重力レンズ効果の観測に対するモデルフィッティング、及びその諸考察

Download Report

Transcript 重力レンズ効果の観測に対するモデルフィッティング、及びその諸考察

重力レンズ効果の観測に対するモデルフィッティン
グ、及び諸考察
4年
馬渡 健
何がしたいか?(其の一)
単純なモチベーションとしては
重力レンズ効果に関して
理論で観測を再現したい!!
but
それでは単にパソコンプログラムの練習にしかならないので・・・
何がしたいか?(其の二)
重力レンズ天体の観測から、レンズ効果を引き起こ
している銀河(レンズ銀河)の情報を得たい
→・形態(楕円率)
・周辺環境 (の影響、external shear)
・質量、質量光度比
どうやって?(手法)
なるべく一般化された理論モデルを用いて、観測を
上手く再現してやる。一番上手く再現できたときのレ
ンズ銀河のパラメータを見てやる
→「モデルフィッティング!」
今回使ったモデル:external shear入りSIEモデル
(要は外部効果も考えた、楕円状レンズ)
そもそも重力レンズって??(strong lensing)
もともと1つのある天体(QSO,銀河)が
視線上の手前にある天体の重力の影響で
多重像に見える現象
重力の物理と幾何学で説明出来る極めて理論的な現象
様々な理論モデルがあり、モデルにより多重像の現れ方や
像光率が異なる
例:point mass, SIS, SIE, external shear・・・・
SIEモデル(cuspとfoldから進入するsource)
Dec
imA
imB
imC
SIEレンズパラメータについて
G
RA
Θ_2(“)
imD
1
imA
2 θ0
imB
imC
β_1: source position
β_2:(QSOの本来の位置)
f : 楕円(レンズ銀河)の軸比
θ_0 : アインシュタイン半径
φ_g:レンズ銀河短軸の傾き角
γ_0:external shearの強さ
φ_s:shearの向き
☆座標系
レンズ銀河を原点にとった(-赤径,赤緯)
f
Φ_s
Φ_g
θ_1(“)
G
imD
(外部質量?)
γ_0
これら計7個のパラメータをいじるこ
とでimageの位置とflux比を自在
に変化させることができる
観測とモデルのフィッティング
・χ^2フィッティング
→
(モデル値  観測値) 2
χ 
観測エラー 2
を最小にするようにモデルパラメータセットを選ぶ方法
2
ただし!
自由度ν(観測量数-パラメータ数)が多いとより小さくしづらいとかν依存性
あり
→
 (θi θio ) 2 (δi δio ) 2 
i  σ 2  (σf ) 2  4 θ i : imageの位置 δ i : フラックス比
i
i


の最小値を探すプログラム組んだ!(今回は滑降シンプレックス法)
今回使った天体
左:RXJ1131-1231 (z_s=0.658,z_d=0.295)
右:PG1115+080 (z_s=1.72,z_d=0.31)
結果(RXJ1131-1231)
・観測を最も良く再現するパラメータ(χ^2/ν=5.12)
f=0.64,θ_0=1.83(″),φ_g=125(°),γ_0=0.12,φ_s=250(°),
(β_1,β_2)=(-0.50,-0.09)(″)
・フラックス比
δA  1.(0 1.0),δB  0.74(0.79),δC  0.45(0.38),δD  0.059(0.077)
結果(PG1115+080)
・観測を最も良く再現するパラメータ(χ^2/ν=7.54)
f=0.46,θ_0=1.23(″),φ_g=70(°),γ_0=0.075,φ_s=340(°),
(β_1,β_2)=(0.01,0.23)(″)
・フラックス比
δA1  1.(0 1.0),δA2  0.74(0.63),δB  0.18(0.16),δC  0.23(0.25)
考察①フィッティングについて
・多重像の位置に関してはよく観測を再現出来ている。(位置θ
の誤差は10%以内)
→やはり、SIS<<SIE<<external shear入りSIE
・フラックス比は十分に再現出来ているとはいえない。(フラック
ス比δの誤差は10~20%)
→「質量分布がなめらか」という仮定の限界?
最近では、暗黒物質は銀河内で塊をつくりながら
分布してるという話も・・・
・・・が!フラックス比は非常に繊細な問題。
レンズ銀河のどこを光が通過してくるかによってダスト減光
の効き方が異なる。
→今回のフィッティングはまずまずの結果
考察②周辺銀河の影響
両天体ともにexternal shear無視できない!
例:RXJ1131-1231
γ_0=0.12,φ_s=250°
→160°or 340°の方向にshearおこすような質量(銀
河)あるのでは?
160度?
観測的には・・・
30arcsec
直近の3,4個の外部銀河
の影響と考えることも
できる。
(2006ApJ…646…85W, Williams et al)
考察③レンズ銀河の質量

