Transcript 神奈川大学
日本経済新聞社
長島芳明
[email protected]
2014年10月28日、神奈川大学
日本経済新聞未来面・経営者編
「世の中とどう混ざり、何を生み出しますか」
木川真・ヤマトホールディングス社長
経営者編第3回(10月6日、抜粋)
読者の皆さんとお話ししたいのは、今後の日本にとって「混ざる」または「混ぜる」と
いう言葉が重要なキーワードになるということです。多様性の時代といわれる中で
企業、教育、行政、地域などあらゆる分野で様々な価値観を認め合う仕組み作り
と、その実践が求められていると痛感しており、それを象徴する言葉だからです。
青森県黒石市は一人暮ら
し高齢者向けの定期刊行
物をヤマト運輸が配達し、
近況を確認している
ヤマトグループでは「プロジェクトG(ガバメント)」と称し、各
地の自治体と連携して「高齢者の見守り支援」「買い物支
援」「災害時緊急輸送支援」などを展開しています。行政
等と連携した案件は約680件、このうち150件以上が動き
出しています。また、地元の生鮮品を収穫した翌日にはア
ジアの主要都市に届けるサービスで農業の活性化のお手
伝いもしています。
そこで読者の皆さんにお尋ねします。一つは「あらゆるものが混ざるために必要
な心構えや条件はどのようなものか」。もう一つは「どのようなものが混ざる(3つ
以上でも可)と、どのような新たなサービスや価値が生まれるのか」。個別にお答
えいただくか、どちらか選んでお答えください。
世の中とどう混ざり、何を生み出しますか 学生からの提案(10月27日)
■違いを受け入れる
■「ふるさと納働」
■子育てカフェ
浅尾由希(21) 早稲田大
学政治経済学部3年
柴田寛(61)
NPO運営委員
宮田佳歩(20) 東京大学教
養学部3年
うまく混ざるために必要な
ことは、自分と異なる人の存
在を「当たり前」と受け入れ
る姿勢ではないか。かつて
米国に留学していた頃、強
く感じたのは多民族国家の
米国は異質なものに対して
寛容だという点だ。育った
環境やどんな価値観を持っ
ているかなどは、人によって
違っていて当然という考え
が浸透している。自分を異
物として認識せず済む環境
に居心地の良さを感じた。
「混ざる」とは完全な一致を
意味するのではないと思う。
「ふるさと納税」ではなく、労
働を無償で提供する「ふるさ
と納働」を創設してはどうか。
移住は難しくても、短期間な
らばふるさとのために汗を流
したいという都市住民の希望
に応えるものだ。労働提供を
希望する者と受け入れを希
望する自治体を仲介する仕
組みを作り、受け入れ地域や
労働内容、滞在日数などを
決める。都会の労働力や知
識が地方のヒトや自然と「混
ざる」ことで、地方だけでなく、
都市住民の心の活性化も実
現できるだろう。
少子高齢化を解決するヒ
ントとしてフランスに注目して
いる。子供は社会全体で育
てるものという同国の育児観
とカフェ文化を参考に「子育
てカフェ」を提案したい。若
い女性にとって、カフェはお
しゃれな趣味として人気が
高い。ママ友たちとカフェで
交流し、子供たちは絵本を
読んだり遊んだりできる。退
職後の時間を有効活用した
い高齢者を店員として募集
すれば、長年の育児経験を
基に育児のアドバイスをもら
うことも期待できるだろう。
神奈川大学の学生さんからの投稿も1本選ばれました。
■観光業と農業が混ざる
劉子雲(22) 神奈川大学経営学部2年
日本は環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉に参加した。交渉の
内容によっては国内農業は強いショックを受けるだろう。そこで観光
業と混ざるのはどうだろうか。農作物の生産を観光ビジネスとしても
生かすことができるだろう。地域の自然環境を整備し、観光客を農
園に呼べば、観光客は景色を楽しみ、自分たちがいつも口にする
