20131013 csw kiso2

Download Report

Transcript 20131013 csw kiso2

基礎研修Ⅰ 2-2
倫理綱領(行動規範)の理解
岐阜県社会福祉士会 会長 宮嶋 淳
日本社会福祉士会が示した資料を基に、宮嶋が改変
倫理綱領とは
• 社会福祉士として「望ましい行動」の基になる
もの。(=専門性発揮のための基盤)
• 倫理綱領(code of ethics)=専門職の専門職
性を示すツール
• 「知識」「技術」を用いる際の、実践の方向性
を指し示す。(=行動指針)
倫理綱領とは
例)
利用者の家族がケアの内容をすべて決定
し、本人の意思を反映していないとき。
• なぜ、いけないのか。
• 実践はどうあるべきか。
こういったことに直面した際の、行動(介入)の指針
倫理綱領の役割
1. 「社会福祉士とは?」を広く社会や他の専門
職に知らしめる。
– 市民や利用者、他の専門職や社会に向け、発
信する。
2. 「社会福祉士とは?」を自らに問いかける際
の指針。
– 社会福祉士として日々活動するとき
– 新しいニーズが生起、あるいは顕在化したとき
– 専門性を研鑽し向上させるとき
倫理綱領の機能
1、実践の管理
– 価値の共有
– 利用者と専門的援助関係&職場のルールと法令
– SVと研究、権利擁護の仕組みづくり
2、専門職能団体が、専門性を守る。
– 苦情に対する、自律・自浄システムとしての懲戒。
– 倫理綱領(行動規範)に基づく実践=誹謗中傷の疑
い。
倫理綱領の機能
• ソーシャルワーク系団体いずれに入会する場
合も、倫理綱領遵守を誓約する
「会員である」=倫理綱領を守り、
倫理綱領に基づく実践を行い、
法と倫理綱領を意識して
専門性の向上を行うことが求められる。
倫理綱領制定までの歩み
• 欧米のソーシャルワークの動き
ソーシャルワーク専門職団体が技法ごと
(ケースワーク、グループワーク、CO)に
分かれてしまった。
→統合化するのに歴史が必要であった。
ジェネラリスト・ソーシャルワークの構築が
必要。
倫理綱領制定までのあゆみ
• すべてに共通するソーシャルワーク専門性の
要(かなめ)として、専門職の価値と倫理原
則、倫理基準をまとめる。
→倫理綱領の体系化
• 国際ソーシャルワーカー連盟(IFSW)への加
盟の条件として、倫理綱領を定めていること
がある。
倫理綱領制定とわが国の動き
1960 日本ソーシャルワーカー協会設立
(その後、活動休止)
1983 日本SWr協会の再建準備検討会
1986 日本SWr協会が「SWrの倫理綱領」を
採択する。
1989 「社会福祉士」誕生
倫理綱領と日本士会
1989 日本SWr協会内に、「社会福祉士部
会」が誕生
1993 日本社会福祉士会の設立
1996 社団法人化
* 1993年の専門職団体設立当初から「ソー
シャルワーカーの倫理綱領」を採択し、法人
化後も引き継がれる。
倫理綱領改訂の動き(2000年)
• IFSW国際会議において「ソーシャルワーク
の定義」改正された。 (2000年)
– 介護保険制度がスタートし、社会福祉基礎構造
改革が本格的に始まる。
– 日本社会福祉専門職団体協議会(日本医療社会福
祉協会、日本精神保健福祉士協会、日本ソーシャルワー
カー協会、日本社士会)において、倫理綱領改訂を
協議した。
新・倫理綱領の採択(2005)
• 社会福祉専門職団体協議会それぞれが、同
じ文章の倫理綱領を採択した。
– 本会は、倫理綱領にあわせて独自に「社会福祉
士の行動規範」を採択し、具体的な実践現場で
の指針をより明確に示した。
– 普及のための広報・宣伝、教育
→「倫理綱領の解説書」を全会員に配布
→倫理綱領伝達研修の実施
倫理綱領の構造
前文
ソーシャルワークの定義
倫
理
綱
領
の
体
系
価値と原則
倫理基準
行動規範
各領域における行動指針など
改訂 社会福祉士の倫理 実践ガイドブック
中央法規2007 P.7図1-1
領域の広がり
倫理綱領の構造
• 最上位には、
「前文」と「ソーシャルワークの定義」をおく。
– 「人間と社会」に対する私たちの認識と、専門職と
しての存在価値をあらわす。
– ソーシャルワークの定義を位置づけることによ
り、実践の拠り所を明確にする。
– それを遵守する者によって専門職団体を構成。
倫理綱領の構造
• 「価値と原則」
① 人間の尊厳
② 社会正義
③ 貢献
④ 誠実
⑤ 専門的力量
→以上、5つの「価値」とそれに続く言葉が
「原則」である。
倫理綱領の構造
• 価値と原則
① 人間の尊厳
② 社会正義
→「普遍的価値」あるいは「根幹的価値」
倫理綱領の構造
• 価値と原則
③ 貢献
→「普遍的価値」に「貢献する」ことを指す
→「中間的価値」と呼ばれる
倫理綱領の構造
• 価値と原則
④ 誠実
⑤ 専門的力量
→「手段的価値」
→「誠実」は、倫理綱領に誠実であること
→「専門的力量」は、専門職としての専門性を象徴
→専門職としての「姿勢・態度」であり、
実践につながる
倫理綱領の構造
• 倫理基準と行動規範
① 利用者
② 実践現場
③ 社会
④ 専門職
以上、4群の倫理基準が定められ、倫理基
