設備管理における仕様書の作り方

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Transcript 設備管理における仕様書の作り方

第4部
設備管理における仕様書の作り方
業務発注のポイント
1
仕様書に記載する基本的な情報

建築物の概要
(P21
建物規模、竣工年月日、用途 等
・構造:鉄筋鉄骨
地下1階、地上5階、塔屋1階
・延床:3,125㎡
・用途:事務室、研修施設、会議室
・竣工:平成6年4月
資料表-1)
2
(P22 資料表-2,3)
対象設備
電気設備、空調設備、給排水衛生設備 等
 管理対象となる設備機器
設備毎の具体的な機器の詳細
機器仕様、メーカー、設置台数
 点検項目、点検内容、点検周期 独自設定又は
 対象業務
共通仕様書
・定期点検等及び保守
・運転・監視及び日常点検

3
見積金額算定の基本(1)

総作業時間の算出
点検項目・点検内容・点検時期(周期)から設備
機器ごとの作業時間の算出⇒全体集計
設備機器×点検項目・内容(作業)×周期(頻度)
必要人数の算出
総作業時間÷1人当たり年間労働時間
 金額の算出
必要人数×人件費単価+付帯コスト+利潤

※人件費=給与+交通費+法定福利厚生費等
※付帯コスト=資機材費+教育費+被服費+採用費等
4
見積金額算定の基本(2)
要員の配置条件
・有資格者の配置(選任)
人件費+付帯コスト+利潤
 緊急対応、24時間即時対応
・必要ポスト数⇒必要人数
人数×配置時間×人件費+付帯コスト+利潤
 要員の指定
昼間勤務 8時〜17時 X名
夜間勤務 17時〜 8時 X名
休日勤務 8時〜17時 X名

5
建物施設の内容により
法定資格者の選任が必要







電 気 設 備:電気主任技術者
冷熱源 設 備:冷凍機械責任者、ボイラー技士
省エネルギー:エネルギー管理士、管理員
危 険 物 :危険物保安監督者
防 火 防 災 :防火、防災管理者
環 境 衛 生 :建築物環境衛生管理技術者
他
6

仕様書 点検・保守基準表の一例
点検周期
機器名
点
検 項目・内容
日
①羽根車、ケーシングの汚れの有無
②振動・異音ボルトのゆるみ等の有無
③錆、腐食の有無
④Vベルトの良否
⑤軸受け温度の良否
⑥電流値の確認
送風機
排風機
⑦羽根車及びケーシングの清掃
⑧Vベルトの点検、調整
⑨取付ボルトのゆるみの点検及び増し締め
⑩軸受の過熱の点検及び給油
⑪グリースの交換
⑫絶縁抵抗測定
⑬Vベルトの交換
月
6月
年
都
度
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
全国ビルメン 設備総合管理業務委託契約書 抜粋
7

仕様書の点検項目・内容・周期から作業時間
の算出
区分
送風機
点検周期
単位
点検時間
10台
年間作業時間
1D
1台1回当たり
1分
10分
2460分
1M
1台1回当たり
20分
200分
2400分
6M
1台1回当たり
60分
600分
1200分
1Y
1台1回当たり
120分
1200分
1200分
※年間稼働日数=365日-104(土・日)-15(祝日)=246日
※事務所ビル:延べ床面積10,000㎡の例
設備機器全体の集計=総作業時間:4,000時間
1人当たりの年間労働時間:2,000時間
4,000時間/2,000時間=2人
(必要人数×人件費単価+付帯コスト+利潤)
必要資格:電気主任技術者、建築物管理資格者等
計121時間
8
共通仕様書による業務内容と積算
点検保守業務の内容


定期点検等及び保守
点検を実施するために必要な資格又は特別な専門
知識を有する者が
・定期的に行う点検 ⇒ 《定期点検》
・災害発生直後及び不具合発生時等
に行う点検 ⇒ 《臨時点検》
運転・監視及び日常点検・保守業務
・中央監視制御装置がある建築物
・常駐して実施する運転、監視及び日常点検、保守
9
点検と保守(共通仕様書の定義)

