Transcript Document

期末試験は2011年1月28日に行います。試験情報は194ページにあります。
目 次
私が学生時代に不思議だったこと
オームの法則を考えよう
物性トピックス1-移動度-
物性トピックス2-電気伝導率-
物性トピックス3-エネルギーバンド-
物性トピックス4-有効質量-
物性トピックス5-有効状態密度-
物性トピックス6-フェルミ・ディラック統計分布関数物性トピックス7-ドーピング-
デバイストピックス―pn接合-
デバイストピックス―MOSキャパシタ-
デバイストピックス―MOSFET-
デバイストピックス―レーザの歴史と発振-
目 次
プロセストピックス―トランジスタの作成-
プロセストピックス―薄膜トランジスタの作成-
プロセストピックス―半導体結晶作成-
プロセストピックス―SOI技術-
プロセストピックス―シリコン中の拡散限界-
プロセストピックス―ドーピング-
プロセストピックス―絶縁膜の作成(酸化)-
プロセストピックス―プラズマCVD-
私が学生時代に不思議だったこと
電流のオームの法則は変じゃないか?
半導体を使ってなぜトランジスタとレーザができるのか?
オームの法則を考えよう
電界中の電荷eの自由電荷(フリーキャリヤ)の運動を考えよう。
粘性抵抗がある場合、運動の式は、
d 2 x m dx
m 2 
 eE
dt
 dt
(S-1)
と与えられる。ここでmは電荷の質量、は粘性抵抗による運動の
ライフタイム、Eは電界強度である。
演習問題1: 電荷の位置xが時間t =0でゼロ、速度ゼロとする。
時刻tの電荷の位置、速度を求めよ。
オームの法則を考えよう
電荷の運動は式(S-1)を解くことによって与えられる。
位置は
 e E
e 2 E  t
x
t
 e  1 
m 
 m
速度は
t



dx e E

v

1  e 
dt
m 

単位面積当たりの電流は
で与えられるから、
i  env
t
 
e2n E 

i  env 
1  e 
m 

となる。
オームの法則を考えよう
電子の速度及び電流は時間に依存して変化する。
これはオームの法則ではない。
ここで取り扱う時間tが電荷の運動のライフタイムよりずっと長い
場合を考えよう。
t 

であるから、電流は、
t

e2n E 

i  env 
1

e

m 
 e2n E
(S-2)
~
m

となり、時間に依存しない量となる。
電流は電界強度に比例する。即ち電圧に比例する。
これがオームの法則である。
オームの法則を考えよう
速度は
t

e E 

v
1

e

m 
 e E
~
m

となる。ここで、電界強度の前の係数を
e

m
(S-3)
と書こう。これを移動度(易動度)と呼ぶ。
よって、速度は
v  E
であり、電流は
e2n E
i
 en E
m
である。
(S-4)
(S-5)
オームの法則を考えよう
  en 
と書き、電気伝導率と呼ぶ。
整理すれば、
1)オームの法則は粘性抵抗下の電荷の運動の定常状態であり、
v   E と与えられる。
2)電荷の速度は移動度を係数として
3)そして単位面積当たりの電流は電気伝導率を係数として、
i   E と与えられる。
4)移動度は半導体研究史上もっとも重要な物理量であり、
5)電気伝導率は多くの物質の電気的性質を決める物理量であり、
抵抗率との逆数関係をもつ。
1
r

オームの法則を考えよう
誰でも知っているオームの法則の中に
重要な物性物理の情報が含まれている
物性トピックス1-移動度-
移動度は
1)電荷の速度の電界強度係数として
v  E
と与えられる。
e
2)そして電荷の運動のライフタイムと質量に強く依存する。  
m
3)移動度は半導体研究史上もっとも重要な物理量なんだが、
4)移動度の単位は[m2/Vs]と非常に変である。
色々な半導体材料の移動度を見てみよう
移動度(m2/Vs)
C
e=0.24
h=0.21
Si
e=0.15
h=0.05
Ge
e=0.39
h=0.19
GaAs
e=0.85
h=0.04
ZnS
e=0.023
h=0.004
ZnSe
e=0.04
h=0.011
GaN
e=0.038
6H-SiC
e=0.048
In2O3
e=0.016
SnO2
e=0.026
ZnO
e=0.018
h=0.005
ec =0.015
e//c =0.0167
物性トピックス1-移動度-
演習問題2 電子デバイス史上もっとも有名かつ重要な半導体材
料はシリコンである。シリコンの電子移動度は0.15 m2/Vsである。
シリコンの電子有効質量は2.4×10-31 kgである。
シリコン中の電子の運動のライフタイムを求めよ。
τ=xx sである。大変短い。
即ち固体内の電子の運動はすぐ邪魔される。
τ=xx s以上の時間を考えるなら、電子の速度は一定であり、電
流は一定であり、オームの法則は成り立つ。
物性トピックス1-移動度-
移動度
e

m
は温度に依存し、不純物に依存する。
1)結晶格子が熱振動すると電子の運動は邪魔される。
よって高温では移動度が下がる。
2)不純物があると電子の運動は邪魔される。
低温では移動度が下がる。
0.16
0.004
T=300K
0.14 Electrons
0.12
0.003
0.10
0.08
0.002
0.06
Holes
0.04
0.001
0.02
0
0 20
10
1021 1022 1023 1024 1025 1026
Doping concentration [m-3]
Diffusion coefficient [m2/s]
Mobility [m2/V-s]
物性トピックス1-移動度-
物性トピックス1-移動度-
電子移動度 [cm2/Vs]
100000
ドーピング濃度 1×1012 cm-3
10000
1000
1×1015 cm-3
1×1018 cm-3
100
0
100
200
300
温度 [K]
400
500
物性トピックス1-移動度-
電子の速度は電界強度が速くなると大きくなる。
v  E
Carrier velocity [m/s]
105
104
103
104
T=300K
105
106
Electric field [V/m]
107
物性トピックス1-移動度-
電子の速度は大変大きい。105 m/sにもなる。
これは電子が電荷1.6×10-19 Cを持ち大きな
電気力を受けるからである。
さらに電子が10-31 kg台と軽いためである。
だから高速電子デバイスができる。
だから軽いデバイスができる。
比較:
第一宇宙速度=7.9×103 m/s
ライフルの弾の速度=1×103 m/s
空気中音速=340 m/s
新幹線の速度=83 m/s
色々な物質の電気伝導率を見てみよう
電気伝導率(S/m) 0℃のとき
金
4.88×107
銀
6.80×107
銅
6.45×107
アルミニウム
4.00×107
鉄(純)
1.12×107
ガラス(パイレックス)
1.00×10-12
ゴム(天然)
1.00×10-15~1.00×10-13
半導体
105~10-7
物性トピックス2-電気伝導率-
電気伝導率   en  は物質によって最も大きく異
なる物理量である。107~10-13 S/m に渡って分布して
いる。これは主にキャリヤ密度の値が物質によって大き
く異なるからである。
特に半導体はキャリヤ密度をドーピングや電界効果に
より大きく変化させることができる。
物質の電気伝導率に注目しよう
アルミニウム
アルミナ(Al2O3)
原子量(分子量)
26.98
102
融点
660.4℃
2015 ℃
沸点
密度
2467 ℃
2.70g/cm3 (20℃)
2974℃
3.98g/cm3 (20℃)
結晶形
面心立方格子
六方晶系格子
電気伝導率
4.0×107 S/m (20℃)
10-9~-12S/m (20℃)
比熱
0.88 J/gK
0.9J/gK
熱伝導率
238 J/msK (0℃)
21 J/msK (0℃)
シリコンの電気伝導率を見てみよう
102
Silicon
300K
Resistivity (Ω-m)
101
100
10-1
p-type (boron)
10-2
10-3
n-type (phosphorus)
10-4
10-5
10-6 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27
10 10 10 10 10 10 10 10 10 10
Impurity concentration [m-3]
物性トピックス2-電気伝導率-
半導体中の電子キャリヤ密度はフェルミエネルギーレベル εFとバン
ドギャップεgと温度T を用いて極めて簡単な式で与えられる。
 F  g 
n  N c exp 

kT


(S-6)
これを有効状態密度近似式という。半導体物性史上最も重要且つ
利用価値の高い式の一つである。
即ち、半導体のキャリヤ密度と電気伝導率はフェルミレベルに依存
する。そして温度に大きく依存する。
物性トピックス3-エネルギーバンド-
まず、固体・液体物質の結合作用を整理しよう。
大きく分けて 電気的イオン結合と共有結合がある。
イオン結合 ionic binding
!静電気力による非常に強い結合
--固い、もろい
!静電気力は等方的力
--対称性高い構造
!イオンは孤立している
--絶縁体
!材料
-アルカリハライド(NaCl)
eCl-
Na+
Cl-
Na+
Na+
Cl-
Na+
Cl-
Cl-
Na+
Cl-
Na+
物性トピックス3-エネルギーバンド-
演習問題3 3次元空間に電子と1価のイオンが0.1nmはなれ
て固定されている。電子が感じる一価のイオンのポテンシャ
ルエネルギーは何eVか。
水素結合もイオン結合
1)酸素原子は最外L殻2p-4個持つ。H20分子になると、酸素
原子は水素の電子2個を取り入れてL殻6個の安定構造を作ろ
うとする。
2)酸素は水素の電子により負に帯電し、水素は電子を取られ
て正に帯電する。もともとあった酸素の4つの電子は新たに水
素の電子が取り込まれたために、電気的反発作用が生じて正
四面体電子ボンディング構造を形成する。
孤立電子対、負に帯電
O
H
H 正に帯電
水素結合もイオン結合
3)反発して反対方向にいる孤立電子は、隣のH20分子の正に
帯電した水素原子と引き合う。こうして不思議な連帯が出来上
がる。 H20分子同士は強い電気力で引き合っている。従って外
から熱エネルギーを与えてもなかなか自由に動けない。
4)だから、比熱大きい、沸点高い、凝固点高い。さらにO-H共
有結合と水素結合により水は隙間の多い構造になる。
十分な熱エネルギーが与えられたとき初めて隙間が潰れて最
大密度となる。有名な4℃現象である。
水素結合
H
O
H
O
4℃
H
体積
+
O H
H
H
O
H
温度による
膨張
水素結合に
よる隙間形成
H
温度
共有結合 covalent binding
・半導体や金属結合や多くの分子結合は共有結合
である。
・共有結合により半導体にはエネルギーバンドが形
成される。
・共有結合は量子力学的作用である。
・基本的な勉強をしよう。
共有結合について量子力学的考察をしよう。
原子に束縛された、エネルギー固有値E をもち、
波動関数
  Ae
x2
 2
 it
a
e
をもつ電子の状態を考えよう。
電子
電子状態はエネルギーの式(S-7)を満たし、

