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心理学1
動物行動と心理学
福田玄明
今日は
• 動物に心はあるのかを考える.
• 心を持つのは人間だけなのか?
• 動物の行動は,刺激に対する単純な反射な
のだろうか?
動物はかなり複雑な行動をする!
鳥のさえずり
• さえずり
– 雄が繁殖期に発する複雑な音声
– 美しく複雑な歌を歌う個体ほど雌にモテる.
– 雌はさえずりの美しさを鑑賞しているのか?
生涯繁殖成功回数
20
15
10
5
0
3
5
7
9
さえずりのレパートリー
11
13
ヴェルベットモンキーの警告音
• 三種類の警告音で仲間に危険を知らせる
– ワシ,タカなどの空を飛ぶ捕食者に対するもの
– ヒョウに対するもの
– ヘビに対するもの
• 単語?
カッコウの託卵
• カッコウは,ホオジロやモズの巣
に卵を産んで,他人に子育てを
させる.
• カッコウのひなは,元々の卵より
も早く孵り,生まれた直後から,
体をもぞもぞ動かしてほかの卵
を巣から落としてしまう.
カッコウは他人をだますことができるのか?
ホタルの光
• 雄と雌が配偶相手を見つけるために光ってい
る.
– 雄のシグナル→雌の応答シグナル
• それぞれの種に固有の発光パターン
– 2秒間隔で2回光って6秒休みなど
• 外国にはもっと複雑なのもいる
ホタルの光
• フォツリス
– 雌はほかの種のホタルの応答シグナルをまねる
• 周りに多くいるホタルのシグナル
• 雌がいると思って近づいてきた雄を食べる.
– 当然,自分自身の発光シグナルも持っている
– 雄は雌に食べられる種類のホタルのシグナルを出す
こともある.
• えさと思って食べにきた雌を捕まえて交尾する.
– 周りのえさになるホタルもフォツリスの信号をまねる
• 周りにライバルが多いとき,フォツリスの発光をまねること
でライバルを減らす.
ホタルは他人をだますことができるのか?
複雑な行動の原因
• 進化論
– より子孫を多く残せる行動をする個体は,多く生
き残り,子孫を残す.
– 長い時間の中で,どんどん複雑な行動が進化す
る.
複雑さと進化論
• 複雑な行動は,心があることの証拠になるの
か?
• 行動の進化
• 進化論的過程を考えることで相当に複雑な行動も刺
激による単純な反応として考えられる
どのような場合に心があると考えてよいのか?
動物に心はあるのか?
• 賢い馬ハンス
– 20世紀初頭の計算のできる馬
– 例えば,「7たす9はいくつ?」と聞かれると16回
蹄をならす.
– ハンスは計算をしたのだろうか?
動物に心はあるのか?
• ハンスの後継者たち
– たくさんのハンスの後継者が今もがんばっている
動物に心はあるのか?
• 賢い馬ハンス
– Pfungstはハンスの飼い主,Ostenに実験室でハン
スを調べることを申し出た.
– Ostenは,ハンスは計算ができると信じていたの
で二つ返事で承諾した.
動物に心はあるのか?
• Pfungstの実験
– Ostenが答えを知らない問題,間違った答えを教
えられている問題をハンスに尋ねた.
– 結果,ハンスは必ず答えを間違った.
– ハンスは飼い主がそばにいて,答えを知っている
時だけ正解を出した.
動物に心はあるのか?
• Pfungstの実験
– Ostenは無意識的にハンスに正解の手がかりを
与えてしまっていた.
• わずかな緊張の弛緩,小さな吐息
– 例えば,7を数えろと言われたとき,ひずめを鳴ら
して7回目のときにOstenからの微妙なサインを
感じて,ひずめをならすのをやめていた.
ハンスは計算できない
動物は知的ではないのか?
動物に心はあるのか?
• 余談
– 飼い主Ostenは、ハンスに手がかりを与えている
ことに全く気づいていなかった.
– しかし,ハンスの能力を見抜いていたPfungstもど
うしてもハンスに手がかりを与えてしまっていた.
• Pfungstが答えを知っているときは必ずハンスは正解
– ハンスは計算はできなかった.しかし,人から手
がかりを読むことにおいて,間違いなく賢かった.
オッカムのカミソリ
• オッカム村のウイリアムス
– 「存在は不必要に増やしてはならない.」
– できるだけ単純な説明を試みて,それではどうし
ても説明できないときにだけより複雑な説明を試
みるべき
動物のこころ
• オッカムのカミソリに耐えて,動物に心がある
ことを示した研究はあるのか?
イメージするハト
• Neiwork & Riling (1987)
– ハトに時計盤を見せる.
– 最初,時計の針は一定速度で回っている.
– その後,時計盤の針は消えたり,現れたりする.
– 時計の針の現れ方には,2種類あり,一定速度
で動いている場合の位置に現れる場合と,ランダ
ムな位置に現れる場合がある.
– 一定速度で動いている場合と同じ位置に針が見
えているときにボタンをつつくとハトはえさがもら
える.
イメージするハト
• Neiwork & Riling (1987)
– ハトは,この学習に成功した.
• 一定速度で動いている場合の針の位置とそうでない
場合を区別できている.
