A6緊急災害時

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Transcript A6緊急災害時

災害時医療と薬剤師
島根県薬剤師会
学生実習対策委員会
災害とは
1.自然災害
地震災害、火山噴火災害、気象災害(風水害)、疫病
2.人為災害
都市テロ、爆発、火災、航空機・船舶・列車事故、
多重衝突事故
3.特殊災害
人為的災害でありながら広域災害化したもの、
台風による豪雨と伐採による自然破壊があいまって
引き起こされた泥流災害など
災害医療とは
災害医学
「災害によって生じる健康問題の予防と迅速な救援・
復興を目的として行われる応用科学で、救急外科、感
染症学、小児科、疫学、栄養、公衆衛生、社会医学、
地域保健、国際保険など、さまざまな分野や総合的な
災害管理に関わる分野が包含される医学分野である」
1991年 WHO救急救援専門委員会
災害現場での医療活動で重要なこと
1.triage(選別) 2.treatment(応急処置)
3.transportation(搬送)
*これらをいかに迅速かつ的確に行うかが重要である
1
て
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3
4
緊急災害時の法律につい
実際の緊急災害時での対応
緊急災害時に生じる問題
緊急災害時のための基礎知識
災害と法
災害医療体制は、法律によって規定されている
【主な法律】
1.災害対策基本法、災害救助法等の災害関連法規
2.医療法等の災害時医療提供に係る法規
3.武力攻撃事態対処法や国民保護法等の有事関連の
法規
4.毒物及び劇物取締法、感染症予防法、放射線障害
防止法等のNBC物質等危険物に対する法規
5.国際緊急援助隊法やPKO法などの国際緊急援助に
関する法規
災害対策基本法
第1条
災害対策基本法は、国土ならびに国民の生命、身体
及び財産を災害から保護することを目的としている
第2条
対象の災害としては、「暴風、豪雨、豪雪、洪水、
高潮、地震、津波、噴火その他の異常な自然現象又は
大規模な火事若しくは爆発その他その及ぼす被害の
程度においてこれらに類する政令で定める原因」と
されている。
災害救助法
第1条 この法律は、災害に際して、国が地方公共団体、
日本赤十字社その他の団体及び国民の協力の下に、
応急的に、必要な救助を行い、災害にかかった者の
保護と社会の秩序の保全を図ることを目的とする。
第2条 この法律による救助は、都道府県知事が、政令
で定める程度の災害が発生した市町村の区域内にお
いて当該災害にかかり、現に救助を必要とする者に
対して、これを行なう。
第24条 都道府県知事は、救助を行うため、特に必要
があると認めるときは、医療、土木建築工事又は輸
送関係者を、第31条の規定に基く厚生労働大臣の指
示を実施するため、必要があると認めるときは、医
療又は土木建築関係者を、救助に関する業務に従事
させることができる。
災害救助法
施行令
第10条 法24条第1項及び第2項に規定する医療、土木建築
工事及び輸送関係者の範囲は次のとおりとする。
1、医師、歯科医師又は薬剤師
2、保健師、助産師、看護師、准看護師、診療放射線技師、
臨床検査技師、臨床工学技師、救急救命士又は歯科衛生士
3~10、(略)
薬剤師法
第1条
薬剤師は、調剤、医薬品の供給
その他薬事衛生をつかさどること
によって、公衆衛生の向上及び
増進に寄与し、もって国民の健康
な生活を保障するものとする。
国民の
健康な生活
公衆衛生の向上及び増進
調剤
医薬品
の供給
その他
薬事衛生
薬剤師法
第22条
薬剤師は、医療を受ける者の居宅等において医師又は
歯科医師が交付した処方せんにより、当該居宅等に
おいて調剤の業務のうち厚生労働省令で定めるもの
を行う場合を除き、薬局以外の場所で、販売又は授
与の目的で調剤してはならない。
ただし、病院若しくは診療所又は飼育動物教務施設の
調剤所において、その病院若しくは診療所又は飼育
動物診療施設で医療に従事する医師若しくは歯科医
師又は獣医師の処方せんによつて調剤する場合及び
災害その他特殊の事由により薬剤師が薬局において