i
  E
(S-7)
t
E 
である。
角周波数はエネルギーに対応する量である。
Ψの空間分布は右図のようになる。
電子は原点の原子核の中心周り、概ね2aの
領域に存在する。
-3
-2
原子
1
0.8
0.6
0.4
0.2
0
-1
0
2a
X
1
2
3
共有結合について量子力学的考察をしよう。
次に同じ原子が2個、ごく近くに置かれた場合を
考えよう。このときおのおのの電子は隣の電子
の影響を強く受ける。
いま、場所1に一つだけ孤立して原子があると
きの電子の空間分布状態をψ0(1)と書こう。そし
て場所2に一つだけ孤立して原子があるときの
電子空間分布状態をψ0(2)と書こう。
ψ0(1)
ψ0(2)
1
2
共有結合について量子力学的考察をしよう。
新しい状態ψはψ0(1)とψ0(2)の状態の重ね合わせで与えられる。
  c t  0 1  d t  0  2
(S-8)
新しい状態は新しいエネルギーEnewを持ちエネルギー式を満たす。

i
  Enew
(S-9)
t
上のエネルギーの式を必ず満たす状態のとりうる形は同相、反位
相の重ね合わせである以下の2つである。
 b  cb  t   0 1   0  2  
(S-10)
 a  ca  t   0 1   0  2  
(S-11)
共有結合について量子力学的考察をしよう。
ΨaとΨbは原子2個が近くに存在するために生じた新しい状態で
ある。でも、原子がお互い遠く離れている場合も、2個の電子の
2
1
状態ΨaとΨbを考えることはできる。
遠く離れている場合電子同士は何も影響を及ぼし合わない。
だから、 エネルギーはお互いEのままである。
遠く離れた場合は
Enew=2E
となる。
共有結合について量子力学的考察をしよう。
2個の原子が近接することにより、新しい電子状態ができる。
それに伴い、新しい固有エネルギーEb, Eaができる。
EbとEaは一般に異なる量だが。しかし、合計量はもとの粒子のエ
ネルギー値の2倍である。
そこで、
Ea  Eb  2E
Ea  Eb  2 A
と書こう。
Ea  E  A
Eb  E  A
である。
共有結合について量子力学的考察をしよう。
電子の固有エネルギーは孤立していたときの Eから近づくことに
よりEaとEbに分かれる。原子同士の間に働く相互作用によって2
つのエネルギーが生じる。
E+A
E
E-A
孤立
結合
原子1と2の電子がお互いに影響を及ぼし合い電子状態を相互
に変化させている。これを共有結合と呼ぶ。
Ebをボンディング状態エネルギー
Eaをアンチボンディング状態エネルギー
Aを結合エネルギーという。
共有結合について量子力学的考察をしよう。
アンチボンディング状態b,ボンディング状態aと孤立状態の波動関数
の空間分布を見てみよう。
3
演習問題4
それぞれの空間分布の
特徴を考えよ。
確立
2.5
2
Ψb* Ψb
1.5
1
Ψ1* Ψ1
Ψa* Ψa
0.5
0
-3
-2
-1
0
1
2
3
X
4
共有結合について量子力学的考察をしよう。
新しい波動関数は
 b  cb  t   0 1   0  2  
 a  ca  t   0 1   0  2  
だが、
c1  t  
cb  t   ca  t 
2
c2  t  
cb  t   ca  t 
2
とおくと、
 a  b  2c1  t  0 1
 a  b  2c2  t  0  2
となり、電子1、2の波動関数がa,b状態の重ね合わせで表すこ
とができる。
共有結合について量子力学的考察をしよう。
このときエネルギーの式から、c1,c2について、

c1  t   Ec1  t   Ac2  t 
t
(S-12)

i
c2  t   Ec2  t   Ac1  t 
t
(S-13)
i
がなりたつ。c1とc2は原子1,2にいる電子の存在確率を与える。
上式は原子1の電子に原子2の電子の作用が加わることを意味
している。これが共有結合の意味である。
共有結合について量子力学的考察をしよう。
演習問題5
2つの質量mの物体1,2がそれぞれバネ常数kのバネにに繋
がれて振動している。バネkは壁に固定されている。
さらに物体1,2同士は新たなバネ(バネ常数k*)で繋がれてい
る。これは共有結合に似ている。物体1,2の運動を調べよう。
k
1
2
m
k* m
k
共有結合エネルギーバンド
多くの原子が図のように互いに等間隔に無限に繋がった場合を考
えよう。
n-2 n-1
n
n+1 n+2
a
無限に繋がった新しい電子状態はもとの状態の重ねあわせで書く
ことができる。
   Cn (t ) n0 (r ) (S-14)
n
新しい状態はもちろん新しいエネルギー値をもつエネルギーの式
を満たす。

(S-15)
i
  Enew
t
共有結合エネルギーバンド
n番目の原子はn-1とn+1の隣同士とのみ作用を及ぼすと考えよう。
N番目の電子状態確率振幅Cnの時間変化の式は、先に学んだ式を
もとにして以下のように書くことができる。
i

cn  Ecn  Acn 1  Acn 1
t
(S-16)
ここでCnに位置の位相因子を含めることを考えて、
cn  C exp i(kxn  t ) xn  an
と仮定しよう。
(S-16)式を満たす条件は
  E  2 A cos ka
(S-17)
である。角振動数と波数の間に(S-17)の関係があるときに平面波は
安定に存在する。
共有結合エネルギーバンド
演習問題6.
(S-17)式は共有結合理論により導かれた結晶のエネ
ルギーバンドであり、物性物理学史上最も有名且つ重
要な式である。 (S-17)式を導け
  E  2 A cos ka
(S-17)
共有結合エネルギーバンド
図 は 式 ( S-17 ) の 波 数 ― エ ネ ル
ギー関係図である。原子間の共
有結合により最低エネルギーは
E-2A とな り結合前よ りも小さく
なっている。そして電子のとりうる
エネルギーは図のように波数kに
ついての周期関数となる。E+2A
~E-2A の間がエネルギーバンド
である。バンド幅は原子間共有結 

合エネルギーの強さに依存する。 a
共有結合が強いとバンド幅大きい。
共有結合弱いとバンド幅小さい。

E+2A
E-2A
0
k

a
物性トピックス3-エネルギーバンド-
演習問題7. 原子間距離aが0.5nmの原子を延々と1cmの長さに
繋げた。原子の数はいくらか。電子の取りうるエネルギーの値は
いくつあるか。
演習問題8. 最低エネルギーでの電子の平面波はどのような状
態か、波長はいくらか。波数はいくらか。また最高エネルギーの電
子状態はどのような状態か。
演習問題9. 最大エネルギーでの電子の平面波はどのような状
態か、波長はいくらか。波数はいくらか。このときの電子の平面波
の波長に近いものを知っているか。
物性トピックス4-有効質量-
  E  2 A cos ka
(S-17)
のバンド構造を解析しよう。
まず、k=0のバンドの底の構造を考える。
  E  2A
バンドの底のエネルギーは
である。
バンドの底から数えて少し大きいエネルギーをεとすると、
  E  2A  
の状態がある。[24],[25]より、
  2 A1  cos ka 
となる。
(S-18)
物性トピックス4-有効質量-
εは小さいのでk=0周りでテイラー展開して2次の項まで書く。
1 2 2

  2 A 1  1  k a   Ak 2a 2
2


(S-19)
エネルギーと角振動数
E 
運動量と波数の関係
p  k の関係を用いれば、(S-19)式は、

Aa 2
2
p2
(S-20)
と書くことができる。最低エネルギーを基準にしたとき電子状態の
励起エネルギーεは、共有結合電子が原子間を渡り歩くときの波の
運動量の2乗に比例する。
物性トピックス4-有効質量-
ここで(S-20)式を以下のようにかいてみよう。
p2

2m *
(S-21)
これは質量 m*の粒子の運動エネルギーの表現そのものである。
即ち原子間を伝わる電子の平面波状態のエネルギーは、あたかも
自由空間を運動する粒子の運動のように扱うことができる。
(S-21)式を自由電子気体モデルという。
物性物理及び物性工学でよく使う考え方である。
m*を有効質量と呼び、
m* 
となる。
2
2 Aa 2
(S-22)
物性トピックス4-有効質量-
有効質量の定義は大変面白い。
m* 
2
2 Aa 2
1.共有結合エネルギーAが大きいと有効質量は小さい。
このとき電子は、小さい波数でも大きい運動エネルギーを得て
原子間を渡り歩く。
2.反対に共有結合エネルギーが小さいと有効質量は大きい。
動きにくい。共有結合無いと、動かない。有効質量は無限大。
3.格子間隔が大きいと有効質量は小さい。
物性トピックス4-有効質量-
有効質量は量子力学的エネルギーバンドの考察から導かれた不思
議な量である。できるだけ慣れよう。
演習問題10. 半導体の典型的な例を使って半導体エネルギーバン
ドの電子の有効質量を計算しよう。
A=5 eV, a = 0.2 nm,  1.06  1034 Js
演習問題11. 共有結合エネルギーを変えずに格子間隔を大きくでき
たとすると有効質量はどうなるか?また格子間隔を大きくするにはど
うすればよいか?
物性トピックス4-有効質量-

演習問題12. 有効質量の大きい場合と
有効質量の小さい場合のバンド図はど
のようになるか、右図にならってグラフ
を描け。
E+2A


a
E-2A
0
k

a
sp3混成軌道による伝導帯,禁制帯,価電子帯形成
E
E
伝導帯
エネルギー
sp3
sp3
Si
3p
3s
sp3
0
a0
距離
禁制帯
価電子帯
R=∞
x
GaAsの電子エネルギーバンド
エネルギー E (eV)
7
6
L3
Γ15
5
4
E’1=6.3eV
3
Γ1
2 L1
1 E1=
0 2.4eV
-1
L3
-2
-3
-4
L(111)
GaAs
Γ15
k1
x3
E0=1.4eV
x1
Γ15
k1
E2=4.7eV
Γ1
Γ15
k2
x5
k1
x
k
(110)
Γ (100)
ブリュリアンゾーンの位置k
Γ
エネルギー E (eV)
Siの電子エネルギーバンド
6
5
4
3
2
1
0
-1
-2
-3
-4
-5
Γ2’
Si
L3
Γ2’
E’1=5.5eV
Γ15
L1
E0=4.0eV E’ =3.2eV
0
E1=3.4eV
Γ25’
x1
Eg=1.1eV
k1
Γ15
k3
E2=4.5eV
Γ25’
L3’
x4
L
(111)
k2
k1
Γ (100)
k
X
ブリュリアンゾーンの位置k
(110)
Γ
物性トピックス5-有効状態密度-
一辺の長さがLの立方体(体積V)の物体の中の電子の波の状態
の取りうる数Nはいくらか考えよう。
L
3次元の場合の波数がゼロからkまでの電子状態の数を数えよう。
波数kがそれなりに大きい場合を考えよう。
k>> π/L
波数kの波の波長は立方体の長さLより十分小さいから、波の状態
は直方体の形には関係ない。よって波数kは3次元方向に等方的
に球状に分布していると考えよう。
物性トピックス5-有効状態密度-
4 3
k
半径kの球の体積は:
3
3
 2 
最小波数π/Lの体積は:  
 L 
波数がゼロからkまでの電子状態の数はおおむね、
4 3
k の中に
3
 2 


