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行列模型の数値シミュレーショ
ンに基づく初期宇宙の研究
「離散的手法による場と時空のダイナミクス」研究会
理化学研究所(和光本所)
2012年8月30日~9月2日
西村
淳
(KEK,総研大)
目次
1.
2.
3.
4.
5.
6.
はじめに
これまでの研究と問題点
ローレンツ型の行列模型
宇宙誕生の様子
その後の時間発展(進行中)
まとめと展望
collaborators
•
•
•
•
•
土屋麻人 (静岡大)
Sang-Woo Kim (大阪大)
Konstantinos Anagnostopoulos(アテネ工科大)
伊藤祐太 (総研大)
小井塚裕己 (総研大)
1. はじめに
1. はじめに
場の理論における非摂動的定式化の重要性
e.g.) QCDにおけるクォーク閉じ込め
格子ゲージ理論(Wilson, 1974年)
面積則
強結合展開、モンテカルロ・シミュレーション
摂動論では、絶対に説明できない性質
超弦理論においても、同様ではないか?
1980年代以来、無数の「真空」が存在する、
と考えられてきた。
時空の次元
ゲージ対称性
物質場(世代数)
様々なものが「真空」として存在
「ランドスケープ」という見かた(開き直り?)
我々の宇宙は、無数に実現しうる宇宙の一つにすぎない
そのような「真空」を具体的に構築し、その性質を解明する
ことが、超弦理論の目標になってしまった。
しかし、
超弦理論を非摂動的に定式化したら、
真空がユニークに決まっている可能性もあるのでは。
タイプIIB行列模型(石橋, 川合, 北澤, 土屋 1996年)
10次元タイプIIB超弦理論に基づく、超弦理論の非摂動的定式化
摂動論との対応、という観点では、 10次元タイプIIB超弦理論との等価性が
見やすい定式化になっている。
worldsheet action,
light-cone string field Hamiltonian, etc.
非臨界弦の非摂動的定式化として確立している、
“one-matrix model”のアイディアを自然に拡張。
行列模型のファインマン図を、弦の世界面と見なす。
「超弦理論の双対性」という観点から →
超弦理論そのものの非摂動的な定式化と予想される。
(タイプIIB行列模型の摂動論的真空として、
他のタイプの超弦理論も表わせるだろう。)
M
IIA
Het E8 x E8
Het SO(32)
IIB
I
タイプIIB行列模型
SO(9,1)対称性
エルミート行列
添え字の上げ下げには、ローレンツ計量
を用いる。
ウィック回転
ユークリッド型の行列模型 SO(10) 対称性
2. これまでの研究と問題点
これまでの研究:ユークリッド化した行列模型の力学的性質
SO(9,1)ローレンツ対称性ではなく、SO(10)回転対称性を持った模型
4次元時空の力学的生成?
(SO(10)回転対称性の自発的破れ)

対角的配位の周りの摂動論、ブランチ・ポリマー描像
Aoki-Iso-Kawai-Kitazawa-Tada(1999)

フェルミオン行列式(パフィアン)の複素位相の効果
J.N.-Vernizzi (2000)

モンテカルロ・シミュレーション
Ambjorn-Anagnostopoulos-Bietenholz-Hotta-J.N.(2000)
Anagnostopoulos-J.N.(2002)

ガウス展開法
J.N.-Sugino (2002)、Kawai-Kawamoto-Kuroki-Matsuo-Shinohara(2002)

ファジー
Imai-Kitazawa-Takayama-Tomino(2003)
ガウス展開法に基づく最新の結果
J.N.-Okubo-Sugino, JHEP1110(2011)135, arXiv:1108.1293
広がっている方向
縮んでいる方向
d=3のときに自由エネルギーが最小
SO(10)
SSB
時空は、すべての方向に有
限の広がりを持つ
SO(3)
ユークリッド化したタイプIIB行列模型の興味深い力学的性質。
しかし、物理的な意味は不明。
そもそもユークリッド化したのが
問題では?
 場の理論では、相関関数の解析接続として、完全に正当化可能。
(だからこそ格子ゲージ理論が使える。)
 一方、重力を含む理論では、ユークリッド化した理論との対応は微妙。
(古典解レベルでは良いだろうが。)
 ランダム単体分割に基づく量子重力の研究
(Ambjornら2005)
(ユークリッド型重力での失敗、ローレンツ型重力での成果)
 宇宙項問題に対する、Colemanのワームホール・シナリオ
(ユークリッド型重力での問題点と、ローレンツ型重力に
おける新しい解釈)
岡田、川合(2011)