食べ物がどのように育てられているかを知ることができる。自分で農
作業を体験すれば、命の大切さにも思いが至るのではないだろう
か。
(ご投稿ありがとうございました)
次回、11月4日掲載の未来面で提示する課題は、三井住友海上火災保険
社長・柄澤康喜真さんの「「グローバル時代に保険ができること」です。広く
読者の皆さんのアイデアをお待ちしております。
・保険料をどうやって増やすか
・運用利益をどうやって伸ばすか
企業
コンサルティング
手数料
運用
資本市場
保険料
契約者
生損保会社
運用利益
融資・出資
利息・配当・売却益
企業
保険金
損保、14年秋も保険料上げ 自動車12年ぶり高水準
(2014年5月21日、日経電子版より抜粋)
家庭や企業の損害保険料の負担が増えそう
だ。大手損害保険3グループは20日、今秋ま
でに自動車保険料を引き上げる方針を正式に
表明した。消費者の平均保険料は12年ぶりの
高水準となる。企業向けの地震保険や家庭向
けの火災保険も値上げが見込まれている。
大手損保が主力の自動車保険の値上げを
始めたのは08年。1998年の保険料自由化以
降に繰り広げた値下げ競争と、保険金の支払
い増加で赤字に陥ったためだ。
自動車と同様に加入者の多い個人向けの火
災保険も15年度に3~5%程度保険料が上が
る見通し。建物の老朽化で保険金支払いが増
えていることなどが理由だ。東京海上日動火
災保険などは企業向け地震保険の保険料も7
月から引き上げる。
自動車も住宅も日本国内の需要は拡大しそうにない
新設住宅着工戸数の実績の推移と予測結果
野村総合研究所の資料より引用
日本自動車工業会の資料より引用
生損保「物言う株主」へ一歩
行動規範、19社が導入表明 東京海上、方針公表へ
2014年6月23日付 日経朝刊より抜粋
議決権行使に消極的だった
国内保険会社に変化の兆しが
出始めた。対話や議決権行使
などで投資先の経営改善を促
す行動規範「日本版スチュワー
ドシップ・コード」の導入を、日
大手生保の間では議決権行使の
本生命保険など生命保険・損害
基準を厳しくする動きが出ている
保険計19社が表明。保険会社
が投資先の経営改善を後押し
できれば、株価が上昇して運用 とりわけ大手損保5社は議
成績も上がる効果がみこめる。
決権行使の対処方針をこ
れまで開示していなかっ
7兆円規模の株式(時価ベー た。東京海上日動などは
ス)を保有する日本生命を筆頭 9月までに、投資先企業と
の対話方針や議案への
に、大手生損保はそれぞれ1
賛否の決定手法、利益相
兆円を超す株式を保有してお
り、議決権行使など19社の動
反が生じる場合の方針な
どを明らかにする。
向は本格化する株主総会シー
ズンで注目される。
(金融2014 ここを攻める)収入比率 海外3割に
三井住友海上社長 柄沢康喜氏
2014年1月13日 日経朝刊より抜粋
――海外事業の中でもアジアに注力してきた。
「損害保険事業では東南アジア諸国連合(ASEAN)の全10
カ国で5位以内に入り、ASEANで一番の損保を目指している。
すでにマレーシア、フィリピン、シンガポール、ラオスでは5位以
内に入っており、インドネシアやベトナム、タイも5位をうかがう位
置にいる。主導的な地位を維持・拡大するため、今後もM&A
(合併・買収)を検討する」
――海外の収益目標は。
「現在の保険料収入は3000億円程度で全体に占める比率は約2割だ。中期的に保険料収
入を4000億円に引き上げ、比率も3割に高めたい。仏アクサや独アリアンツなど世界の上位
の保険グループを目標に据えると、さらにグローバルに事業を分散する必要がある。国内の
損保事業でも成長を確保していくが、それを上回るスピードで海外を伸ばす」
「アジアの生保事業にも2010年以降、約1400億円を投じ、インドネシアやインドなど5カ国
に進出してきた。生保の普及率はまだ低く、死亡保障商品の割合も低いが、日本の商品や販
売ノウハウを伝え市場育成を後押ししたい」