福島後のエネルギー戦略 75分
Download
Report
Transcript 福島後のエネルギー戦略 75分
福島後のエネルギー戦略
東日本大震災以後のエネルギーはどうする?
安井 至
東京大学名誉教授、国際連合大学名誉副学長
(独)製品評価技術基盤機構理事長
http://www.yasuienv.net/
1
Energy Consumption
Kg Oil Eq. per capita
ジャパン・アズ
・ナンバーワン
1994
1973
1987
バブル経済
1960
岩戸、いざなぎ景気
GDP per capita (PPP in $)
2
経済発展に必要なエネルギー量
Costa Rica
2050
Japan
3
2050年日本の将来人口(
<国立社会保障・人口問題研究所の推計>
出典:国土交通省 「長期展望に向けた検討の方向性について」p4.より引用
4
2050年日本の排出量
14
なりゆき
ケース
エネルギー起源CO2排出量(米国エネルギー省 オークリッジ国立研究所,1965年まで表示)
エネルギー起源CO2排出量(国際エネルギー機関)
CO2排出量(億トンCO2)
12
エネルギー起源CO2排出量(環境省)
10
8
6
4
1990年
比80%
削減
2
0
1950
1970
1990
2010
2030
出典:国立環境研究所AIMプロジェクトチーム「中長期ロードマップを受けた音質効果ガス排出量の試算(再計算)」,H21,12,21.より作成
★
2050
5
総発電量推移
6
原油輸入状況の推移
7
天然ガス輸入量推移
8
石炭輸入生産量推移
9
燃料の特性と今後の使い方
石油(2億トン):当初すべてのエネルギー源、
→ 液体燃料(ガソリン4千万トン、軽油2千万トン、灯
油3千万トン)と化学品原料(1千万トン)へ
石炭(2億トン):発電用エネルギー(一定の出力用)
→ 変わらないが、発生する二酸化炭素は捕集し、
隔離する用途=CCS
天然ガス(7千万トン):発電用(出力変化に強い)、都
市ガス用
→ 大型トラックなどの輸送用
→ 家庭用燃料電池で発電用
バイオマス(3百万トン):熱利用と発電用 変わらない
10
様々なエネルギー源の特性
水力発電:本当の自給エネルギー
揚水発電:もともと原子力との組み合わせ用
現状=1990年代に相当増加し、主力に。
特性=出力を一定での発電に適す。二酸化炭素発生量が最大。石炭
灰が出る。コストはそこそこ安い。資源もまだある。
天然ガス火力発電:そのうち高価になるか
現状=発電能力は割合と大きい
特性=原子力発電によって、深夜に汲み上げ、ピーク時に発電。5時
間程度分の水しかない。
石炭火力発電:かなり長期間使える
現状=日本では開発済。中小水力は残るが、原発2~3基分程度か
特性=立ち上がりが早い。本当の自給エネルギー
現状=このところ増加し、まさに主力に。
特性=天然ガスは最近資源量が増えた。高効発電が可能。
石油火力発電:コストが高いので、ピーク時対応
11
ベースロード 深夜電力はなぜ安い
真夏
晴天時
12
続き
原子力発電:
風力発電
現状=日本に54基あった。しかし、今後、老朽化したもの
から廃炉になるか?
特性=出力調整は行わないので常に一定の出力。燃料
代だけを考えると、もっとも安価。核燃料の最終処分と、事
故のリスクが厄介。
現状=世界で200GW、日本2GW(原発2基分の容量、発
電量は1/4にして0.5基分)
特性=日本の風の状況は気まぐれ。台風、落雷などあり。
太陽光発電
現状=80万戸、4kWとすれば、発電容量は320万kW。
原発3基分だが、発電量は1/8にして原発0.4基分。
特性=お天気次第。家庭用なら、個々の容量が少ないの
13
で、問題は無い。
海洋エネルギー群
波力発電
潮流・潮汐発電
現状=未開発、波による発電なので、不安定
特性=小規模な発電は可能かもしれない
現状=未開発。開発されれば、予測可能
特性=場所が限定される。例えば、津軽海峡
海流発電 例:黒潮発電
現状=未開発。本当に可能か?
