「なまる」。
伴星
•
5日目と基本構造は同じ
•
光度曲線の振幅=円盤の高さ
– 3日目の方が5日目よりも25%高い(円盤外縁)。
– 温度の効果は弱い
V
円盤高さ/半径
伴星
J
理論モデルとの比較
円盤高さ
• 潮汐効果? 2:1レゾナンス?
潮汐効果による円盤高さ
の歪みの理論計算(Ogilvie 2002)
SPHによる2:1 レゾナンスの
シミュレーション (Kunze &
Speith 2005)
円盤高さ/半径
光度曲線から再構成された円盤は「潮汐効果」による
歪みと似ているが、左上の構造は説明できない。
まとめ
• 早期スーパーハンプの多バンド光度曲線から、降着円盤
の高さマップを推定するベイズモデルを開発した。
• 再構成された円盤は主・副の極大をつくる最外縁の構造
+内側への「腕」構造をもつ。
• 潮汐効果による歪みに似ているが、副極小を作るための
盛り上がり部分を説明できない。
• 今後の展開
– 他の天体でも同様の結果になるか?
– 円盤構造の時間変化
観測データの詳細
V455 And superoutburstの光度曲線
• V455 And 2007年9月の
superoutburst
– 観測論文は Matsui, et al., 2009,
PASJ, 61, 1081
– 観測は広島大学「かなた」望遠
鏡(V,J,Ks)と岡山MITSuME望遠鏡
(g,Rc,Ic)
早期スーパーハンプの光度&色変化
スーパーハンプの光度&色変化
パラメータ依存性のチェック
様々なパラメータでの結果
パラメータ 小
•
仮定しているパラメータ
–
–
–
–
•
軌道傾斜角:静穏時に浅い食が観測
→ 75度 (Araujo-Betancor, et al. 2005)
連星質量比:superhump と軌道周期の経
験法則から、q=M1/M2=12.0 (Kato, et al.
2009)
円盤温度:観測された色を再現するように
内縁(or外縁)の温度を設定。Tin=82000K
(5日目)
円盤半径:2:1 resonance半径、r=0.6a
(aは連星間距離)
i
q
Tin
結果のパラメータ依存性
–
軌道傾斜角の不定性が最も大きな影響を
及ぼすが、それ以外の上記パラメータに
対しては安定
r/a
デフォルト
大
Irradiationの効果
•
円盤の最外縁で膨らんでいるので、
irradiationの効果は大きいかもしれない。
–
•
ただし、矮新星のenergetics一般には
irradiation効果はminorと考えられている。
(X線連星ではmajor)
円盤高さ
Irradiation効果の検証
–
–
仮定:アルベド0.5、Twd=Tin=60000K(観測
された色に合わせるため)、円盤上の各
セルに対して、白色矮星と他のセルから
のirradiationを計算する。
Iterationで解く
•
•
•
•
弱いIrradiation
あるheight mapでirradiated diskの温度分
布を決める。
その温度分布を仮定して次のheight map
を推定。
5-6回で収束。10回目の結果を採用。
結論:irradiation効果は、「腕」構造を弱
める。ただし、腕構造を無くすほどの
irradiationでは色が青くなりすぎて、観測
と不一致。
–
ただし、仮定するアルべド、Twdに大きく依
存。
円盤高さ/半径
強いIrradiation