 L 
3
がいくつあるか数えよう。
4 3
k
3
L
V
Nk  3 3  2 k 3  2 k 3
6
6
 2 


L


(S-23)
物性トピックス5-有効状態密度-
単位体積の場合の波数の数は
k3
nk  2
6
nk
k2
 2
波数kの波数当たりの密度を求めよう Dk 
k 2
(S-23)
(S-24)
新事実を加える。電子やホールは一つの状態に2個入れる。
これをスピン自由度という。これを加えると。
単位体積当たりの状態数は
波数kの密度は
k3
nk  2
3
Dk 
k2

2
(S-25)
(S-26)
物性トピックス5-有効状態密度-
自由電子気体モデルが成り立つと仮定したとき、
2 2
p2
k

エネルギーと波数の関係  
2m * 2 m *
3/ 2
3
2
m
*



k
n  2 
(S-27)
3
3 2 3
から
単位体積当たりのエネルギ-についての状態密度は
n  2m *
1/ 2
D 



2 2 3
3/ 2
(S-28)
エネルギーバンド中の自由電子の状態密度はエネルギー
の1/2乗に比例する。物性物理学上重要な性質です。
物性トピックス5-有効状態密度-

金属の場合を考えよう。電子はバンド
(最上位のバンド)の途中までしか詰
E+2A
εF
まっていない。
・理由はスピン自由度である。
・これまで議論してきたように同種の ここまで
詰っている E-2A
原子が一個づつ連なるとバンドを形


0
k

成する。
a
a
・電子はスピン自由度2をもつので
形成されたバンドの状態数の2倍の電子を収容できる。
従ってバンドの半分は常に空いていることになる。
・実際の固体には単位格子内にいくつもの原子があるので、共有
結合により形成されるバンドは複数ある。
物性トピックス5-有効状態密度-
従ってバンド中の状態を電子が占有する仕方は
1)いくつかバンド全て電子が詰まっている。残りは空っぽ。
2)バンドの途中まで電子が詰まっている。その上は空っぽ。
の2通りの組み合わせである。
最外郭の共有結合する電子が奇数個の場合は2)のケースになる。
これが金属である。金属のバンド(最上位のバンド)は電子が途中
までしか詰まっていない。空いているところが沢山あるので移動で
きる(状態が変化できる)。だからポテンシャルが低くなる方に、バ
ンド内の全体の電子が移動することができる。これは動きうる電子
キャリヤ密度が非常に大きいことを示している。~1028 m-3。1原
子当たり1個の電子キャリヤを供給している。たとえ温度を変えて
もキャリヤは全部動ける。従って金属は低温でも高温でもキャリヤ
密度多く、低抵抗である。
物性トピックス5-有効状態密度-
Z
元素
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
H
He
Li
Be
B
C
N
O
F
Ne
Na
Mg
Al
Si
P
S
Cl
Ar
K
1s
1
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
L
2s2p
1
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
1
2
3
4
5
6
6
6
6
6
6
6
6
6
M
3s3p3d
1
2
2
2
2
2
2
2
1
2
3
4
5
6
物性トピックス5-有効状態密度-
この世の中は熱統計力学によって支配されている。
電子も例外ではない。
電子があるエネルギーEの状態を占める確率fはフェルミディラッ
ク統計分布関数によって決められる。
1
f  E , EF  
 E  EF
exp 
 kT

 1

(S-29)
である。EFはフェルミレベル。Kはボルツマン常数、Tは絶対温度
フェルミディラック統計分布関数はどのようにして導かれるは
また後で勉強することにして、早速これを使ってよう。
演習問題13. f (E,EF) をエネルギーE を変数としてf-E グラフを描
け。EFを含むこと。意味を考えよ。
物性トピックス5-有効状態密度-
状態密度分布とフェルミディラック統計分布関数を用い
れば電子密度のエネルギー分布を知ることができる。
2m *

1/ 2


2 3
3/ 2
D f
2
1
   F
exp 
 kT

 1

(S-30)
物性トピックス5-有効状態密度-
いろいろな温度での電子密度エネルギー分布
Density of states (m-3eV-1)
3x1027
m*=3x10-31 kg
EF=4.2 eV
2x1027
100K
0K
300K
1000K
1x1027
0
0
1
2
3
4
Electron energy (eV)
5
物性トピックス5-有効状態密度-
金属はフェルミエネルギーがバンドの中にある。計算グラフに示す
ように、低温では電子はフェルミエネルギー以下に全部おさまって
いる。しかし、温度が高くなるとフェルミエネルギーを越えて、高エネ
ルギーの電子が出現する。もっとも、よほど高温にならない限り、高
エネルギー電子の数はほんの少しである。従って電子全体のエネ
ルギーは温度を上げてもあまり変化しないことを示している。
物性トピックス5-有効状態密度-
状態密度とフェルミディラック統計関数の組み合わせは強力且つ
万能である。半導体のキャリヤ密度も簡単に計算できる。半導体
の場合はフェルミエネルギーレベルはバンドとバンドの間、バンド
ギャップの中にある。その場合でも電子のバンド内のエネルギー
分布の式は全く同じである。価電子帯端からエネルギーを測った
場合、
フリー
フリーホール εF エレクトロン
3/ 2
2m *
1/ 2

1
D f 
 g 
2 3 
2
   F 
exp 
 1
 kT 
εg
0
e
バンド内の電子状態の総数はバンドの中をエネルギーによって積
分すればよい。
3/ 2

  2m *
1/ 2
1
n   D f d   



d


g
2
3
g
 g 2
(S-31)
   F 
exp 
 1
 kT 
物性トピックス5-有効状態密度-
フェルミレベルが伝導帯端から離れている場合、フェルミディラッ
ク統計分布関数は指数関数で近似できる。計算すると、
 2m *
3/ 2
1
n   D f d   
d
   g 
g
 g 2 2 3
   F 
exp 
 1
 kT 
3/ 2
3/ 2
  2 m *
1/ 2
 F  g 
m
*
kT


   F 

   g  exp   kT  d  2  2 2  exp  kT 
 g 2 2 3






 F  g 
n  N c exp 

kT


1/ 2
(S-32)
このように伝導帯中の電子密度はフェルミエネルギーレベルを用い
て極めて簡単な式で与えられる。これを有効状態密度近似式という。
自由電子気体モデル、有効質量モデルに並んで重要且つ利用価値
の高い式である。
物性トピックス6-フェルミ・ディラック統計分布関数エネルギーεi、状態数Ni の状態 i に電子のような粒子がni個
存在する場合を考えよう。状態はバンドでも孤立状態でも何で
も良い。粒子の合計の数はnと決まっているものとする。
粒子数の合計はnと決まっているので、

n   ni
i 1
(S-33)
エネルギーの合計は  

 n
i 1
i i
(S-34)
状態 i に粒子がni個存在する場合の数は
である。
Ni !
Wi 
ni ! Ni  ni !
(S-35)
物性トピックス6-フェルミ・ディラック統計分布関数よって全体のエントロピーは以下のようになる


Ni !
S  k  Si  k  ln 

i 1
i 1
 ni ! Ni  ni ! 



~ k   Ni ln Ni  ni ln ni   Ni  ni  ln  Ni  ni   (S-36)
i 1
あらゆる温度において、熱平衡状態が最も実現可能性の高い安定
な状態である。
1)このときエントロピーは極大値をとる。だからちょっと粒子数分布
が変化してもエントロピーは変化しない。 δS=0
2)エネルギーもまた温度の関数である。だからちょっと粒子数分
布が変化しても変化しない。 δε=0
3)粒子数は一定だから、もちろん粒子数分布が変化しても変化し
ない。 δn=0
これら条件下で各エネルギー準位における粒子の数を求めたい。
物性トピックス6-フェルミ・ディラック統計分布関数1)~3)を組み合わせた以下の量を考えよう。
A  S   n  
A0
熱平衡下では

すなはち
だから

i =1
である。
Si
ni
ni
–
–  i
ni
ni
ni
Si
    i  0
ni
Ni  ni
k ln
    i  0
ni
=0
物性トピックス6-フェルミ・ディラック統計分布関数これを計算して
ni 
F
 = 1,  = –
T
T
Ni
    i
exp 
 k

 1

ni 
(S-37)
Ni
 i   F
exp 
 kT
(S-38)

 1

粒子数が合計n、エネルギーの合計がεのときの、各エネルギー準
位数確率分布が得られた。
物性トピックス6-フェルミ・ディラック統計分布関数1
fi 
 i   F
exp 
 kT

 1

(S-39)
これをフェルミ・ディラック統計分布関数と呼び、各々のエネルギー
準位での熱平衡下における粒子の存在確率を表す。εFをフェルミエ
ネルギー或いは化学ポテンシャルと呼び、εF以下のエネルギー準
位では粒子の存在確率は大変高い。反対にフェルミエネルギー以
上では粒子の存在確率は小さい。エネルギーが丁度フェルミエネ
ルギーにあるとき、存在確率は0.5である。金属の場合、取りうるエ
ネルギー準位は小から大までいっぱいある。だから金属の場合実
効的にフェルミエネルギーまで電子は詰まっていると考えて良い。
物性トピックス6-フェルミ・ディラック統計分布関数半導体の場合に重要となる2体問題を考えよう。
右図のようにエネルギー準位が2つしかなく、それ N
ぞれの準位の状態数Nが同じであり、総粒子数n
N
はn=Nであるとする。
状態1の粒子の数n1と状態2の粒子の数n2とエネ
ルギーとの関係は、
となる。
これまで勉強してきたことを用いると、粒子数の和nは
N
n
 1   F
exp 
 kT
N


 2  F
  1 exp 

 kT

 1

n
 
exp  1 F
 kT
n

 2  F

1
exp



 kT

 1

n=Nだから n 

(S-40)
2
1
物性トピックス6-フェルミ・ディラック統計分布関数(S-40)式を計算すると、
F 
1   2
2
となる。フェルミレベルは2準位の中間に位置する。
よって、準位2の粒子数は
n2 
N
  
exp  2 1   1
 2kT 
物性トピックス6-フェルミ・ディラック統計分布関数-
これは半導体のキャリヤ濃度の問題を良く説明する。
・半導体は価電子帯と伝導帯の有効状態数はほぼ同じ(n1〜n2)。
・T=0Kでは価電子帯に電子が詰まっている状態(n=N)。
・価電子帯と伝導帯のバンドギャップエネルギー差をε2-ε1と考える
と、
フェルミレベルはバンドギャップの中間位置にある。
これは大変不思議である。電子の存在確率が50%のエネルギー
がフェルミエネルギーである。しかし、ギャップ内にはエネルギー
準位はないから、電子は存在しない。
物性トピックス7-ドーピング-
半導体デバイスにとって非常に重要な不純
物ドーピングを考えよう。これは我々の場合
は右図のような3体問題に相当する。
Nc εc
Nd εd
Nv εv
まず価電子帯と伝導帯の有効状態密度を等しいと仮定しよう。
Nv=Nc=N
としよう。
電子の数はNdが加わったことにより増加して、
n = N + Nd
になる。
すなはち、価電子帯、伝導帯と不純物準位にある電子数は
n v  nc  n d  N  N d  n
である。我々は既に一般解を得ているので考察は容易である。
それぞれの状態にある電子の数をいっぺんに求めてみよう。
物性トピックス7-ドーピング-
nv 
N
 v  F
exp 
 kT

