Personalized health Sciences

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医療は何のためにあるのか?
・医療とは?(治癒? 緩和?)
・いかに生きるのか?(死ぬのか?)
・プロ同士の協力(チーム医療)とは?
看護福祉学部
小林正伸
・医療とは?(治癒? 緩和?)
がんの治療
高血圧の治療
・いかに生きるのか?(死ぬのか?)
・プロ同士の協力(チーム医療)とは?
根治を目指すのか? or 病気のコントロールを目指すのか?
病気を治すのか? or 病人を治すのか?
がんを治療するということの意味は何か?
A: がん細胞を全て取り除いて、生き延びることに手を貸す。
B: 生きる喜びをできるだけ長く、できるだけ多く感じられるよう
に手助けする。
胃癌の治療(進行度による違い)
胃角部の早期癌
直径10㎜の扁平隆
起性病変
進行胃癌
深いクレーターを
有する周辺隆起し
た病変
内視鏡的切除術
リンパ節郭清を伴う
標準手術
胃癌+肝転移+腹膜転移(Stage
IV)
胃癌術後、FDG-PETにて肝転移
と膀胱後部にFDGの集積あり
化学療法+緩和ケア
胃癌の進行度(Stage分類)
原発腫瘍の大きさ、転移など進行度によってStage分類され、そのStageごとに標
準治療が決まっている。
胃癌の治療ガイドライン
粘膜内の2㎝以下の平坦な高
分化型腺癌のように、内視鏡
的粘膜切除術にて摘出可能
な早期の胃癌もある。
一方診断時に肺転移や肝転
移や骨転移もあって、全身
化学療法以外の選択肢のな
い進行胃癌もある。
内視鏡治療の実際
1)
2)
1)ポリペクトミー
有茎性や亜有茎性ポリープの切除
2)内視鏡的粘膜切除術
右図のように表面型の病変
3)内視鏡的粘膜下層剝離術
(EMR)
病変をヒアルロン酸などで十分隆起
させて周辺切開をおいて粘膜下層を
剥離していく方法。
3)
癌手術療法の特徴
癌の手術の場合には、癌の発生
した臓器(例えば胃など)とともに
脾臓
脾動脈
浸潤や転移しているかもしれない
周囲脂肪組織やリンパ節を安全
域として切除する。胃癌を例にと
ると、リンパ節を廓清するために、
脾動脈、脾臓および周囲脂肪組
織を胃とともに切除する。
治癒するかもしれないが、術後に出現するダンピング症候群のた
めに、1日5回以上に分けて少量ずつしか食事ができなくなる。
それでも食道につかえて吐いてしまうこともしばしばあり、横になる
と苦いものがのど元まであがってくる。食べる楽しみはなくなる。
胃癌手術後の生存率(Stage別)
Stage Iの早期癌であれば、約90%が治癒するが、stage IVではたと
え手術しても20人に1人も助からない。
再発・転移進行大腸癌の治療
(抗がん剤+分子標的薬)
薬剤名
1コース(2週間)の服用スケジュール
レボホリナートカルシウム
オキサリプラチン
フルオロウラシル
ベバシズマブ
1日目
○
○
○
○
2日目
○
治療費合計
3日目以降
309,340円
(ベバシズマブなしなら159,470円)
○
FOLFIR I
FOLFIRI+アバスチン mIFL*+アバスチン
47
58
54
無増悪生存期間(月) 7.8
11.2
8.3
全生存期間(月)
未到達
19.2
奏効率(RR)%
23.1
乳癌の治療−乳房切除術の功罪−
乳房温存手術が選択で
きない場合には、乳房
切除を選択するしかな
いが、切除して終わると
ころで、治療は終わるの
か?
生存こそが大事
「生きる」ことが大事
緩和ケア
当初、治癒を望めなくなった患者
に対する身体的、精神的な苦痛
の除去を目的とした医療とされて
いた。
現在では、治癒を目指す治療中
であっても社会的、精神的な痛み
を取り除くことによって、治癒を目
指す治療の助けにもなると考えら
れており、早期から行なわれる支
持療法としての緩和ケアも含めて
考えられるようになった
がんを治療するということの意味は何か?
