Transcript LQ-7 - NICT

次世代ウィンドプロファイラの研究開発
川村 誠治1・橋口 浩之2・山本 真之2・東 邦昭2・山本 衛2・
梶原 佑介3・別所 康太郎3・工藤 淳3・岩渕 真海3・星野 俊介3・足立 アホロ4
1情報通信研究機構, 2京都大学生存圏研究所, 3気象庁/気象研究所, 4気象研究所
鉄道運輸機構(JRTT)予算
「航空安全運航のための次世代ウィンドプロファイラによる乱気流検出・予測技術の開発」
京都大学・気象庁/気象研究所・NICT
2011年~2012年
研究の目的
a.次世代ウィンドプロファイラの開発
地上付近から航空機の巡航高度(約10km)までを一挙に観測可能な次世代
の標準となるウィンドプロファイラを開発する。
b.乱気流検出技術の開発
aで開発されたウィンドプロファイラの観測データから、乱気流を定量的に検
出する手法を開発する。
c.乱気流予測技術の開発
bのウィンドプロファイラによる乱気流観測データとメソスケール気象予測モ
デルの結果を比較し、乱気流の発生を予測する技術を開発する。
・レンジイメージング観測モードを定常運用可能なWPRを初めて開発
・高度分解能を失わずに高高度までの観測を実現
・予算元の都合で2年に短縮されたものの、国交省の終了評価で高評価
(4.2/5.0)
研究の概要
平成23 – 24年度: 京大・NICT・気象庁/気象研
(b)
(c)
(a)
気象現業機関・航空事業会社との協力
気象庁・日本航空(株)の協力を得て研究課題を進める
多周波干渉計法による高分解能化
次世代WPR・プロト
タイプ機の開発
乱気流検出・
予測技術の開発
研究の実施
研究への協力
現業用ウィンドプロファイラ観測データの提供
メソスケール気象予測モデルの結果の提供
航空機観測データの提供
次世代WPRのプロトタイプ機(LQ-13)の製作
LQ-7 (no.1)
LQ-4: 2011年10月より定常観測
⇒ 毎時 気象庁へ
データ配信中
LQ-13
LQ-4
LQ-7 (no.2)
2つのLQ-7を合体・改修 ⇒ LQ-13へ
NICT(小金井)の3台のWPR
3.6m
2.7m
+
2.5m
7個のアンテナ
=
4.0m
13個のアンテナ
次世代WPRのプロトタイプ機(LQ-13)の製作
主要諸元
中心周波数
1.3575 GHz
占有帯域幅
10 MHz
ピーク電力
5200 W
アンテナ方式
アクティブ・フェーズド・アレイ方式
アンテナ利得
32.3 dBi
(30 dBi, 27 dBi)
ビーム半値幅
4°
(5°, 7°)
レンジイメージング
(2800 W, 1800 W)
ソフトウェア無線により実現 (無, 無)
(赤字はLQ-7,
青字はLQ-4)
レンジイメージング実現のために
②ソフトウェア無線を導入、ソフトウェアで
レンジイメージング処理
USRP
アンプ&フィルタ
①IPP毎に局発出力を5周波切替可能に
(スペアナ画面:局発出力をMAX-holdで表示)
LQ-13の検証 -受信感度ー
SN比 (2013年2月14日・24時間分)
観測パラメータ
(レンジイメージング無し)
尖頭電力 (W)
パルス幅 (μs)
IPP (μs)
Spano符号ビット
パルスパターン
コヒーレント積分数
FFT点数
LQ-13
LQ-4
インコヒーレント積分数
Duty比 (%)
LQ-13
5200
4
200
16
32
1
128
14
32
LQ-4
1800
0.667
80
16
32
2
128
18
13.3
想定されるSN比の倍率(LQ-13 / LQ-4)
電力
Duty比
コヒーレント積分
5200
32
―― x ――
x ―1 x
1800
13.3
2
アンテナ開口
13
―
= 11.3 (倍)
4
= 10.5 (dB)
赤:LQ-13