• 一度も学習していない,針の位置であっても正答でき
た.
• 一定速度で動いている場合の針の位置を,針が見え
ていない場合でも,イメージできていた.
数を数えるラット
• Davis & Bradford (1986)
– 自動ドアのついたトンネルの
中にえさがある.
– 一つしかドアは開かない
– 数を数えてえさのあるトンネル
を憶えないといけない.
数を数えるラット
• Davis & Bradford (1986)
– ラットはトンネルを学習するこ
とができた.
– 奥から2番目のトンネルを学
習するラットは一度奥までいっ
てから逆算した.
– ラットは数を数えることができ
た.
ごまかし行動
• ごまかし行動は,他者が何を考えているのか
を想定しないと成立しない.
• 他人がどうすればどう思うのかについての知
識が必要.
• 「思う」ことができる?
ヒヒのごまかし
• ヒヒは捕食者や他のヒヒの群れを見つけたと
きに「眺める」行動をする.
• 集団内の他のヒヒは眺める行動に従って,そ
ちらを眺める.
ヒヒのごまかし
• Byrne & Whiten (1988)
– ある若いヒヒがもっと若いヒヒを攻撃した.
– 攻撃されたヒヒは金切り声を上げた.
– 大人のヒヒが数頭よってきた.これらのヒヒは攻
撃音を発しており,若いヒヒを攻撃しにきたのは
明らか.
– 若いヒヒは大人のヒヒが集まるのを見て,捕食者
も他の群れもいないのに「眺めた」.
– 大人のヒヒたちはそれを見て,彼の見ている方向
を眺めた.
– その間に,若いヒヒは逃げてしまった.
ヒヒのごまかし
• Byrne & Whiten (1988)
– ある子供のヒヒが,大人のヒヒがえさを食べてい
るのを見つけた.
– 子供は大人に近づいたが,大人のヒヒは気にせ
ず食べ続けた.
– 子供は金切り声を上げた.子供の金切り声は攻
撃されたことを意味する.
– 大人のヒヒが集まり,えさを食べていたヒヒを追い
払った.
– 子供のヒヒはえさを食べることができた.
ヒヒのごまかし
• Kummer (1982)
– 群れのメンバーは岩場で休憩していた.
– 一匹の雌が20分かけて岩陰に隠れて,若い雄
の毛繕いをはじめた.
– 他の雄に見られると攻撃される.
– しかし,他の雄からは見えない.
他人の知覚範囲についての知識がある
チンパンジーのごまかし
• Menzel (1974)
– 集団の中で一匹だけがえさの隠し場所を知って
いる状況を作る.
– 場所を知っているチンパンジーは他の個体をえさ
の隠し場所に案内し,みんながえさを食べること
ができた.
チンパンジーのごまかし
• ベラという個体が隠し場所を知っているとき,
ロックという優位個体によって,えさを見つけ
た後にベラが追い払われることが続いた.
• ロックがいるときは,ベラは隠し場所を教えな
くなった.
• ベラは隠し場所にいくだけで,その場に座っ
て,ロックがいなくなるのを待った.
• ロックはすぐにこれを学習し,ベラが座ってい
ると追い払い,その場を探すようになった.
チンパンジーのごまかし
• ベラは隠し場所までいくのをやめて,近くに止ま
るようになった.
• ロックはベラの近くを見つかるまで探すことで応
戦した.
• ベラはえさのある方向とは反対に座るようになっ
た.ロックがえさを探し始めると,えさの方へ走
り,いくつかのえさを持って逃げた.
• さらに,えさの一部を別の場所に隠し,そちらに
ロックを誘導し,大きいえさを自分のものとするこ
ともおぼえた.
ここまで
• 動物にもある種の知性があることを確認し
た.
• これらの知性は我々が心と呼ぶものと同じだ
ろうか?
• 動物は我々と同じように感情を持つのだろう
か?
ラットのおいしい
• Cabanac (1979)
– 人間とラットに砂糖水を飲ませ,その主観的なお
いしさを判定させる.
– まず人間
• 食後や食前,他の甘いものを飲んだ直後などに砂糖
水のおいしさを判定させた.
• 判定は5段階(まずい,ややまずい,どちらでもない,
ややおいしい,おいしい)
ラットのおいしい
• 他のものを食べた後や,甘いものを食べた後
はおいしさの得点が激減した.
• 女性は月経周期と甘いもののおいしさに関係
があった.
• そして,ラット
– ラットがどの程度砂糖水を飲んだか,その量に
よって,ラットの主観的おいしさをはかった.
ラットのおいしい
• 結果,人間の意識経験の報告と,ラットの飲
んだ量のグラフはそっくりなものになった.
まとめ
• 動物は心を持つのだろうか?
– ないかもしれない.
– あるかもしれない.
– 厳密な基準で研究される必要がある.
• かつては,人間にも感情はないと考えられて
いた.
• 今後,動物の心,機械の心についても考える
必要があるのかもしれない.
補講の日程
• 学務と相談して正式に決まりました.
• 7月11日 3限 試験
• 7月11日 5限 補講
• 7月4日 試験についての話をします
• 必ず出席してください.
• このときしか試験については話しません.