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大腸癌治療ガイドライン 2014年版 その内容と2010年版との変更点について 内容 1. Stage 0〜Stage III大腸癌の治療方針 1) 内視鏡治療 2) 手術治療 2. Stage IV大腸癌の治療方針 3. 再発大腸癌の治療方針 4 . 血行性転移の治療方針 5 . 化学療法 1)補助化学療法 2)切除不能進行再発大腸癌 6. 放射線療法 1)補助放射線療法 2)緩和的放射線療法 7. 緩和医療・ケア 8. 大腸癌手術後のサーベイランス 1)大腸癌根治度A切除後の再発に関するサーベイランス 2)大腸癌根治度B切除後の再発に関するサーベイランス 3)異時性多重がんのサーベイランス 内視鏡的摘除の適応基準 2014年版 (1)粘膜内癌,粘膜下層への 軽度浸潤癌。 (2)大きさは問わない。* (3)肉眼型は問わない。 2010年版 (1)粘膜内癌,粘膜下層への 軽度浸潤癌。 (2)最大径2cm未満。 (3)肉眼型は問わない。 *合併症(穿孔)の危険性が高いので,現時点では, 径2cmから5cmまでの病変が保険適用になっている。 Stage 0〜Stage III大腸癌の治療方針 手術治療 • 括約筋間直腸切除術(ISR:Intersphincteric resection) • 肛門に近い下部直腸癌に対し、内肛門括約筋を 合併切除することにより肛門側切離端を確保し、 永久人工肛門を回避する術式。 • 手技が高難度であること、根治性および術後排 便機能などの患者QOLに与える影響についての エビデンスが十分でないことから、癌の組織型 や壁深達度などの腫瘍側要因、年齢や括約筋 のトーヌスなどの患者側要因だけでなく、術者の 経験、技量を考慮して慎重に適応を決定する。 Stage 0〜Stage III大腸癌の治療方針 手術治療(直腸局所切除) 摘除生検(excisional biopsy) 直腸局所切除の目的には診断と治療の両面が ある。本法は摘除生検(excisional biopsy)であ り、切除標本の組織学的検索によって、治療の 根治性と追加治療(リンパ節郭清を伴う腸切 除)の必要性を判定する。判定基準は、「CQ-1 内視鏡的摘除後の追加治療の適応基準」に準 ずる。 内視鏡摘除後のSM癌の治療方針 • 浸潤度≧1000μm、por、sig、muc、脈管侵襲 陽性、簇出 Grade2/3 →郭清を伴う腸切除を考慮する。 • 垂直断端陽性 →郭清を伴う腸切除 • それ以外 →経過観察 大腸癌に対する腹腔鏡下手術は有効か? • 海外のランダム化比較試験やコクランレビューにおい て、結腸癌およびRS癌に対する腹腔鏡下手術の安全 性および長期成績が開腹手術と比較して同等である ことが報告されている。 • 適応は癌の部位や進行度などの腫瘍側要因および 肥満、開腹歴などの患者側要因だけでなく、術者の経 験、技量を考慮して決定する。(具体的な適応に関し ては削除)。 • 直腸癌や単孔式腹腔鏡下手術の有効性と安全性は 十分に確立されていない。適正に計画された臨床試 験として実施することが望ましい。 • ロボット手術は保険適応無し。 Stage IV大腸癌の治療方針 肝転移を伴う場合 同時切除と異時切除のどちらが長期予後に 寄与するかは明らかではない。 Stage IV大腸癌の治療方針 遠隔転移巣切除後の補助療法 遠隔転移巣切除後の補助化学療法の有効 性と安全性は確立されておらず、生存期間の 延長を検証したランダム化比較試験はない。 適正に計画された臨床試験として実施するの が望ましい。 再発大腸癌・血行性転移の治療方針 *** ***化学療法の奏効により切除可能となる場合がある 血行性転移の治療方針 〔切除以外の治療法〕 • 熱凝固療法は低侵襲性が利点であり,局所制 御効果および長期生存例が報告されている。た だし,いまだ十分な症例集積によって長期予後 を検討した報告はなく,有効性の評価は定まっ ていない。切除に比べて再発率が高く,長期生 存も不良であるという報告もあるため、外科切除 の代替治療としては推奨されない。 • 本邦においては、体幹部定位放射線治療や密 封小線源治療の有効性を支持するデータは存 在しない。 大腸癌に対する抗がん剤 補助化学療法 • 適応: ①R0切除症例、StageⅢ ②主要臓器機能が保たれている。 ③PS0~1 ④術後回復 ⑤文書によるIC ⑥重篤な合併症なし • 推奨される療法 5FU+LV、UFT+LV、Cape、FOLFOX、CapeOX (IRIや分子標的薬の上乗せ効果なし。) • 術後4~8週頃までに開始し、投与期間は6か月を原則とする。 