Transcript 卒論発表
宇宙線望遠鏡光学系の 性能評価と試験 00-1525-0 多米田裕一郎 指導教官 垣本 史雄 荻尾 彰一 最高エネルギー宇宙線 • エネルギーが1020eVを超える宇宙線 • 起源は特定できていない • 宇宙背景放射と反応してエネルギーを失う – 伝播距離に制限を受ける – ~50Mpc以遠からは到達しない( GZK限界) • 銀河磁場中も直進する – 点源天体の方向がわかる • エネルギーが1020eVを超え る宇宙線を観測 • 予想されていたGZK限界が 無い事を示唆する結果 AGASAの問題点 流量(フラックス×E3) AGASAの観測結果 モンテカルロ計算を介してエネルギー を決定するため系統誤差が大きい GZK限界を超える宇宙線の 存在の確立に大きな障害 GZK限界 高エネルギー領域の宇宙線のエネルギースペクトル ・大きな検出面積 ・モンテカルロ計算を介しない観測方法の併用 優れたエネルギー決定精度を持つ次世代検出器へ 宇宙線望遠鏡実験(TA) • 目的 望遠鏡ステーション エネルギースペクトルの確定 一次粒子の同定 点源天体探索 • 米国ユタ州 西部砂漠地帯 • 今年度から製作開始 • 大気蛍光望遠鏡ステーション 3ヶ所 • 地表検出器 576台 AGASAとTAの比較 敷地面積 100 km2 → 800km2 エネルギー決定精度 20% 地表検出器 → 10%以下 角度分解能 1.6° → 0.4° 測定感度がAGASAの約10倍 宇宙線の観測方法 1次宇宙線 • 空気シャワー観測 – 1次宇宙線が大気と相互作用して 作る空気シャワーを観測する • 大気蛍光の観測 – 空気シャワー中の電子が通過する 時、大気が励起され蛍光を発する – シャワー発達全体を観測できる – モンテカルロ計算を介さず一次宇 宙線のエネルギーを決定できる • 地表検出器による観測 – 地表に届いたシャワー粒子を観測 大気蛍光望遠鏡と地表検出器 によるハイブリッド観測 空気シャワー 大気蛍光望遠鏡ステーション 蛍光望遠鏡 PMT1本の視野1° PMTが16×16で 配置されたカメラ 18枚の球面鏡からなる 合成鏡 60mm 3400mm 660mm 望遠鏡の視野シミュレーション カメラ枠 視野端 宇宙線望遠鏡のカメラ面での反射光のスポットの光量強度 分布である。 -10度から10度まで4度毎と、必要とする視野端の水平± 9度、垂直±7.5度の平行光線を照射した。 光学系スペックについて • 高い角度分解能での宇宙線到来方向の決定 カメラ面でスポットがPMTに十分収まる必要がある カメラ面でのスポットサイズ ~30mm • • • このスペックを満たすようレイトレース・シミュレー ションでセグメントミラーのスペックを最終決定 これを満たさないものは角度分解能やエネル ギー決定精度を落とすので、使用できない 製作された球面鏡が以上のスペックを満たして いるか試験する必要がある 試験装置の開発 スペックの最終決定 合成鏡のスポットサイズはカメラ面で、PMT(60m m)に十分収まる必要がある。 • 視野端でのスポットサイズが30mmになるように鏡 のスペックを決める。 • レイトレース・シミュレーションによりセグメントミラー と合成鏡のスポットサイズの関係を求める。 • 合成鏡のレイトレース – 鏡18枚それぞれの曲率半径6067mmに誤差を与えた – 鏡面の凹凸をガウス分布で近似的に与えた セグメントミラーと合成鏡のスポットサイズ 与えた曲率半径 の誤差範囲 横軸:セグメントミラーのスポットサイズ 縦軸:合成鏡のスポットサイズ セグメントミラーがスポットサイズ20mm で製作されてきた場合、曲率半径の誤差 は±40mmが許容範囲 これをセグメントミラーのスペックとする • 曲率半径測定方法 – 光源とスキャナーをミラーに対して、同時に前後に動 かし、スキャナーに映るスポットを測定 – スポットの変化から曲率半径を見積もる 宇宙望遠鏡のミラーの試験方法 • 反射率測定方法 – 反射率のわかっているリファレンスミラーを用い反射 光の強度を測定 – 試験するミラーでも同様にはかり、リファレンスミラー と比較し間接的に反射率を求める 光源 スキャナー ミラー (リファレンスミラー) 前述の原理で試験を行った 場合のシミュレーション スポットサイズ スポットの中心(x成 分) 曲率半径 スポットの中心(y成 分) 横軸:スクリーン位置 • スポットサイズは曲率半径で最小になる • スポットの変化から曲率半径は見積もれる 宇宙線望遠鏡用鏡試験装置 (Telescope Array Mirror Examination Device ) イメージスキャナー レーザー距離計 光軸決定ディスク ミラー架台 移動ステージ 光源 試験の結果 曲率半径 6077mm 6072mm 6067mm 6062mm 6057mm 6092mm 6087mm 6082mm スキャナーを前後に5mm間隔で動かした 曲率半径 6077±5mm スポットサイズ 6.9mm 結論と今後 • 光学系のスペックを最終決定した。 • 鏡の曲率半径とスポットサイズを測定する事が できる装置を開発した。 – 現在スポットの解析プログラムを作成中なので、ス ポットサイズは±5mm以下で求めることができる。 • この装置は、ミラー製作現場で使用されるため 測定の完全自動化が必要。 • 解析のプログラムの完成 • 反射率の同時測定(リファレンスミラー) 最高エネルギー宇宙線の起源 • ボトムアップモデル(プロトンなど) – 高いエネルギーをもち非常に巨大な天体 – 活動銀河核・ガンマ線バースト・衝突銀河 • トップダウンモデル(ガンマ線) – ビッグバン初期に作られた超重粒子・宇宙ひ もなどの崩壊 – 存在すら未発見 最高エネルギー宇宙線の伝播機構 pion production • 高エネルギーのガンマ線により陽子が核子共鳴 状態に励起され、π中間子を放出しエネルギー損 失が起こる。 • 減衰距離 1020eV : 100Mpc エネルギースペクトルにカットオフ 空気シャワー 一次宇宙線が大気と相互 作用して発生した二次粒子 (電子、ミューオンなど) 縦方向発達 – 大気の深さに対するシャワー 粒子数の変化 横方向分布 – シャワー軸からの広がり – 電子数、ミューオン数 それぞれ一次宇宙線の核 種やエネルギーで異なる 大気蛍光法 • 地表検出器に比べると モンテカルロ計算に殆ど 依存することなくエネル ギーが決定できる • ステレオ観測により到来 方向がわかる • シャワー全貌がわかる ためXmaxから一次粒子 の同定ができる 荷電粒子 による蛍光 地表検出器による観測 宇宙線 空気シャワー 蛍光 入射粒子数密度 入射時間差 光軸の調節方法