Transcript 第六回
4.給電線と整合回路 給電線:送信機とアンテナ,アンテナと受信機を結ぶ伝送線路 4.1 各種伝送線路 平行2線式線路,同軸線路,マイクロストリップ線路,導波管 TEM線路:伝送方向に磁界も電界もない(Hz=Ez=0)。 平行2線式線路,同軸線路 TE(Ez=0,Hz≠0)/TM(Ez≠0,Hz=0)線路:TEモードまたはTMモードを導波, 導波管 ハイブリッド線路:TEモードとTMモードが混在 4.2 TEM線路 4.2.1 平行2線式線路 d:線路導体の直径 D:線路間距離 εs:線路の周りの媒質の比誘電率 (比透磁率μ0=1) 線路の単位長あたりのインダクタンス 単位長あたりの静電容量 線路の特性インピーダンス (無損失線路:2.23式) L Z0 C 1 0 s 0 0 log log 2D e 2D e d 1 d s 0 log 120 1 s 2D e log d 2D e d 276 s log 2D 10 d LC 0 log s 0 2D e d log 2D e 0 s 0 c/ s v v d c s 代表的な特性インピーダンスは300Ω 線路が空気中にあるとき伝播速度は光速 例題4.1 d=2mm, D=10mmの平行2線式線路の特性インピーダンス Z0 276 s log 2D 10 d 276 1 log 20 10 276 2 電磁界が線路の外側に分布→線路外電波と干渉 周波数が高くなるにつれ電波放射による電力損失が増す 4.2.2 同軸線路 芯線が誘電体を介して外 側導体で遮蔽されており 放射損を少なくできる。 基本的にTEMモードである が,周波数が高くなるとTE モードやTMモードが発生する。 d:中心導体の直径,D:外側導体の直径,εs:内部誘電体の比誘電率 (比透磁率μ0=1) 線路の単位長あたりのインダクタンスと静電容量 Z0 L C 0 2 LC log 0 2 D e 1 d 2 s 0 log log D 2 s 0 e d log D e D e d 120 2 s log 0 s 0 D e 60 d s c/ s v 2 . 303 log v D 10 d 138 s log D 10 d c s d 3C2V(Z0=75Ω): テレビ受信用,誘電体はポリエチレン,外側導体は網目(可とう性) セミリジッドケーブル(Z0=50Ω): マイクロ波,ミリ波用,誘電体はテフロン,外側導体は銅管(低損失) 例題4.2:d=2mm, D=10mm,εs=2.2の同軸ケーブルの特性インピー ダンス 138 D 138 10 Z0 s log 10 d log 2 .2 10 65 2 4.2.3 マイクロストリップ線路 準TEMモード εs:誘電体基板の 比誘電率 h:誘電体基板の厚さ W:ストリップ線路の幅 t:ストリップ線路の厚さ εf:誘電体基板の実効比誘電率(<εs) 伝送損失は導体損失が支配的 平面回路上にフィルタなどが構成され,電子部品も表面実装できるの で広く用いられる 例題4.3 マイクロストリップ線路の特徴 TEM波に近い伝送モード 特性インピーダンスは線路幅が広く,厚さが薄く,比誘電率が大きい ほど小さくなる 周波数が高いほど損失が大きい 小型で軽量な電子回路が構成できる。 4.3 給電線の整合 スミスチャート •インピーダンス表示 0〜∞の抵抗成分と-∞〜∞のリアク タンス成分 •50Ωを接続したときの反射係数 ZL Z0 ZL Z0 e j 周波数1GHzでのインピーダンスプロット ③1pF: Z in 1 j C j 12 2 1 10 1 10 9 j159 . 15 50Ωで規格化して-j3.183 ⑤1nH: Z in j L 2 1 10 1 10 9 9 j 6 . 28 50Ωで規格化してj0.126 ⑦20Ω+3pF: Z in 20 1 j C 20 j 2 3 10 3 20 j 53 . 05 50Ωで規格化して0.4-j1.061 ⑧の周波数500-900MHzでのプロット 500MHz Z in 50 j L j 2 5 10 8 . 2 10 8 1 50 9 1 j 0 . 515 50 700MHz Z in 50 j L 50 j 2 7 10 8 . 2 10 8 1 50 等レジスタンス円に沿って移動 Y0 1 / Z 0 で正規化 9 1 j 0 . 721 スミスチャートを使ったインピーダンス整合 回路Xに直列接続 •抵抗R: Z R R jX 等リアクタンス円上を移動 •インダクタL: Z R j ( X L ) 等レジスタンス円上を時計回りに移動 •コンデンサC: Z R j ( X 1 /( C )) 等レジスタンス円上を反時計回りに移動 ina in ina ina in in in in in 回路Xに長さLの 伝送線路を直列接 続 線路の電気長 2 L / 中心からの距離を 一定に保ったまま 時計回りに2θ移動 回路Xに並列接続 抵抗R: Y 1 / R G jB 等サセプタンス円上を移動 インダクタL: Y G j ( B 1 /( L )) 等コンダクタンス円上を反時計回りに移動 コンデンサC: Y G j ( B ( C )) 等コンダクタンス円上を時計回りに移動 in in in ina in in in in in インピーダンスマッチングの例 例1 並列コンデンサと直列コンデンサ AからBの移動:等コンダクタンス円上を時計方向に移動。 並列にコンデンサを挿入。移動量は0.56なので 0 . 56 Y 0 C C 0 . 56 Y 0 2 1 10 9 1 . 