特性=どうやって、電力を輸送するのか。
14
基本的な考え方
消費者の選択に沿った形で、進める
日本国民は、古い原発から廃炉、新規は当面無しという選択
をすることになるだろう(確率90%)。
「絶対に停電しない、いくらでも使える、しかも値段が安い」電
力を望んでも、無い物ねだり。
妥協点:「できるだけ停電しない、量もまあ足りる程度、価格
もそれほど高くない」電力を目指すとしたら、これから示すよ
うな考え方になるのではないか。
まず、妙な機器を導入して、Lock-inすることを避ける。コスト
的に妥当な経路を経る。
ただし、政治的な視点からは、この方法が正しくない可能性
はある。口頭で説明。
15
エネルギーの選択は、リスクとコストと
のトレードオフ。想定すべき事項
(1)エネルギー供給不足
(2)エネルギー価格の高騰
(3)電力供給不足による大停電
(4)電力料金高騰のリスク
(5)想定外の停電の有無
(6)使用済み核燃料の対応未定
(7)現存の、特に古い原発のリスク
(8)低い自給率による供給変動のリスク
(9)2020年の温暖化予測への対応
(10)2050年の温暖化予測への対応
16
最重要事項:電力網の変更をどうするか。
最終的には、直流幹線網
その前に、できれば、電力網を小さくする
その前に、オフラインローカル送電網
その前に、ガス供給網との連携
これらをいつやるのか。コスト的には、できるだけ遅
らせるのが国民視点からも得策
最大の挑戦課題が、省エネ・高効率化をどこまで!
17
未来を見る
2020年中期目標
◆鳩山国連演説 2009年9月
2050年長期目標
◆安倍G8演説 2007年7月
2020年 GHG25%削減(国内・国外)
2050年 GHG80%削減(国内)
環境省は15%程度が適切と考えている?
多くの関係者も、この数値は無理だと考えている?
しかしダーバンCOP17次第
日本は少なくとも京都議定書単純延長には反対する?
18
2050年日本の排出量
1200
350
300
250
200
150
運輸
100
50
0
産業
民生
2005
運輸
4割減
運輸
民生
産業
2050
最終エネルギー消費量
900
民生
1990年比
▲8割
600
運輸
300
産業
産業
2005
CO2換算百万トン
石油換算百万トン
400
これが実現でき
れば80%削減
が可能との試
算あり
0
2050
CO2排出量
3.11の事態を含まない 含めれば6割減か
出典:脱温暖化2050プロジェクトスナップショットモデルの試算結果より作成
19
自然エネルギーの分類
1.安定型自然エネルギー
2.不安定・予測可能型自然エネルギー
水力、地熱、中小水力
バイオマス
太陽熱温水器
スマートメーターを付加した太陽光
将来:潮流発電、潮汐発電
3.不安定・予測不能型自然エネルギー
風力、波力(天気予報程度では可能)
20
現実的アプローチ その1
Ⅰ.すぐやること
1.省電15%。最初は節電で、その後は、省エ
ネ機器の開発で。
2.安定型再生可能エネルギー、地熱、中小水
力を最大量導入(10年掛かる)
3.太陽光発電は、自家用のものは無制限で導
入、スマートメータ付きで、ちょっと先が読めるよ
うにすること
4.風力、メガソーラーは、発電容量で10%を上
限として推進。
21
Energy Consumption
Kg Oil Eq. per capita
ジャパン・アズ
・ナンバーワン
1994
1973
1987
バブル経済
1960
岩戸、いざなぎ景気
GDP per capita (PPP in $)
22
Trend in COP
効率係数
エアコンのCOP推移
Now
>6
Introduction
Top Runner
By METI
最近では、
自動お掃除
Self-cleaning
Air conditioner
1970
80
90
00
23
トップランナー方式
公平な比較のために、
多くの区分に分割。
