ΔT(地球の自転の減速)

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北軽井沢駿台天文講座
ΔT (地球の自転の減速)
相馬
充(国立天文台)
北軽井沢駿台天文台(北軽井沢「一心荘」)
2012年8月3-6日
2012年 閏年に加え,うるう秒もあり
いつもの年より長い
1972年 うるう秒誕生の年
閏年で,世界時では2回のうるう秒
これまでで最も長い年
札幌オリンピック
日中国交正常化・沖縄返還
グアム島で横井庄一氏
太陽の南中を12時とする
太陽の時角+12時 → 視太陽時
地球の楕円軌道と黄道傾斜のため
季節により長短ができる
平均太陽の時角+12時 → 平均太陽時
世界時は
経度0°の子午線における平均太陽時
太陽の平均黄経
L = 279°41′48.04″+129602768.13″T +1.089″T
(Newcomb; T from 1900 Jan 0.5 in 36525 days)
平均太陽の赤経
αM = 18h 38m 45.836s +8640184.542sT + 0.0929sT
2
2
18h 38m 45.836s = 279°41′48.04″- 20.50″
(平均太陽には光行差を含む)
8640184.542sT = 129602768.13″T
0.0929sT 2 は赤経の歳差の2次の項
世界時(UT)は地球の自転速度が一定であるかぎり,
一様に進む
太陽・月・惑星の観測位置が理論値と合わない
→ 時刻が一様に進まないことが原因
(Spence Jones 1939)
つまり,地球の自転速度が一定でない
1950年のパリ会議 (1952年のIAUローマ総会で採用):
Newcombの太陽の平均黄経の式で暦表時(ET)を定義
L = 279°41′48.04″+129602768.13″T +1.089″T 2
(T from 1900 Jan 0.5 in 36525 days)
実際には月の観測からETを決めた.月の黄経の潮汐項
に Spencer Jones の解析に基づく -11.22″T 2 を採用
太陽は1secで 129602768.13″/36525/24/3600 動くから,
360°動くには
360×3600″/ (129602768.13″/36525/24/3600/sec)
= 31556925.9747sec かかる.
これが太陽年の長さになるので,暦表時の1秒は
1900年1月0日12時ETにおける太陽年の長さの
1/31556925.9747 とする
と定義された(1956年).
暦表時の1秒は1900年初めの地球自転から決まる1日の
86400分の1というのは誤解.実際は19世紀のおよそ100
年間の平均の地球自転から決まる1日の86400分の1.
1950年代には原子時計が作られた.
国際原子時(TAI)の1秒は暦表時の1秒に等しくなるよう
に選ばれた.1秒は
133Cs(セシウム)原子の基底状態の2つの超微細準位の間
の遷移に対応刷る放射の9192631770周期の継続時間
と定義される(1967年).
TAIは1955年から存在する.
ET-TAI=32.184sec と判明したため,力学時
TD = TAI+32.184sec
がETの代わりに用いられることになる (1985年以後).
TD は現在は地球時 TT となっている.
ΔT = TT – UT1 (もとは ΔT = ET – UT1)
協定世界時UTCは
TAIの秒を刻み,UTの時刻に近づけた時刻
世界時UTには UT0, UT1, UT2 の区別がある.
UT0 は観測の生のもので,極運動による経
度変化Δλの影響が含まれる.UT1はそれを
補正: UT1 = UT0 – Δλ
自転変動の季節変化ΔS を補正してUT2を得
る: UT2 = UT1 + ΔS
地球の自転角を正確に反映しているのはUT1
UTの季節変化の補正
ΔS =22sin2πt - 12sin2πt- 6 sin4πt + 7cos4πt
(ミリ秒,t は年初から測った太陽年単位の端数)
古代のΔT は皆既日食や金環日食の記録か
ら求められる (時刻の記録はなくてよい)
ΔT の値が異なると食帯がずれるため
日本書紀に「日有蝕盡之」の記事がある
推古天皇36年3月朔(西暦628年4月10日)の日食帯
ΔT = 4000s
ΔT = 2500s
天武天皇10年9月(681年11月3日)に「火星が月に入る」
ΔT = 4000s
ΔT = 2500s
天文現象の正確な予報や解析には
ΔT = TT - UT1 だけでなく
UT1-UTC の値も必要
例:2012年5月21日の金環日食では
UT1 - UTC = -0.565s
TT - UTC = 66.184s から
ΔT = 66.184s - (-0.565s) = 66.749s
2012年5月21日の金環日食予報
ΔT の採用値
国立天文台 ΔT = 67s
NASA
ΔT = 67.7s
正確な値は ΔT = 66.749s
日食限界線などの位置はΔT の1sの差で東西に約
300mずれる (ΔT が1s大きくなると東にずれる)
日本とアメリカで中心線の東西の位置が反対
↓
差の原因は ΔT の差だけでない