A: がん細胞を全て取り除いて、生き延びることに手を貸す。
B: 生きる喜びをできるだけ長く、できるだけ多く感じられるよう
に手助けする。
今私たちが考え直すべきことは?
1.がん治療において治癒、生命延長のみを追い求
めてきたのではないか?
2.単なる生命延長なのか、意味のある「生きる」の
延長なのかを、きちんと考えてきたのか?
3.患者へのインフォームドコンセントにおいて、治
療後に起こりうる不都合な真実を正直に話して
きたのか?
4.現在開発されている分子標的薬の治療効果は、
せいぜい数ヶ月の生存期間の延長のみ!
5.生命の長さではなく、生命の質を考えなければ!
・医療とは?(治癒? 緩和?)
がんの治療
高血圧の治療
・いかに生きるのか?(死ぬのか?)
・プロ同士の協力(チーム医療)とは?
根治を目指すのか? or 病気のコントロールを目指すのか?
病気を治すのか? or 病人を治すのか?
本態性高血圧症の要因と心血管系疾患合併症
遺伝子が同じ一卵性双生児につい
て高血圧を調べた研究結果から、
発症には、遺伝因子が60%、環境
因子が40%からんでいることが解っ
た。
他の生活習慣病の合併すると、動
脈硬化症が発症し易くなり、心血管
系疾患合併症が増加する。
脳卒中
心筋梗塞、心不全
腎不全
大動脈瘤など
高血圧の治療目的と治療方法
食生活
減塩
肥満解消
禁煙
アルコール節制
運動
肥満解消
降圧剤
高血圧の治療目的は、合併症の発症予防のためにある。食生活習慣の改善や
運動などで無理をして、生活の質の低下を招かないように、降圧剤の内服で補
助療法を行うと考えるべきだろう。
死因の変化
戦前は、結核、胃腸炎、肺炎などの感染症が主な死
因であり、感染源を取り除く医薬が治療の主役となり
えた。
生活習慣病の治療において
は、生活習慣の改善によっ
てセルフケアすることが重要
とする考え方があるが、生活
習慣病には、遺伝要因の関
与が1/3から2/3程度あり、か
つ老化に伴う変化でもあると
いう特徴がある。したがって、
内服薬などによる病気のコ
ントロールが補助として必要
となる。
今私たちが考え直すべきことは?
1.生活習慣病の予防のために、あまりにも無理な禁
欲的な生活を送ることが必要なのだろうか?
2.進化の過程で、農業の開発に伴う食生活の改善と
いう状況に対して、まだ適応しきれていないのが人
の悲劇なのではないか?
3.原始時代にも太っている人がいたとする証拠もあり、
生活習慣よりも遺伝的要因のほうが重要なのでは
ないか?
4.遺伝形質を変えることは不可能だが、高齢になるま
で遺伝形質のもたらす害を遅らせることは可能!
・医療とは?(治癒? 緩和?)
がんの治療
高血圧の治療
・いかに生きるのか?(死ぬのか?)
・プロ同士の協力(チーム医療)とは?
生きるとはどういうことなのか?
どのように老いるのか?
どのように老いたいか?
生活する(生きる)とはどういうことか?
高齢者の介護とは何をすることか?
日常生活行為とはまさしく、食事、
排泄、入浴・着脱衣の3つを指し、
「万人に共通して毎日くり返され
る生活行為」のことだが、他にも
外出したり趣味なども含まれる。
“人はパンのみで生きるにあら
ず”なのである。
高齢者では、筋力の低下、認知
機能の低下、嚥下機能の低下、
便秘などのために、食事や排泄
と言った日常行為ができなくなっ
ている。
ある高齢の脳梗塞後の患者さん
首には気管切開がされてカニューレが挿入されており、腹部には胃瘻が造
設されている。点滴のボトルが2本つり下げられており、2カ所の静脈内に点
滴静注されている。呼びかけには目を向けるものの話すことはできない。
介護保健施設のベッド数約72万
医療療養病床22万
合計100万人ほどの高齢者が、医療保険、介護保険い
ずれかの施設において、日常生活の一部からほぼ大
部分までの解除を受けながら生活している。ほぼ同数
の待機高齢死がいると想定されており、社会問題となっ
ている。
皆さんは、前のスライドのような状態でも様々な処置を望みますか?
