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図書館概論 第8回 図書館法 2013年6月4日(火) 第4時限 R001教室 前回の復習 1. 著作権を主張するためには作品を文化庁に 登録する必要がある。正しいか? 2. 源氏物語は著作権が消滅しているので自由 にコピーできる。正しいか? 3. バッハの曲のCDは自由にコピーできる。正し いか? 4. 図書館は資料複製の自由を有する。正しい か? 5. 19世紀に創設された著作権に関する国際的 な条約の名は? 図書館関係の法律の体系 • 日本国憲法 – 教育基本法 • 学校教育法、学校教育法施行規則 – 学校図書館法→学校図書館 – 大学設置基準→大学図書館 • 社会教育法 – 図書館法→公共図書館 – 国会法 • 国立国会図書館法→国立国会図書館 – その他、裁判所法、地方自治法、身体障害者 福祉法など 日本国憲法 • 「図書館」という言葉はない • 間接的には以下のような条文が関連 • 第21条 集会、結社、表現の自由と検閲の 禁止、通信の秘密 • 第23条 学問の自由 • 第25条 生存権および国の社会的使命 – 健康で文化的な最低限度の生活を営む権利 • 第26条 教育を受ける権利と受けさせる義 務 教育基本法(1) • 1947年3月制定、2006年12月改正 – 教育基本法資料室(文部科学省) • • • • 日本国憲法の精神にのっとり制定(前文) 生涯学習の理念を追加(第3条) 教育の機会均等(旧3条、新4条) 義務教育(旧4条、新5条) – 男女共学(旧5条)は削除 • 学校教育(第6条) 教育基本法(2) • 社会教育(旧7条、新12条) – 2 国及び地方公共団体は、図書館、博物館、 公民館その他の社会教育施設の設置、学校の 施設設置、学校の施設の利用、学習の機会及 び情報の提供その他の適当な方法によって社 会教育の振興に努めなければならない。 • 教育行政(旧10条、新16条) • これを受けて学校教育法、社会教育法が制 定 学校教育法(1) • 教育基本法の下位法として1947年制定 • 学校教育全般にわたる基本的な法律 – 学校とは、小学校、中学校、高等学校、中等教 育学校、大学、高等専門学校、盲学校、聾学 校、養護学校及び幼稚園 • 第3条 学校を設置しようとする者は、学校 の種類に応じ、文部科学大臣の定める設 備、編制その他に関する設置基準に従い、 これを設置しなければならない 学校教育法(2) • 学校教育法施行規則 – 第1条 学校には、その学校の目的を実現す るために必要な校地、校舎、校具、運動場、図 書館又は図書室、保健室その他の設備を設け なければならない • 小、中、高については学校図書館法制定 (1953年) • 大学図書館の設置根拠は大学設置基準 社会教育法(1) • 教育基本法の下位法として1949年に制定 • 第2条 この法律で「社会教育」とは、学 校教育法に基き、学校の教育課程として 行われる教育活動を除き、主として青少年 及び成人に対して行われる組織的な教育 活動 社会教育法(2) • 第9条 図書館及び博物館は、社会教育 のための機関とする。 2 図書館及び博物館に関し必要な事項は、 別に法律をもって定める。 • これを受けて図書館法制定(1950年) • ここでいう図書館は公共図書館 • 図書館を「社会教育の機関」とすることに 議論があった – 戦前、思想善導の機関とされたことへの反省 国会と裁判所 • 国会法(1947年制定) – 第百三十条 議員の調査研究に資するため、別 に定める法律により、国会に国立国会図書館を 置く。 – これを受けて国立国会図書館法制定(1948年) • 裁判所法(1947年制定) – 第十四条の四(最高裁判所図書館) 最高裁判 所に国立国会図書館の支部図書館として、最高 裁判所図書館を置く。 – 第五十六条の六(最高裁判所図書館長) • 裁判所の職員の中から選ぶ その他の法律(1) • 地方自治法(1947年) – 第100条(調査権・議会図書室) ⑯ 議会は、議員の調査研究に資するため、 図書室を附置し前二項の規定により送付を受 けた官報、公報及び刊行物を保管して置かな ければならない – 第244条(公の施設) 普通地方公共団体は、住民の福祉を増進する目的 をもってその利用に供するための施設(これを公の 施設という。)を設けるものとする →公立図書館 その他の法律(2) • 地方教育行政の組織及び運営に関する法 律(地方教育行政法、地教行法)(1956年) – 第30条 地方公共団体は、法律で定めるとこ ろにより、学校、図書館、博物館、公民館その 他の教育機関を設置する – 第32条 学校その他の教育機関のうち、大学 は地方公共団体の長が、その他のものは教育 委員会が所管する • 公立図書館の所管は教育委員会 その他の法律(3) • 身体障害者福祉法(1949年) – 第三十四条(視聴覚障害者情報提供施設) – これを受けて「身体障害者更生援護施設の設 備及び運営に関する基準」(2000年厚生省令) →点字図書館 • 児童福祉法(1947年) →児童館図書室 戦前の図書館法規(1) • 1899(明治32) 図書館令制定(全8条) – 勅令(帝国議会の協賛を経ず天皇が直接制定 した法) – 道府県市町村、私人、学校が図書館を設置する ことを認める – 公立図書館で閲覧料を取ることを認める • 1906(明治39) 図書館令第6条の改正で司 書の制度化 戦前の図書館法規(2) • 1933(昭和8) 図書館令改正(全14条へ) – 第1条(図書館の目的)に「社会教育ニ関シ附帯 施設ヲ為ス」を追加 • 附帯施設論争:松尾友雄(文部省)vs.中田邦造(当時、 石川県立図書館長) – 中央図書館制度(第10条) – 私立図書館も認可制へ→統制色が強まる – 同年、図書館令施行規則を制定 • 認可の手続き、中央図書館の業務などを規定 • 1947(昭和22)年、日本国憲法の施行により 戦前の勅令は失効 図書館法成立に向けての動き(1) • 裏田武夫・小川剛編著『図書館法成立史資料』 (日本図書館協会, 1968)が、詳細に検証 • 第1期(~1947.4) – 1946.2 GHQ/CIE(民間情報教育局)のLibrary Officer としてキーニー (Philip Olin Keeney)が着任 – 1946.4 第一次米国教育使節団報告書(3.31付) – 1946.4 Unified Library Service for Japan日本に対する 統一ある図書館組織(キーニー・プラン) – 1946.4 文部省、非公式に在京近県の図書館関係者を 招き会議。「図書館法規に規定さるべき事項」策定 図書館法成立に向けての動き(2) • 第1期(~1947.4 続き) – 1946.6 全国中央図書館館長会議 • 「図書館法規に規定さるべき事項」討議 – 1946.12 文部省「公共図書館制度刷新要綱案」 – 1947.5 キーニー解任され帰国 • 第2期(1947.5~1949.3) – 金曜会 • 日本図書館協会が主催し、CIE、文部省および東京近辺の図 書館関係者が参加して図書館法案を検討 – 1947.9 都道府県中央図書館長会議、日本図書館協会 の協議会で公共図書館法案を討議 図書館法成立に向けての動き(3) • 第2期(続き) – – – – 1948.2 国立国会図書館法成立 1948.3 公共図書館法案文部省社会教育局文化課案 1948.9 第1回公共図書館法委員会 1949.2 「公共図書館法案 文部省」 • 国会には法案提出できず • 第3期(1949.4から図書館法成立まで) – 文部省文化課廃止、社会教育施設課に担当が移る • 1950.4 図書館法公布 – 同年5月、当時の文部省社会教育局長・西崎恵(めぐ む)『図書館法』(羽田書店)出版 2008年の図書館法改正(1) • 2006年の教育基本法改正を受けて、関連 する法律の改正を中央教育審議会生涯学 習分科会制度問題小委員会で審議 • 日本図書館協会は意見書を提出するなど の取り組みを行う • 