エアコンだと、
冷暖房用、冷房専用、マルチ、
サイズ、能力などなど
2010冷凍年からは4区分
32 categories for Air Conditioners; 4 from 2010
24
京都議定書
自動車:クリーンな排ガス
飛行機:燃費向上
プリウス発売
25
飛行機だけは、方向転換済み
ボーイング747:初飛行 1969年
747-400:現行モデル
747-8:次世代モデル
超音速機コンコルド
初飛行 1969年
退役:2003年11月
26
さらなる省エネ・新コタツ文明とは
必要なとき
必要なところに
必要なサービスを
必要な量だけ
cf.西欧流は、
セントラルヒーティング
27
発想の原点となった製品
パナソニック
ビューティートワレ
=便座瞬間加熱
(人感センサーによって
起動:6秒)
=温水瞬間加熱
(使用する水のみ加熱)
「必要なときだけ、
必要なところだけ」
28
連結可能な電気自動車2050
二人乗り 電気自動車 航続距離は30km
現実的アプローチ その1
Ⅰ.すぐやること
1.省電15%。最初は節電で、その後は、省エ
ネ機器の開発で。
2.安定型再生可能エネルギー、地熱、中小水
力を最大量導入(10年掛かる)
3.太陽光発電は、自家用のものは無制限で導
入、スマートメータ付きで、ちょっと先が読めるよ
うにすること
4.風力、メガソーラーは、発電容量で10%を上
限として推進。
30
安定型再生エネルギーの必要性
水力
火力
すべての発電機は、周波数だけで
なく、位相も合わせて発電を行っている
31
50Hzと49Hzとの交流を単純に混合した場合
32
日本流スマートグリッド by 2020
既存の発電
(化石燃料, 原発, 水力)
新規自然エネ
スマートメーター
需要
大容量電池(NAS 電池)
電気自動車 (Li 電池)
33
地熱
日本最大の地熱発電所は九州の八丁原
バイナリー発電も試験中
イスラエル オーマット社製 2000kW
東北地方にもポテンシャルがある
55000kWが2基
日本全体で、原発2.5~3基分ぐらいか
未来は、高温岩体発電か
34
中小水力 と 揚水発電
発電所出力=9.8×使用水量(m3/s)
×有効落差(m)×効率
効率=水車効率×発電効率=0.9×0.95
原発2~3基分は行けるか
揚水発電 この逆をやって揚水
総合効率=0.7ぐらい
これまで、原発の夜間電力で揚水していた
これを揺らぐ風力の電力で揚水??
35
現実的アプローチ その1
Ⅰ.すぐやること
1.省電15%。最初は節電で、その後は、省エ
ネ機器の開発で。
2.安定型再生可能エネルギー、地熱、中小水
力を最大量導入(10年掛かる)
3.太陽光発電は、自家用のものは無制限で導
入、スマートメータ付きで、ちょっと先が読めるよ
うにすること
4.風力、メガソーラーは、発電容量で10%を上
限として推進。
36
IT技術によって、未来を読む
太陽電池の発電量をモニターできるスマー
トメータを付けることによって、発電量の増
減の予測が可能。
37
現実的アプローチ その1
Ⅰ.すぐやること
1.省電15%。最初は節電で、その後は、省エ
ネ機器の開発で。
2.安定型再生可能エネルギー、地熱、中小水
力を最大量導入(10年掛かる)
3.太陽光発電は、自家用のものは無制限で導
入、スマートメータ付きで、ちょっと先が読めるよ
うにすること
4.風力、メガソーラーは、発電容量で10%を上
限として推進。
38
現実的アプローチ その2
Ⅱ.5年後から10年後にやること
5.家庭用SOFC型燃料電池を導入し、電・熱同時供
給型の電力網とする。
6.電気自動車などの充電用電力も、取り敢えずこれ
で供給するが、やはりかなり高くなる。
Ⅲ.20年後にやること 2030年
8.多少、グリッドサイズを小さくする。
9.海流発電、潮流発電などが貢献している。
10.停電をある程度常態化することで、家庭用電池
が普及するので、これを活用する?
