Transcript 第6章

第6章 ネットワーク基礎
ネットワークというものは,「何かと何かが,何かによって網
状につながっていて,何かを運ぶ」ことである.
コンピュータネットワークは,複数のコンピュータをネットワー
キングメディア(ケーブル)で網状に接続して情報(データ)を運
ぶものと考えられる.
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コンピュータとネットワーク概論
第6章 ネットワーク基礎
●コンピュータネットワークの構成
コンピュータネットワークは通信ネットワークであり,単にネッ
トワークともいう.
通信ネットワークは広域通信網(WAN)と局部通信網(LAN)
から構成される.
WAN(Wide Area Network)は広い範囲(全日本・全世界)に
及ぶネットワークのことで,インターネットもWANの一種である.
地理的に離れた地点にあるLANとLAN,または,コンピュータ
同士を接続し,データをやり取りする.
LAN(Local Area Network)は,ケーブル,光ファイバー,無線
などを使って,同じ建物,同じ学校,同じ会社の中にあるコン
ピュータやプリンタなどを接続し,データをやり取りする局部通
信網である.
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●WANの種類
現在,WANの構成は大きく分けて,次の4種類がある.
■一般電話回線:伝送速度は遅くて,56Kbpsを超えない.
■ISDN:総合デジタル通信網.速度は128Kbpsである.
■ADSL:非対称デジタル加入者線といい,電話回線を使用し
て,上り(送信)と下り(受信)の速度が非対称な,高速デジタル通
信を行う方式である.通信速度は数十Mbpsである.
■フレッツ:NTTの光ファイバーを用いた一般家庭向けデータ通
信サービスである.「FTTH」(Fiber To The Home)計画を実現する
サービスである.通信速度は最高で100Mbpsである.
bps(bit/per-second)は1秒間に伝送できるビット数(情報量).
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●伝送速度の比較イメージ
4MBの音楽をダウンロードする場合
電話回線(18分)
ISDN
(4分)
ADSL
(3秒)
(0.3秒)
フレッツ
転送速度
転送速度の比較のイメージ
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6.1 通信ネットワークの構成要素
通信ネットワークの基本的な機能は,端末装置(電話機や,コ
ンピュータ,通信機械)同士が伝送路や交換機を介して通信を
行うことである.電気信号として伝送するために,回線終端装置
(モデムなど)が必要である.任意の2台端末間の接続状況は次
のようになる.
端末装置
回線端末
装置
交換機
伝送路
交換機
回線端末
装置
端末装置
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●端末装置について
端末装置は,通信ネットワークに接続されたコンピュータや
通信端末,電話,FAX,ATMなどのものである.
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●回線終端装置について
回線終端
装置は,パ
ソコンなど
の機器から
送られてき
た信号を通
信回線に
適した信号
に変換した
りする装置
である.
伝送路
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●交換機について
交換機とは,通信ネットワークにおいて,伝送路間の接続
を切換えることによりデータ伝送の経路を決める装置である.
交換機の主な機能は次のようになる.
ルーティング(routing)機能:通信相手のコンピュータまで
データを送信するとき,最適な経路を選択して送信する.
スイッチング(switching)機能:端末装置から送られてきた
データの中から宛先を検出して,宛先の端末にしかデータを
送信しないように,送信側の端末と受信側の端末を接続する
機能である.
ネットワークの制御と管理機能:伝送路の故障,混み具合
により迂回ルートに自動的に切換える.また,伝送路の混み
あいを疎通する機能がある.
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●伝送路について
■ナローバンド:一般電話回線やN-ISDN回線を利用し,通
信速度が数十Kbps程度の伝送路のことである.
■ブロードバンド:ADSLやCATVインターネット,光ファイ
バーなど,近年登場した高速な伝送路である.通信速度が数
十Mbpsから数百Mbps.
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伝送路は,情報の伝送のために使用される媒体(メディア)で
ある.ネットワーキングメディアといい,単に「ケーブル」と呼ぶ.
ツイストペアケーブル
伝
送
路
の
分
類
有線
同軸ケーブル
光ファイバー
伝送路
電波
無線
マイクロ波
光ファイバケーブル
接続工事
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●伝送路の評価
引用:http://www5e.biglobe.ne.jp/~aji/3min/03.html
■帯域幅:データ通
信は伝送に使う電波
や電気信号の周波数
の範囲が広ければ広
いほど伝送速度が向
上することから,「通
信速度」とほぼ同義と
して伝送路の評価に
用いられる. (道路の
幅が広いほど交通流
量が大きいと考える)
データの伝送速度の単位はbps(bit per second: ビット数/1秒)
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6.2 プロトコルとOSI参照モデル
ネットワークにおいて,コンピュータ間の通信が円滑にいく
ようにするために,接続方法やデータの受け渡し方法などを
あらかじめ決めた規約をプロトコル(protocol),または通信
規約という.
