Na型。 - 東京大学素粒子物理国際研究センター

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高感度原子核乾板の乳剤開発
そして産業、技術との関係
名古屋 長縄直崇 2011 ICEPP スキー合宿
私は何者
反応が、反応点、素粒子飛跡1本1本が見えてしまう
現代版 原子論、分子論 世界が粒子でできていることを実感させてくれる。
原子核乾板に魅了されてOPERAの原子核乾板を担当、
OPERAの頃から乳剤自体をいじりたかった。
現在、OPERAの原子核乾板を改良した乳剤を開発中。
乳剤とは
ゼラチン+AgBr・I結晶
AgBr・I結晶
ゼラチンを除去
電顕写真
ベース(透明板)に塗って・・・(例:OPERA実験用)
現像前、現像後
断面像(OPERA用、電顕写真)
44μm 乳剤層
210μm プラスチックベース
44μm 乳剤層
プラスチック板の両面に写真乳剤が塗ってある。
(OPERA用)
片面の乳剤層
片面の乳剤層、拡大像
この厚みの中に3次元的に飛跡が記録される。
AgBr・I結晶の電顕写真
最小電離粒子飛跡(OPERA)
10GeV π-
20μm
Grain density(GD) ~33 / 100μm
Fog Density
~3 / (10 μm)3
フォグ
写真の誕生 ダゲール 1839年
ベクレル 放射能の発見 1896年
イルフォードの写真乾板改良
π中間子の発見
パウエル
X粒子(チャーム粒子)の発見 丹生
1947年
1971年
タウニュートリノの存在を確認 DONUT 2000年
現在
ニュートリノ振動を振動後のニュートリノで確認進行中
OPERA

