The size of proton

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The size of the proton
陽子の大きさ
R. Pohl et al.,
Nature 466, 213–216 (2010)
• 目次
1. 実験目的
2. ミューオン原子
3. 実験方法
4. 実験結果
5. まとめ
物理学科4年 柴田研究室
国定 恭史
1
1.実験目的
 これまでの陽子半径のデータ
電子ー陽子弾性散乱実験による値
𝑟𝑝 = 𝑟 2 = 0.897 18 fm
水素原子のスペクトロスコピーによる値
𝑟𝑝 =
𝑟 2 = 0.8768 69 fm
※陽子の電荷分布は一様ではなく、(右図)指数
関数型であるので、半径はroot-mean-square(二
乗平均平方根) 𝑟𝑝 = 𝑟 2 の値をとる
0.84
0.86
0.88
0.9
0.92
𝜌
r
もっと精度よく測る陽子半径を測る方法はないか?
ミューオン水素のラムシフトを測定する
2
2.ミューオン原子
ミューオン原子
 原子中の電子を、 𝜇− で置き換えた
原子のこと
 この実験では、水素原子の電子を
𝜇− で置き換える(右図)
 𝜇− の電荷は電子と同じ
 𝜇− の質量は電子のおよそ200倍
 ボーア半径の式𝑟 =
ℏ2 𝑛 2
より、この
𝑘0 𝑒 2 𝑚
ミューオン水素の半径は1/200にな
る
 束縛エネルギーの式𝐸 =
200
:
1
ミューオン水素の半径の比
𝑚𝑘0 2 𝑒 4
− 2 2よ
2ℏ 𝑛
り、ミューオン水素のエネルギーは
200倍になる
3
ミューオン水素のラムシフト
ラムシフト
2S状態と2P状態の間にエネルギー差が生じる現象
2p
2𝑆1/2 (𝐹 = 1) → 2𝑃3/2 (𝐹 = 2)のエネル
ギー差を計算する
2𝑃
ラムシフト∆𝐸𝐿𝑆 、微細構造∆𝐸𝐹𝑆
、超微細構
2𝑃
2𝑆
造∆𝐸𝐻𝐹𝑆3/2 、∆𝐸𝐻𝐹𝑆
の項をそれぞれ足し合
わせると
F=2
2𝑃
2𝑃
∆𝐸𝐹𝑆
j=3/2
∆𝐸𝐿𝑆
∆𝐸𝐻𝐹𝑆3/2
F=1
∆𝐸
F=1
2𝑆
2s
∆𝐸𝐻𝐹𝑆3/2
j=1/2
F=0
3 2𝑃3/2 1 2𝑆
∆𝐸 = ∆𝐸𝐿𝑆 +
+ ∆𝐸𝐻𝐹𝑆 − ∆𝐸𝐻𝐹𝑆
8
4
Δ𝐸 = 209.9779 49 − 5.2262 𝑟𝑃 2 + 0.0347 𝑟𝑃 3 meV
2𝑃
∆𝐸𝐹𝑆
この遷移のエネルギー差∆𝑬が分かれば、陽子の半
径を計算することができる
4
3.実験方法
ミューオン水素をつくるには、 𝜇− が必要
まず、 𝜇− をつくる
 スイスのPSIの加速器を使う
 サイクロトロン加速器によって陽子を
590 MeVまで加速
 加速した陽子を炭素などの標的にぶつ
けると、標的の原子核と核反応を起こし、
π中間子が放出
 このπ中間子が下の崩壊をすることによ
り、 𝜇 − がでてくる
−
−
𝜋 → 𝜇 + 𝜈𝜇
スイスのPaul-Scherrer-Institute(PSI)
こうしてつくられたμ粒子をミューオンビームとして実験に使う
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PSIの加速器からきた𝜋 − は、
CTに入る
 CT (Cyclotron trap)
ここで𝜋 − は 𝜇− に崩壊する。
その後、薄い膜を通過す
ることによって、減速され
る
 MEC (muon extraction channel)
磁場でミューオンビームを曲げるこ
とで中性子や電子などを分離
 ソレノイド
• 5 Tの高磁場をかけ、ミューオン
ビームの半径を小さくする
• 二つの炭素箔𝑆1 , 𝑆2 の役割は
①ビームの減速
②ビームが通過するときに放出す
る電子を検出し、ビームの入射した
時刻を測定
↑ソレノイドの内側の拡大図
その後、ミューオンビームは 𝐻2 ガス中で止まり、ミューオン水素がつくられる
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 ミューオンビームが𝐻2 ガス中で止まると、高励起状態のミューオン水素をつくる
 2S状態のミューオン水
 ミューオン水素はすぐに
素に、0.9𝜇𝑠後にレー
下方へ遷移を起こし、99%
ザーをあて、2P状態へ
は1S状態に、残りの1%は
励起させる
2S状態になる
 2S状態の寿命は比較的
 2P状態のミューオン水素
長い
はすぐに1S状態に落ちる
 その際1.9 keVのX線を発するので、LAAPDsという受光
感度を上げたフォトダイオードでそれを検出する。
X線の量を測ることにより、どの波長のレーザーで遷移が起きたのかが分かる
7
4.実験結果
 ミューオンビームが入ってきた時刻
を0 𝜇𝑠
 すぐに大量のX線が検出されるが、
これはミューオン水素が高励起状
態から1S状態に落ちたときのもの
(prompt event)
 レーザーをあてた0.9 𝜇𝑠後に現れた
X線は2Pから落ちたときのもの
(delayed event)
 図aのようなデータがとれたときの
レーザーの波長を調べれば、ラム
シフトのエネルギー差が分かる
検出したX線のデータ
aは2P→2Sの遷移が起きた場合の波長
bは起きなかった場合の波長
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Delayed eventとPrompt eventの比と、
レーザーの周波数のグラフ
ピークの周波数は
49,881.88(76) GHz
エネルギーは
∆𝐸 = 206.2949 32 meV
ラムシフトの式から
𝑟𝑃 = 0.84184 67 fm
これまでのデータ
0.897 18 fm、0.8768 69 fm
と比べると小さい値
これまでの陽子半径のデータならば、
イベントのピークは、■の位置にくる
はず
0.83
0.84
0.85
0.86
0.87
0.88
0.89
0.9
0.91
今までよりも精度のよい実験を行った。しかし、今回の結果は、こ
れまでの実験結果の誤差の範囲から大きくずれている。
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5.まとめ
• ミューオン原子とは、原子中の電子を𝜇− で置き換えたも
の
• ミューオン水素のラムシフトを測定することにより、今ま
でより精度よく陽子半径を測ることができる
• ミューオン水素にラムシフト分のエネルギーのレーザー
をあてることにより、ラムシフトを測定する
• 実験はスイスのPSIの加速器を使って行われた
• 陽子の半径はこれまでのデータよりも小さいという結果
が出た
• このずれは新しい物理によるものである可能性もある
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補足スライド
実験に使用したレーザー
• ビームがソレノイドに入ってきた信号を
フォトダイオードから受け取り、その時
刻から0.9 𝜇s後にビームを発射する
• ビームのエネルギーを高めるために、
増幅器を通している
• 途中で水蒸気にもレーザーをあててい
るのは、この水蒸気の吸収係数を測る
ことで正しい波長のレーザーが出てい
ることを確認するため
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