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 マクロ経済学入門
1.1
このみさんの疑問
①裕福な国と貧しい国との差ができるのはなぜだろう??
②日本の戦後の発展を支えた要因は何だろう??
③デフレってどうして起こるの??
④なぜ物の値段が変わるんだろう??誰か監視できないのか
しら。
⑤日本銀行券を出している日本銀行は物価の監視とどんな関
係があるんだろう??
⑥アメリカのお金をどうして日本の銀行が持っているの??
⑦どうして為替相場は変わるのかな?円とドル
の交換の比率はどうやって決まるの??
⑧なぜ会社の業績がよくなったり悪くなったり
するのか??「100年に一度の経済危機」って
何??
⑨政府はなぜ消費税を上げたの??政府が借金
で破産することはないの??
さあ、この疑問をこの講義を通じて
一緒に考えてみよう!!
第1章 マクロ経済学の役割
1.2
マクロ経済学の登場人物
企業
労働
財・サービス
資本
労働・資本を生産要素と呼ぶ
家計
消費者:財・サービスの購入(需要者)
労働者:労働サービスの提供(供給者)
資本家:資金サービスの提供(供給者)
上の3つの経済活動を行う
金融機関
家計の貯蓄から企業の投資への
資金の流れを調整する企業
預金
家計
資金
企業
銀行
利子
利子
政府
政府支出を行う
この支出は、家計と企業に対する税
でまかなっている。
税額が足りない場合・・・国債、地方債
1.3 マクロ経済学とミクロ経済学
ミクロ経済学:個々の経済主体の決定
について考察しその相互作用を研究。
さらに望ましい資源配分を達成する
ためのメカニズムも研究。
マクロ経済学:経済全体を捉える変数
がいかに決定されるかを分析。
さらに望ましい財政支出のあり方や
日本銀行の望ましい行動のあり方も
研究。
1.4 仮定とモデル
複雑な現実経済を解きほぐし経済の仕組みや政策の役割を明らかにするために
経済学では、経済モデルすなわち経済の模型をもちいて経済問題を分析します。
私たちは多くの経済問題を考えなければなりません。しかしその多くの問題を同時
に解くことは困難で、かつ問題を複雑にします。
そこで経済モデルでは、考えたい問題に着目するために、
いくつかの問題をひとまず捨象したり、ざまざまな仮定が置かれます。
そうすることで問題の本質をあぶりだして、クリアな結果を得ることができます。
例 考える問題;貯蓄の決定と労働時間の決定の2つの問題
所得のうちのいくら消費に回し、いくらを貯蓄にまわすかの決定では
とりあえず働く時間の問題を捨象し、働いて得た所得を一定と仮定
します。
何時間働くかの決定では
消費にいくらの所得を使うかについての決定は捨象し
今年に得たすべての所得を今年の消費で使い果たすという仮定を置きます。
1.5 政策立案で重要なこと
:意見の対立とマクロ経済学
経済学者は経済分析を行い、様々な経済政策
の結果を政策立案者に提示することができる。
マクロ経済学の中の対立
 ケインジアン:市場の調整力に対して懐疑的
 新古典派:市場の調整力を信頼
経済学者はどのような政策提言を行うかは結果
に大きな影響を与える!