11.オフラインローカル電力網を作り、電気自動車・
プラグインハイブリッド車の充電に使う。
39
電・熱複合型スマートグリッド
発電所(化石燃料+CCS,
水力、地熱、海洋)
自家用
太陽光
スマートメーター
小規模
風力
需
要
電・熱供給
燃料電池
都市ガスなど
40
Solid Oxide Fuel Cell=SOFC
今年度中には販売される? → 10月17日から
固体酸化物型燃料電池
運転温度 800~1000℃
燃料は、天然ガス、液体燃料など
電熱同時利用で効率は75~80%
天然ガスを火力発電で使うより高効率
揺らぐ電力を補う追従性
常時運転が条件なので、ベースロードにも
41
現実的アプローチ その2
Ⅱ.5年後から10年後にやること
5.家庭用SOFC型燃料電池を導入し、電・熱同時供
給型の電力網とする。
6.電気自動車などの充電用電力も、取り敢えずこれ
で供給するが、やはりかなり高くなる。
Ⅲ.20年後にやること 2030年
8.多少、グリッドサイズを小さくする。
9.海流発電、潮流発電などが貢献している。
10.停電をある程度常態化することで、家庭用電池
が普及するので、これを活用する?
11.オフラインローカル電力網を作り、電気自動車・
プラグインハイブリッド車の充電に使う。
42
現在のグリッドは大きい
東京電力管内=群馬県、栃木県、茨城県、
埼玉県、東京都、千葉県、神奈川県、山梨
県、静岡県の富士川以東
この全域で周波数が一定、位相も同一
周波数の揺らぎは0.2Hz以内
43
海洋エネルギー
潮流・潮汐・海流、波力、温度差
http://members.jcom.home.ne.jp/umi-totabi/step1-2.html
温度差は日本では無理
その他は? 長期的には、なんとか使える
はずだが。。。
可能性のあるところは、まず津軽海峡
日本海側が潮位が高い
44
オフグリッド利用
不安定な風力、太陽光発電は、電力網に
繋がない利用法
2030年にPlug-in Hybridが乗用車の65
%、EV車が25%になれば、この動力の充
電用に風力、太陽光発電を使う
水素にする方法は?
水素は移動体用の用途が無い
化学原料用はないとは言えない
45
電・熱複合型スマートグリッド
発電所(化石燃料+CCS,
水力、地熱、海洋)
自家用
太陽光
スマートメーター
不安定な
大型
自然エネ
電気自動車
少量の
風力
需
要
電・熱供給
燃料電池
都市ガスなど
ローカルなオフライン第二送電網
46
47
48
社会のグリーン化と消費者マインド
49
過去の環境関連施策と今後の方向性
日本の環境汚染(公害)対策は有効で、世界でももっともキレイ
な国になった=規制
グリーン購入法などで、国、自治体、意識の高い企業はグリーン
購入へ。省エネ家電、自動車の燃費改善進行=規制
気候変動・生物多様性時代になり、地球環境問題を自分のこと
だと考える国民が減少=知識不足・特に未来
そのため、インセンティブを多用した。そのため、エコはエコノミ
ーという考えが普及し、厄介な状況になっている=経済誘導
ISO14000、EA21などの取得企業が増えたが、現時点では頭打
ちから、減少へ=経済誘導
東日本大震災と福島原発事故で、電力不足を経験。節電で夏を
乗り切り環境意識も全般的に向上した=理解と協力
しかし、今後の対策によっては、化石燃料転換を容認し、温室効
果ガスへの意識が低下しないか=知識不足・特に未来
今後、国民の意識をどのように変えるかが、重大な課題。
50
51
52
グリーン・マーケット・プラス研究会資料
53
54
環境意識と支払い意思額
55
56
対応仮説
1.知識仮説
事実関係を知れば、意識が変わる
未来社会、例えば、孫の世代を考えるようになれば、意識
が変わる
2.責任仮説
神との契約を感じる欧米人に対して、日本人のマインドは
「社会的責任」という言葉の影響が弱い
以前の日本では、公私のバランスが適正だった
真=善=美、みっともない、といった感覚は、年齢層によ
っては残っているのではないか
近江商人三方よし
「売り手よし、買い手よし、世間よし」
若干変更して、
「売り手よし、買い手よし、世間よし、ひ孫よし」
57