プロトコールの要点・基本観察要領
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Transcript プロトコールの要点・基本観察要領
平成22年7月25日
於:しらさぎ館
救急活動プロトコールの要点
(消防隊用)
ショックファーストorCPRファースト?
通報から現着まで5分未満(4分59秒まで)
⇒ショックファースト(準備でき次第、速やかに解析)
通報から現着まで5分以上
⇒CPRファースト(除細動実施前に1クールのCPRを実施)
ただし・・・
有効なバイスタンダーCPRが実施されてい
れば、ショックファーストに切り替える。
しかし、基本的に消防隊はAEDが準備でき
次第使用することで良い。
リズムチェックプロトコール
リズムチェックとは?
⇒モニター上の波形確認を行うとともに、必要に応じて
脈拍の確認を10秒以内で行うこと
実施のタイミングは?
⇒CPRファーストでは1クール実施後。ショックファー
ストではパッドを装着し直ちに行う。以降は1クールごと
に。
しかし、消防隊が使用する任意解析できない
除細動器については、音声メッセージに従う
ことで良い。
CPR中止基準
救急隊は・・・
リズムチェックで脈拍触知可能
一時胸骨圧迫中断
約30秒間モニター波形を注視しつつ、数・強さの変化を観察
維持または漸増
漸減傾向
血圧・SPO2を測定しつつ、
オンラインで医師に中止の判
断を仰ぐ
直ちに胸骨圧迫再開
正常な呼吸が出現すれば、人工
呼吸についても中止しても良い。
消防隊は・・・
AEDの音声指示に従って観察を行い、
十分な循環が再開した場合はCPRを中
止する。(十分な循環とは、正常な呼吸
や何らかの応答・目的のある仕草が出現
すること。)
CPRを中止後も呼吸の観察・脈拍の触知は
継続して行う。
基本観察要領
其の1 意識の評価
ジャパンコーマスケール(JCS)
意識清明は0(ゼロ)と表現
Ⅰ 刺激をしないでも覚醒している状態
1. ほぼ清明だが、なんとなくボーッとしている
2. 見当識障害がある
※時間・場所・人に関する認識が1つでも欠ける
3. 自分の名前・生年月日が言えない
Ⅱ
刺激をすると覚醒する状態―やめると眠り込む
10. 普通の呼びかけで容易に開眼
20. 大きな声や体を揺さぶることで開眼
30. 痛み刺激を加えつつ呼びかけを繰り返すと
かろうじて開眼
Ⅲ 刺激をしても覚醒しない
100. 痛み刺激に対し、払いのけるような動作
200. 痛み刺激で少し手足を動かす、顔をしかめる、
除脳硬直あるいは除皮質硬直姿勢をとる
300. 痛み刺激に全く反応しない
R:不穏、I:失禁、A:自発性喪失
100-I;20-RIなど
JCSの記載方法
収容依頼時
・意識レベルにあっては、Ⅱ-10で呼
び掛けで開眼します。
・Ⅲ-300で痛み刺激にも反応しません。
実はこの記載は正確な記載ではありません。
正確には・・・
Ⅱ-1または10
Ⅲー3または300
しかし、医療機関等でも広く混同して使っ
ているため、強く否定されるものではない。
余力のある人はこちらもどうぞ
グラスゴーコーマスケール(GCS)
大分類
E:開眼
小分類
自発的に
言葉により
痛み刺激により
開眼しない
スコア
4
3
2
1
V:言葉によ 見当識あり
る応答
混乱した会話(例:鉛筆をボールペンと答える)
不適当な言葉(例:名前を聞くと青が好き)
理解できない声(例:あ~、う~)
発音無し
5
4
3
2
1
M:運動によ 命令に従う
る最良の応答 痛み刺激部位に手足をもってくる
痛みに手足を引っ込める(逃避屈曲)
上肢を異常屈曲させる(除皮質硬直肢位)
四肢を異常伸展させる(除脳硬直肢位)
全く動かない
6
5
4
3
2
1
其の2 脈を触れる
まずは軽くおさらい
脈の触知部位
橈骨動脈
大腿動脈
総頸動脈
収縮期血圧最低値
80mmHg
70mmHg
60mmHg
脈を観察する時の着眼点は?