1.6 日本の特徴:経済学者と政策立案
アメリカとの比較
①経済学の博士号を持つエコノミストの数が少ない。
②アメリカの政府機関で活躍する経済学者は最低の
レベルとして学術的にも立派な仕事をしたものに
限られる。しかし、日本はそうではない。
③専門家が少ない分野が存在する。
第2章
経済の活動水準を計る
2.1 3つの物差し:生産で測るか、所得で測
るか、支出で測るか
ある人の暮らしぶりがどれほど豊かか
を判断するにはいくつか方法がある。
例えば・・農家(米のみ)吾作さんの豊かさ
①今年の吾作さんの生産量で測る
②米を売って得た収入(=所得)で 測る
③吾作さんの買物(=支出)で測る
ただし、③については、吾作さんの所得が無くても資
産を崩したり、借金をしているかも!個人の豊かさを
支出で測るときは注意!
では、一国の経済について考えてみよう!
①生産面で測る・・後で説明。
②所得で測る・・日本に存在する全ての人の所得を
合計すればよい。
これを、国内総所得(GDI)と呼ぶ。
③支出で測る・・先の吾作さんの例のように、個人
では所得と支出が一致しないが、経済全体では一
致する。
A,Bの2人だけの社会を考えてみよう。
仮に・・・
Aさん:所得は無く、資産を取り崩して
消費(支出)を行う。
Bさん:所得は無く、資産を取り崩して
消費(支出)を行う。
経済全体の所得はゼロで、企業部門で生産が
行われていないことになり、2人の消費をまかな
う財・サービスの供給が存在しない。
おや・・・??おかしいぞ。 で,次のように考え
なければならない.
つまり、
Aの所得がないとすると、企業
部門から支払われる所得は全て
Bのものに
なるはず。
Bの所得=企業部門の生産=
Aの消費(支出)+
所得と支出が一致していることがわかった!
上の式より、
Bの所得-
Bの消費=
Aの消費
左辺はBの貯蓄を意味する。
Bはこの貯蓄を銀行に預けたり、株券を購入したりする。
右辺はAの資産取り崩しを意味する。
Aは預金の引き出しや株券の売りをする。
Bの消費(支出)
従って、先の関係式は、
Bの新たな株券の購入(資金提供)=
Aの株券の売り(資金の需要)
を示すことになる。
つまり、
誰かの資産の取り崩しは、他の誰かの資産積み増しで帳消し
にされている!!
2.2
生産で測る:国内総生産
オレンジジュース企業について
オレンジ
缶のオレンジジュース
鉄鉱石
缶
2.2.1
粗付加価値と最終財
図2-1
輸入オレンジ
輸入中間財
缶製造企業の売上
輸入鉄鉱石
缶という
中間財購入
輸入中間財
缶企業の
粗付加価値
固定資本減耗
ジュース
雇用者報酬
企業の
粗付加価値
営業余剰
最
終
消
費
財
の
生
産
額
売上-輸入オレンジの購入代金-缶企業からの購入代金
=ジュース企業の粗付加価値
また、輸入オレンジの購入代金と缶企業からの購入代金を
中間財の購入という。
このようにして求めた粗付加価値を経済全体の企業について
行い、それを集計したものを
国内総生産(GDP)という。
ただし、この粗付加価値の計算は1年間というように、
期間を限定して計算しているので注意!
国内総生産とは・・・