調剤することができない場合その他の厚生労働省令
で定める特別の事情がある場合は、この限りでな
い。
武力攻撃事態等における国民の保護
のための措置に関する法律
第一条 この法律は、武力攻撃事態等において武力攻撃か
ら国民の生命、身体及び財産を保護し、並びに武力攻撃
の国民生活及び国民経済に及ぼす影響が最小となるよう
にすることの重要性をかんがみ、これらの事項に関し、
国、地方公共団体等の責務、国民の協力、住民の避難に
関する措置、避難住民等の救援に関する措置、武力攻撃
災害への対処に関する措置その他の必要な事項を定める
ことにより、武力攻撃事態等における我が国の平和と独
立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律と相まっ
て、国全体として万全の態勢を整備し、もって武力攻撃
事態等における国民の保護のための措置を的確かつ迅速
に実施することを目的とする。
武力攻撃事態等における国民の保護
のための措置に関する法律
第八十五条 都道府県知事は、医師、看護師その大規模な
武力攻撃災害が発生した場合において、避難住民等に対
する医療の提供を行うため必要があると認めるときに
は、他の政令で定める医療関係者に対し、その場所及び
期間その他の必要な事項を示して、医療を行うよう要請
することができる。
施行令
第十八条 法第八十五条第一項の法令で定める医療関係者
は、次のとおりとする。
一 医師、二 歯科医師、三 薬剤師、四 保健師、
五 助産師、六 看護師、七 准看護師、八 診療放射
線技師、九 臨床検査技師、十 臨床工学技師、十一
救急救命士、十二 歯科衛生士
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緊急災害時の法律について
実際の緊急災害時での対応
緊急災害時に生じる問題
緊急災害時のための基礎知識
阪神淡路大震災(1995年1月)
死者:6,434名
行方不明者:3名
負傷者:43,792名
避難人数:30万名以上
被害総額:10兆円規模
災害時の薬剤師の医療活動
1.災害医療活動
救護所における医薬品の供給(調剤業務)限られた医薬品での医師への
処方アドバイス
2.被災地における医薬品等安全供給への貢献
集積所や保健所での医薬品等の薬効分類(仕分け)、在庫管理、出入管理、
品質管理、避難所・救護所等からの要望に応じた医薬品の供給、不足医薬品
発生時の対応(迅速かつ的確な搬送)等
3.避難所等における被災者への支援
・一般医薬品の保管・管理、および被災者への供給、服薬指導
・健康相談
・トイレの消毒など避難所の衛生環境の管理やアドバイス
・飲料水の水質検査等の公衆衛生活動
4.その他の公衆衛生活動
神戸での実際のボランティア活動
三浦謙二先生(柿木つくし薬局)より
日時
• 島根担当:1995年3月10日(金)午後~11日(土)午前
• 電気・水道は復旧済み
人数
• 各県より2名ずつ1日交代
• 松江生協病院の薬剤師と2名で担当
場所
• 長田区兵庫高校(最大の避難所)
• 保健室(食事・睡眠のための控え室として理科室)
内容
• 仮設診療所での調剤業務
• 震災直後は手洗いなどの消毒薬の調整、指導も
仮設診療所(保健室)の配置
三浦謙二先生(柿木つくし薬局)より
医師、薬剤師、看護師各2名の配置で業務を行った
医
師
看
護
師
診察室
待合室
薬
剤
師
薬局
神戸での実際の薬剤師業務
三浦謙二先生(柿木つくし薬局)より
薬剤鑑別
• 今まで飲んでいた薬剤がわからない
薬剤整理
• 各地から薬剤が無秩序に送られてきた(医療用、一般用)
• 名称不明な薬剤も多かった
代替調剤
• 医師の必要とする薬剤がないことも多い
• 現地にある使用可能な薬剤を用いなくてはならない
服薬指導
• 今までと違う薬剤、違う飲み方をすることも多い
中越地震(2004年10月)
中越沖地震(2007年7月)
死者:68人
負傷者:4805人
避難人数:約10.3万人
被害総額:約3兆円
死者:15人
負傷者:2345人
避難人数:約1.2万人
被害総額:約1.5兆円
新潟県薬剤師会 中越沖地震掲示板
7・16(月)10:13