点検
建築物等の部分について、損傷、変形、腐食、
異臭その他の異常の有無を調査することをい
い、保守又はその他の措置が必要か否かの
判断を行うことをいう。
10
定期点検
等
照明器具
点検項目
1.本体
点検内容
周期
①反射板、枠の汚損、損傷、さび及び変色
の有無並びに取りつけ状態を点検する。
1Y
②ルーバー及び照明カバーの汚損、破損、
変色等の有無を点検する。
1Y
③光源の異常なちらつき等の有無を点検す
る。
1Y
備考
運転監視 照明器具
点検項目
1.照明器具
点検内容
共用部分の点灯状態の確認を行う。
周期
備考
1M
11

保守
点検の結果に基づき建築物等の機能の回復又
は危険の防止のために行う消耗部品の取替え、
注油、塗装その他これらに類する軽微な作業を
いう。
具体的に保守の範囲として、定期点検等では、
(1)汚れ、つまり、付着物等がある部品又は点検部の清掃
(2)取付け不良、作動不良、ずれ等がある場合の調整
(3)ボルト、ねじ等で緩みがある場合の増締め
(8)その他これらに類する軽微な作業
12
定期点検保守業務のポイント
点検の範囲
法的規制を考慮し、建築物等の全般について、
点検項目・内容・点検時期を規定している。
更に点検時期について、
周期Ⅰと周期Ⅱを設定している。
周期Ⅰ:良好な状態に維持管理する標準的な
点検周期
周期Ⅱ:設備の不具合が日常業務にあまり影響
を及ぼさない場合の点検周期

13
※周期Ⅰ・Ⅱに関わらず、点検項目・内容・点検時
期を適用するか否かは発注者の判断による。
(法定点検は除く)
判断基準としては、
①対象機器の機能停止が施設利用に及ぼす影響
②対象機器の機能停止を復旧させる時間と費用
③対象機器の劣化と故障の頻度
14
定期点検等及び保守
点検項目
4.4.8 送風機の点検項目の一部抜粋
点
検
内
容
①亀裂、沈下等の有無を点検する。
②固定金具の劣化および固定ボルトの緩みを点検する。
基礎・固定部
③防振材の破損等有無を点検する。
④天井吊りの場合の脱落防止、吊り支持等の金具の緩み及び腐
食の有無を点検する。
①設置の状況を確認する。
②汚れの有無を確認する。
外観の状況
③腐食及びボルトの緩みの有無を点検する。
①電動機が外部より調査できる場合は、発熱の異常の
有無を点検する。
②回転方向が正しいことを確認する。
電動機
③絶縁抵抗を測定し、その良否を確認する。
④運転電流が、定格値以下であることを確認する。
発熱、異常音及び異常振動の有無を点検する。
軸受
緩み、摩耗、損傷等の有無を点検する。
Vベルト
Vベルトカバー 変形損傷の有無を点検する。
①摩耗損傷の有無を点検する。
Vプーリー
②芯出しの良否を確認する。
①汚れ、変形、腐食等の有無を点検する。
②ボルトの緩みの有無を点検する。
羽根車
③ケーシング等に接触していないか確認する。
運転調整
①運転時における電圧変動が規定値内であることを確認する。
②運転電流が定格以下であることを確認する
周期Ⅰ
周期Ⅱ
1Y
6M
6M
6M
1Y
1Y
1Y
1Y
6M
(6M)
(6M)
(6M)
1Y
1Y
1Y
6M
1Y
6M
(6M)
(6M)
6M
6M
6M
6M
1Y
1Y
1Y
1Y
1Y
1Y
1Y
6M
6M
6M
6M
6M
6M
1Y
1Y
1Y
1Y
1Y
15
保守の範囲
定期点検及び臨時点検の結果に応じて実施
する軽微な作業(フルメンテナンス契約は別途)
 点検の省略
点検部分が隠蔽されている場合や危険が伴う
場合仕様書の内容チェックし、リストから除外
 点検及び保守に伴う注意事項
省略対象機器について、点検周期の変更、
実施する場合の対応、実施した場合の現状
復旧等を仕様書に明記