切除不能進行再発大腸癌に対する化学療法 • 目的は延命と症状コントロール • 治療方針は強力な治療が適応となる患者と適応にならない患者 を分けて行う。 • 化学療法をしない場合はMST約8か月。 • 化学療法をする場合はMST約2年。 • 化学療法が奏功し、切除可能になることがある。 • 四次治療以降を追加。 • Cmab、PmabはKRAS野生型のみ適応。 • bevacizumab の併用は,直近の大手術(通常 1 カ月以内)や動脈 血栓塞栓症の既往例(おおむね 6 カ月以内など)では避ける。 • Regorafenibは三次治療以降に使用。 • 有害事象の評価はCTCAEを用いる。 • 効果判定はRECISTを用いる。 有害事象共通用語規準 v4.0日本語訳JCOG版」 (略称:CTCAE v4.0 - JCOG)の一部 CTCAE v4.0 MedDRA v12.0 Code CTCAE v4.0 SOC 日本語 10002272 血液およびリンパ系 障害 CTCAE v4.0 Term Anemia CTCAE v4.0 Term 日本語 貧血 Grade 1 Grade 2 Grade 3 Grade 4 Grade 5 血液およびリンパ系障害 Blood and lymphatic system disorders ヘモグロビン<LLN- ヘモグロビン<10.0- ヘモグロビン<8.0 生命を脅かす; 緊急 死亡 10.0 g/dL; <LLN- 8.0 g/dL; <6.2-4.9 g/dL; <4.9 mmol/L; 処置を要する 6.2 mmol/L; <LLN- mmol/L; <100-80 <80 g/L; 輸血を要す る 100 g/L g/L CTCAE v4.0 AE Term Definition 日本語 【注釈】 血液100 mL中のヘモグロビン量 の減少。皮膚・粘膜の蒼白、息 切れ、動悸、軽度の収縮期雑音、 嗜眠、易疲労感の貧血徴候を含 む 【JCOGにおける運用】 「日本語訳に関する注」参照 10048580 血液およびリンパ系 障害 Bone marrow hypocellular 骨髄細胞減少 軽度の低形成または 中等度の低形成また 高度の低形成または 2週間を超えて持続す 死亡 年齢相応細胞密度か は年齢相応細胞密度 年齢相応細胞密度か る骨髄無形成 らの≦25%の低下 からの>25-≦50% らの>50-≦75%の の低下 低下 10013442 血液およびリンパ系 障害 Disseminated intravascular coagulation 播種性血管内凝固 - 10016288 血液およびリンパ系 障害 Febrile neutropenia 発熱性好中球減少症 - 検査値異常はあるが 検査値異常および出 生命を脅かす; 緊急 死亡 出血なし 血がある 処置を要する - 3 ANC<1,000/mm で, 生命を脅かす; 緊急 死亡 かつ, 1回でも38.3℃ 処置を要する (101゜F)を超える, ま たは1時間を超えて持 続する38℃以上 (100.4゜F)の発熱 骨髄の造血細胞産生能不全 全身の凝血形成をきたす血液凝 固機序の全身性かつ病的な活 性化。血小板と凝固因子の消耗 による出血リスクの増加 3 ANC <1,000/mm で, かつ, 1 回でも38.3℃(101゜F)を超える, または1時間を超えて持続する 38℃以上(100.4゜F)の発熱 肝転移に対する肝動注療法は有用か? 切除不能肝転移に対して、フッ化ピリミジン 単独による肝動注療法と全身化学療法の比 較では生存期間に明らかな差は認められて いない。また、多剤併用全身化学療法に対す る肝動注療法の有用性は確立していない。 終わり 放射線療法 補助放射線療法 術前(SS/A以深やN+)、術後(前記+RM1/X)、術 中(RM1/X)がある。直腸癌術後の再発抑制、術 前の腫瘍量減量、肛門温存などが目的。 緩和的放射線療法 切除不能進行再発例の症状緩和、延命目的。 6 放射線療法 1)補助放射線療法 ・補助放射線療法の目的は直腸癌の局所制 御率の向上である。術前照射では、さらに肛 門括約筋温存率と切除率の向上が得られる ことが示唆されている。しかし、生存率の改善 に関しては、現時点で補助放射線療法の目的 とするだけのエビデンスは存在しない。 2010年版 1)補助放射線療法 ・補助放射線療法の目的は直腸癌の局所制 御率の向上,生存率の改善であり,術前照射 ではさらに肛門括約筋温存率と切除率の向上 も目的とする。 ・術前照射は「深達度 cSS/cA 以深または cN 陽性」,術後照射は「深達度 pSS/pA 以深また は pN 陽性」,術中照射は外科剥離面陽性 (RM+)または剥離面近傍への癌浸潤 (RM±)を対象とする。 