7・17(火)10:00
7・17(火)10:44
7・17(火)12:15
7・17(火)13:59
7・17(火)14:17
7・17(火)14:44
7・17(火)18:05
7・17(火)20:48
7・18(水)06:34
7・18(水)10:29
7・18(水)13:56
7・19(木)05:15
(途中略)
8・01(水)11:13
8・22(水)13:30
地震発生
01-掲示板設置
02-活動状況
03-処方箋受入可能薬局①
04-現地からの報告
05-処方箋受入可能薬局②
06-薬剤師ボランティアについて
07-処方箋受入可能薬局③
08-現地からの報告②
09-現地状況報告
10-処方箋受入可能薬局④
11-医療機関への保険証提示
12-今後の支援について
35-災害医療本部移動
36-災害医療本部閉鎖
地下鉄サリン事件(1995年3月)
 東京都の地下鉄でカ
ルト新興宗教団体の
オウム真理教が起こ
した化学兵器を使用
した無差別テロ事件
 神経ガスのサリンが
散布されて死亡者を
含む多数の被害者を
出した
DI業務と医薬品供給
 当初は原因不明だったため、その情報収
集に追われた
 原因がサリンと推測されてからは、その
治療薬であるPAMの医薬品情報の収集
と医薬品供給手配にあたった
 全国の病院他、薬品卸会社も緊急的な医
薬品供給体制を取り、対応した
新型インフルエンザ(2009年4月~)
当初の県内での対応策
圏域
医療機関
設置場所
松江
松江市立病院
ター)
雲南
公立雲南総合病院
救急車)
出雲
県立中央病院
棟)
病院内(感染病
大田
大田市立病院
置)
敷地内(テント設
浜田
浜田医療センター 敷地内(車庫利
用)
益田
益田赤十字病院
病棟)
隠岐
隠岐の島町国保発熱外来診療所
隣接(旧杉の子学園)
敷地内(健診セン
敷地内(待機
病院内(感染症
西ノ島町国保発熱外来診療所
接(シルバー会館)
隣
新型インフルエンザ(2009年4月~)
備蓄用タミフルカプセルは、通常のタミ
フルカプセルとは外装が異なる。
タミフルドライシロップが不足気味に
なったので、タミフルカプセルを脱カ
プセルして対応する場合もある。
感染症対策
外来部門において推奨される対策
1.全ての医療従事者が標準予防対策に加えてサージカルマスク
を着用するなど飛沫感染対策を実施する
2.発熱患者とその他の患者の動線を分ける
3.ハイリスク者へは長期処方をすることによりその受診を回避
する
4.ファクシミリ等による処方箋の送付
5.薬局においては、FAXまたは薬局駐車場において処方箋を受
けとり、薬剤を渡すこと。他の患者とは接触しないよう配慮す
ること(待ち合いを区別)
チェルノブイリ原発事故(1986年4月)
 ソビエト連邦(現;ウクライナ)のチェル
ノブイリ原子力発電所が起こした原子力事
故
 放射性降下物がウクライナ、ベラルーシ、
ロシアなどを汚染。事故後のソ連政府の対
応の遅れなどが重なり被害者が甚大化、広
範化し、史上最悪の原子力事故となった
安定ヨウ素剤
 ヨウ素は、身体に必須な元素の一つで、体内では主に甲状腺という
頸部にある小さな臓器に集まっている
 原子炉施設などにおいて、原子力災害が発生した場合、大気中に放
射性ヨウ素が放出されると、それにより内部被曝を起こし、甲状腺
に影響を与えることが想定される
 予め体内を安定ヨウ素剤(放射性でないヨウ素)で満たせば、万が
一放射性ヨウ素が体内に含まれても、甲状腺にあるヨウ素は放射性
を帯びないヨウ素(安定ヨウ素)になる
【防護対策の基本的な考え方】
 原子力災害時に放出された放射性ヨウ素の吸入による甲状腺への影響
が著しいと予測された場合、災害対策本部の判断により、屋内退避や非
難の防護対策とともに安定ヨウ素剤を予防的に服用することとしている
 被爆後の甲状腺がんの発生確率は、被爆時年齢で異なり、乳幼児の被
爆者で増加するが、40歳以上では増加しないため、年齢に応じて安定ヨ
ウ素剤の服用対象を定めている
島根県における水害
島根県は、古く
から水害の多発
している地域で
あり、水害に対
する対策も重要
である。
緊急災害時、特に水害のときには薬局の役割は重要です!