 1

nc 
N
 c  F
exp 
 kT
電子の数あわせをしよう。

 1

Nd
nd 
   F
exp  d
 kT

 1

n v  nc  n d  N  N d  n
だから、これらを組み合わせて考察しよう。
N
 v  F
exp 
 kT
N


 c  F
  1 exp 

 kT
Nd


 d  F
  1 exp 

 kT

 1

 N  Nd
これを計算すると以下のようになる。

 v  F 
 c  F   
 d  F  
1

exp
exp
exp





  1

 kT 
 kT   
 kT   N d



 v  F   
 c  F  
 d  F  N
 exp  kT   1  exp  kT   1 exp  kT 

 

 



(S-40)
物性トピックス7-ドーピング-

 v  F 
 c  F   
 d  F  
1

exp
exp
exp





  1

 kT 
 kT   
 kT   N d



 v  F   
 c  F  
 d  F  N
 exp  kT   1  exp  kT   1 exp  kT 

 

 



(S-40)
これはまことに複雑である。しかし、上式からフェルミレベルの幾
つかの性質を読み取ることができる。
1)3つのエネルギーレベルは固定である。左辺で変わりうるもの
は温度とフェルミレベルである。従ってフェルミレベルは温度と、
Nd/Nの比に依存する。
2)フェルミレベルがエネルギー準位εvとεcの中間にいるときは左
辺は正確にゼロになる。そしてN d=0である。従ってNd がNに比
べて非常に小さいときはフェルミレベルはミッドギャップ近くにある。
3)フェルミレベルがエネルギー準位εcと殆ど同じレベルになること
があるだろうか?このとき、上式は次のようになる。
物性トピックス7-ドーピング-

 d  c  
 v  c   
 1  exp  kT    exp  kT   1 N
 




 d
N

 d  c 
   c  
exp
1

2  exp  v


 
kT
kT


 


もし  c   v  kT のようにエネルギーギャップが大きく、あるい
は低温のとき、式はずっと簡単になり、フェルミレベルがεcとほぼ
同じになる条件は以下のようになる。即ち非常に大量のNdを用意
すればフェルミレベルはεcに達することができる。

 c  d
 1  exp  kT

Nd  N 
2



(S-41)
これでフェルミレベルの性質がわかってきた。
物性トピックス7-ドーピング-
不純物ドーピングの少しのまとめ
1)フェルミレベルは温度に依存する。
2)フェルミレベルはドーピング濃度Ndに依存する。
3)NdがNに比べて非常に小さいとフェルミレベルはεvとεcのエネ
ルギー準位の真ん中近くにくる。
4) NdがNに比べて非常に大きいとフェルミレベルはεcのエネル
ギー準位に近づく。
物性トピックス7-ドーピング-
さらに電子が占有されない状態数も面白い。
各エネルギー状態を占有する数は、
N
N
Nd
nv 
nc 
nd 







 c
 d  F
F 
F 
exp  v

1
exp

1
exp




kT
kT




 kT
だから非占有数pは
pv  N 
N
   F
exp  v
 kT
N
pc 
 F  c 
1  exp 

 kT 

 1


N
   v 
1  exp  F

kT


Nd
pd 
 F  d 
1  exp 

 kT 
ここで遊び・・・・・ncxpvを考えてみよう。

 1

物性トピックス7-ドーピング-
nc pv 
N
 c  F
exp 
 kT
N

 F  v 
  1 exp 
 1

 kT 

(S-42)
フェルミレベルがεcにあまり近くなく、かつ
 c   F  kT
 F   v  kT
を満たすように十分低温の場合、上式はより簡単化されて以下
のようになる。
 c  v
nc pv  N exp  
kT

2
 g 

2

  N exp  
kT



(S-43)
ncpvはフェルミレベルに依存しない。Nとεgに依存するのみ。
物性トピックス7-ドーピング-
 g 
nc pv  N exp   
 kT 
2
(S-44)
は極めて重要な式である。すなはち、
一般にεi>εF>εjであり、 εiーεj >> kT のとき、i状態の占有数とj状
態の非占有数の積は、フェルミレベルによらない。
iとj状態の間にあるいかなる状態にも関係なく、以下のように表され
る。
nipi
Ni
iεi
 i   j 
ni p j  N i N j exp  
 (S-45)
k
kT


ε
F
これを law of mass action という。
日本語では統計熱力学的集団作用という。
大変重要で利用価値の大きい性質である。
Nj
n i pj
m
jεj
物性トピックス7-ドーピング-
準位εdについて考えよう。占有数と非占有数は
Nd
nd 
 d  F
exp 
 kT

 1

Nd
pd 
 F  d 
1  exp 

 kT 
Rd (=pd)をイオン化率という。
1
Rd 
即ち、εdが空っぽになっていれば
  F   d  (S-46)
1  exp 

εdの状態数分のキャリヤが供給
kT


されることになる。
もしεF<< εdなら、Rd~1である。 εF= εdなら、Rd=0.5である。
先に議論したようにフェルミレベルはεdの状態数Ndに依存する。 Nd
が少ないとεFは小さく、イオン化率は1になる。即ち100%キャリヤを
発生する。 Ndが非常に多いとεFは大きくなる。イオン化率は小さく
なる。即ちキャリヤ発生効率が小さくなる。
物性トピックス7-ドーピング-
4族半導体の場合、3族や5族元素を格子位置に入れると、 3族
や5族元素はアクセプターやドナーとなりバンドギャップ内に準
位を作る。即ち3体問題となり、フェルミレベルはアクセプターや
ドナーのエネルギー位置と密度によって決まる。
エネルギーεd,密度Ndのドナーを作ると、伝導帯電子密度は有効
状態密度近似を使って、
 F  g 
n  N c exp 

kT


である。
ドナーから供給される電子密度はドナーのイオン化密度pdと同
じである。ドナーのイオン化密度が真性状態の電子密度より十
分大きく、且つ、有効状態密度より十分小さいならば、伝導帯電
子密度はイオン化したドナー密度とほぼ等しい。
n ~ pd
物性トピックス7-ドーピング-
即ち、
 F  g 
Nd
N c exp 
~

kT

 1  exp   F   d 


 kT 
である。上式を解くとフェルミレベルについて以下の式が得られる。


  g  d   
4 Nd

 F   d  kT   ln 2  ln  1  1 
exp 



Nc
kT   




この式は
の条件のとき、
と近似できる。
  g  d
4Nd
exp 
Nc
 kT

  1

 Nd 
 F ~  g  kT ln 

N
 c
(S-47)
物性トピックス7-ドーピング-
1.最外殻電子の共有結合によりエネルギーバンドが形成さ
れる。
2.半導体の場合、フェルミレベルは価電子帯と伝導帯の間に
あり、温度0Kにおいて、エネルギーの低い価電子帯全ての状
態に電子が詰まっている。エネルギーの高い伝導帯には電子
はない。バンドは全て詰まっているか、空っぽかのどちらかだ
から、状態が変化するチャンスがない。即ち電子は移動でき
ず、電流は流せない。
3.温度が上がると、電子は価電子帯
から伝導帯に飛び移る可能性がある。
伝導帯は十分空いている。だから伝導
帯に上がった電子は移動でき、電流が
流れる。
フリ-ホール
0
ε
フリ-
エレクトロン
εg
ε
物性トピックス7-ドーピング-
4.伝導帯の電子のキャリヤ密度は有効状態密度近似を用いて
 F  g 
n  N c exp 

kT


(S-6)
と表すことができる。Ncを伝導帯の有効状態密度という。
 m * kT 
Nc  2 
2 
2



3/ 2
(S-48)
である。電子キャリヤ密度は、有効状態密度とエネルギギャップ
とフェルミエネルギーと温度によって決定される。キャリヤ密度は
温度により強く変化する。
物性トピックス7-ドーピング-
5.同様にして、価電子帯ホールのキャリヤ密度は以下のよ
うになる。
  F 
p  Nv exp 
(S-49)

 kT 
6.ホールは電子の非占有状態であるから、伝導帯端と価電
子帯端の2つのエネルギー準位間で、low of mass actionが
成り立つ。
  g 
np  N c N v exp 

 kT 
(S-50)
物性トピックス7-ドーピング-
7.不純物ドーピングは即ち3体問題のフェルミレベル決定問題
である。フェルミレベルは不純物エネルギー準位と不純物密度
に依存する。そして low of mass actionが成り立つ。
8.不純物エネルギー準位の非占有密度比をイオン化率という。
9.不純物密度が真性キャリヤ密度より十分大きく、有効状態
密度より十分小さい時、有効状態密度近似を使うことができ、
フェルミレベルは以下のように与えられる。
 Nd 
 F ~  g  kT ln 

 Nc 
(S-47)
物性トピックス7-ドーピング-
 F  g 
演習問題14. 有効状態密度式 nc  N exp 

kT


を用いて、εFが0.55から1.1eVまで変化したときのncをグラフに描
け。 N=2x1025m-3, εgは1.12 eVとする。 T=300K
演習問題15. εd=1.08eVのとき、 εFが0.55から1.1eVまで変化し
たときのイオン化率Rdをグラフに描け。T=300K
1
Rd 
   d 
1  exp  F

 kT 
物性トピックス7-ドーピング-
演習問題16.シリコン300Kの場合, ドーピングを施すことによ
り、nc=1x1018cm-3 になった。有効状態密度を2x1019cm-3 とし
てフェルミレベルを求めよ。
演習問題17. low of mass actionやイオン化率について、似
たような現象が他にあるか考察せよ。
デバイストピックス―pn接合-
異なる2種類の不純物をそれぞれドーピングした場合2つの物体を
考えよう。それぞれが孤立している場合は、p型、n型ドーピングによ
るフェルミエネルギーレベルが決まり、p型はホール多数、n型は電
子多数の状態になる。
それでは、p型とn型をくっつけたらどうなるだろうか?
P型ドーピング
多数ホール
N型ドーピング
多数エレクトロン
P
N
Nc
EF
Nv
Nc
EF
Nv
P
N
デバイストピックス―pn接合-
2つの物質がエネルギーのやり取り可能な熱平衡状態にあるとする。
このとき既に学んだように、全体でフェルミレベルがただ一つ定まる。
非常に不思議だが、これが熱平衡の性質である。
物理的考察を試みよう。
1)p型にはホールが沢山ある。n型にはホール
P
N
は殆どない。
2)n型には電子が沢山ある。p型には電子
は殆どない。
3)p型とn型をくっつけると、ホールと電子はエントロピー大きくなる
ように、それぞれ数の少ない方に拡散して、同じ密度になろうとするだ
ろう。
4)ところが、p型、n型にはそれぞれイオン化不純物が存在する。
だから、p型、n型はそれぞれ孤立状態で、ホール-電子-不純物イオン
間の電荷中性条件が成り立っている。
デバイストピックス―pn接合-
5)従って、p型からホールがn型に流れ出ようとすれば、p型側はマ
イナスに帯電する。
6)これに対し、n型から電子がp型に流れ出ようとすれば、n型側は
プラスに帯電する。
7)よってn型からp型へ向かって電気的力が生じてホール及び電子
の無制限の拡散を防ごうとする。
8)この拡散と電気的力の綱引きは、
P
N
電気的エネルギーを最小にする条件
で決着する。
9)電気的エネルギーは、電界強度の2乗に誘電率を掛けた量を空
間積分して与えられる。
1
U
 EEdV