一定期間に生産された国内すべての企業の粗付加価値
の合計
一定期間において、国内で生産されたすべての最終的
な財・サービスの価値の合計から輸入中間財投入の価値
を引いたもの

(最終財とは、消費者が購入する以外に用いられること
はない財のこと。)
2.2.2
生産されたものだけ
一定期間の間に生産された財・サービスの
価値は含むが、過去に生産された財に関す
る取引は含まない。
例 中古車の販売・株を売った値上がり益
ただし、中古車ディーラーの仲介料収入などの取引
の際に発生する手数料は、取引を仲介するサービス
に対する対価と考え、GDPに含める。
2.3.3
帰属計算
市場で取引されず、市場価格がつかない財・サービスについて
は原則としてGDPには含まれない。
ただし、帰属計算が可能なものは例外的にGDPに含まれる。
帰属計算・・・自分で作ったものを自分で買ったと
すること。
例 持家を賃貸すれば得られるであろう家賃収入
公務員のサービス
農家の自家消費分
2.2.4
国内と国民
日本
アメリカ人
が日本で
生産
日本のGDPの一部
アメリカ
日本人が
アメリカ
で生産
日本のGDPに含まれない
付加価値は国内で生産されていれば、国籍は関係
ない。例えば、外国人の野球選手の給料は日本のGDPとなる
が、イチローの年俸は日本のGDPとはならない(アメリカの
GDP)となる。
国民総生産;日本国民がどれだけのものを生産した
か
国民総生産(GNP)
=GDP+(海外からの所得の流入or受取)-(海外への所得の流出or支払)
所得収支
*ただし、政府統計では、国民総所得(GNI)が使われている。
2.3 所得で測る:国内総所得
図2-1をもう一度みながら・・・
固定資本減耗:機械を新しく取り替えるための費用
雇用者報酬:労働者への支払い、労働に対する報酬
営業余剰:資本に対する報酬
国内総生産=(固定資本減耗の合計)+(雇用者報酬
の合計)+(営業余剰の合計)≡国内総所得
誰かの所得として分配されている!
2.3.1
粗と純
純粋に生産による付加価値を産出する。
(純付加価値)=(粗付加価値)-(固定資本減耗)
国内純生産=国内総生産-(固定資本減耗の合計)
国内純所得=国内総所得-(固定資本減耗の合計)
国民純生産=国民総生産-(固定資本減耗の合計)
*通常は、国内純所得を国内所得という。
2.4
支出で測る
生産された財・サービスを購入(支出)する経済主体は
家計、企業、政府、海外の4つで構成されている。
GDP:Y、消費:C、投資:I、政府支出:G、
輸出:EX、輸入:IM
とすると、経済主体が購入する財は国内で生産された財
サービスの合計と海外から輸入された財・サービスの合計
であるから、
Y+IM=C+I+G+EX
変形して、
Y=C+I+G+EX-IM
純輸出
国内総支出
2.4.1
三面等価
国内総生産=国内総所得=国内総支出
三面等価の関係:生産面から測っても、所得の面
(分配の面)から測っても、支出の面から測っても
経済の活動水準の大きさは同じである。
国民総生産=国民総所得=国民総支出
国民純生産=国民純所得=国民純支出
政府統計では、国内総支出は国内総生産(支出側)
と呼ばれる。
2.5 実質GDPと名目GDP
GDPの変化の2つの要因
①生産される財・サービスの量の変化による部分
②市場価格の変化による部分
実質GDP:今年生産された財・サービスの価値を過去の特定の年
(基準年)の価格で評価。
名目GDP:今年生産された財・サービスの価値を今年の価格で評価。
実際に計算してみよう
自動車の価格
(万円/台)
自動車の
生産量(台)
米の価格
(万円/トン)
米の生産量
(トン)
2005
100
100
80
100
2006
120
100
90
100
2007
130
110
100
90
年
基準年を2005年にする。
2005年の名目GDP(万円)=100×100+80×100=18,000
2006年の名目GDP(万円)=120×100+90×100=21,000
2007年の名目GDP(万円)=130×110+100×90=23,300
2005年の実質GDP(万円)=100×100+80×100=18,000
2006年の実質GDP(万円)=100×100+80×100=18,000
2007年の実質GDP(万円)=100×110+80×90=18,200
第3章
物価の測り方
GDPデフレーター:経済全体での価格の上昇の程度を測る。
名目GDP
100
GDPデフレーター=
実質GDP
2章で計算した数値をもとに、GDPデフレーターを求めよう!
2005年のGDPデフレーター=(18,000÷18,000)×100=100
2006年のGDPデフレーター=(21,000÷18,000)×100=116.7
2007年のGDPデフレーター=(23,300÷18,200)×100=128.0
もう少し詳しくみてみると・・・・(次の式には100をかけて%表示に!)
名目GDP
ー= 実質GDP
200X年の自動車の価格  200X年の自動車の数量+ 200X年の米の価格  200X年の米の数量
=
2005年の自動車の価格 200X年の自動車の数量+ 2005年の米の価格  200X年の米の数量
200X年の自動車の価格 2005年の価格での 200X年の自動車への支出
=

