ビジネス ディベロップメントサービス BDS

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ビジネス ディベロップメント サービス
Business Development Service
青木 祐二
BDSとは?
中小企業(SMEs)あるいは零細企業(MEs)の
市場への参入・成長・生き残り、生産性・競争力の
向上等を促すための、
金融支援を除く様々なサービスの総称
サービス例: トレーニング、コンサルティング
(助言、診断)、マーケティング支援、情報提供、
法律・会計サービス、技術開発・普及、
下請などのビジネスネットワークの促進
小企業振興ドナー委員会とは?
(Committee of Donor Agencies for Small Enterprise
Development )
ドナーにおいて中小企業振興、零細企業開発などに携わって
いる職員などにより年1回、開催されている委員会。
ドナー委員会のメンバー
WB-IFC (世界銀行グループ)
ILO
(国際労働機関)
USAID (米国援助庁)
GTZ
(ドイツ技術公社)
DFID
(イギリス援助庁)など。
小企業振興ドナー委員会における
BDSに対する考え方の変遷
1970~1980年代:
・公的機関がトレーニングやコンサルティングサービスの多くを実施、
またBDSを提供する機関も多く設立された。
・しかしそれらは、既存のBDSの市場や民間企業側のニーズを
考慮していない、一方的なサービスの供給を行う”Supply
Driven”のアプローチであった。
1990年代:
・それらの反省を踏まえ、BDSを民間市場(マーケット)における
サービスと考える”Demand Driven” なアプローチへと徐々に
シフト。
・即ちMSMEsからのサービスの需要に応じて民間企業、商工会
議所、NGO等が、対価を得る形でMSMEsへBDSの提供を行う考
えにシフト。
BDS ガイドラインの発表 2001年2月
「Business Development Services for Small Enterprises:
Guiding Principles for Donor Intervention」
・1990年代の考えを集大成したものとして小企業振興ドナー
委員会からBDSガイドラインが2001年に発表された。
・ガイドラインでは民間主導によるBDS ( New BDS
Paradigm)すなわちDemand Driven” なBDSが提唱されてい
る。
・このガイドラインに従い、BDSは、現在、主として民間主導
によるマーケット開発を目指したプロジェクト及びプログラ
ムベースが各ドナーにより積極的に推進されている。
世界における技術援助の潮流とBDS
世界的な技術援助の流れ
・近年、援助国の考えや都合で選ばれたエキスパートやプログラ
ムによるSupply Drivenな援助から、現在、途上国のオーナーシ
ップを尊重し、イニシアティブを発揮させることを重要視した
Demand Drivenなものへと移行しつつある。
・すなわち途上国の立場に立って、各々の途上国の状況に応じた
プログラムを策定していくというDemand Drivenなアプローチ
へと移行。
(例)貧困削減戦略ペーパーの策定、セクター・プログラムのア
プローチの導入、コモン・バスケットへの移行など
BDSに対する新アプローチもその考えに沿った
ものである。
他の開発計画とBDSとの関係
貧困削減戦略
(Poverty Reduction Strategy)
民間セクター開発
(Private Sector Development)
中小企業振興 (SME Development)
金融サービス
BDS
BDS 旧アプローチ
BDSに対する補助は、常に公的機関を通じて実施されていた。
同時に民間セクターも個別にSMEに対してBDSを提供。
Private-sector
providers?
民間の活動の阻害
SME
Donor
funding
Government,
Donor
program,
NGO etc.