今,主に利用されているプロトコルは,「OSI参照モデル」
(Open Systems Interconnection reference model)という.OSI
参照モデルは,ネットワークシステムがどのような構成要素
によって成り立つのか,各構成要素の間のインターフェイス
をどのようにするのかなどを表している.
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●通信の階層化
OSI参照モデルは,下図のよ
うに通信機能を7階層(layer,
レイヤ)に階層化される.
手紙で相手に意思を伝える
とき,次のような階層で行う.
内容→表現→媒体→伝送
階
層
構
造
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●OSI参照モデルの各層の機能
第1層(physical layer,物理層)は,ネットワークの物理的な
接続・伝送方式を定めたものである.コンピュータを結ぶケー
ブルの材質やコネクタ形状,およびデータと電気信号の方式
(電圧などの規定)などがこの層で定められる.
第2層(data link layer,データリンク層)は,ネットワーク上で
直結されている機器同士での通信方式を定めたものである.
第3層(network layer,ネットワーク層)は,接続されている
ネットワーク同士の通信を行うための方式を定めたものであ
る.相手までデータを届けるための通信経路の選択や,通信
経路内のアドレスの管理を行う.
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●OSI参照モデルの各層の機能
第4層(transport layer,トラスポート層)は,データ転送の信
頼性を確保するための方式を定めたものである.
第5層(session layer,セッション層)は,通信の開始時や終了
時などに送受信するデータの形式などを規定したものである.
第6層(presentation layer,プレゼンテーション層)は,圧縮方
式や文字コードなど,データの表現形式を規定したものである.
第7層(application layer,アプリケーション層)は,ネットワー
クアプリケーションのうちユーザが直接操作するインターフェイ
スである.
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OSI参照モデルの概要
送信側
受信側
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●OSI参照モデルによるパケット通信
通信ネットワークにおいて,データの正確さと信頼性を
保つために,大きいデータを送受信する際に,トランス
ポート層で少量のデータに分割し,分割された少量のデー
タとデータの種類・伝送順序などの制御情報を付加したも
のをセグメントという.さらに下のネットワーク層に流れてく
ると,各々に発信元,送信先のアドレスなどの制御情報を
付加したものをパケットという.パケットは情報の伝送基本
単位である.
送信元でデータをパケットに分割し,着信元でパケットか
らデータを再構成する通信方方式をパケット通信と呼ぶ.
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パケット通信のメリットは
■データを多数のパケットに分割して送受信することにより,
ある2地点間の通信に途中の回線が占有されることがなく,
通信回線を効率よく利用することができる.
■一度に大きなデータを送ると,途中でエラーが起きた場合
の再送信が困難であるが,細かく分割すれば,エラーのあっ
たパケットだけ再送信すれば済むので,通信の迅速性と正確
性を向上できる.
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●データの伝送
OSI参照モデルに従って,
データを送る場合,上の
層から順番にデータに
制御データが付けられ,
物理層まで着くと,電気
信号化され相手に送ら
れる.これをデータのカ
プセル化という.受信側
は逆に下の層から電気
信号を受けて,順番に
上へ制御データは利用
後に捨て,最後にデータ
を受け取る.
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データはワイングラスのようにカプセル化される
データ
7層から5層まで制
御データをつけない
データ
データ
送
信
側
データ
10011101
伝送
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6.3 ネットワーキングデバイス
ネットワークの構築に,ネットワーキングデバイス(ネット
ワーク機器)という装置が必要であり,交通網における信
号機の役割である.リピータ,ハブ,スイッチ,ブリッジなど.
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●リピータ(Repeater)
ネットワークにおいて,ケーブル上を流れる電気信号は,
抵抗による信号が減衰して弱くなったり,ノイズによる信
号の波形が歪んだりすることがある.このような減衰して
変形した信号を整形・増幅し,元の信号と同じ強さ,同じ
形に直すのはリピータの機能である.
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●ハブ(Hub)
ハブとは,簡単に言うと集結器,
または分配器のことである.複数
の端末装置は,ケーブルでハブに
接続され,ハブを介して相互に通
信することができる.
信号を増幅・修正するリピータの
機能を含んだハブをマルチポート
リピータという.さらに,MACアドレ
スを解釈し必要な装置のみに信号
を送るスイッチの機能を含んだハ
ブをスイッチング・ハブと呼ぶ.