宇宙誕生の様子など、実時間のダイナミクスに対して、
ユークリッド化した理論は無力。
3. ローレンツ型の行列模型
ローレンツ型タイプIIB行列模型の
モンテカルロ・シミュレーション
Kim-J.N.-Tsuchiya PRL 108 (2012) 011601 [arXiv:1108.1540]
まず、分配関数をどう定義するか?
弦の世界面に対する理論との対応から、
こう取るのが自然。
(世界面の座標もウィック回転しないといけない。)
ローレンツ型タイプIIB行列模型の問題
15年近く、誰も手をつけなかったのには、わけがあった。
逆符号!
極めて不安定な系。
ユークリッド化しちゃえば、
正定値!
flat direction(
)は、量子効果で持ち上がる。
Aoki-Iso-Kawai-Kitazawa-Tada (’99)
ユークリッド化した模型は、カットオフなしに、well defined
Krauth-Nicolai-Staudacher (’98),
Austing-Wheater (’01)
正則化とラージN極限
ユークリッド型の模型と異なり、そのままではwell definedでない。

時間方向と空間方向を、いったん有限にしておく。
(カットオフを導入)
以下では一般性を失うことなく、
とおく。


これらのカットオフは、ラージNの極限で外せることがわかった。
(極めて非自明な力学的性質)
SO(9,1)対称性と超対称性は、カットオフにより陽に破れる。
このexplicit breakingの効果も、ラージN極限で消えると予想。(要検証)
符号問題は回避できる!
(2)
(1)
問題になりうるのは、この2つ
(1) フェルミオンの積分から来るパ
フィアン
ラージNでは、正となる配位が支配的。
ユークリッド型の模型では、
この複素位相が、SO(10)対称性の自発的破れを引き起こす。
J.N.-Vernizzi (’00), Anagnostopoulos-J.N.(’02)
符号問題は回避できる!
(2)
るのか?
は、どうしてくれ
ミンコフスキー時空上の
ふつうの場の理論でも問題となる。
(実時間ダイナミクスの解析は
悪名高い難しい問題!)
を先に実行
の斉次式
4. 宇宙誕生の様子
「時間発展」という概念の出現
平均値
小さい
バンド対角的構造
小さい
時刻tにおける状態
を表す
「時間」の出現
超対称性が重要な役割
に対する有効作用
を1ループで計算
の寄与
の寄与
van der Monde行列式の寄与
合わせると
超対称性がある模型では、ゼロ!
ボゾニックな模型では、固有値間に引力あり。
超対称な模型では、固有値間の引力が相殺。
空間の広がりの時間発展
の対称性あり。
の領域のみ表示
SO(9)回転対称性の自発的破れ
SSB
“critical time”
5. その後の時間発展
K.N. Anagnostopoulos,Y. Ito, S.-W.Kim, Y.Koizuka,
J.N., A. Tsuchiya, work in progress
その後の時間発展を追うことにより、
期待されること
 現段階のシミュレーションで見えているのは、宇宙誕生の様子
 bottom-up的に考えたら、もっとも難しく思われることが先にわかってしまう、
というのが、top-down的なアプローチならではの事。
 その後の時間発展を追うことによって初めて、
我々の良く知っている宇宙の様子が見えてくるはず!
 インフレーションは起こるのか?
(「インフラトン」を用いた現象論的記述ではなく、
超弦理論に基づく第一原理的な記述が可能に。
CMBとの比較による検証。)
 可換な時空の描像がどのようにして現れるか?
 その上にどのようなmassless場が現れるか? 階層性問題に対する理解
 現在の宇宙の加速膨張(dark energy)、宇宙項問題に対する理解
 宇宙の終焉に対する予言 (ビッグ・クランチか、永久膨張か、など)
戦略:古典近似が良くなる時刻まで
追えれば十分
時間的に後の方になると、宇宙膨張が進むので、
actionの各項への寄与が大きくなり、古典近似が良くなると考えられる。
(宇宙がプランク長さよりも十分大きくなればよい?)
そこまでを数値シミュレーションで計算できれば、
後はスムーズにつながるような古典解を
ユニークに選び出せればよい。
注)古典解は無数にある。
(3+1)次元膨張宇宙に対応し、宇宙項問題を自然に解決する簡単な解もある。
その周りのゆらぎから、大統一理論を導くことができる。(土屋氏の講演)
フェルミオンの寄与に対する近似
1980年代における格子QCDのシミュレーション:
クエンチ近似で、ハドロンの質量スペクトルをおおよそ再現
sea quarkの寄与を無視する近似
行列模型では、「時間」の出現において、
フェルミオンの寄与が重要な役割を果たした。
ボゾニックな行列模型では、時間が有限の広がりしか持てない。そこで、
を対角化したゲージをとって、
に加えて、
van der Monde行列式の寄与
の1ループの寄与
「VDM模型」
を入れた模型
の場合でシミュレーション
指数関数的膨張
VDM模型
指数関数的膨張とconsistentに見える。
非対角成分のスケーリング
VDM模型
時間が経つにつれて、どんどん対角的な構造になっていく。
(可換な時空の出現と関係)
連続極限をとる際の効率上の問題
物理的スケールで見ると、
同じ時間内に点の数が
倍
SSBが起こっている領域内では、点の数が
で
くりこみ群的なアイディアの必要性
cf.) one-matrix model
Brezin,Zinn-Justin (1993), Higuchi-Itoi-Nishigaki-Sakai(1995)
matrix model with fuzzy sphere background
Kawamoto-Kuroki-Tomino arXiv:1206.0574
先に積分してしまったと考える
バンド対角的構造が支配的
を適切な値にとることにより、
小さい行列に対する有効理論
を作れるのでは?
試しにやってみた結果
VDM模型
SSBが起こっている領域が拡大
指数関数的膨張を、より広範囲で確認
VDM模型
6. まとめと展望
まとめ
タイプIIB行列模型 (1996年)
タイプIIB弦理論をベースとした超弦理論の非摂動的定式化
提唱から15年。ユークリッド化した模型の問題点がようやく明らかに。
ローレンツ型の模型。不安定な系に見えるため、これまで手つかず。
数値シミュレーションにより、驚くべき性質が明らかになりつつある。