2
10)一般的に空間全体に電界強度が生じるとエネルギーは大きくな
る。なるべく電界強度は局所的に存在する方がエネルギーが小さく
なる。
デバイストピックス―pn接合-
11)不純物イオンは動く事ができないが、ホールとエレクトロンの分
布は変化できる。8)〜10)に従ってホールとエレクトロンの分布が決
る。
12)結果、電荷の中性状態が破れて、電界強度が発生する領域は、
p型とn型の接合部分に限られる。
13)もちろん、電界強度は電磁気学の法則に従って決まる。
(r)
div E(r) = 
P
N
ここでρは位置rにおける電荷密度である。
即ち電荷中性が破れてできた正味の電荷密度である。
14)接合面のp型側はマイナス帯電だから、 ρは負である。これに
対し、n型側はプラス帯電だから、 ρは正である。
1)から14)までの性質を理解しつつ、pn接合のバンドを計算しよう。
デバイストピックス―pn接合-
1x1024 m-3 doping
1x1024 m-3 doping
ポテンシャルエネルギー(eV)
P
N
物理的接合面
2.5 電気的接合面
2
1.5
C
1
0.5
0
-100
-50
0
V
50
距離(nm)
ポテンシャルバリヤー
0.944eV
フェルミエネルギーレベル
100
デバイストピックス―pn接合-
1x1024 m-3 doping
ポテンシャルエネルギー(eV)
P
1x1024 m-3 doping
N
物理的接合面
2.5 電気的接合面
2
C
1.5
1
0.5
0
-100
-50
0
距離(nm)
V
50
ポテンシャルバリヤー
0.944eV
フェルミエネルギーレベル
100
デバイストピックス―pn接合-
演習問題18. 電子移動度0.1 m2/Vs, ホール移動度0.04
m2/Vsとして、1x1024 m-3ドープシリコンの電気伝導率をそれ
ぞれ求めよ。ドープシリコンが1mmx1mmx1mmのサイズのと
き、1Vの印加で流れる電流を求めよ。
デバイストピックス―pn接合-
1x1024 m-3 doping
P
1x1024 m-3 doping
N
電気伝導度 (S/m)
物理的接合面
106
104
102
ホール
100
10-2
10-4
10-6
10-8
10-10
10-12
-50
-100
電子 PN接合全体の電気伝導率
~1x10-11 S/m
真性半導体の電気伝導率
0
50
距離 (nm)
100
デバイストピックス―pn接合-
P
N
バンドの曲がりは電荷密度に依存する。

1 qn 2 1 qN d
~
x ~
Wd 2
N側では、
2 2 
2 
Wd ~

qN d
:空乏層幅はbuild-in 電圧Ψの0.5乗に比例し、
ドーピング密度の0.5乗に反比例する。
演習問題19. Nd=1x1024 m-3, Ψ= 0.5 Vのとき、Wdを求めよ。
εは1x10-10 F/mとする。
デバイストピックス―pn接合-
2x1023 m-3 doping
ポテンシャルエネルギー(eV)
P
2.5
1x1024 m-3 doping
N
物理的接合面
電気的接合面
2
1.5
ポテンシャルバリヤー
0.905 eV
C
フェルミエネルギーレベル
1
0.5
0
-100
V
-50
0
50
距離(nm)
100
デバイストピックス―pn接合-
5x1024 m-3 doping
ポテンシャルエネルギー (eV)
P
2.5
2
1x1024 m-3 doping
N
物理的接合面
電気的接合面
1.5
C
1
0.5
0
-100
ポテンシャルバリヤー
0.978eV
フェルミエネルギーレベル
V
-50
0
50
距離 (nm)
100
デバイストピックス―pn接合-
PNダイオードに電圧をかけると、電気的引力・斥力が働き、
+V
P
0V
N
ポテンシャルエネルギー (eV)
電位が変化する。
2.5
2
1.5
C
1
0.5
0
-100
V
-50
0
50
距離 (nm)
100
デバイストピックス―pn接合-
ポテンシャルエネルギー (eV)
PN接合部にかかる電圧に応じた拡散電流が流れる。
2.5
電子電流
2
1.5
C
1
0.5
0
-100
-50
0
ホール電流
V
50
100
距離 (nm)
デバイストピックス―pn接合-
拡散電流は非熱平衡の電流だが、以下のように見事に表示される。
電子電流: J n 
 qDn ni2  exp( qVapp / kT )  1
p p 0 Ln tanh(W / Ln )
 J 0  exp( qVapp / kT )  1
ここでDnは電子の拡散係数,
Pp0はP型半導体内のホールの熱平衡濃度,
WはP型層の長さ,
kT n n
LnはP型層内の電子の拡散長: Ln   n Dn 
q
nはP型層内の電子の消滅ライフタイム
デバイストピックス―pn接合-
電子電流は(ホール電流も同様)、
J n  J 0  exp( qVapp / kT )  1
だから、電流は引加電圧により指数関数的に増大する。
シリコンの抵抗が0.1オームの場合のダイオードの電流電圧特性
10
電流(A)
10-1
10-3
抵抗0.1Ω
ダイオード
10-5
10-7
10-9
10-11
0
0.2
0.4
0.6
電圧(V)
0.8
1
デバイストピックス―MOSキャパシタ-
G
ゲート絶縁膜
D
P
N
S
N
ポテンシャルエネルギー(eV)
現在のトランジスタの基本
構成要素である、MOSキャ
パシタとMOSFETを勉強しよ
う。
!右図はn-MOSFETの断面
構造である。
!FETはダブルpn接合型で
あり、2つのポテンシャルバ
リヤーがある。
!チャネルの上にはゲート
絶縁膜を介してゲート電極
がある。
!ゲート電界でポテンシャ
ルバリヤーを変化させ、ソー
ス・ドレイン間の電流を制御
する。
2.5
L
2.0
C
1.5
EF
1.0
0.5
V
0
距離
デバイストピックス―MOSキャパシタ-
!大きなプラスゲート電圧をか
けると
→チャネルはn型に変化し、
電子密度が大きくなり、
→電子伝導率が大きくなる
G
S
N
ポテンシャルエネルギー(eV)
!プラス電圧をゲートにかける
と、
→電子に引力が働き電子ポテ
ンシャルが低下する。
→ポテンシャルバリヤー
が小さくなる。
2.5
2.0
1.5
Vg
+high
D
P
N
チャネル
C
EF
1.0
V
0.5
0
距離
デバイストピックス―MOSキャパシタ-
!右図のようにチャネル部分だけ
を抜き出した素子構造を考えよう。
!MOSキャパシタという。
!ゲート電極、ゲート絶縁膜、
半導体基板(シリコン)、
P
下部電極からできている。
G
VG ゲート絶縁膜
0V
ゲート電極に直流電圧をかけるとどうなるだろうか?
デバイストピックス―MOSキャパシタ-
ゲート電極に直流電圧をかけるとどうなるだろうか?
!ゲート絶縁膜があるので、少なくとも縦方向には電流は流
れない。
!ならば半導体中のフェルミレベルはただ一つに定まるだろう。
!ゲート電圧が正なら電子のポテンシャルは低下し、電子は
シリコン表面に集まる。
!ゲート電圧が負ならホールのポテンシャルは低下し、ホール
はシリコン表面に集まる。
デバイストピックス―MOSキャパシタ-
異種材料は異なる仕事関数を持つ。従って異種材料間には自然に
仕事関数差のエネルギー差が発生する。
Vacuum
level
Al-Metal
SiO2
Ec
p-type Si
Vacuum
level
0.95 eV
qX=4.05 eV
qφm=4.10 eV
qφS仕事関数
Ec
Ef
8-9 eV
Ev
Ev
Ef
Eg=1.12 eV
デバイストピックス―MOSキャパシタ-
もし仕事関数差がないときは、電圧をかけなければ電位はどこでも
一定である。これをフラットバンドという。しばらくこの条件を考えよう。
Al-Metal
SiO2
p-type Si
Vacuum
level
Ec
qφS仕事関数
Ec
Ef
Ev
Ev
Ef
デバイストピックス―MOSキャパシタ-
フラットバンド状態のエネルギーバンドダイヤグラム
Metal Insulator Silicon
Ef
Vg =0
Ec
Ef
Ev
ゲート電極に正電圧印加するとどうなるか?
デバイストピックス―MOSキャパシタ-
ゲート電極に正電圧印加すると?
Metal Insulator Silicon
Vg >0
Ef
Ec
Ef
Ev
・電子引力が働き、Si/絶縁膜界面に電子が集まる。
・電子ポテンシャルは下がる。
・ホールは右遠くへ逃げる。
・表面近くには電子とアクセプタ負イオンが残される。
・PN接合P側のバンドベンディングに似た状態ができる。
デバイストピックス―MOSキャパシタ-
ゲート電極に正電圧印加すると?
Metal Insulator Silicon
Vg >0
Ef
Ec
Ef
Ev
・常にフェルミレベルは一定である。
・常に有効状態密度近似は成り立っている。
・シリコン側の負電荷量とゲート電極側の正電荷量は等しい。
・シリコン内の電位(降下)ψsと絶縁膜の電位(降下) ψiとVgと
の間には Vg = ψi + ψs が成り立つ。
デバイストピックス―MOSキャパシタ-
ゲート電極に正電圧印加すると?
Metal Insulator Silicon
Vg >0
Ef
Ec
Ef
Ev
・シリコン絶縁膜界面に電子が蓄積する。
・バンドが曲がりホールキャリヤが非常に小さい領域(空乏層
ができる)
デバイストピックス―MOSキャパシタ-
シリコン中のバンドの曲がり分をψ(x)としよう。
ψ(0)= ψsである。深さxの電子密度はどうなるだろうか?
有効状態密度近似:
 E f  q ( x )  E g 
n  N c exp 

kT


 q ( x ) 
 n0 exp 

 kT 
ni2
 q ( x ) 
~
exp 

Na
kT


Metal Insulator Silicon
Vg >0
Ef
バンドの曲がり分に応じて急峻な電子密度分布が生じる
Ec
Ef
Ev
例:
Electron concentration, n(x) (1024m-3)
デバイストピックス―MOSキャパシタ-
12
Na=1024m-3
10
ΨS =0.88V
8
6
4
2
0
0
5
10
15
Distance from surface, x (nm)
20
デバイストピックス―MOSキャパシタ-
ゲート電極端に蓄積する電荷Q+
と等量の負電荷Q‐が半導体側に発生 Metal Insulator Silicon
する。負電荷の内訳は界面の電子キ
ャリヤ、とアクセプター負イオン。アク
セプターイオンは一様で動かないから
Ec
V
>0
g
大きな空間電荷効果を発生する。
Ef
空間電荷効果はPN接合と同じ。
Ev
Ef
ゲート絶縁膜をコンデンサと見立て
れば、
+
Q
Q  C V   C 
ox

g
s

ox
となる。
Q  Q  Qe  Qa
i
-tox
Wd
0
Qe
-
Qa
-
x
デバイストピックス―MOSキャパシタ-
①Vgが小さいプラスの場合、
 q ( x ) 
n  n0 exp 

 kT  は非常に小さい。
だから、電荷のバランスは主にアク
セプターイオンによってなされる。
Q  ~ Qa
Metal Insulator Silicon
Ec
Ef
Ev
Vg >0
②Vgが大きくなると表面はn型に反
Ef
転するが、なお電子密度は小さい。
Q  ~ Qa
③Vgが非常に大きくなると表面は表
面電子密度は大きくなり、電荷のバ
ランスは電子が受け持つようになる。
Q  ~ Qe
Q+
-tox
0
Qe
Wd
Qa-
x
デバイストピックス―MOSキャパシタ-
④ ②と③の切り替わりは、概ね表 Metal Insulator Silicon
面電子密度がアクセプターイオン密
度と等しくなる条件で与えられる。
Ec
Vg >0
Qe ~ Qa
Ef
2
ni
 q s 
Ev
Na ~
exp 