SME
SME
SME
サービスが提供される方向
BDS 新アプローチ
BDSはプロバイダー(民間セクター)を通じて、SMEsに対して提
供される。ファシリテイターは主としてプロバイダー育成を行う。
SME
Provider
Donor /
Government
Facilitator
Provider
Provider
SME
SME
SME
SME
SME
Public-funding, development agenda
Private Payment, Commercial
Orientation
BDSの取引市場(マーケット)の仕組み
ドナー
政府組織
資金
援助
BDS フ ァ
シリテイ
ター
サービス改善指導
BDSプロバイダー
情報提供
サービス提供
対価支払
補助金
(バウチャー)
BDSコンシューマー
零細中小企業
BDS取引市場(マーケット)のアクター
① ドナー、政府組織
BDSプロジェクトやプログラム実施の資金提供を行う。またドナーの
プロジェクトオフィスがファシリテイターであることもある。
② BDSファシリテイター
新サービスの開発を行ったり、BDSプロバイダーに対して、どのよう
にサービスを提供すべきかについての指導や訓練などを実施する。
NGO、産業組合、労働組合、政府組織、などがBDSファシリテイ
ターとなり得る。
③ BDSプロバイダー
MSMEsに対して直接BDSを提供する組織、個人など。個人、NGO、
民間のコンサルティング会社、国レベルそして地方レベルの政府組
織、商工会議所などがプロバイダーとなり得る。
④ BDSコンシューマー(零細中小企業)
BDSを要望する需要サイドに位置し、多くは利益追求を行う零細企業
や中小企業であり、BDSプロバイダーの潜在的な顧客である。
BDSにはどのようなものがあるか?
・各種トレーニング
・コンサルタンシーサービス
・ビジネスリンケージ(垂直・水平関係)
・テクノロジーの開発・普及
・ネットワークキング(ビジネスツーリズムなど)
・情報サービス
・ビジネスアドバイス
BDS実施のためのツールとは?
・バウチャー制度
・マッチング・グラント(プロジェクトの中で特定
されたビジネスのみにグラントを提供)
・BDS情報提供の整備
・ビジネス・リンケージ
・テクニカル・アシスタンス
・BDSプロバイダーに対する財政的支援
・BDSプロバイダーに対する新しいBDSの提供
・ソーシャル・ベンチャー・キャピタリスト・
アプローチ(プロバイダーとして潜在性のある個人や組
織を公的機関が掘り起こし育成)
日本のODAにおける中小企業支援と
新BDSパラダイム
★日本のODAにおける途上国中小企業支援
・公的機関を通じた支援、援助が中心
・補助金によるMSMEsへのサービスの提供が中心
(しかし、生産性向上センターなどでの研修費用徴収実績もあ
る。)
★新BDSパラダイム
・民間主導によるマーケットにおいてBDSを取引
・民間プロバイダーがMSMEsへのサービス支援を担う
・公的機関は、BDSマーケット育成のフレームワーク作りのみを
サポート
・BDSを民間セクター開発そして貧困削減のツールとして活用
ドナーのBDSへの取り組み(1)
(例)世界銀行-IFC 中小企業局
・BDSは、中小企業振興の重要なコンポーネントの1つ。
・BDS関連のプロジェクトを実施したタスクマネージャ-
が10名ほど居る。
・世銀全体では、数百万ドル規模のBDS予算を計上。
・ケニア、バングラデシュなどでBDSプロジェクトを推進。
(例)ケニア 中小企業技術研修プロジェクト
研修専門のプロバイダーを育成。バウチャーを使用す
ることにより研修に対する需要を喚起。プロジェクトを通
じて35,000社がプロバイダーより研修を受講。
・今後他のドナーと協調しつつBDSプロジェクトを拡大。
ドナーのBDSへの取り組み(2)
(例)ILO(国際労働機関)-小企業開発局(SEED)
・小企業振興ドナー委員会の中心的役割を担う。
・雇用の創出、労働の質の向上という観点から小企業
振興を推進。
・ 3つある小企業振興の中心戦略の1つとしてBDSが位
置付けられている。
・SEEDのスタッフは、約30名。
・アジアやアフリカで、各種のBDSプロジェクトを推進。
・(例) ウガンダ メディアプロジェクト
SMEsを対象としたビジネス広告新聞の発行。SMEsが
必要とする原材料やサービスに関する情報を掲載。
ドナーのBDSへの取り組み(3)