78 [ pF ] BからCへの移動:等レジスタンス円 を反時計方向に移動。 直列にコンデンサを挿入。 移動量は2.04なので 2 . 04 Z 0 1 C C 1 2 . 04 2 10 50 9 1 . 56 [ pF ] 例2 並列コンデンサと直列インダクタ AからBの移動:等コンダクタンス円上を時計方向に移動。 並列にコンデンサを挿入。移動量は1.36なので 1 . 36 Y 0 C C 1 . 36 Y 0 2 1 10 9 4 . 33 [ pF ] BからCへの移動:等レジスタンス円 を時計方向に移動。 直列にインダクタを挿入。 移動量は2.04なので 2 . 04 Z 0 L L 2 . 04 50 2 10 9 16 . 23 [ nH ] 例3 伝送線路と直列コンデンサ AからBの移動:伝送線路を挿入 89 35 27 2 BからCへの移動:等レジスタンス円を反時計方向に移動。 直列にコンデンサを挿入。移動量は2.87なので 2 . 87 Z 0 1 C C 1 2 . 87 50 2 10 9 1 . 11[ pF ] 4.3 給電線の整合 給電線の特性インピーダンスと負荷インピーダンスが異なるとき接続点 で反射が起こる。伝送効率の低下・信号ひずみ・絶縁破壊(大電力) 4.3.1 1/4波長整合回路によるインピーダンス整合 1-1’から負荷側を見たインピーダンス 負荷との接続点からdの位置での無損失 線路のインピーダンスは(2.38)式で表さ れる。 Z (d ) Z 0 Z L jZ 0 tan d Z0 j Z L tan d d=λ/4のとき d 2 4 2 Z L jZ 0 tan( / 2 ) Z L / tan( / 2 ) jZ 0 Z0 Z Z0 Z 0 2 Z 0 j Z L tan( / 2 ) Z 0 / tan( / 2 ) j Z L ZL 2 Z in Z0 Z in Z L とおくと給電線と負荷の整合を取ることができる。 例4.4 空気中にある平行2線式線路(導線の直径d=2mm,導体間隔 D=10mm)にR=145Ωを1/4波長整合回路を解して接続するときの整合 回路の特性インピーダンスを求める。 平行2線式線路の特性インピーダンス Z0 276 s log 2D 10 d 276 1 log 2 10 10 276 2 整合回路の特性インピーダンス Z0 Z in Z L 276 145 200 4.3.2 集中定数回路による整合 特性インピーダンスZ0の給電線と純抵抗Rの負荷をLC回路により整合 平行2線式線路のZ0<Rにおける 条件式の誘導 1 Z in j 2 L Z 0 j 2 L j C 1 / R R 1 j CR Z 0 1 j CR j 2 L 1 j CR R R 2 RCL j 2 L 2 実部と虚部が等しいとおく Z 0 R 2 RCL 2 j CRZ L 0 CRZ 2 j 2 L 0 CRZ Z 0 R 2 RC 2 L CRZ 2 4.4 0 RZ 2 2 0 0 R R C Z0 2 1 R Z0 R Z0 2 2 1 2 → C 1 R Z0 R Z0 Z 0 R Z 0 平衡線路と不平衡線路の接続 平衡線路:一方の導体に正 方向の電流が流れると他方 の線路に同じ大きさの電流 が逆方向に流れる。 不平衡線路:中心導体と外 部導体の間を電磁界が伝播 する。外部導体の電位は0。 平衡線路と不平衡線路の接続(両者の特性インピーダンスは等しい) 同軸ケーブルの外部導体電流は平行2線式線路に電流I’を流す一方, 漏洩電流I”も流す。 平行2線式線路の不平衡電流,外部導体漏洩電流により不要放射が 発生。 バラン:漏洩電流I”を除去 バランが外部導体,同軸ケーブルの外部導体が内部導体の同軸線路 ができる。λ/4線路の終端が短絡されているので,接続点での入力イ ンピーダンスは∞となりI”が流れない。 2 Z in jZ 0 tan 4 4 平行2線式線路には平衡電流が流れるようになる。 4.5 共用回路と電力分配器 4.5.1共用回路(diplexer) 1つのアンテナを2つ以上の周波数で共用するときに用いる。 f1は回路1を通過しアンテナに達するが回路2は阻止される。 f2は回路2を通過しアンテナに達するが回路1は阻止される。 LC直列共振回路:共振時インピーダンスは最小 LC並列共振回路:共振時インピーダンスは最大 例題4.7 f1=770kHz, f2=930kHz, C1=200pF, C2=220pFのときL1, L2, Cp, Lpを求める。 回路1:f1=770kHzでの直列共振条件 1 j L1 j L1 j C 1 C1 1 0 → L1C 1 1 2 =0.2136mH f2=930kHzでの並列共振条件 1 Y j C p j C 1 j C p 0 → Cp C1 0 1 C 1 L1 1 C 1 L1 1 j L1 C 1 12 C1 200 10 12 Cp 2 436 10 2 C 1 L1 1 2 930 10 3 0 . 2136 10 3 200 10 12 1 2 2 回路2:f2=930kHzでの直列共振 L C 1→ f1=770kHzでの並列共振 2 2 Y 2 1 j L p j C 2 1 C 2 L2 2 0 → 1 j L p j C 2 C 2 L2 1 2 → L pC 2 C 2 L2 1 2 2 4.5.2 電力分配器 可逆性があり電力合成器としても動作する。 例題4.8 無損失8分配器に0dBmの信号を入力したとき,各ポートに 現れる信号電力。 10 log 10 1 / 8 9 . 03 [ dBm ]