Ef
Na
 kT 
kT  N a 
2 B   s ~ 2
ln 

q
n
 i 
Ψsが2ψBを超えると電子密度は指数
関数的に急激に増大する。よってψs
はその後あまり大きくは増大しなくな
る。よって
Q  Cox Vg  2 B 
Wdm 
 2kT ln  N a / ni 
q2 N a
Q+
-tox
0
Qe
Wdm
Qa-
x
デバイストピックス―MOSキャパシタ-
Ψsが2ψBを超えると電子密度は指数関数的に急激に増大する。よっ
てψsはその後あまり大きくは増大しなくなる。従って、
Q  Cox Vg  2 B 
となる。2ψBをMOSキャパシタのしきい値という。
⑤次にVgが負の場合はどうなるか?
ゲート電極には負電荷が、半導体に
Metal Insulator Silicon
は正電荷が蓄積される。正電荷は
ホールである。ホールはP型半導体
にはもともとたくさんある。それが
Vg < 0
さらに増える。ホール密度の増え方
Ec
は電子の場合と同じでψsの変化に
Ef
よるが、はじめからホールマジョリティ
Ev
なのでψsの変化はわずかである。
デバイストピックス―MOSキャパシタ-
Ψsと電荷量との関係は以下のようになる。
10-4
|QS | (C/cm2)
10-5
10-6
-5 -0.5-0.1 0
0.2 0.4
0.6
5 Vg (V)(例えば)
1
~exp(qΨs/2kT)
(Strong inversion)
P-type Si (300K)
Na=4×1015cm-3
~exp(q|Ψs|/2kT)
(Accumulation)
10-7
Flat
band
2ΨB
~√
ΨS
Weak
Depletion inversion
10-8
Ev
10-9
-0.4 -0.2
ΨB
0
0.2
Ei
0.4
Ec
0.6
0.8
1.0 ΨS (V)
デバイストピックス―MOSキャパシタ-
いかに調べるか?
→
電流-電圧特性


電荷と電圧の関係は Q  Cox Vg   s  Cox i
であるから、
dVg
dQ
d s
C
 Cox
 Cox
dVg
dVg
dVg
d s
 Cox  Cox
dVg
前図より、
ψsがVgに対し大きく変化する0~2ψB領域は電荷量の変化が小さく
キャパシタンスが小さい。
Ψsの変化が小さくなると電荷量は大きく変わる。キャパシタンスはCox
になる。
デバイストピックス―MOSキャパシタ-
ゲート電圧をVg→Vg+ΔV →Vg+2ΔVとゆっくり変化させながら電流を
測定することによりC-Vg関係調べると以下のようになる。実際に流れ
る電流は非常に小さい。
1.0
C/Cox
0.8
C=Cox
C=Cox
Cfb(flat-band
capacitance)
ΨS =0
ΨS = 2ΨB
0.6
0.4
0.2
0
Vg
0
Vt
Vg (V)
+Vg
デバイストピックス―MOSキャパシタ-
しかし、ゲート電圧をVg+Vcosωt のように高周波変調電圧をかけな
がら、Vgを変化させる場合の電流I(ω)は異なる特性となる。
即ち半導体中を大きな高周波変位電流が流れる。
I  CV sin t
変位電流が常に何処でも発生する。例えば絶縁膜にはキャリヤによ
る直流電流がなく、電流は100%変位電流である。即ち電子あるいは
ホー密度が少なくなる時に変位電流が顕著になる。即ち高周波のと
きには、半導体中では空乏層領域で変位電流が支配的となる。よっ
てCは、
Cd 
 Si
Wdm
 si qN a
 si q 2 N a


2 s
4kT ln( N a / ni )
となる。空乏・反転が起こる条件では Cox とCd の直列合成容量による
変位電流が流れる。
デバイストピックス―MOSキャパシタ-
よって低周波と高周波のC-Vg関係は以下のようになる。
1.0
C/Cox
0.8
C=Cox 高&低
Cfb(flat-band
capacitance)
C=Cox
ΨS =0
ΨS = 2ΨB
0.6
0.4
CoxCd
Cox  Cd
0.2
0
低
Vg
0
Vt
Vg (V)
+Vg
高
デバイストピックス―MOSキャパシタ-
C-V測定によってMOSキャパシタの特性を知る事ができる。
N型半導体の場合はC-Vは左右逆転特性になる。
従ってC-V特性から半導体基板のPNタイプが直ぐわかる。
1.0
C=Cox 低
高&低 C=Cox
C/Cox
0.8
0.6
高
0.4
CoxCd
0.2 Cox  Cd
0
Vg
0
Vt
Vg (V)
+Vg
デバイストピックス―MOSキャパシタ-
Cd 
よって
 si qN a
2 s だから、基板ドーピング濃度が小さいとCdは小さい。
CoxCd
Cox  Cd
グ濃度分かる。
も小さくなる。C-V 特性から半導体基板ドーピン
1.0
C/Cox
0.8
C=Cox 高&低
Cfb(flat-band
capacitance)
C=Cox
ΨS =0
ΨS = 2ΨB
0.6
高
0.4
CoxCd
Cox  Cd
0.2
0
低
Vg
0
Vt
Vg (V)
+Vg
デバイストピックス―MOSキャパシタ-
キャリヤ捕獲欠陥準位が絶縁体/半導体界面に存在すると、欠陥捕
獲ための電荷を与える必要があり、C-V カーブは横になだらかになり、
低周波のCminは上昇する。C-V 特性から界面の欠陥準位特性がわか
る。
C=Cox 高&低
C=Cox
低
1.0
C/Cox
0.8
0.6
高
0.4
CoxCd
Cox  Cd
0.2
0
Vg
0
Vt
Vg (V)
+Vg
デバイストピックス―MOSキャパシタ-
Coxから絶縁膜の誘電率ε と膜厚d の比 ε/d が分かる。
1.0
C/Cox
0.8
C=Cox 高&低
Cfb(flat-band
capacitance)
C=Cox
ΨS =0
ΨS = 2ΨB
0.6
0.4
CoxCd
Cox  Cd
0.2
0
低
Vg
0
Vt
Vg (V)
+Vg
高
デバイストピックス―MOSキャパシタ-
Coxを大きくすると少ない電圧で大きなキャリヤ密度を絶縁膜/半導体
界面に蓄積することができる。 大きなキャリヤ密度は低抵抗&高速ト
ランジスタ作成を可能にする。
Coxを大きくするには誘電率εを大きくするか、膜厚dを小さくする。
現在最先端のMOSキャパシタはd =1.2nmである。あと少しで0 nm
になる。よって誘電率εを上げる必要がある。広く用いられているSiO2
の比誘電率は4である。もっと誘電率を上げるには新材料が必要で
ある。
新材料を作ろう!
デバイストピックス―MOSFET-
ゲート電圧を印加したときのMOSFET
Gate
の構造を右図に示そう。ゲート電圧
Vg oxide
によりチャネル表面に反転層が
Vds
形成される。そしてドレインにも
z
電圧がかかっているとソース
L
n+source
n+drain
ドレイン間に電流が流れる。
考察しよう。
Depletion
region x Inversion
一般に長さL,幅W厚さDの抵
channel
p-type substrate
抗体に電圧Vをかけたとき流れ
W
る電流Iは以下の式で与えられ
0V
る。
I  WDen E
y
デバイストピックス―MOSFET-
ソースとドレイン電圧Vdsがゼロであり、ゲート電圧Vgsが大きいとき
チャネルに蓄積するキャリヤ電荷量は
Q ~ Cox Vgs  2 B   Cox Vgs  Vth 
である。ドレイン電圧Vdsが少し印加されたとき、ソースを原点にと
り、距離yだけドレイン側にある半導体表面でのキャリヤ電荷量は
以下のように書き換えられる。
Q ~ Cox Vgs  V  y   Vth 
ソース側に流れ込む、ドレイン電流Isdはマイナスとなって、
dV  y 
I sd  Wen E  W Q
  I ds
dy
となる。
デバイストピックス―MOSFET-
さらに、
dV  y 
 I sd  W Cox Vgs  V  y   Vth 
dy
となる。Y方向にIsdは一定だから、上記微分方程式は簡単に解く
事が出来る。
W
1 

I sd   Cox  Vgs  Vth  Vds Vds
L
2 

W
1 

I ds  Cox  Vgs  Vth  Vds Vds
L
2 

ドレイン電流Idsはゲート電圧Vdsに対して線形に変化する。
これが有名なMOSFETのドレイン電流の線形の式である。
デバイストピックス―MOSFET-
PNダイオードの電流は指数関数的非線形に変化した。
J n  J 0  exp( qVapp / kT )  1
PN接合の組み合わせで形成されるMOSFETの電流はなぜ電圧
に対して線形に変化させることができるのだろうか?
W
1 