SIEの物理的仮定からθ_0内の質量を求めた!
SIEのθ_0内質量
アインシュタイン半径の性質 + SIEの理想的物理状態
θ_0内の平均面密度=臨界密度
等温、一様、構成要素が理想気体粒子的
→ M (θ0 )  π( Ddθ0 ) Σcr  Σ
2
楕円面積
臨界面密度
cr
Ds
c2

4πG Dd Ds
D: 角径距離= r/(1+z)
c 2 Dd Ds 2
 M (θ0 ) 
θ0
4G Dds
これにD_d,D_s,D_dsとフィッティングから求めたθ_0代入
考察③レンズ銀河の質量
RXJ 1131  1231 : M (θ0 )  7.35  10 ( M solar )
11
※アインシュタイン半径の実スケール:D_d・θ_0=8.06(kpc)
PG1115  080 : M (θ0 )  2.35  10 ( M solar )
11
※アインシュタイン半径の実スケール:D_d・θ_0=5.60(kpc)
一方、銀河進化モデルから観測される色(スペクト
ル)を説明出来るモデルを探し、そのM/L比(星質量)
から星質量を推定したところ・・・
RXJ 1131  1231 : M stellar  7.74  1010 ( M solar )
PG1115  080 : M stellar  5.13  1010 ( M solar )
→信頼できる質量が得られた!
発展:銀河進化を求めて・・・
ある銀河に対して質量M(θ_0)と明るさLが分かってる
→ 質量光度比M/Lが求まる
多数の銀河のM/Lから統計的な議論できないだろうか?
(銀河進化の形跡や形態毎の差異など)
strong lensは数が少なく極めて怪しい議論になりそうだが、
とりあえずかけられるだけフィッティングプログラムにかけて
みた!
→参考資料にてあやしい議論をしてるので興味がある
方は参照されたし
発展:銀河進化を求めて・・・
やはりどう見ても利用できる天体数が少なすぎて、統計的議
論というよりは憶測になってしまう・・・
が!
今後の観測技術の発展により(JWST,TMT,100m級
望遠鏡??)strong lensの観測例が増え
将来的にはそうしたサイエンスができるのでは・・・
Reference & cooperation









Kormann,R. , Schneider,P. , Bartelmann,M. : A&A1994…286…357K “A gravitational
lens model for B1422+231”
Kormann,R. , Schneider,P. , Bartelmann,M. : A&A1994…284…285K “Isothermal
elliptical gravitatoinal lens model”
Ramesh Narayan : Lectures on Gravitational Lensing
Press,W.H. , Flannery,B.P. : Numerical Recipes in C
http://www.cfa.harvard.edu/glensdata/ (多重像QSOデータ)
Iwamuro et al : 2000PASJ…52…251 “Infrared Imaging of the Gravitational Lens
PG1115+080 with the Subaru Telescope” (PG1115+080補足データ)
Williams,K.A. et al : 2006ApJ…646…85W “First Results from a Photometric Survey
of Strong Gravitational Lens Environments”
M/L ratio data from : 山田先生(GALAXEV)
Discussion with : 千葉ゼミメンバー(千葉先生、遠藤、小山、橋本)、鍛冶澤先生、望月、中
村