CERN SPS

Appearance
INFN Gran Sasso
写真技術全盛期
デジカメの、まだ始まり
の時期であったから、
富士フイルムの開発・協力体制
可能であったから
1000万枚の新乳剤開発が
必要なOPERAができた。
OPERAにおける限界性能追究 1
リフレッシュ処理可能な乳剤の開発
富士フイルム、桑原さんたちと共同
乾板を高湿度(RH98%)、高温(30℃)に3日間置き
潜像退行を極端に起こし、乾板製造時に蓄積する邪魔な飛跡を消し去る・・・
リフレッシュせずに現像
リフレッシュ後に現像
(30度98%R.H.3日)
消えるが感度を損なわない、フォグを増を増やさない、キーとなる薬品の特定、
電子線照射、テスト現像で感度測定、フォグ測定。同時に現像条件出し。
~1940年イルフォード+パウエル以来の原子核乳剤の改良
OPERAにおける限界性能追究 2
史上初 機械塗布大量生産の原子核乾板、OPERAフイルム
従来より1桁以上良い平面性。
10cm×12cm 1000万枚!
OPERA型断面
44μm 乳剤層
210μm プラスチックベース
40μmの厚みを2回に分けて塗布。
→20μm塗布 ですらカラーフィルム
の約10倍の厚み!
装置の調整、
乳剤の粘土調整、界面活性剤
2回に分けて乾燥する必要。
44μm 乳剤層
その間のハンドリングの困難さ。
時は流れ、
今はデジカメ全盛の時代。
FUJIFILMは新しい乳剤の開発研究を止めた。
だが、すぐにやりたい実験、
検討を始めたい実験が控えている
ミューオントモグラフィー
中性子モニター
γ線望遠鏡
二重ベータ崩壊探索
そして2010年、乳剤開発プロジェクト開始
富士フイルムOBのスペシャリストの協力体制
(桑原氏、露木氏)の協力を得られるようになった。
ついに物理屋が、物理の目的にのみ狙いを定めた乳剤開発ができる
時代がやってきた!
逆説的だが、デジカメ時代であることが可能にした
目標
自分たちで乳剤開発を可能にする。
1.OPERAの再現
2.高感度化、低BG化の可能性を探る
2010年3月名大内に乳剤開発施設完成。
4月 機器調整
5月 乳剤作り開始。
8月 最小電離粒子検出可能な乾板
できた!
そして9月・・・
Ag+
Br-
2010年9月 祝!OPERAを超える性能を記録
exposed to several hundred MeV electron
100μm
Grain Density = 41.5±3.1 grains /100μm
(OPERA~35 grains / 100 μm )
Fog Density = 1.31±0.33 fog grains / (10μm)3
(OPERA~ 3 fog grains /(10μm)3)
低K化の試み
通常
…
AgNO3 aq KBr+KI aq
ゼラチン
+ 湯
攪拌
AgBrI 結晶
KBr+KI aq
AgNO3 aq
NaBr+NaI
ゼラチン
+ 湯
攪拌
AgBrI 結晶
全てのカリウム含有化合物もナトリウム化合物で置き換えた。
9月 試作したNa型をK型と比較、同等の性能
K型, Na型
OPE-204
OPE-204
OPE-207
OPE-207
50
40
30
Na型GD
3
Fog Density [grains/1000μm ], or G rain Density [grains/100μm]
60
Gra i n Dens i ty
F og Dens i ty
Gra i n Dens i ty
F og Dens i ty
20
K型GD
Na型FD
K型FD
10
0
10
15
20
25
30
Development Time [minutes]
35
40
性能に差なし→Na型に切り替えOK
高GD化
2010年10月仕込み
・高GD化のためにゼラチンの量をOPERA乳
剤の約1/4にまで減らした(高銀化)。
・Na型。
今、進行中の限界性能追究 2 高感度化
2010年10月7日 仕込み
濃い乳剤(ゼラチンを減らした乳剤)
10月8日 測定
祝!GD100 に到達!!
(Na型!!)
Grain Density 80.4±4.5 Fog Density 7.3 ±2.2 (30分現像)
Grain Density 102.3±5.2 Fog Density 10.3 ±3.2 (40分現像)
→ Fog↓と長期安定性の見極めが課題。
→二重ベータ崩壊実験の検討
新乳剤(高銀・Na型)最小電離粒子飛跡 GD=80.4±4.5 (30分現像
FD= 7.3±2.2
100μm
OPERA型
GD=34.8±0.6
FD= 3.7±0.4
100μm
高銀化Na型 (現像時間40分)
GD=102.3±5.2, FD=10.3±3.2
100μm
高銀化Na型 (現像時間40分)
GD=102.3±5.2, FD=10.3±3.2
銀に対し10-4のモル比で入っていた
添加剤の量を倍にすると、
100μm
100μm
高銀化Na型2 (現像時間40分)
Fog↓に成功
GD=93.9±4.5 FD=2.9±0.9
100μm
そして今
・ 世界で唯一機能している原子核乳剤製造所
・ 写真乳剤のコア技術を受け継ぎ、発展させていくという使命を帯び始めた
→ 世界に供給していくという使命を帯び始めた。
実際、需要・・・
ミューオントモグラフィー
中性子モニター
二重β崩壊
γ線望遠鏡
ダブルハイパー核実験
分数電荷粒子の探索
名古屋大学
東京大学地震研
BERN大学
NAPOLI大学
名古屋大学
名古屋大学
ストラスブール
名古屋大学+神戸大
岐阜大学
名古屋大学
物理的まとめ
2010年3月、乳剤開発施設設置。
物理の興味にピンポイントで対応した乳剤の製造が可能になった。
OPERAに遜色無い性能の乳剤ができた。
K型→Na型にしても性能に差が無いことを確認。
OPERAの3倍のGDの乳剤の開発に成功。
課題であったFog↓を実現した。
長期安定性が課題。
各実験への投入を具体的に検討する段階に来た。
産業のものづくりでは、複数の項目で高得点を要求される。
フィルムで言うならば
長期安定性、耐熱性、耐化学物質・・・・様々
富士の数十年のノウハウ
そのための添加剤が多く感度が上げきれていない等。
研究のものづくりでは、一つの特長が飛びぬけていることが
特定の能力を飛びぬけさせる
要求される。
さほど長期は必要ない安定性。
限られた温度条件で使用。
実験場の限られた物質との接触状況下での使用。
ユーザーが開発者
使い勝手が悪くても問題ない。
例:GD 80、100の乾板
→実験の現場は技術にとっての実験場としても機能する。
そして産業へ技術はめぐっていく。
これまでの話
産業・ものづくり・技術の誕生→
極限性能追究→ 物理的発見
→バイプロダクト→学問の創生
産業へフィードバック
結局
互いに鍛えあっていく産業と物理の研究
産業
研究
共進化していく