(例)USAID-零細企業開発局(OMD)
・本部では5人、現地オフィスでは、20名以上がBDSに
関与。
・約50百万ドルのBDS予算(2002年度)
・貧困削減の為に零細企業振興(MED)を積極的に推
進。その戦略としてマイクロファイナンスとBDSがその2
本柱となっている。
・プロジェクトアイデアの発掘、形成、調査、運営そして
評価のすべてを外部民間コンサルティング会社に委託。
・公的慈善団体(PVO)やNGOなどがBDSを提供する
中心的な役割を果たす。
ケーススタディ 1
(例)キルギス共和国 USAID
Enterprise Development Program
配分予算 10Mln USD, ローカルスタッフ150名
USAID
予算
EDP
本部
キルギス
EDP オ フ ィ
ス
指導要請
対価支払
配分
International
Executive Service
Corp. (US NGO)
BDSプロバイダー
サービス改善指導
指導先発掘
指導依頼
BDSコンシューマー
中小企業(大企業)
ケーススタディ 1 続き
・キルギス全土で、EDPローカルスタッフにより指導先を
発掘。
・定年したアメリカ人専門家を指導員として送る。
・コンサルティング料金については、EDP側全額負担。
・このため、BDSコンシューマーである、SMEs側がその
改善策を実施する意欲に乏しい。
・実際に提案された改善策の実行状況は10%前後にと
どまっている。
・旧ソ連圏の市場経済化推進の一環として実施されて
いるが、具体的な成果がまだ途上にある。
・フィーをSMEs側が払うに十分なビジネス規模がないこ
とも問題。
ケーススタディ 2
インドネシア 協同組合中小企業省 BDS
(例)協同組合中小企業省(MOCSME)と工業省(MOIT)がそれぞれ別にBDSプログラムを推進。
・MOCSMEにより、新しくBDSプロバイダーを作る場合には、3000~4000USDの補助金が支給される。
2001年 90BDS、2002年 332BDS、2004年までに1000BDS登録を目標。
現実:BDSのをMSMEsに提供することのみで収入を得るのはかなり困難。
新規にBDSオフィスを立ち上げている人たち。
・このため、すでになんらかのビジネスを行っている人が、さらに商機を拡大するために現在ボラン
ティアベースで行っている。
・かつて金融機関などに勤めていおり、地場の企業に人脈のある人が、スピンアウトしてBDSオフィス
を立ち上げ。銀行からの融資書類の作成などをサポートし、その対価を銀行からもらっている。
・イスラム教に関連ある宗教団体が、地方の産業育成支援の一環としてBDSを実施している等々、
幾多の苦労の上、BDSオフィスが運営されている。
・技術指導による対価をMSMEsからもらうだけでなく、経営に介入し利益を共有するようなベンチャー
キャピタル的な手法が必要ではなかろうか?
新BDSパラダイムの良い点
・民間セクターを活用することで、少ない予算でより大
きな効果が得られる可能性がある。
・公的セクターの介入を極力排除することで、民間セク
ターがより大きなインセンティブをもってサービス提供
活動に従事することが可能となる。
・民間の競争原理を中小企業振興にうまく活用できる。
・民間ベースによるBDSプロジェクト・プログラムを数多
く実施することで、一定の成功法則が見出せる?
新BDSパラダイムの問題点
・本当に民間だけにBDSを任せて大丈夫なのか?
・生活だけでも大変な特に零細企業がBDSに対して対
価を支払うのか?
・無駄なサービスに対価を払うよりもまず売上重視であ
るMSMEsの多くが、 BDSの価値を本当に理解できる
のか?
・理論先行で本当に新BDSは成功するのか?
・現場でのBDSプロジェクトの問題点、失敗点を今後の
プロジェクトの改善点として大胆に取り組んでいく必要
がある。
最後に
・ドナーの多くは、日本独自の中小企業振興手法を高
く評価している。
・ドナーとより連携を図りながら、新BDSパラダイムの良
い部分を取り込んでいっては?
・従来の公的支援の路線に加えて、民間主導による
BDSがより機能する場合には、それらの活用を考えて
はどうか?
・既にある程度のBDSマーケットが成熟しているところ
では、公的機関は、マーケットの脇役に徹するべき?
・すなわちプロジェクトの特性により、公的なBDS支援と
民間主導のBDSをを使い分けるもしくはミックスした手
法が効果的なのでは?