I ds  Cox  Vgs  Vth  Vds Vds
L
2 

理由はゲートにあるコンデンサ構造にある。半導体はキャリヤ密
度を指数関数的に変化させる能力を持っている。しかし、ゲート
キャパシタ構造は蓄積電荷量をゲート電圧に対して線形にコント
ロールする。
Q  Cox Vgs  Vth 
デバイストピックス―MOSFET-
よってチャネル領域のキャリヤ密度はゲート電圧に対して線形に
変化する。
Q  Cox Vgs  Vth 
はさらに凄い効果がある。上式はゲート電圧を固定したら電荷量
は固定されることを示している。例えば温度を変えても電荷量は
変化しない。一般に半導体は温度を変えるとキャリヤ密度が劇
的に指数関数的に変化することを学んだ。しかしMOSFETのチャ
ネル層のキャリヤ密度はゲート電圧を決めれば温度を変えても
大きくは変化しない。よってドレイン電流は温度の変化に鈍感で
ある。この効果はゲート接地としてMOFET回路に利用されている。
演習問題20. この現象をこれまで学んだ半導体物性を用いて
説明せよ。
デバイストピックス―MOSFET-
高いドレイン電圧を印加し,Vds > VgsVthになる場合を考えよう。
先に登場した、チャネル表面電位 Vgs  V  y   Vth のなかの
V(y)は0からVds まで変化する量だから、
チャネル内にはV (yp) = VgsVth になるポイントが必ず存在す
る。V (yp)をピンチオフ電圧(pinch-off voltage)という。
Lが小さくないとき(例えば100μm)、V(yp)はドレイン端の極近く
に出現する。
演習問題21 この理由を考えよ。
よってyp~Lである。ypからL の間では Vgs  V  y   Vth
が負になる。この事は,ドレイン端近傍のチャネルにはキャリア
が殆ど存在しないことを意味している。このような状態を,ピン
チオフ領域(pinch-off region)という。
デバイストピックス―MOSFET-
ピンチオフ領域においても,yp≦Lにおいては線形領域の条件
が成り立つから,Idsは線形の式で表わされるが、
ここでより良くピンチオフ領域の性質を調べるために以下のよう
に書き換えよう。
1 
W

I ds  Cox  Vgs  Vth  Vds Vds
2 
L

1
W


Cox  Vgs  Vth  V  y p  V  y p 

2
yp




2
W
Cox  Vgs  Vth   Vgs  Vth  V  y p 

2 yp
2
W
Cox  Vgs  Vth 
~
2L
これを飽和特性という。

2
デバイストピックス―MOSFET-
アウトプット特性(Ids-Vds)を調べよう。
線形特性の式
飽和特性の式
W
I ds 
Cox  Vgs  Vth
2L


2
Drain current
W
1 

I ds  Cox  Vgs  Vth  Vds Vds
L
2 

線形領域
Vg4
飽和領域
Vg3
Vg2
Vg1
Drain voltage
デバイストピックス―MOSFET-
log(Ids) (arbitrary scale)
1
0.8
10-2
0.6
10-4
0.4
10-6
10-8
10-10
0
0.2
Von  Vt
0.5
1
1.5
2
Gate voltage Vg (V)
2.5
30
Linear Ids (arbitrary scale)
トランスファー特性(Ids-Vgs)を調べよう(線形領域,Vds<<1)。
線形特性の式
W
1 

I ds  Cox  Vgs  Vth  Vds Vds
L
2 

デバイストピックス―MOSFET-
PN接合面付近でポテンシャルエネルギーが変わる。
単位距離あたりのポテンシャルエネルギー変化率は不純物ドーピング
濃度に支配される。
小さなトランジスタを作るには高不純物濃度にしなければならない。
高不純物濃度ドーピングが現代のトレンドである。
今後の予定
1月7日 レーザ解説
1月14日 休み
1月21日 勉強会(9:00~10:00,新1号館3Fホワイエ)
1月28日 試験
デバイストピックス―レーザの歴史-
★ 1916 Albert Einstein Theory of light emission.
1940 Valentin A Fabrikant
Possibility of Population Inversion
1947 Willis E Lamb, R C Retherford
First demonstration of stimulated emission
in Hydrogen Spectra.
★ 1951 Charles H Townes
MASER (Microwave Amplification of
Stimulated Emission of Radiation)
1951 Joseph Weber MASER.
デバイストピックス―レーザの歴史-
★ 1951 Alexander Prokhorov Nikolai G Basov
MASER
★ 1956 Nicolas Bloembergan
First proposal for a three-level solid state
MASER
1958 Arthur L Schawlow Charles H Townes
First detailed paper describing "Optical
MASER".
★ 1960 Theodore Maiman
Invented first working LASER based on Ruby.
デバイストピックス―レーザの歴史-
1960 Peter P Sorokin and Mirek Stevenson First
Uranium LASER
★ 1962 Robert Hall
Invention of semiconductor LASER
★ 1963 Herbert Kroemer Idea of Hetero Junction
semiconductor laser
★ 1964 J E Geusic, H M Markos, L G Van Uiteit
Invention of Nd:YAG LASER
1964 Kumar N Patel Invention of CO2 LASER
1964 William Bridges
Invention of Argon Ion LASER
デバイストピックス―レーザの歴史-
1965 George Pimentel and J V V Kasper
First chemical LASER
1966 William Silfvast, Grant Fowles and Hopkins
First metal vapor LASER
1966 Peter Sorokin, John Lankard
First Dye Laser action demonstrated
1970 Nikolai Basov's Group First Excimer LASER
based on Xenon (Xe).
1970 Alferov & Hayashi Hetero Junction
semiconductor laser
デバイストピックス―レーザの歴史-
★ 1974 J J Ewing and Charles Brau
First rare gas halide excimer laser
1977 John M J Madey's Group
First free electron laser.
1980 Geoffrey Pert's Group
First report of X-ray lasing action
デバイストピックス―レーザ発振1-
2
頻度(a.u.)
原子
hν
hν
hν
hν
hν
hν
hν
hν
hν
hν
hν
hν
hν
hν
hν
hν
hν
1
自然光
0
0 20 40 60 80 100
光子数
誘導光放出
2
頻度(a.u.)
hν
自然光放出
1
0
レーザ光
0 20 40 60 80 100
光子数
デバイストピックス―レーザ発振2-

2準位a,b間の双極子相互作用 p ba   b * er a d r
原子密度がNのときの
単位時間に放出する光エネルギー
2
N 4
P  NA  
pba
3
3 0c
エネルギー
2
3
A
p ba
3
3 0 c
b
hw=wb -wa
a
2準位状態からの自然放出
光強度
単位時間に自然放出する確率
3
振動数
N  e z0
単位時間当たり放出される全エネルギー P 
3 0c 3
4 2
2
デバイストピックス―レーザ発振3-
原子の回りに光がある場合
光の電界
E t   E0eit  E0*eit
光電界より生じる分極
P  0  E  0     i   E
単位時間に電界が分極に与えるか、貰う
エネルギー
dP
E
dt
E
dP
2
 2 0   E
dt
エネルギー
時間平均すると

b
a Na

bNb

a
2準位原子からの誘導吸収と誘導放出
デバイストピックス―レーザ発振4-
I    2 0c E
光強度は
2
だから、
単位時間に電界が分極に与えるか貰う、平均エネルギーは
I  
dP
E
  
dt
c

pba
N
2
0    i  0
  
N
0   
pba
2
  2 0
2
エネルギー
原子密度がNのときの電気感受率

b
a Na

bNb

a
2準位原子からの誘導吸収と誘導放出
デバイストピックス―レーザ発振5-
光の吸収・放出確率
N pba
I  
I  
I  
dP
E
  

g  
 BNg  
dt
c
0
c
c
2
g  (a.u.)
3
2
ω0=1000
γ=5
1
0
950
975 1000 1025 1050
角振動数ω
 pba
B
0 2
2
光の誘導吸収確率
Sb  BN b g  
I  
c
光の誘導放出確率
Sa  BN a g  
I  
c
エネルギー
デバイストピックス―レーザ発振6-

b
a Na

a
2準位原子からの誘導吸収と誘導放出
I  
光の実効誘導放出確率 S  B  N b  N a  g  
c
光強度は誘導放出によって増大する可能性がある
dI dI

 GI  z 
dz cdt

bNb
B 
G
 N b  N a  g  
c
デバイストピックス―レーザ発振7-
熱平衡状態なら吸収と放出は釣り合っている。
自然放出を考えれば、
I  
AN b  B  N b  N a  g  
0
c
だから、Na>Nbである。

A
p ba
3
3 0 c
3
2
 pba
B
0 2
2
デバイストピックス―レーザ発振8-
自然放出に打ち勝つエネルギーを注入できれば光は増
幅して角振動数ωの光強度が指数関数的増大する可能
性がある。
I  z   I0e
Gz
1.誘導放出の確率を高めるために、特定の角振動数ω
の光を閉じ込めて光電界強度を大きくする。
ファブリペロー共振器
2.電子を励起状態にするためにエネルギーを投入する。
例えばランプ励起
デバイストピックス―レーザ発振9-
レーザの構造
励起用ランプ
L
レーザ媒体
レーザ光
1-R
励起光
ランプ
ミラー
ミラー
レーザ媒体
ファブリペロー共振器
デバイストピックス―レーザ発振10-
レーザ媒体
反転分布Nb>Naを作るためにレーザ媒体を
励起用ランプ 励起する。
光、放電、衝突励起・・・・
励起光
光の場合は、レーザ媒体の光吸収帯に合
う励起光源を用いる。しかし、媒体全体を
光励起するために、吸収係数が大きすぎ
てはいけない。
デバイストピックス―レーザ発振11-
効率の良い反転分布形成用エネルギー励起の為に、他の
エネルギー準位を利用する。
c
エネルギー
c
励起
緩和
b
レーザー光
a
3準位レーザー
b
レーザー光
g
a
4準位レーザー
デバイストピックス―レーザ発振12-
共振器長Lは長いので必ず、レーザ媒体の遷移周波数帯に合う
m
c
L

2L
m
レーザ発振縦モード
を満たす共振条件がある。
3
L
(a.u.)
2
g 
ω0=1000
γ=5
1
0
950
m-3 m-1 m+1
m-2
m
m+2
975
1000
角振動数ω
1025
1050
デバイストピックス―レーザ発振13-
レーザ発振縦モード
いろいろなエネルギーロスを  と
し、ミラーから出て行く光の分を差
し引くと、光の増幅の条件は、
2L