家族の場合はどうですか?
一般的に言って、どう思いますか?
今私たちが考え直すべきことは?
1.胃瘻を増設してまで、生かす努力をすることが必要
なのか?
2.「いかに死ぬべきなのか?」についての議論を避け
てこなかったか?
高齢者に胃瘻は必要か?
医師へのアンケート調査結果
・慎重・現時点で不施行も選択肢 68%
・必要・現時点では不施行は非現実的 18%
・どちらとも言えない 14%
・医療とは?(治癒? 緩和?)
がんの治療
高血圧の治療
・いかに生きるのか?(死ぬのか?)
・プロ同士の協力(チーム医療)とは?
チーム医療とは何か?
チーム医療に必要なことは?
チーム医療とは?
医療従事者がお互い対等に連携することで患者中心の医療
を実現しようとするもの。
がん医療で活躍する緩和ケアチームや、栄養サポートチー
ム(NST: nutrition support team)、感染制御チーム(ICT:
infection control team)、医療安全管理チームなど、「チーム
医療」が不可欠な領域がたくさんある
チーム医療の確立のためには?
1.各医療スタッフの専門性の向上
対等な連携をはかるためには、それぞれの専門職がアイデ
ンティティーの確立をはかる。
2.お互いの役割の確立
各専門家同士の独自性の尊重の基づいた役割分担。
3.コミュニーケーションの推進
分野別な特殊な言葉を用いたコミュニケーションから一般的
な言葉への転換。
開放的な対応。
チーム医療のあり方
ーリハビリ医療チームー
89歳の女性。脳梗塞で入院し、3週間の急
性期が過ぎた時、右手足に麻痺が残り、1
人で座ることもできなかった。
医師、看護師、社会福祉士、理学療法士、
言語聴覚士など9職種9人がリハビリ担当
チームとして治療に当たることになった。
リハビリを続けながら、自宅療養に向けて
社会福祉士などが自宅を訪問して、トイレ
にいけるか、改修は必要かなどを調査し、
必要な改修工事を依頼した。
自宅に帰って社会生活を送れるようにする
ことが医療の目的!
朝日新聞6月27日夕刊より
看護師の役割の拡大
−特定看護師(仮称)の確立−
一定の医学的教育・実務経験を前提に専門的な臨床実践能力を
有する看護師(以下「特定看護師(仮称)」という。)を新たな看護
職として位置づけるとともに、侵襲性の高い医行為等のうち、特定
看護師(仮称)であれば「診療の補助」として安全に実施できる行
為(以下「特定の医行為」という。)を明確化する必要がある。
特定の医行為 例
処置
・ 人工呼吸器装着中の患者のウイニング、気管内挿管、抜管等
・ 創部ドレーンの抜去等
・ 深部に及ばない創部の切開、縫合等の創傷処置
・ 褥瘡の壊死組織のデブリードマン等
チーム医療−薬剤師の役割の拡大−
薬剤師が1日7時間以上いる病棟
と2時間未満の病棟ではインシデ
ント数の平均値に3倍以上の開き
があるという。
病棟に常駐する薬剤師は、患者が
入院すると、薬の種類や数、アレ
ルギーや副作用歴などを来キリス
トに記入し、医師や看護師などの
スタッフも活用する。
朝日新聞6月29日夕刊より
チーム医療−栄養指導チーム−
医師、看護師、管理栄養士など9職種
の9人で患者の栄養を管理する栄養
サポートチームが活動を始めている。
高齢の患者が増える中、栄養管理の
重要性は増す一方だ。食べられない
からと、点的にすると摂取カロリーが
縁、低栄養になる。低栄養になると、
体力、免疫力が落ち、治療効果は上
がらない。
朝日新聞6月30日夕刊より
医師を頂点としたピラミッド型の連携ではチー
ム医療は機能しない。各職種の専門性を向上
させながら、横並びで協力していく共同作業が
必要になる。そのためにはコミュニケーション
が重要となる。