2005年の自動車
2005年の自動車の価格
200X年の実質GDP
の価格
200X年の米の価格 2005年の価格での 200X年の米への支出
+

× 200X年の自動車
2005年の米の価格
200X年の実質GDP
の数量
2005年の価格での 200X年の自動車への支出
=
自動車の価格上昇の程度
200X年の実質GDP
2005年の米
2005年の価格での 200X年の米への支出
の価格
+
 米の価格上昇の程度
200X年の実質GDP
200X年GDPデフレータ
×200X年の米
の数量
の比率に注目すると・・・
2005年の価格での200X年の自動車への支出 2005年の価格での200X年の米への支出
+
200X年の実質GDP
200X年の実質GDP
2005年の価格での200X年の自動車への支出+2005年の価格での200X年の米への支出
=
=1
200X年の実質GDP
この比率をウェイトと呼ぶ。
ウェイトが等しいとき・・・比率は1/2になり、自動車と米の価格上昇の平
均をとる
ウェイトが異なるとき・・・経済全体で支出割合の高い財・サービスには
大きな値がかけられていることになる
日本のGDPデフレーターの動き
一貫して上昇傾向(テキスト:図3-1)
1974年の上昇の際立ち→オイルショック
1990年代中ごろの下降→このみさんの言うデフレ現象
3.2
消費者物価指数
消費者物価指数とは・・・財・サービスを購入するコスト、消費支出
の年々の変化を測定。
家計の消費パターンを固定し、その消費パターンを持続するためのコ
ストがどのように変化するかを調べるのが目的。
消費者物価指数の定義
ある基準となる年に家計が購入した財・サービスの品目を考え、この
基準年と同じものを購入するのに現時点(比較年)でいくらかかるか
を指数化したもの。
2章の例で考えてみよう
自動車の価格
(万円/台)
自動車の
生産量(台)
米の価格
(万円/トン)
米の生産量
(トン)
2005
100
100
80
100
2006
120
100
90
100
2007
130
110
100
90
年
基準年を2005年にする。
2005年の消費支出=100×100+80×100=18,000
2006年の消費支出=120×100+90×100=21,000
2007年の消費支出=130×100+100×100=23,000
消費者物価指数は、
2006年:(21,000÷18,000)×100≒116.7
2007年:(23,000÷18,000)×100≒127.8
3.2.1
品目の決定

GDPデフレーターは最終財が対象

消費者物価指数は消費者が購入する財・サービスが対象。
現在日本では、600種類の財・サービスが計算の対象になって
いる。
200X年の価格での 2005年の消費支出
200X年の CP I= 2005年の消費支出
200X年の自動車の価格  2005年の自動車の数量+ 200X年の米の価格  2005年の米の数量
2005年の自動車の価格 2005年の自動車の数量+ 2005年の米の価格  2005年の米の数量
200X年の自動車の価格 2005年の価格での 2005年の自動車への支出
=

2005年の自動車の価格
2005年の消費支出
200X年の米の価格 2005年の価格での 2005年の米への支出
+

2005年の米の価格
2005年の消費支出
2005年の価格での 2005年の自動車への支出
=
自動車の価格上昇の程度
2005年の消費支出
2005年の価格での 2005年の米への支出
+
 米の価格上昇の程度
2005年の消費支出
=
GDPデフレーターと同様にして、ここでも
の比率がウェイトになっている。消費者にとって支出
を多く行う重要な品目には大きなウェイトを置いてい
る。
200X年の CPI
200X年の自動車の価格 2005年の価格での 2005年の自動車への支出