カットオフを導入してから、ラージNをとることにより、
well-definedな理論が定義できる。
(1つのスケールパラメタの他には、一切パラメタを含まない。)

「時間発展」という概念が出現
を対角化したときに、
がバンド対角的構造になる。
の固有値分布が無限に広がるためには、超対称性が重要。

ある時刻を境に、空間のSO(9)対称性が自発的に破れ、3次元方向だけが膨張。
宇宙誕生の様子を表している、と解釈可能。
第23回Solvay物理学会議(2005年)
におけるSeibergの報告
“Emergent Spacetime”
hep-th/0601234
Understanding how time emerges will undoubtedly
shed new light on some of the most important questions
in theoretical physics including the origin of the Universe.
ローレンツ型タイプIIB行列模型では、正に、時間と空間の両方が出現し、
宇宙の起源が明らかにされているように見える。
時空の次元がユニークに決まった
ことの意義
超弦理論の非摂動的真空がユニークであることを強く示唆。
時間発展をさらに追うことにより、可換な時空および、
その上を伝搬するmassless場が現れると考えられる。
どういうものが出うるか、ということに強い制限がつく。
低エネルギーで標準模型がユニークに導ける可能性あり。(土屋氏の講演)
これは事実上、超弦理論を実証することに他ならない。
できるだけ長い時間発展を追い、支配的になる古典的配位を特定できれば十分。
QCDのクエンチ近似に相当する、良い近似理論としてVDM模型、
くりこみ群的アイディアを用いた効率化を提唱。
 指数関数的膨張を確認。
(SSBが起こり(3+1)次元膨張宇宙が出現。)
 可換な時空の出現に対する示唆。
今後の展望
 くりこみ群的アイディアの確立
 指数関数的膨張は、その後どうなっていくのか?
(古典解を見る限り、どこかで終わると考えられる。
それが見えるまで、数値シミュレーションで調べられるか。)
 CMBと比較すべき、密度揺らぎをどう測定するか?




可換な時空の描像の確立
SU(k)ゲージ群のkを、どう読み取るか?
SU(k)GUTのラグランアンを、どう読み取るか?(土屋氏の講演)
低エネルギーで標準模型が現れるか?
インフレーションの機構、宇宙項問題、階層性問題、
ダーク・マター、ダーク・エネルギー、バリオン生成など、
素粒子理論、宇宙論における、あらゆる問題が統一的に理解されていくはず。
(ちょうど格子QCDによって、ハドロン物理における様々な問題が、
統一的に理解されてきたように。。。)