報告書 Report - 北海道大学サステイナビリティ学教育研究センター

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少子、高齢化社会に向けての公
共サービスの将来像
サステナビリティ学教育研究センター
教授 田中 教幸
課題先進国と言われている日本は少子高齢化社会への適応を世界に先駆けて
迫られており、経済・社会・生き方など、多くの分野でこれまでとは大きく異なる
大転換が必要とされている。 この状況の中で、水道事業を含む公共の
生活インフラの将来のあり方をサステナビリティ学の視点から皆様と考えてみたい。
苔生した人気のない場所にある水飲み場です。 この水を飲みますか?
北海道大学サステナビリティ学(持続性学)の沿
革
•
2005年 持続的な開発国際連携本部
•
2006年 サステナブルガバナンスプロジェクト
•
2007年 サステナビリティウイーク開始
•
2008年サステイナビリティ学教育研究センター
•
2010年サステナビリティキャンパス推進本部
SSCサステナビ
リティ学コンソー
シアム
自
治
体
大
学
企
業
北大総長
センター
長
サステイナビリテ
イ学教育研究セン
ター
団
体
環境リーダー
育成拠点
アジア・アフリカ
国際共同プログラム
(StraSS アライアンス)
全学共通科目
サステナビリテイ学
自
治
体
運営委員会
学
内
委
員
学
外
委
員
熱帯泥炭保全
炭素クレジット
地球規模課題解決
研究
国際技術協力(インドネシア・
教育
アフリカ)
富良野市
下川町/伊達市等
講演要旨
少子高齢化に加えて、地球温暖化対策、省エネルギー、省資源、製造拠点の海外移
転等の一連の流れは日本のあらゆる分野で物質資源利用の大幅な減少の方向を指し
ており、水道水消費においても、もはや例外ではないことは間違いないだろうと考えら
れます。
最近の調査で明らかになった水道水使用量と水道事業費の将来予測は、将来、多量
の余剰水道水(水あまり)を抱える事態となるにも関わらず、水道システムの維持と設
備更新のために大幅に水道使用料を値上げしなければならないという大変矛盾する事
態となることを示唆しています。 これはこれまでの水供給システムと水道事業の形態
を現状維持することは大変困難であることを示していると思われ、大きな変革が不可欠
であると思われます。 他方、特に地方の人口減少・高齢化が進む中でこれまでの町
の構造や公共サービスの在り方も大変革を必要としています。従って、水道事業もこの
大変革とは無縁ではいられない事態となっていると考えるのは当然のことと思われま
す。
この講演ではサステナビリティ学(持続性学)的な見地からどのような変革の道があり
うるのかを皆様と一緒に考えていたいと考えています。特に以下の3つの点に注目して
議論を深めたいと思います。
1)余剰供給水の用途、販路先の確保
2)大都市のコンパクト化と中小市町村の水供給システムの多様化への対応
3)超分散型総合水利用システムの開発と普及(海外展開も)
この講演の内容
•
•
•
•
日本の少子・高齢化社会(現状と将来予測)
エネルギー、環境と公共サービス
中央集中から分散化
日本の水道事業の成長と発展の道は?
日本の人口動態
節水機器の普及と人口減少
水の要らない風呂
超節水型の風呂が出来ており、
温風と泡で体を温めながら洗浄する。
体に水圧がかからないので、高齢者
用に注目されている。
「自然に学ぶ粋なテクノロジー なぜカタツムリは汚れないのか」
石田秀輝 著/DOJIN SENSHO、p. 33
節水トイレ
某有名メーカーの最新節水トイレ
5リットル以下で洗浄可能 (従来型
は15~20リットルが必要だった。)
水の消費量
エネルギー、環境と公共サービス
限られた化石エネルギー
温暖化防止
低炭
素化
1)住環境
2)交通
3)運輸
4)インフラ
5)上下水道
6)除雪
予測される日本の水問題
環境変化
水資源
日本
節水機
器の普
及
事業収
入減少
需要減
人口減
少子・高
齢化
水事業
水需要
負の連鎖
ループ
負の連鎖
ループ
負担金
増
高度処
理水
職員高齢化
(大量退職
水源開発
制度破綻
余剰水
更新困難・延
命化
負の連鎖
ループ
水源開発
制度破綻
人材能力
の確保
老朽施設更新
水道事業体
経営悪化
料金値
上
地下水
運営
能力
低下
サービス低下
の可能性
国内機器メー
カーの市場縮小
負の連鎖
ループ
自治体
財政悪化
機器メ―
カーの経
営悪化
国家財
政悪化
水源汚染
水不足
世界
人口増
経済成
長
供給不足
事業体の能力
不足
野村総研レポート「2040年の日本の水問題」より
需要増
大規模水
源開発
上下水水ビ
ジネス拡大
汚水・排水未
処理
国・ファンドに
よる水開発
では問題の解決策はあるのか?