CQ 17: 直腸癌に対する術前化学放射線療法 は有効か? 欧米においては直腸癌に対する術前化学放 射線療法は、TME単独と比較して局所再発率 を低下させるが、生存率の改善には寄与しな いことが報告されている。欧米と術式が異なる 本邦においては、腫瘍下縁が腹膜反転部より 肛門側にある直腸癌に対する術前化学放射 線療法の有用性は確立していない。(推奨度・ エビデンスレベル1B) -------------------------------------------------------------2010年版 CQ 17:直腸癌に対する術前化学放射線療法 の意義 推奨カテゴリー C 欧米では直腸癌に対する術前化学放射線療 法が標準的治療に位置づけられているが,本 邦では有効性と安全性を示すエビデンスが乏 しい。適正に計画された臨床試験として実施 することが望ましい。 CQ 18:切除不能な局所進行・局所再発直腸 癌に対する化学放射線療法は有効か? ①治療の腫瘍縮小効果によってはR0切除可 能になると判断される局所進行・局所再発直 腸癌に対しては、切除を指向した化学放射線 療法が放射線単独療法よりも推奨される。 (推奨度・エビデンスレベル1B) ② 症状緩和を目的とする場合には、化学放 射線療法も考慮される。(推奨度・エビデンス レベル1C) -------------------------------------------------------------2010年版 CQ 18:切除不能な局所進行・局所再発直腸 癌に対する化学放射線療法 推奨カテゴリー C 切除不能と判断される局所進行・局所再発直 腸癌に対しても,R0 切除による治癒を指向し た化学放射線療法の適応を検討する。 7 緩和医療・ケア ・緩和医療・ケアとは,患者のQOLの維持、向 上を目的としたケアの総称である。 コメント 8 大腸癌における緩和医療の生命予後への 寄与度は明らかでないが,緩和ケアの早期導 入により肺癌患者のQOLが向上し、生存期間 が有意に延長したとの報告がある追加2)。 ・緩和医療とは,がんにかかわる精神的,身 体的なさまざまな症状に対する緩和治療の総 称である。 コメント 8 現時点では,緩和医療の生命予後への寄 与度は明らかでないが,ホスピスケアを受け た肺癌と膵癌患者の生存期間がホスピスケア を受けてない患者よりも有意に延長したとの 報告がある182)。 2010年版 改定案 8 大腸癌手術後のサーベイランス 1)大腸癌 根治度A切除後の再発に関するサーベイラン ス (1)pStage 0(pTis(M)癌)は,切除断端や吻合 部の再発を対象とした定期的な内視鏡検査を 考慮する。他臓器の再発を対象としたサーベ イランスは不要である。 1)大腸癌根治度A切除後の再発に関する サーベイランス ・Stage 0(pM 癌)は,切除断端に癌が陰性で あれば,サーベイランスは不要である。ただし, 切除断端の評価が困難な場合は,半年〜1 年後に大腸内視鏡検査を行い,局所再発の 有無を調べる。 2010年版 改定案 8 大腸癌手術後のサーベイランス 2)大腸癌 根治度B切除後および再発巣切除後のサー ベイランス (1)pStage IV症例のR0切除後(根治度B)と再 発巣切除症例のサーベイランスは、Stage IIIの 内容に準ずるが,転移・再発の切除臓器に再 発・再々発が多いことに留意する。 (2) R1切除 のために根治度Bとなった症例は、遺残が疑 われる臓器を標的とした綿密なサーベイラス を計画する。 2)大腸癌根治度B切除後および再発巣切除 後のサーベイランス ・Stage IIIのサーベイランスに準ずるが,転移・ 再発の切除臓器に再発・再々発が多いことに 留意する。 追加 2010年版 改定案 8 大腸癌手術後のサーベイランス コメント ❸ 再発巣検索法 3)胸部 CT,胸部単純 X 線検査 ・胸部 CT を省略して胸部単純 X 線検査を行う 方法もあるが追加1)、単純X線検査は空間分 解能が低く、切除可能な肺転移を見逃す危険 性があることに留意する199)。 (4)腹部 CT,腹部超音波検査 ・腹部 CT を省略して腹部超音波検査を行う方 法もあるが追加1)、超音波検査の診断精度は 検者の技量や検査臓器周囲の腸管の存在に 影響されることより、リンパ節転移の検索も同 時に行うことができるCTが推奨される 192,199,201)。 (3)胸部 CT,胸部単純 X 線検査 ・胸部 CT を省略して胸部単純 X 線検査を行う 方法もある192)。 (4)腹部 CT,腹部超音波検査 ・腹部 CT を省略して腹部超音波検査を行う方 法もある192)。 2010年版 改定案 8 大腸癌手術後のサーベイランス ❻ 異時性 多重がんのサーベイランス ・多重がんを標的 としたサーベイランスの要否に関しては、遺伝 性大腸癌を鑑別することが重要である追加3)。 散発性大腸癌の手術後に他臓器がん(重複 がん)の精査を定期的に行う根拠は乏しい。 (CQ−19(2)) 6 異時性多重がんのサーベイランス ・大腸癌術後に他臓器がん(重複がん)の精 査を定期的に行う必要性を示す知見はない。 (CQ−19) 2010年版 改定案 ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------①大腸癌切除症例における異時性大腸癌の 発生頻度は一般集団より高く、定期的な大腸 内視鏡検査の有効性が示されている(推奨 度・エビデンスレベル1B)。 ②一方、重複がんを標的とした術後サーベイ ランスの有効性は示されていない。がん検診 の必要性を啓蒙啓発し、定期的な検診を勧め るのが妥当である。(推奨度・エビデンスレベ ル2C) ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------19 B 重複がん 推奨カテゴリー B 遺伝性大腸 癌以外の大腸癌の罹患歴は他臓器癌発生の リスク要因として確認されておらず,大腸癌術 後に重複がんを対象とした特別なサーベイラ ンスを組み込むことは不要である。 19 B 大腸癌治癒切除後に多重がん(多発大 腸癌および他臓器がん)のサーベイランスは 有効か? 2010年版 改定案 CQ 2:最大径 2 cm 以上の cM 癌・cSM 癌の内 視鏡的摘除における注意点は何か? 改定 正確な術前内視鏡診断が必須であり,術者の 内視鏡的摘除の技量を考慮して,EMR,計画 的分割 EMR,ESD による摘除の適応を決定す る(推奨度・エビデンスレベル1B↑)。 -------------------------------------------------------------2010年版 CQ 2:最大径 2 cm 以上の cM 癌・cSM 癌の内 視鏡的摘除 推奨カテゴリー B 正確な術前内視鏡診断が必須であり,術者の 内視鏡的摘除の技量を考慮して,EMR,分割 EMR,ESD による摘除の適応を決定する。 改定 内視鏡領域追加CQ: 大腸ESDによる大腸腫瘍の内視鏡摘除の注 意点は何か? ESDの適応は,原則「早期悪性腫瘍」に対して であり,正確な術前内視鏡診断と術者の内視 鏡的摘除の技量を考慮して決定する。(推奨 度・エビデンスレベル1B) CQ 7:肝転移と肺転移の双方を同時に有する症例に対する切除の適応 は何か? 肝転移と肺転移の双方を同時に有する症例に対する切除の有効性が示 されており, 切除可能な肝肺転移に対しては切除を考慮する。 しかし,手術適応基準を決するに足るデータはないこと、治癒率は高くな いこと,切除の予後予測因子(predictive factor)は不明であることなどに 関する十分なインフォームド・コンセントを得る必要がある。(推奨度・エビ デンスレベル2D) --------------------------------------------------------------------------------------------------2010年版 CQ 7:肝・肺転移を有する症例に対する切除 推奨カテゴリー C 同時期に肝・肺転移を有する症例に対する切除の有効性が示されており, 切除可能な肝・肺転移に対しては切除を考慮すべきである。 しかし,手術適応基準を決するに足るデータはない。治癒率は高くないこ と,切除の予後予測因子(predictive factor)は不明であることなどに関す る十分なインフォームド・コンセントを得る必要がある。 ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------①熱凝固療法の有効性を示す報告は少なく 第一選択治療としては推奨されない(推奨度・ エビデンスレベル1C). ②肝転移に対する熱凝固療法は局所再発の リスクが高いため切除可能であれば, まず切 除を考慮すべきである. ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------外科領域追加CQ 2: 肝転移に対する熱凝固療法は有効か? 改定案 ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------大腸癌遠隔転移巣切除後の補助化学療法の 有効性と安全性は確立されていない。