2005年の自動車の価格
2005年の消費支出
200X年の米の価格 2005年の価格での 2005年の米への支出
+

2005年の米の価格
2005年の消費支出
=
200X年のGDPデフレー
ター
200X年の自動車の価格 2005年の価格での 200X年 の自動車への支出

2005年の自動車の価格
200X年の実質GDP
200X年の米の価格 2005年の価格での 200X年の米への支出
+

2005年の米の価格
200X年の実質GDP
=
GDPデフレーターは比較年の数量を使ってウェイトを計算→パーシェ指数
最終財を対象。
このため、計算が容易
で速報性がある。
CPIは基準年の数量を使ってウェイトを計算→ラスパイレス指数
消費者の購入するものを対象。
3.3
企業物価指数
企業物価指数:企業間で取引される財についての物価指数。
ラスパイレス指数
インフレ率:物価上昇の度合いを計る。
①GDPデフレーターを用いたインフレ率
2002年のイン フレ率
( 2002年の GDPデフレーター)-( 2001年の GDPデフレーター)
=
 100%
( 2001年の GDPデフレーター)
②CPIを用いたインフレ率
2002年のイン フレ率=
( 2002年の CPI)-( 2001年の CPI)
 100%
( 2001年の CPI)
インフレ率が継続的にプラス値・・・インフレーション
インフレ率が継続的にマイナス値・・・デフレーション
3.5
連鎖指数の適用
例えば、価格の変化が激しく、需要も大きく変化
するIT関連の財をCPI同様に計算すると
基準年の取引量、需要量でウェイトが計算され、
ウェイトは現時点での比率と比べて小さな値に
なる。=価格の変化を低く評価
連鎖指数の登場!
連鎖指数の計算
(2005年から2006年にかけての物価指数) × (2006年から2007年にかけての物価指数)
①
①の計算には2005年の数量でのウェイトが使われる
②の計算には2006年の数量でのウェイトが使われる
この連鎖指数の計算は
GDPデフレーターや企業物価指数にも適用されてい
る。
②
さまざまな経済変数では実質値って重要です!
例えば労働者の受け取る賃金・・・
手に入れた賃金の金額=名目賃金
名目賃金で実際に購入できる財・サービスの量=実質賃金
吾作さんが名目賃金をすべてビールに支出するとしよう。
すると、
名目賃金=ビールの価格×消費するビールの数量
∴実質賃金(消費できるビールの数量)=
名目賃金
ビールの価格
どいうときに使われているのか・・・??
・年金を支払うとき
物価スライド制:物価が上昇したときに支払われる
金額が自動的に増える仕組み
・労働者と企業の賃金交渉
労働組合は賃金交渉の際にインフレ率分だけ賃金
を上昇させるように交渉
・お金を貸している個人と借りている個人
・お金を貸している個人と借りている個人
100円の預金
1年後・・・
銀行
10円の利子と100円の元金
利子率10%
この利子率を名目利子率と呼ぶ。
しかし、1年間に物価が10%上昇していたら、
手に入れることのできる財の量は全く変化していない!
この点を明確にするのが、実質利子率
i
p
p
2006年
2007年
1本のビールを我慢
する
何本飲めるか?
p
円貯蓄できる
p  (1  i) / p
p  (1  i)
本飲める
円の元利合計を得る
ビールで計ってどれだけの元利合計が得られたかというと、
追加的に飲める量
実質利子率 r 
2006年に我慢した量
p
(1  i )  1
p
p
=
 (1  i )  1
1
p
1 i
 (1  r ) 
1 
p - p
p
 : インフレ率
-1  -1
p
p
これをフィッシャー方程式 という
第4章
経済の成長
4.1
世界の国々の経済
経済的な地位の変化や長年にわたる
低迷の要因は何だろう?
経済成長の速さを決める要因は何かを
考えてゆこう。
4.2 生産水準の決定
4.2.1 生産要素
一国がどれだけ財・サービスを生産できるかは
物的資本と労働に依存。
これらは生産要素と呼ばれる。
(1章のスライドも復習してみて下さい)
物的資本 (工場設備、機械、コンピューターなど)
・企業の行う設備投資によって増加する。
活発な投資が行われている経済は速く成長できる可能性が高い。
・比較的短い時間に変更することは不可能。
・ある年の物的資本の存在量Kは、前年までの設備への投
資によって決まり、その年には与えられたものとして考える。
労働