強さ
速さ(回数)
リズム
実際に脈を触れてみる。
まずは、隣の人の橈骨動脈を触れてみましょう。
さて、どちらがより良い触れ方でしょうか?
〈
上の写真も間違いではありません。
しかし、下の写真のように手関節を
反らすことで、橈骨動脈が表面に近
くなり、触れやすくなります。
これで、確実に触れれば80mmHg
以上の血圧があると判断でき、弱
ければ80mmHgに近い(つまり
ショック状態の可能性を示唆)と
判断できます。
反対の手で、冷感・湿潤を観察すること
も忘れずに!
実際に脈を触れてみる。パート2
これは重要!総頸動脈を触れてみましょう。★
カンを頼ってはいけません。確実に触れられる手技を身につけなければ、
判断に迷いが生じます。
まずは、示指・中指2本を揃えて、
甲状軟骨(のど仏)の真上に置くよう
にします。
次に、指の形はそのままで、数セン
チ下にずらすと、胸鎖乳突筋に当た
ります。ここで、指を軽く食い込ま
せると、うまく触知出来ます。
これで、触れなければ直ちにCPR着手!!
其の3
瞳孔の観察
簡単に観察可能な所見
大きさ・・・正常範囲は2.5㎜~4.5㎜
2㎜以下を縮瞳・5㎜以上を散瞳
左右差・・・瞳孔不同の有無
共同偏視・・・両眼が一方向を睨むように
偏位している状態
観察要領
CPAにおける瞳孔観察の意義
・CPR着手後、早期に瞳孔観察を実施
瞳孔が散大している
⇒比較的時間が経過している可能性大
瞳孔が正常範囲に近い
⇒心肺停止からの時間経過が少ない
⇒蘇生の可能性が比較的高いと予想ができる
・CPR・救命処置実施後の観察結果と比較
散瞳→縮小・・・有効な処置
正常→散瞳・・・あまり効果的では無い
其の3 モニター心電図
そもそも心電図とは?
心筋から出る微量の電気を体表面から記録したもの。
モニター心電図で分かること
1.心筋虚血の有無
※心筋梗塞・狭心症・不安定狭心症・・・
心電図上では・・・
多くの場合、ST部分に変化が
みられる。(上昇または低下)
2.伝導障害(不整脈)の有無
特に心停止の引き金となる不整脈は見逃さない。
電極を付ける1
1.一般的な付け方(機械の設定はⅡ誘導)
-
アース
+
赤(右鎖骨下中央)
黄(左鎖骨下中央)
緑(左前腋窩線最下肋骨上)
電極を付ける2
2.CS5誘導(機械の設定はⅡ誘導)
赤(右鎖骨下中央)
黄(左鎖骨下中央)
緑(第5肋間前腋下線上)
-
アース
+
メリット
電極の位置が近くなった
ため、感度が上昇(波形が
大きくなる)し、基線の揺
れも抑えられ、ノイズが少
なくなる。
電極を付ける3
3.CM5誘導(機械の設定はⅡ誘導)
赤(胸骨丙)
黄(左鎖骨下中央)
緑(第5肋間前腋下線上)
-
アース
+
メリット
誘導切り替えを行わずに
ST変化の有無をとらえる可
能性がある。(監視する範囲
が広い)
電極が近いため、ノイズが
少なくなる。
電極を付ける4
4.NASA誘導(機械の設定はⅡ誘導)
赤(胸骨丙)
黄(左鎖骨下中央)
緑(胸骨下部)
-
アース
+
メリット
P波の描出に優れている。
不整脈傷病者に対し有効
とされており、ノイズが
少なく基線がぶれにくい。
参考文献
・救急救命士標準テキスト(上下巻)
(へるす出版)
・救急救命士によるファーストコンタクト
(医学書院)
・救急隊員標準テキスト
(へるす出版)
・救急小辞典
(東京法令出版)