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緊急災害時の法律について
実際の緊急災害時での対応
緊急災害時に生じる問題
緊急災害時のための基礎知識
災害時の医薬品
災害時に望まれる
医薬品
 調剤や保存の手間の
少ない薬剤(室温保
存、計量不要、稀釈
不要、遮光不要)
 認知度が高い薬剤
 服用時に多くの水を
要しない薬剤(口腔
内崩壊錠)
緊急災害時(地震)の段階と疾患
発生から3日間
外傷、熱傷、打撲、骨折など
3日目以降
PTSD、不安症、不眠症、過労、便秘
症、食欲不振、腰痛、感冒、消化器疾患、外傷の二次感
染、インフルエンザ、食中毒、エコノミー症候群など
長期化する頃
高血圧、呼吸器疾患、糖尿病、心
臓病、喘息、真菌症など
一般用医薬品の供給量の割合
新潟県中越地震
阪神淡路大震災
①風邪薬・解熱鎮痛剤
①風邪薬32%
40%
②うがい薬19%
②うがい薬・トローチ15%
③ビタミン剤11%
③外用剤14%
④絆創膏9%
④ビタミン剤・ドリンク
⑤消毒薬7%
剤9%
⑤胃腸薬・整腸剤6%
⑤マスク・衛生材料6%
お薬手帳の啓蒙活動
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緊急災害時の法律について
実際の緊急災害時での対応
緊急災害時に生じる問題
緊急災害時のための基礎知識
トリアージ
triage
 負傷者や疾病患者が多
数出た場合に、医療体
制や設備を考慮した上
で、患者の緊急度や重
症度に応じて、治療や
搬送先の優先順位を決
定すること。
0
死亡
生命兆候の無い
もの
Ⅰ
緊急
治療
生命・四肢の危
険的状況で直ち
に処置が必要
Ⅱ
準緊急
治療
2~3時間処置
を遅らせても悪
化しない程度
軽症
軽度外傷、通院
治療が可能な程
度
 医師、救急救命士がこ
の優先順位の決定者を
担当することが多い。
Ⅲ
DMAT 災害医療援助チーム
(Disaster Medical Assistance Team)
 災害の急性期(48時間以内)に活動する
ために、専門的な訓練を受けた機動力の
ある医療チームのこと。
 医師、薬剤師、看護師、事務員などが一
つのチームになった形で構成されること
が多い。
 国立病院機構災害医療センターなどで実
施された「日本DMAT隊員養成研修」の
修了者で構成され、厚生労働省や地方公
共団体の要請を受けた病院から派遣され
る。
ロジスティック
logistic
 元来は、戦場における後方支援であり、
必要物資や情報などの管理調達を指す。
 災害時・非常時も同様の意で用いられ、
最前線の医師や看護師に対して、薬剤師
や事務員の任務が該当する。
 医療専門職で、ロジスティックにも関わ
る薬剤師の特性が、災害医療の中で重要
であるということが再認識されつつあ
る。
マニュアル・ハンドブック
レスキュー関連グッズ
日本災害医療薬剤師学会
 災害医療現場における薬剤師業務の学問的な基盤を
支える災害医療薬学分野の普及・啓発と対応策の研
究を目的として、 2006年4月に日本災害医療
薬剤師会が設立。
http://www.saigai-pharma.jp/
作成:島根県薬剤師会学生実習対策委員会
(担当責任者:古山順子)
<協力・資料提供>
元尾佳正先生(やまだ薬局)
三浦謙二先生(柿木つくし薬局)
<参考文献・参考文献>
災害医学 改訂2版 (編集:NPO災害人道医
療支援会、発行:南山堂)
災害医療(編集:大橋教良、発行:へるす出版)
ご協力ありがとうございました