適正に 計画された臨床試験として実施するのが望ま しい(エビデンスレベルC)。 ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------CQ 8:肝転移根治切除後の補助化学療法 推奨カテゴリー B 肝切除後の補助化学療法の有効性は確立さ れていない。臨床試験として検証していくこと が望ましい。 外科領域追加CQ 1: 遠隔転移巣切除後の補助化学療法は有効 か? 改定案 2010年版 ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------切除可能な肝転移に対する術前化学療法の 有効性と安全性は確立されていない。適正に 計画された臨床試験として実施するのが望ま しい。(エビデンスレベルD) ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------CQ 9:切除可能肝転移に対する術前化学療 法 推奨カテゴリー B 切除可能肝転移に対する術前化学療法の安 全性は確立されていない。適正に計画された 臨床試験として実施すべきである。 CQ-9:切除可能な肝転移に対する術前補助化 学療法は有効か? 2010年版 改定案 CQ 11:70 歳以上の高齢者に術後補助化学療 法は有用か? 70 歳以上の高齢者にも,PS が良好で主要臓 器機能が保たれており,化学療法に対してリ スクとなるような基礎疾患や併存症がなけれ ば,術後補助化学療法を行うことが推奨され る。(推奨度・エビデンスレベル1A) -------------------------------------------------------------2010年版 CQ 11:術後補助化学療法と年齢 推奨カテゴリー A 70 歳以上の高齢者でも,PS が良好で主要臓 器機能が保たれており,化学療法に対してリ スクとなるような合併症がなければ,術後補 助化学療法を行うことが可能である。 CQ 12:Stage II大腸癌に術後補助化学療法は 施行すべきか? Stage II大腸癌に対する術後補助化学療法の 有用性は確立しておらず,すべての Stage II大 腸癌に対して一律に補助化学療法を行わな いよう勧められる。(推奨度・エビデンスレベル 1A) -------------------------------------------------------------2010年版 CQ 12: Stage II大腸癌に対する術後補助化学 療法 推奨カテゴリー A Stage II大腸癌に対する術後補助化学療法の 有用性は確立しておらず,すべての Stage II大 腸癌に対して一律に補助化学療法を適応す ることは妥当ではない。 ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------術後補助化学療法の治療期間については確 定的な結論は得られていないが,現在のとこ ろ6 カ月投与が標準的であり、適切である。 (推奨度・エビデンスレベル1A) ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------CQ 13:術後補助化学療法の治療期間 推奨カ テゴリー A 術後補助化学療法の治療期間に ついては確定的な結論は得られていないが, 現在のところ5-FUベースの補助化学療法は, 6 カ月投与が標準的である。 CQ 13:術後補助化学療法の治療期間は6ヵ月 が適切か? 改定案 2010年版 1 Stage 0〜Stage III大腸癌の治療方針 2)手術治療 〔切離腸管長〕 1 D1, D2, D3郭清では、「大腸癌取扱い規約」に定める腸管傍リンパ節が郭 清されるよう、切離腸管長を決定する。 2 結腸癌における腸管傍リンパ節の範囲は、腫瘍と支配動脈の位置関係 から決定する。腫瘍辺縁から10cm以上離れた腸管傍リンパ節の転移は稀 である。 3 直腸癌における腸管傍リンパ節の範囲は、口側は最下S状結腸動脈流 入点、肛門側はRS癌およびRa癌では腫瘍辺縁から3cm、Rb癌では2cmま での範囲である。RS 癌および Ra 癌で 3 cm 以上,Rb 癌で 2 cm 以上の直 腸間膜内肛門側進展は稀である。 2010年版 1 結腸癌での腸管切離長は腫瘍と支配動脈の関係を考慮して決定する。 腫瘍から 10 cm 以上離れた壁在リンパ節および腸管傍リンパ節の転移は 稀であり,このような症例の予後は不良であることを考慮すると,10 cm 以 上の腸管切除長が必要なことは多くない。 