青:LQ-4
約10 dB
LQ-4
SN比の高度プロファイル(1時間平均値)
LQ-13
ほぼ想定通り
の感度上昇
LQ-13の検証 -風速ー
2013年2月14日・24時間分の風速散布図
東西成分
鉛直成分
LQ-4
LQ-13
LQ-13
LQ-13
南北成分
LQ-4
LQ-4
ラジオゾンデと比較
風速
ラジオゾンデ
LQ-13
風向
風速
風向
LQ-13の検証 -観測上限高度ー
LQ-13
パルス幅:4 μs
5周波レンジイメージング
LQ-4
パルス幅:0.67 μs
通常観測
SN比
ドップラー速度幅
上昇流
水平風
観測上限高度は大気の状態に大きく左右され、LQ-13とLQ-4でほぼ同程度までしか
観測できない時もあるが、多くの場合でLQ-13の優位性が顕著にみられる
集中観測(2012年11月~12月)
LQ-13の検証と乱気流観測のため、2012年11月
30日から約一カ月間GPSゾンデ放球を含めた集
中観測を実施
前半:11月30日から12月9日 ゾンデ27発
後半:12月15日から12月24日 ゾンデ40発
ゾンデは3時間間隔のウィンドウで乱気流の発生
が予測される時に放球
小型ライダー、各種雨量計も同時観測
レンジイメージングによる空間分解能の向上
•
レンジイメージング(周波数領域干渉計法)
– 周波数の異なる送信波を用いて空間分解能を向上させる
例えば、f (1357.5MHz)、f±200kHz、f±400kHzなどの5周波を用いる
強調される散乱領域
強調される散乱領域
Chilson et al. [2003]
ホッピングしない場合の空間分解能
(送信パルス幅に対応)
異なる周波数で発射した送信パルスからの受信信号
複数の受信信号(それぞれ違う周波数に対応)の位相と振幅を調整しながら
足し合わせることで、パルス内で強調される領域を変えることができる
⇒ パルス内をさらに分解できる(空間分解能の向上)
レンジイメージング観測例
SN比
1
ドップラー速度幅
上昇流
2
2013年4月10日
パルス幅:4 μs
(通常のレンジ分解能:600 m)
5周波レンジイメージング
100 mスケールの層を解像できている
1
600 m
2
LQ-4
LQ-13
LQ-13
(従来型レーダ)
レンジイメージングなし
レンジイメージングあり
高度 (km)
高度 (km)
高度 (km)
高度 (km)
スペクトル幅
高度 (km)
100 mスケールの薄い層
水平風速
SN比
LQ-13観測例
時間
時間
時間
従来型レーダ(LQ-4)と比較して
・大型化により観測高度範囲の拡大
・レンジイメージングによる高分解能
時間
連続観測と準リアルタイム処理
レンジイメージング観測はソフトウェア無線
により実現
IQデータからの処理はデータ量も膨大で非
常に重たい(データ容量例:1Tbyte / 週)
マルチコアの計算機による並列処理で準リ
アルタイム処理を実現・逐次WEB表示
無線免許取得の2012年11月から現在までレ
ンジイメージング観測を継続中
http://www3.nict.go.jp/aeri/rrs/WPR_KOGLQ13_hop/
まとめ
 2台の既存WPRを合体・改修し、1台のWPRを製作(LQ-13)
 検証と乱気流観測のためGPSゾンデを含む集中観測を実施
 LQ-13は期待通りの感度上昇を達成、レンジイメージング機能
の付加により高分解能観測を実現
 レンジイメージングでは、周波数帯域の狭い長パルスでも分解
能を落とさない観測が可能に
 今年度更新中の気象庁WINDASではLQ-11が採用(レンジイ
メージング機能なし)
 今後、
・レンジイメージング観測、乱気流観測・予測技術の実用化
・車や風車など移動体を含むクラッタをアダプティブに除去す
るシステムの実用化
などを目指す