働くことができる人がどれだけ存在するかは一国の生産量を決
定する重要な要因である。

比較的短い期間の間でも変化することができる。

どれだけの人がどれだけ働くか(雇用量)は労働市場によって
決定される。
初めに、雇用量の決定の基本的な考え方を見ていこう!
4.2.2
労働市場
(A)労働供給
人がどれくらい労働を提供するかは、仕事のつらさと
仕事で得られる報酬である賃金とを比較して決めている。
例えば・・・あと1時間残って仕事をすべきかどうか考える時
>
仕事をして残業
代をもらおうか
デートの楽しみを1時
間犠牲にする。
これを
1時間残業すれ
ばデートに遅れ
てしまうわ
労働の限界不効用
という。
>
の時・・・残業をしたほうが得!
の時・・・残業をしないでデートへ行こう!
つまり、
人々は1時間余分に働くことで得られる賃金が、余分の1時間で
こうむるコストを上回れば労働供給を1時間増やす。
したがって、賃金が上昇すれば人々は労働供給を増やす。
この関係をグラフで見ると、
実質賃金率
W
Ls
B
0
C
W
1
労働の需要、供給
実質賃金が上昇すると労働供給が増加することを示す。
(B)労働需要
企業はどのように雇用量を決めているのだろうか。
例えば・・・企業はある労働者にもう1時間残って仕事をさ
せるべきかどうかを考えている時
労働の限界生産物
価値
>
>
1時間残って新たに企業の
売上に付け加えることので
きる価値がある
1時間余分に仕事をさせる
ために新たに必要となる費
用=1時間分の賃金
>
の時・・・余分に働いてもらう方が得!
の時・・・余分に働いてもらうことは得にならない。
つまり、
企業は1時間余分に働かせることで追加して得られる売上の増加が、
1時間余分に働かせることでかかる賃金コストよりも大きいとき
1時間余分に働かせたい。
実質賃金率
A
W
0
W
1
D
L
D
労働の需要、供給
実質賃金が上昇すると労働需要が減少することを示す。
(C)労働市場の均衡
E点:完全雇用
線分AB:労働供給>労働需要
→名目賃金率↓
(実質賃金率も)→
*
W まで下がる。
線分CD:労働供給<労働需要
→名目賃金率↑
(実質賃金率も)→
実質賃金率
W
W
0
*
まで上がる。
Ls
A
B
E
*
C
W
W
D
1
L
D
労働の需要、供給
経済全体の生産量は次のように決まる。
(物的資本)K
L
(国内総生産)Y
Y FF
F
(雇用量)
L
F
これをマクロの生産技術またはマクロの生産関数と呼ぶ。
また、このときの国内総生産は資本が遊休せず、
労働市場で完全雇用が達成されているので、
これを完全雇用GDP
Y
F
ということにする。
4.3
4.3.1
物的資本の変化
貯蓄と投資
(物的資本の増加=投資)を増やすにはどうしたらよいか。
毎年米だけを生産している経済を考える。
この国の米の生産技術:1単位生産するためにa(<1)単位の米が必要
今年の生産量;
分来
で年
生は
産こ
の
来年にX生産するために保存
X
残り
aX
投資
貯蓄
(1-a)X
消費
さて、ここでⅩ-aⅩ=(1-a)Ⅹ単位はどのように使うか
今年消費 or 貯蓄( 来年巻くために今年保存)
来年 Xよりも多く生産するた
めの保存
投資に回る
消費か貯蓄かは家計が決める。これが物的資本の増加を最終的に決定。
4.4
経済成長モデル
4.4.1
生産技術
ソローモデルでは生産技術について規模に関して収穫一定と仮定。
規模に関して収穫一定:投入される生産要素の量と産出される
国内総生産の間に比例関係がある。
2×K
2×Y
(物的資本)K
+K
(国内総生産)Y
2×L
(雇用量) L
+Y
+L
一般的に、投入する生産要素をともにa倍すると
生産される国内要素もa倍になる。
一般的に、投入する生産要素をともにa倍すると
生産される国内要素もa倍になる。
(物的資本量) a×K
(国内総生産) a×Y
(労働投入量) a×L