m
L
1 R
G

2l
レーザ光
1-R
B 
G
 N b  N a  g  
c
ランプ
ミラー
ミラー
レーザ媒質
l
デバイストピックス―レーザ発振14-
3
2
I
レーザ発振
誘導放出
利得>損失
反転分布
0
950 975 1000 1025 1050
300
200
I
光強度
1
100
自然放出
0
950 975 1000 1025 1050
励起エネルギー
しきい値
デバイストピックス―半導体の電子バンド-
光る半導体
光らない半導体
E
E
Γ
光(フォトン)
hν~Eg
Γ
直接遷移型
X
k
光(フォトン)
hν~Eg
Γ
フォノン
間接遷移型
k
デバイストピックス―GaAsの電子バンド-
7
エネルギー E (eV)
6
5
4
3
2
1
0
-1
-2
L3
GaAs
Γ15
k1
E’1=6.3eV
L1
x3
Γ1
E 1=
2.4eV
L3
E0=1.4eV
L(111)
x1
Γ15
-3
-4
Γ15
Γ (100)
k1
E2=4.7eV
Γ1
Γ15
k2
x5
k1
x
k
(110)
ブリュリアンゾーンの位置k
Γ
デバイストピックス―Siの電子バンド-
6
エネルギー E (eV)
5
4
3
Γ2’
Si
L3
Γ2’
E’1=5.5eV
Γ15
k1
L1
2
x1
E0=4.0eV E’0=3.2
eV
E1=3.4eV
Eg=1.1eV
Γ25’
1
0
-1
Γ15
k3
E2=4.5eV
Γ25’
L3’
-2
-3
x4
-4
k2
k1
-5
L
(111)
Γ
(100)
X
k
ブリュリアンゾーンの位置k
(110)
Γ
デバイストピックス―半導体材料元素-
-III-V系発光材料-
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
Ⅴ
Ⅵ
4
Be
ベリリウム
5
B
ホウ素
6
C
炭素
7
N
窒素
8
O
酸素
12
Mg
マグネシウム
13
Al
アルミニウム
14
Si
ケイ素
15
P
リン
16
S
硫黄
30
Zn
亜鉛
31
Ga
ガリウム
32
Ge
ゲルマニウム
33
As
ヒ素
34
Se
セレン
48
Cd
カドミニウム
49
In
インジウム
50
Sn
スズ
51
Sb
アンチモン
52
Te
テルル
80
Hg
水銀
81
Tl
タリウム
82
Pb
鉛
83
Bi
ビスマス
84
Po
ポロニウム
デバイストピックス-III-V系発光材料-
バンドエンジニアリング
3
2
0.4
0.6
エネルギー (eV)
1 0.9
1.5 1.2
0.8
Al
Ga
In
N
P
As
Sb
0.8
1.0
1.2
波長 (μm)
1.4
1.6
デバイストピックス
-半導体レーザの構造と特徴-1-
順方向バイアスV
p-n接合ダイオードの順
方向バイアスによる注
入励起
拡散電流により接合領
域の電子濃度&ホール
濃度増大
- +
n型
光
p型
電子
ホール
伝導帯 電子
光
EFn
電子ーホール再結合に
よる発光
価電子帯
EFp
ホール
デバイストピックス
-半導体レーザの構造と特徴-2-
-高効率励起のためにダブルへテロ構造:n型クラッド層/活性層/p型クラッド層構造
1)ワイドバンドギャップクラッド層:キャリヤ輸送
2)ナローギャップ活性層:キャリヤ再結合
擬フェルミ準位バンド内→反転分布→高効率再結合
3)活性層/クラッド層バリヤ:キャリヤの漏れ防止
電子
EFn
活性層
GaInAsP
クラッド層
p-InP:Zn
⊿E
クラッド層
n-InP:Se
hν
⊿E
EFp
ホール
デバイストピックス
-半導体レーザの構造と特徴-3-
-より高効率励起のためにD(E)
三次元 D  E   E
量子井戸型活性層
状態密度増大→しきい値低減
クラッド層
EFn
量子井戸型
クラッド層
活性層
二次元
0 E1 E2 E3
E4
エネルギーE
EFp
デバイストピックス
-半導体レーザの構造と特徴-4-
電極
~150μm
絶縁膜
2~20μm
電流
量子井戸
n-InP,~2μm
(クラッド層)
光出力
~300μm
n-InP基板
キャップ層
p+-GaInAsP,0.2μm
クラッド層
p-InP~1.5μm
活性層0.1~0.2μm
GaInAsP
電極
デバイストピックス
-半導体レーザの構造と特徴-5-
バンド
-光閉じ込め活性層中への光閉じ込め効果:
屈折率小 ワイドバンドギャップクラッド層
屈折率大 ナローギャップ活性層
光強度
屈折率
n-クラッド層
n2
活性層
p-クラッド層
n1
n2
d ~  / 2n
デバイストピックス
-半導体レーザの構造と特徴-6-
-光共振器絶縁膜
2~20μm
電極
キャップ層
クラッド層
活性層
電流
クラッド層
光出力
電極
L
2L

m
レーザ発振縦モード
デバイストピックス
-半導体レーザの構造と特徴-7-
-発振-
光強度
レーザ発振
誘導放出
利得>損失
反転分布
波 長
LED
自然放出
波 長
電 流
しきい電流
デバイストピックス
-半導体レーザの構造と特徴-8-
Journal of Crystal Growth 289 (2006) 59–62
MOCVD growth of 980nm InGaAs/GaAs/AlGaAs graded index
separate confinement heterostructure quantum well lasers with
tertiarybutylarsine
J.R. Dong, J.H. Teng, S.J. Chua, B.C. Foo, Y.J. Wang, R. Yin
MOCVD
デバイストピックス
-半導体レーザの構造と特徴-9-
Laser emission
PL
900
nm
1020
982
986
デバイストピックス
-半導体レーザの構造と特徴-10-
YAGレーザの比較
1.エネルギー励起
1)電流励起: p/n接合構造を用いて電子キャリヤとホール
キャリヤを別々の場所から輸送する。
→活性層以外の場所で再結合発光しない。(高発振効率)
2)電流励起により、任意の場所で励起可能。
透明でなくても良い。
金属電極使用可能。(小さなレーザ)
3)低インピーダンス素子:1V低電圧励起。(小さなレーザ)
4)理想的な2準位励起(高発振効率)
デバイストピックス
-半導体レーザの構造と特徴-11-
YAGレーザの比較
2.レーザ媒体と構造
1)バンドエンジニアリング:多元組成変調結晶成長技術により、
ダブルへテロ構造形成。キャリヤ再結合発光と光閉じ込めを
同時に実現。(高発振効率&多波長レーザ)
2)バンドエンジニアリング:量子井戸、量子ドット構造、歪結晶
(高発振効率)
3)活性層への高キャリヤ濃度拡散による高再結合発光強度。
(小さなレーザ)
4)結晶端面を光共振面に応用。 (小さなレーザ)
3.問題点
高光強度(~107W/cm2)下での結晶の安定性、信頼性
転移欠陥
プロセストピックス―トランジスタの作成-
Si3N4 SiO
2
p形Siウェーハ(100)
B p形Siウェーハ(100) B
p+p形Siウェーハ(100) p+
(a) Si3N4/SiO2CVD膜の形成
(b) Bイオン打ち込み
(c) フィールド酸化としきい値制御用
イオン注入
プロセストピックス―トランジスタの作成-
ポリSiゲート
p+ p形Siウェーハ(100) p+
(d) 多結晶Siゲートの形成
PSGリフロー
n+
n+
p+ p形Siウェーハ(100) p+
(e) イオン注入によるソースド
レーン形成とPSGリフロー
ソース ゲート ドレーン
n+
n+
p+ p形Siウェーハ(100) p+
(f) コンタクト孔の開口とAl配線
プロセストピックス―トランジスタの作成-
Intel Pentium 4 (3.4GHz)
90nmプロセス技術
FETゲート長 は50ナノメートル!
MOSFETの断面写真
NiSi2
1.2nmSiO2
Poly-Si
source
Si
drain
50nm
プロセストピックス―薄膜トランジスタの作成-
トップゲート構造poly-Si TFT のプロセスフロー(断面図)
①
a-Si バッファ層
基板
②
poly-Si
③
ゲート絶縁膜
プロセストピックス―薄膜トランジスタの作成-
④
イオン注入(p型)
フォトレジスト ゲート電極
イオン注入(n型)
⑤
ソース
⑥
チャネル ドレイン
ソース・ドレイン電極
n型 TFT
層間絶縁膜
p型 TFT
プロセストピックス―トランジスタの作成-
Siウェーハ
製造工程
マスク
製造工程
組立工程
表面酸化
リソグラフィー工程
電気特性
検査
工程C
ウェル形成
(a)
窒化膜形成
フォトレジスト
塗布
工程B
寄生チャネル用
イオン打ち込み 工程D
工程C
工程A
コンタクト孔
形成(e)
容量の形成
(d)
多結晶
Si形成
エッチング
工程D
レジスト除去
工程D
Al配線形式
(e)
酸化膜形成
現像
ゲート下酸化膜
形成
工程C
nMOS形成
(c)
工程C
工程C
マスク合せ
露光
フィールド酸化
(b)
ゲート形成
工程
A BC
工程A
工程D
全面酸化
nMOS形成
(c)
プロセストピックス―半導体結晶作成-
チョクラルスキー法
ワイヤ巻き取り部
アルゴンガス
ワイヤ
シード支持部
のぞき部
光高温計
Si単結晶
石英るつぼ
黒鉛るつぼ
黒鉛ヒータ
Si融液
Ar+SiO+CO
電極
プロセストピックス―SOI技術-
SiO2
Aウェーハ
H+イオン
Aウェーハ
室温で張り合わせ
Aウェーハ
Bウェーハ
切断と高温処理(1100℃)
Aウェーハ
単結晶Si層
埋め込み
SiO2層
Bウェーハ
Bウェーハ
プロセストピックス―シリコン中の拡散限界-
1022
固溶度 (cm-3)
1021
P
1020
1019
1018
1017
1016
1015
Al
B
Sn
Sb
As
Ga
Li
O
Fe
Bi
Co
Au
Cu
Zn MnS Ag
500 600 700 800 9001000 110012001300 1400
T (゜C)
プロセストピックス―ドーピング-
イオン注入装置
高圧部
走査部
分離電磁石
スリット
イオン源
加速管 四
極
レ
引き出し電極 ン
ズ
垂水平走査
直
Siウェーハ
走
査
プロセストピックス―ドーピング-
活性化熱処理
As濃度 (cm-3)
1022
1021
アニール
1080℃,1s
1020
イオン
注入直後
1019
1018
0
10
20 30 40
深さ (nm)
50
放物形速度定数 B (μ2/hr)
10-1
550
600
700
800
900
1000
1100
1
1200℃
プロセストピックス―絶縁膜の作成(酸化)-
H2O 760 Torrに換算した値
H2O (640 Torr)
Ea=0.71 eV
10-2
O2 (760 Torr)
10-3
10-4
Ea=1.24 eV
0.7
0.8
0.9
1.0
1000/T (゜K)
1.1
1.2
プロセストピックス―絶縁膜の作成(酸化)-
急しゅんな初期酸化段階(700℃, O2酸化)
60
酸化膜厚 (nm)
50
40
30
20
10
0
0
20
40
60
80
熱化時間 (hr)
100
120
プロセストピックス―プラズマCVD-
13.56 MHz
TEOS
O2/CF4
Si基板
上部電極
ポンプ
ヒータ
プロセストピックス― ECRプラズマCVD -
マイクロ波(2.45 GHz)
O2, Ar
磁石
プラズマ
整合器
高周波電源
SiH4
プロセストピックス―リモートプラズマCVD-
RF 13.56MHz
V O and He
~
mesh
wafer transfer
2
quartz chamber
plasma
SiH4+O*+He*
SiO2
G
evacuation
SiH4
heater substrate
期末試験
!日時:2011年1月28日 9時15分までに集合のこと
!場所:授業の教室
!形態:筆記試験
!資料使用可、電卓・PC使用可、話し合い可、
!答案提出:新一号館3F310B鮫島教官室ドアに
設置のボックスに入れる
!評価条件:
・11時30分までに提出した答案は100点満点で評価する。
・15時00分までに提出した答案は80点満点で評価する。
・17時00分までに提出した答案は70点満点で評価する。
・17時01分以降提出不可。