準の実践ガイドラインとして行動規範が位置
付けられている。
各領域における行動指針等
– 倫理綱領・行動規範に基づいて定められた様々
な職種における指針である。
– 「私たちのやくそく~信頼される介護支援専門員
になるために~」などがある。
社会福祉士が果たす職務は様々であり、
必要な知識・技術や業務指針は異なる。
倫理綱領・行動規範と実践
• 利用者に対する倫理責任
1. 利用者との関係
2. 利用者の利益の再優先
3. 受容
4. 説明責任
5. 利用者の自己決定の尊重
6. 利用者の意思決定能力への対応
倫理綱領・行動規範と実践
7. プライバシーの尊重
8. 秘密の保持
9. 記録の開示
10.情報の共有
11.性的差別、虐待の禁止
12.権利侵害の防止
以上、12項目の倫理基準と行動規範
策定時、13や14が今後、生じることを念頭においた
倫理綱領・行動規範と実践
• 利用者に対する倫理責任
「利用者との関係」
→専門的援助関係を大切にする
→パートナーシップも重視する
「価値と原則」にある「かけがえのない存在として
尊重する」ことをふまえ、専門的援助関係を構築
し、利用者に「専門的力量」を用いて、「貢献する
(=サービス、後見)」。
倫理綱領・行動規範と実践
• 利用者に対する倫理責任
利用者の意思決定能力に対する対応
→エンパワメントやアドボカシーなどSW実践に
高い専門性を要求されている。
権利侵害の防止
→権利侵害(家族・施設職員・雇用者、そして
自らが含まれることに注意)に気づき、システ
ムを構築して防止を実践する
利用者に対する倫理責任
• プライバシーの尊重
秘密の保持
記録の開示
情報の共有
→記録及び情報管理について、個人情報保護法などの関連法を理解
し、情報を適切に管理したうえで本人のために利用する。
* 倫理というより「コンプライアンス(法令遵守)」規定に
なっていることに注意
実践現場における倫理責任
•
•
•
•
最良の実践を行う責務
他の専門職との連携・協働
実践現場と綱領の遵守
業務改善の推進
→援助者が利用者と関係を構築している内側を
「実践現場」と規定している。
→外側にあたるのが「社会(環境)」
* 職場の「ルールや規則」に拘束される規定
になっていることに注意
実践現場における倫理責任
最良の実践を行う責務
→専門的力量の向上に努めること
→生涯研修制度に裏付けられた倫理基準
* これも「法」や「認証」との関連を再検討する必要がある
他の専門職との連携・協働
→連携・協働の目的は、利用者の最善の利益のため
→サービスの改善・社会資源の開発に取り組む
実践現場における倫理責任
実践現場と綱領の遵守
→現場で倫理綱領が熟知される
→倫理的ディレンマが生じた場合、
倫理綱領に照らして、サービス提供のあり方
を吟味する
業務改善の推進
→利用者の声に耳を傾ける
→常に業務を評価し見直す姿勢
* 職場に「倫理綱領を伝えているか」?
倫理綱領・行動規範と実践
• 社会に対する倫理責任
1. ソーシャル・インクルージョン
2. 社会への働きかけ
3. 国際社会への働きかけ
→「社会(環境)」を外側の世界、マクロの環境としてとらえ
る。
* IFSWの認識からすると、「自然環境」を如何にSWrがとら
えるのか、再考する必要がある。
倫理綱領・行動規範と実践
• 社会に対する倫理責任
ソーシャルインクルージョン
→あらゆる差別、貧困、抑圧、排除、暴力、環境
破壊などから守ること
→「社会正義」とは何かを具体的に示し、内容を
明確にしている
倫理綱領・行動規範と実践
• 社会に対する倫理責任
社会への働きかけ
国際社会への働きかけ
→地域福祉・権利擁護の推進
→災害など緊急事態への取り組み
→国際社会におけるソーシャルインクルージョン
活動への協力
倫理綱領・行動規範と実践
• 専門職としての倫理責任
1.
2.
3.
4.
5.
6.
7.
専門職の啓発
信用失墜行為の禁止
社会的信用の保持
専門職の擁護
専門性の向上
教育・訓練・管理における責務
調査研究
倫理綱領・行動規範と実践
• 専門職としての倫理責任
専門職の啓発
信用失墜行為の禁止
社会的信用の保持
→専門職の責任として社会から信用を得る
→その信用を保持する
→信用を失墜しない
→一人ひとりだけでなく、皆が団体として連帯で
取り組む
専門職としての倫理責任
専門職の擁護
→人間の尊厳、社会正義の実現のために、
不利益を被ることもありうる
→専門職として、連帯して不当な扱い・批判から擁護する
* 何を意味しているのか、真摯に考える必要がある
* 世界を見渡してみると、「国家対市民」は今だ、
対立・闘争・侵害の中にある。
専門職としての倫理責任
 専門性の向上
→研修のあり方を表裏からあらわす
→社会福祉士は生涯にわたって研修を行う
 教育・訓練・管理における責務
→専門性を磨くこと
→後進を育成すること
◆調査研究
→利用者に不利益がないように配慮する
まとめ
• 倫理綱領は社会福祉士の実践を裏付け
る。
• 倫理綱領は実践の方向性の指針となる。
• 倫理綱領はあらゆる分野の社会福祉士に
その根拠と共通基盤を与える。
→社会福祉士である限り、倫理綱領・行
動規範を常に意識した実践を行う。