比例係数のaを投入される労働で割った値にしてみよう。
つまり、a=1/Lとおいてみる。
(物的資本量) (1/L)×K
(国内総生産) (1/L)×Y
(労働投入量) (1/L)×L
つまり、雇用量は1(一定の値)となり、生産技術の関係は次のように単純化でき
る。
労働1単位当たりの物的資本:
物的資本(K)
労働投入量(L)
労働1単位当たりの国内総生産:
国内総生産(Y)
労働投入量(L)
これを1人あたりの生産技術もしくは1人当たりの生産関数という。
4.4.2
限界生産力逓減
資本の限界生産力が逓減するとは・・・
資本投入量が少ないと
きに、資本1単位の追加
により増える産出量
>
資本投入量が大きいとき
に、資本1単位の追加に
より増える産出量
この追加的な変化を限界的な変化と呼ぶ。
<
例
労働者が10人・機械10台で生産しているときに、
もう1台機械を追加したときの産出量の増加
労働者が10人・機械100台で生産しているときに
もう1台機械を追加したときの産出量の増加
前者のほうが追加した1台の機械がありがた~い存在!
グラフでみてみよう。
労働1単位あたりの
国内総生産(Y/L)
1人あたりの生産関数
(D)
(C)
(B)
(A)
労働1単位あたり
の物的資本
(A)労働1単位あたりの物的資本の投入が少ないとき、
労働1単位あたりの物的資本の投入を増やすと(B)だけ国内
総生産が増加。
(C)物的資本の投入が増えたとき、同じだけ物的資本の投入
を増やしても(D)しか国内総生産は増えない。
4.4.3 ソロー・モデル
今年の経済
来年の経済
b
今年の
労働投入量(L)
来年の
労働投入量(L)
a
1-s
来年の
国内総生産(Y´)
消費
今年の
国内総生産(Y)
1-s
s
貯蓄
c
=
投資
s
追加される資本
今年の
物的資本量
今年の
物的資本量
来年の
物的資本量(K´)
この流れについて式で考えてみる。
Y(今年の国内総生産)×s =S(今年の貯蓄)=I(今年の投資)
K(今年の物的資本量)+I(今年の投資)=K’(来年の物的資本量)
(4.1)
(4.2)
上の2式より
K(今年の物的資本量)+s×Y(今年の国内総生産)=K’(来年の物的資本量)
(4.3)
(4.3)式の両辺をL(今年の労働投入量)で割る。
K(今年の物的資本量)+s×Y(今年の国内総生産) = K’(来年の物的資本量) (4.4)
L(今年の労働投入量)
L(今年の労働投入量)
労働投入量は毎年同じであると仮定されているので(4.4)式は次のように変形できる。
K(今年の資本投入量)
s×Y(今年の国内総生産)
K’(来年の物的資本量)
+
=
(4.5)
L(今年の労働投入量)
L(今年の労働投入量)
L’(来年の労働投入量)
物的資本と国内総生産は労働投入1単位あたりで測られているので、次のように変形できる。
k(今年の1人あたりの物的資本量)+s×y(k)(今年の1人あたりの国内総生産)
=k’(来年の1人あたりの物的資本量)
(4.6)
さらに、(4.6)式の両辺を今年の1人あたりの物的資本量で割ると次の式を得る。
k (今年の1人あたりの物的資本量 )
y (k )(今年の
1人あたりの国内総生産 )
 s
k(今年の
1人あたりの物的資本量 )
k(今年の
1人あたりの物的資本量 )
=
よって、
1  s
k '(来年の
1人あたりの物的資本量 )
k(今年の
1人あたりの物的資本量 )(4.7)
y (k )(今年の1人あたりの国内総生産 ) k '(来年の1人あたりの物的資本量 )
=
k(今年の1人あたりの物的資本量 ) k(今年の1人あたりの物的資本量 )
(4.8)
右辺の意味するもの・・・今年から来年にかけてどれだけ物的資本が増加したかを示
す伸び率。つまり、
y (k )(今年の1人あたりの国内総生産 )
=1 gk 物的資本の成長率
k(今年の1人あたりの物的資本量 )
(4.9)式を新古典派成長理論の基本方程式という。
1  s