16
運転・監視及び日常点検・保守
業務のポイント
設備機器等の運転・監視を実施しながら、日常
点検・保守を行い、事故や故障を未然に防ぐ等
予防保全が可能になる。
 業務の条件
特記仕様書に内容を明記
・施設の稼働状況の対応や閉庁日の定期点検
作業の立会い等
・常駐員の残業、休出、代替要員や増員等
17

運転監視の範囲
効率的な運転、安全確認、異常時の応急処置
・機器の起動、停止、計測、記録
・機器の制御、設定値の調整
・エネルギー使用の適正化
・機器の運転時間に基づく計画保全
18
点検の範囲
日常点検とは、設備・装置が通常の状態を維持
できていることを確認する。
共通仕様書では、1日に数回点検するものから、
日・週・月・3カ月毎などを設定
範囲は、対象部分・数量等を示して特記
 保守の範囲
運転・監視及び日常点検の結果に応じて実施
する簡易な修理、交換作業及びそれに伴う作業
「その他特記で定めた事項」

19
共通仕様書での積算

送風機の定期点検及び保守の例
仕様書4.4.8の送風機 標準歩掛り(人)
区分
送風機
点検周期
単位
保全技術員 保全技術員補 備考
1M
1台1回当たり
0.02
0.02
6M
1台1回当たり
-
0.13
1Y
1台1回当たり
0.24
0.18
周期Ⅰ
※ 1台1回当たり0.02⇒0.02×480=9.6分(点検時間)
送風機台数:10台
保全技術員2.6人/日
1M:0.02×10=0.2
6M
-
1Y:0.24×10=2.4
技術員補3.5人/日
2.4
0.13×10=1.3
0.18×10=1.8 20

該当する設備機器について、
積算基準により歩掛り(人)を算出し、集計する。
集計結果の例
保全技師
歩掛り(人)
参考 年間人数
保全技師補
保全技術員
保全技術員補
10
50
350
400
0.04
0.2
1.4
1.6
※年間労働日数=365-104(土・日)-15(祝日)=246日
保全業務費
(1)直接業務費=直接人件費+直接物品費
直接人件費=労務数量×日割基礎単価(東京)
保全技師人件費=10×22,300=223,000
保全技師補人件費=50×17,900=895,000
保全技術員人件費=350×17,100=5,985,000
保全技術員補人件費=400×15,500=6,200,000
21
直接物品費:見積や積算、過去の実績、物品費率
(物品費率は、内容により1〜3%、8〜12%、32〜38%)
(2)業務原価=直接業務費+業務管理費
業務管理費:建物の規模、用途、立地条件、築年数、
保全状況、過去の実績、管理費率
(管理費率は、内容により6〜10%、12〜16%、27〜43%)
(3)業務価格=業務原価+一般管理費
一般管理費は、20%〜25%までの範囲において、保全
を受注する法人の形態、目的、規模その他必要な事項
を考慮して定める。
(4)保全業務費=業務価格+消費税等相当額
22
仕様書の留意点
積算の原則
1.仕様書には、実態の内容に即した情報が記述、
開示されていること
2.積算は、実態でなく仕様書の情報から積算する
3.積算は、仕様書に盛り込まれていない情報を用
いてはならない

月刊ビルメンテナンス: 「次なる入札制度改革への処方箋」
国際公認投資アナリスト 小松伸多佳
23

積算できない作業内容の記載例
☆日常点検業務
・低圧配電盤(分電盤、動力盤)の点検
・空気調和器 送風機 騒音振動の異常の有無
・空調設備の運転、監視、点検調整
☆月間点検業務
・外灯設備の点検及び自動点滅装置の調整
・ダクト、ダンパー点検整備
☆年間点検業務
・各空調機内部点検及び清掃
・各ポンプ類の整備(グランドパッキン取替含む)
☆定期点検業務
・空気調和器機 送風機騒音振動の有無、羽根の破損、
汚損の有無
24
運転・監視及び日常点検・保守
点検項目
共通仕様書では、
点検内容
分電盤・照明制御盤 ①異常音の有無を確認する。
②各開閉器等の開閉状況を点検する。
ユニット形空調機
コンパクト形空気調
和機
①各部の異常音、異常振動等の有無を点検する。
②還気、給気及び冷温水入口、出口温度差の異常
の有無を点検する。
③加湿器の汚れの有無を点検する。
④排水の良否を点検する。
定期点検等及び保守
点検項目
2.本体
7.水系統
a 加湿用給水
b ドレンパン
周期
1M
1M
1M
1M
1M
1M
ユニット形空調機 コンパクト形空気調和機
点検内容
周期
抜粋
①設置の状況及び劣化・損傷の状況を確認する。
②ふしょく、変形、破損等の有無を点検する。
シーズン
IN
IN
①給水弁の開閉を点検する。
②漏れ及び汚れのないこと確認する。
汚れ、さび、腐食等の有無を点検し、清掃する。
ON
ON
IN・ON
25