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●ブリッジ(Bridge)
ブリッジとは,LANとLANを接続するネットワークデバイスで
ある . 文字通り, 2つの LANの 架け橋となる ものである .
LANとLANを接続するには,ハブでもできる.しかし,ブリッジ
はハブのように送られた信号をそのままで流すのではなく,あ
るLANから別のLANにデータを流す必要がない場合に,そ
れを阻止し,賢いデバイスである.
ブリッジはLANをつなぐ「橋」ではなく,「関所」といった方が正
しい.通過させるかどうかを判断するフィルタリング機能をもつ.
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●スイッチ(Switch)
スイッチは切換えの意味で情報の伝送ルートを選ぶなどに使
われ,スイッチングという.スイッチング機能は次のようになる.
スイッチングハブはネットワーク間の接続を行うとき,送っ
てきたデータに付いている宛先(MACアドレス)を解析し,該
当する端末のポートのみにデータを送信する.
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スイッチングハブの特徴
スイッチングハブは,LANとLANの接続にも用いられ,宛先
の端末にしかデータを送信しないため,ネットワーク全体の負
荷が軽減し,セキュリティが向上する.同じスイッチングハブに
接続している端末の中で,もし複数の端末が同時に同じ端末
に送信してしまうと,スイッチングハブの内部において,データ
の衝突が起こる.このようなことを防ぐために,スイッチングハ
ブはストア・アンド・フォワード(store and forward)送受信方式を
採用している.
スイッチングハブにバッファメモリがクッション領域として設け
られ,データを送信する前に,データを一時的にバッファメモリ
に保存(store)する.伝送路が確実に空であるときに,送信
(forward)する.衝突が起こらないが,遅延が発生する.
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スイッチングハブの特徴
ストア・アンド・フォワード送受信方式により,通信速度の異な
るポート間の通信を実現させることも可能となる.
例えば,10Mbpsポートと100Mbpsのポートが混在しているとき,
100Mbpsポートからデータが送られてきたら,10Mbpsポートへ
の送信は10Mbpsしか転送できない.転送しきれない90Mbpsの
余分を一時的にバッファメモリに溜めておくことができる.
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●ルータ(router)
ルータとはLANとLAN,LANとWANなどの異なるネット
ワーク同士を接続する装置である.ネットワークとネットワー
クを接続するだけではなく,伝送データの宛先の経路を決定
する.この機能をルーティング(routing)またはフォワーディン
グ(forwarding)と呼ぶ.
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●ルータについて
ルータは,データ(パケット)のIPアドレスを読み取って,どの
経路を通して伝送すべきかを判断することによって,データを確
実に宛先のネットワークまで伝送できる.ルータの主な動作:
●ホストからパケットを受け取る.
●パケットの宛先IPアドレスから宛先のネットワークを決定.
●宛先ネットワークまでのルートを決定.
●決めたルートに辿って,宛先のポートにパケットを送信.
ルータが送信ルートを決定することができるから,ネットワーク
において相互にデータの伝送が可能になる.
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●ルータについて
ルーターがIPパケットを受け取ると、その中のIPアドレスを読
み取って、経路表というルーティング・テーブルと呼ばれるリスト
と照合する。経路表にはあて先IPアドレスに対応したあて先
ルーターのアドレス、経路の情報が書かれている。ルーターは
あて先IPアドレスを読み取ってあて先の経路をすばやく判断し
転送する。
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●ルータについて
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●ルータの種類
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●ルータについて
特に,ブロードバンドルータと呼ばれるものは,
基本的にはローカルルーターでありレイヤ3ス
イッチであるが,WAN回線用のモデム等を内蔵
している.一般に小型・簡略したものが数千円
程度から市販されており、一般家庭や小規模事
務所などのユーザ向けのADSLやFTTHなどの、
いわゆるブロードバンドインターネット接続用に
使われる。
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第6章 ネットワーク基礎
第6章のまとめ
1.ネットワークとはコンピュータネットワークのこと
● WANとLAN
● WANの構成
2.通信ネットワーク構成要素
●端末装置,回線端末装置,交換機,伝送路
●プロトコル,OSI参照モデル及び各層の機能
●カプセル化,データ,セグメント,パケット,フレーム
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第6章 ネットワーク基礎
第6章のまとめ
完
3.ネットワーキングデバイス
●リピータ:信号の増幅と整形機能.
●ハブ:集結器,分配器の機能.
●ブリッジ:同じLAN内の通信は外へ出さないというフィ
ルタリング機能.
●スイッチ:スイッチングハブ機能とルータ機能.
●ルータ:LANとLAN,またはLANとWANを接続して,目
的地までの経路の選択機能
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