• 現状のサービス維持をすることをあきらめる。
(水道法の改訂が必要ではある。)
– 水質と供給量
1)末端の出口で需要側が水質の責任を持つシステ
ム (指定民間業者が質保証と機器の提供)
2)上水道の供給量の制限と地下水、雨水、下水処理
水の非飲用水利用
– 供給範囲
1)都市のコンパクト化によるサービスエリアの縮小
2)自立分散化(低人口密度地域)
– 新たなマーケットの開拓
1)新用途(都市農業:植物工場、農業ビル)
2)海外マーケット(水と水利用システムを売る。)
農業ビル(ドラゴンフライ)
ベルギー出身のデザイナー・ヴィンセント氏が設計
植物工場
レストランン併設型
大規模型
屋上・外壁面緑化
パリ・シャルルドゴール空港ビル
内壁面緑化
パリ・シャルルドゴール空港ビル
予測される世界と日本の水問題
環境変化
水資源
日本
節水機
器の普
及
事業収
入減少
需要減
人口減
少子・高
齢化
水事業
水需要
負の連鎖
ループ
負の連鎖
ループ
負担金
増
高度処
理水
世界
国内機器メー
カーの市場縮小
更新困難・延
命化
サービス低下
の可能性
負の連鎖
ループ
自治体
財政悪化
機器メ―
カーの経
営悪化
国家財
政悪化
供給不足
人口増
経済成
長
人材能力
の確保
老朽施設更新
負の連鎖
ループ
水源開発
制度破綻
余剰水
水不足
職員高齢化
(大量退職
水道事業体
経営悪化
料金値
上
地下水
運営
能力
低下
水源汚染
事業体の能力
不足
需要増
野村総研レポート「2040年の日本の水問題より
大規模水
源開発
上下水水ビ
ジネス拡大
汚水・排水未
処理
国・ファンドに
よる水開発
世界の水事情
世界の途上国での水開発は急務
現在でも8億人が安全な水を確保できない。 安全な飲料水を確保できない
人口が2025年には全人口の2/3に達するという予測もある。
予測される世界と日本の水問題
ニーズのマッチング
環境変化
水資源
日本
節水機
器の普
及
事業収
入減少
需要減
人口減
少子・高
齢化
水事業
水需要
負の連鎖
ループ
負の連鎖
ループ
負担金
増
高度処
理水
世界
国内機器メー
カーの市場縮小
更新困難・延
命化
サービス低下
の可能性
負の連鎖
ループ
自治体
財政悪化
機器メ―
カーの経
営悪化
国家財
政悪化
供給不足
人口増
経済成
長
人材能力
の確保
老朽施設更新
負の連鎖
ループ
水源開発
制度破綻
余剰水
水不足
職員高齢化
(大量退職)
水道事業体
経営悪化
料金値
上
地下水
運営
能力
低下
水源汚染
事業体の能力
不足
需要増
野村総研レポート「2040年の日本の水問題より
大規模水
源開発
上下水水ビ
ジネス拡大
汚水・排水未
処理
国・ファンドに
よる水開発
国際展開は不可欠
• 国際的なニーズに総合的(上水、下水、機器
メーカー、人材育成)に対応して事業を拡大
• 新たな職員と海外研修生の教育訓練
• 余剰水の新マーケット創出(輸出も)
• 日本の重要な国際貢献
アフリカ ブルキナファソ
首都ウァガドゥグー
この子たちに安全な水を!
結語
• 水道事業や他の諸々の公共サービスは日本
の少子高齢化(人口減少)により、規模の縮
小が避けられないと予測されているが、新た
な市場開発と国際展開により、成長産業とし
て世界の発展に貢献することが出来る絶好
の機会が到来していると思います。 皆様の
ご活躍を祈念いたします。
最後のメッセージ
発想の転換が持続的発展の鍵