2008年6月、社会教育法等の一部を改正す る法律が第169回国会で可決成立 2008年の図書館法改正(2) • 教育基本法の改正を踏まえた規定の整備(第3条 及び15条) – 社会教育活動、家庭教育の文言追加 • 図書館の運営状況に関する評価、改善、情報提 供(第7条の2から4まで) • 司書資格取得要件の見直しと資質の向上(第5条 及び7条) – 大学において履修すべき図書館に関する科目を,文部 科学省令で定める • 図書館法施行規則の一部を改正する省令→別添 2に科目対照表 図書館法の構成 • • • • 第1章 総則(第1~9条) 第2章 公立図書館(第10~23条) 第3章 私立図書館(第24~29条) 附則 図書館法の主な条文(1) • 第1条(目的) 社会教育法の精神に基き、図書館の設置 及び運営に関して必要な事項を定め、そ の健全な発達を図り、もって国民の教育と 文化の発展に寄与する 図書館法の主な条文(2) • 第2条(定義) 「図書館」とは、図書、記録 その他必要な資料を収集し、整理し、保存 して、一般公衆の利用に供し、その教養、 調査研究、レクリエーション等に資すること を目的とする施設 – 公立図書館:地方公共団体の設置する図書館 – 私立図書館:日本赤十字社又は一般社団法人 若しくは一般財団法人が設置(学校は除く) 図書館法の主な条文(3) • 第3条(図書館奉仕) *次の事項の実施に努める 1. 図書館資料を収集、一般公衆の利用に供する 2. 資料の分類排列を適切にし、目録を整備 3. 職員が資料について十分な知識を持ち、その利用の ための相談に応ずる 4. 他の図書館と緊密に連絡・協力、資料の相互貸借 5. 分館の設置、自動車文庫の巡回 6. 読書会、研究会、鑑賞会、資料展示会などの主催 7. 時事に関する情報及び参考資料の紹介、提供 8. 社会教育における学習成果活用の機会を提供 9. 学校、博物館、公民館、研究所等と連絡・協力 図書館法の主な条文(4) • 第4条(司書及び司書補) 専門的職員 – 図書館に必ず置くという規定ではない • • • • • • • • 第5条(司書及び司書補の資格) 第6条(司書及び司書補の講習) 第7条(司書及び司書補の研修) 第7条の2(設置及び運営上望ましい基準) 第7条の3(運営の状況に関する評価等) 第7条の4(運営の状況に関する情報の提供) 第8条(協力の依頼) 第9条(公の出版物の収集) 図書館法の主な条文(5) • 第2章 公立図書館 • 第10条(設置) 地方公共団体の条例で定 める – 義務設置ではない、 – 戦前のような認可制でもない • 第13条(職員) 館長ならびに教育委員会 が必要と認める専門的職員、事務職員、技 術職員を置く – 館長が司書資格を有する必要性を定めた第3 項は1999年削除 図書館法の主な条文(6) • 第14-16条(図書館協議会) – 図書館運営に住民の意思を反映させる仕組み • 第17条(入館料等) いかなる対価をも徴 収してはならない – 無料公開の原則の根拠 – cf. 28条(私立図書館は有料可) – 無料公開の意味と範囲が問題 • 第20条(図書館の補助) 国は経費の一部 を補助することができる 図書館法の主な条文(7) • 第3章 私立図書館 • 第25条(都道府県の教育委員会との関係) – 教育委員会は私立図書館に報告を求めることができる – 私立図書館の求めに応じて指導・助言 • 第26, 27条(国及び地方公共団体との関係) – 干渉を加えてはならない – 補助金を交付してはならない – 必要な物資の確保につき、援助を与えることができる • 第28条(入館料等) 徴収することができる 第8回のまとめ • 図書館関係の法律の体系 • 戦前は図書館令、終戦直後から図書館法制 定の動き、1950年公布 • 2006年の教育基本法改正に伴い、図書館 法も改正(2008年) • 図書館法は社会教育法に基づき、公共図書 館(公立図書館、私立図書館)について規定 • 図書館奉仕、司書、設置、図書館協議会、 公立図書館の無料公開などを定める