・貯蓄率sが増加すると物的資本の伸び率が増加するので、貯蓄率の高い国は経
済成長が速いこと
・時間が経つと物的資本は増え、国内総生産も増えるが、資本の限界生産力が逓
減するので国内総生産の伸びは資本の伸びを下回るようになること
(4.9)
2点目から次のことがいえる。
物的資本が増える→物的資本の成長率は低下
逆に言うと、
物的資本の水準が低い→経済の成長率が高いといえる。
資本の量が少ない国の方が物的資本を増やすことにより産出量を増や
すことが容易。資本量が少ない国は、当然産出量も少ない、すなわち
まだ豊かになっていない国だといえる。しかし、このような国の方が
産出量の大きな増加を見込める。
つまり高い経済成長を達成できる可能性があることを意味している。
4.5
経済成長を促進する要因
労働1単位あたりの
国内総生産(Y/L)
1人あたりの生産関数
より多くの
生産!
労働1単位あたり
の物的資本
点線から実線へのシフトは、より効率的に資本と労働の結合
による生産が行われることを示す。
この要因は、技術の進歩と人的資本の成長にある。
4.5.1
技術進歩
ソロー・モデルでは資本の限界生産力が逓減すると仮定した。
これは現実的??
工業化を達成したイギリスで資本の限界生産力がほとんど0に
なるまで 低下したとは考えられない。
では、資本の限界生産力の逓減を阻止する要因はあるのだろうか?
その大きな要因が技術進歩
技術進歩
企業
他社にはない新しい製品を作ろう.
そのためにも研究開発が必要だ!
その新しい技術・製品の特許を
とれば,利潤を独占できるぜ
研究開発が資本の限界生産力の低下を補っても余り
ある成果をもたらせば、経済は持続して成長してゆける
可能性がある。
では、研究開発を行わせる誘因は何だろうか?=利潤
この利潤を保護するために、研究開発の成果を特許制度で守る。
4.5.2
人的資本
・人的資本:労働者が教育・訓練などを通じて獲得する知識や熟練
のこと。
労働者の健康水準も広い意味では人的資本といえる。
・教育により人的資本は増加する。しかしこのとき、トレードオフ
が存在。
プラスの効果
教育により個人の能力が上昇して、教育を受けた個人
が受け取る賃金が上昇すること。
教育を受けるコスト
マイナスの効果
学費・教材などの直接的なコスト
教育を受けている間に働いて
得られたであろう所得=機会費用
教育には次の2つの性質がある。
(a)外部効果
教育をある個人が受けるとそれが他の個人に対してもプラスの効
果を発揮する場合がある。
・集団で作業を行うときの円滑な意思疎通
・教育により能力の上昇した個人の成果、アイデアはコストなし
で他の人も利用できる。
このような外部効果は教育を受けようとする個人の便益として意
識されないので、ほうっておくと個人が自発的に受ける教育の水
準は低くなってしまう可能性がある。
→教育に対する政府の補助金が必要。
(b)シグナル効果
例えば、就職活動のとき。
企業は求職活動をしている学生の能力を完全に把握できるわけでは
ない。その際、学生の能力を知るために払うコストを節約するため、
その学生が有名大学の学生であるかどうかという情報を学生の能力
を示す情報と考えて学生を選別することがある。
こういったシグナルの獲得は生産性を上昇させない。
むしろ受験競争などの無用な資源の浪費を招く可能性がある。
そのような浪費は資本設備を増やす投資を減少させて
経済成長にマイナスの効果をもたらす可能性がある。
4.6
人口の変化
ソロー・モデルでは雇用量は変化しないと仮定して分析を進めた。
しかし、長期的に見れば人口の変化に伴って雇用量も変化するはず。
では、人口はどのような要因によって決定されるのだろうか?
子供の数の決定は親によってなされる。
子供を持つことには大きなコストも発生。
1.1人にかける費用はそれほど変化しないコスト
⇒子供に着せる服や食事にかかる費用
2.経済の成長とともに大きくなっていくコスト
⇒教育にかかる費用
(初等教育だけでなく高等教育も必要になってくると、
子供1人の教育費用が増えてゆく。)
3. 親の所得上昇に伴う費用
子育てをするためにはある期間仕事量を減少させなけれ
ばならない。親の所得は子供をもつことの機会費用となる。
したがって、経済成長が進むと、
子供を持つことの喜びは変化しない。
一方、子供を持つことの費用だけが増えてゆく。
経済成長とともに出生率は減少
また、経済成長とともに食事・衛生状態の改善、医療技術の進歩
高齢化の問題
よく指摘されること・・・高齢化が進行すると貯蓄が減少してゆく
から経済成長に悪影響。貯蓄の減少が投資の減少を招いて経済成長
を遅らせる。
しかし、事態はそう簡単ではない!
高齢化が進行=老後の時間は長くなる よって、人々は働ける間に
働き、貯蓄をして長い老後に備えようとする。つまり、老年世代の
貯蓄の減少と若い世代の貯蓄増加のどちらが上回るかが問題となる。
4.7 インフラストラクチャー:基盤
経済成長を支えるさまざまな基盤が存在。
最も重要なものの一つが所有権、ある財は誰かのもの!所有権の
移転のためにお金が支払われる。
特許制度は技術に対する所有権を確定させるもの。
所有権が確定した社会は、市場がうまく機能する資本主義社会。
逆に、所有権を放棄しようとした社会は社会主義社会。
その他インフラ・・・・
政府が提供する道路や港湾などの施設
裁判所や警察など、政府が提供する法的システム