曖昧な表現
・勤務者の資格等に関する項目
☆電気主任技術者(第3種又は同等以上の経験者)
その他の資格も同様な表現が多々ある。
・24時間対応、緊急対応、昼夜を問わず常時1名
以上の技能者を配置
夜間の場合1ポスト:1名対応(仮眠5時間)
2名対応(交代で仮眠)・・即対応可能
※夜間1ポスト以上とは、1ポスト1名体制でもOK?
26

勤務時間と要員の配置
業務の実施時間⇒平日と閉庁日で指定
技術者の配置⇒人数の指定と積算による場合がある。
※人数の指定の場合、業務量との整合性が必要となる。
★24時間の配置が必要な施設では、1ポスト1名体制等
明確な記載が見積の公平性につながる。

点検の範囲と内容
・設置されている設備機器について、
建築保全業務共通仕様書によらない仕様とする場合
設置されている設備に応じて、点検項目、内容、 周期
を明確に記載する。
27
アンケート結果から
専門知識が不足(2~3年で担当変更)業者
対応に苦慮
 電気、機械設備の不具合箇所の指摘に理解
できない
 設備の知識なく仕様書も、検査も困難
 入札で業者が入れ替わるたびにトラブル
 設備のことがよく分からない、忙しくて現場に
行けない

28
提案1 業務の実施記録活用

常駐管理、週に数日の管理、月1回巡回管理
日々の管理データ⇒月報にまとめる
・現状の問題点把握
★月報から⇒年報を作成する
・管理上の問題点(予算化)他
★次年度仕様書に反映
29
提案2 設備の把握

提案1の月報の報告に合わせて受注者と現
場に足を運ぶ
・巡視する設備を月毎に決めてもよい
・発注の形態によっては数ヵ月毎でもよい
★設備の管理実態を知ること重要
★効率的・効果的な管理
30
提案3 管理(契約)品質のチェック
要員の配置
・指定した人数、仕様書から積算された必要
人数を配置しているか
・配置すべき有資格者を現場に投入しているか
 業務内容
・仕様書の内容の業務を履行しているか
・仕様を勝手に変更して実施、又は省略して
いないか
・法令遵守:法的に実施しなければならない
業務が実施されているか

31
提案1・2・3を含めて
月報のまとめ
(問題点把握)
仕様の改善
と積算
現場の確認
(管理実態・履行チェック)
次年度の計画
(仕様変更・予算化)
32
業務の引継
引継に関する費用の予算化
 現状の受注者が引継資料作成(有償)
・提案1の月報、年報を活用
・引継リスト作成

★管理担当者、旧受注者、新受注者の三者で
現場設備の管理実態を確認
★不備な設備箇所を記録、期限を定めて履行
33
設備の巡視ポイント
34
受変電設備
盤内部、変圧器
35
非常用発電設備
直流電源装置
36
動力盤
分電盤
37
照明設備
ソーラパネル
外灯・下部
38
空調機
冷温水コイル・加湿器
空調機内部
エアーフィルター
39
内部
空調機
40
熱源装置
冷凍機
ボイラー
41
受水槽
高置水槽
42
ポンプ
設備
グランド部
43
排水トラップ
排水トラップの種類
洗面台の下
44
屋上
目地部に植物
の繁殖
表層の押さえ
コンクリートの
剥がれ
立上り、パラペッ
トの部分亀裂
目地材のはみ
出し
45
屋
上
冷却塔
ルーフドレイン
46