2 RS 癌および Ra 癌では 3 cm 以上,Rb 癌では 2 cm 以上の直腸間膜内肛 門側進展は稀である19)。肛門側直腸間膜の切離長は RS 癌と Ra 癌では 3 cm,Rb 癌では 2 cm を目安とする。 1 Stage 0〜Stage III大腸癌の治療方針 2)手術治療 〔直腸局所切除〕 ・経肛門的切除には,直視下に切除・縫合する方法と経肛 門的内視鏡下切除術がある。直視下に切除・縫合する方法 には、用手的に切除・縫合する従来法と、自動縫合器を用 いる方法追加がある。 ・直腸局所切除の目的には診断と治療の両面がある。本法 は摘除生検(excisional biopsy)であり、切除標本の組織学 的検索によって、治療の根治性と追加治療(リンパ節郭清を 伴う腸切除)の必要性を判定する。判定基準は、「CQ-1 内 視鏡的摘除後の追加治療の適応基準」に準ずる。 2010年版 〔直腸局所切除〕 ・直腸局所切除のアプローチ法は経肛門的切除,経括約筋 的切除,傍仙骨的切除に分類され,経肛門的切除には,直 視化に腫瘍を切除する従来法と経肛門的内視鏡下切除術 (TEM:transanal endoscopic microsurgery)がある。 ・TEM では,従来法より口側の病変も切除することが可能で ある。 CQ 4:大腸癌に対する腹腔鏡下手術は有効か? 海外のランダム化比較試験やコクランレビューにおいて、結腸癌およびRS癌に対する腹 腔鏡下手術の安全性および長期成績が開腹手術と比較して同等であることが報告され ている。しかしながら、腹腔鏡下のD3郭清は難度が高いので,cStage II〜cStage IIIに対 しては個々の手術チームの習熟度を十分に考慮して適応を決定する。また,横行結腸 癌,高度肥満例,高度癒着例も高難度であることに留意する。結腸癌および RS 癌に対 する D2 以下の腸切除,すなわちcStage 0〜cStage Iがよい適応である。 直腸癌に対する腹腔鏡下手術の有効性と安全性は十分に確立されていない。適正に 計画された臨床試験として実施することが望ましい。 (推奨度・エビデンスレベル1B) ----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------2010年版 CQ 3:大腸癌に対する腹腔鏡下手術 推奨カテゴリー B 腹腔鏡下手術には,開腹手術とは異なる手術技術の習得と局所解剖の理解が不可欠 であり,手術チームの習熟度に応じた適応基準を個々に決定すべきである。 腹腔鏡下手術は,結腸癌および RS 癌に対する D2 以下の腸切除に適しており,cStage 0〜cStage Iがよい適応である。D3 を伴う腹腔鏡下結腸切除術は難度が高いので, cStage II〜cStage IIIに対しては習熟度を十分に考慮して適応を決定すべきである。また, 横行結腸癌,高度肥満例,高度癒着例も高難度である。直腸癌に対する腹腔鏡下手術 の有効性と安全性は十分に確立されていない。 3 再発大腸癌の治療方針 〔再発大腸癌の治療方針〕 •再発臓器が 2 臓器以上の場合,それぞれが切除可能であ れば切除を考慮してもよいが,治療効果について統一見解 は得られていない(新CQ7)。 •切除不能と判断された肝転移に対して全身化学療法が奏 効して根治切除が可能になる症例が存在する(CQ10)。 2010年版 再発臓器が 2 臓器以上の場合,それぞれが切除可能であ れば切除を考慮してもよいが24,27,28),治療効果について は統一見解は得られていない。 CQ-10:化学療法が奏効して切除可能となった 肝・肺転移に対する切除は有効か? 肝または肺に限局した転移例で化学療法が 奏効して切除可能となった場合には切除を考 慮すべきである。(推奨度・エビデンスレベル2 D) ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------2010年版 CQ 10:切除不能肝転移に対する化学療法 推奨カテゴリー B 化学療法が奏効して切除可能となった肝転移 には肝切除を考慮すべきである。 切除不能肝転移に対する肝動注療法と全身 化学療法の生存期間の延長効果には明らか な差は認められていない。 4 血行性転移の治療方針 〔肝切除〕 転移巣の数,大きさ, 部位および予測残肝容 量を総合的に評価し,転移巣の完全切除が 可能か否かを判定する。 410mm未満の病変に対する感度は、CTより MRIが有意に高いことが報告されている FDG-PETの肝転移診断と治療に対する有効性 は確立されていない。 同時性肝転移では,原 発巣の切除を先行し,原発巣の根治性を評 価してから肝転移を切除してもよい。 同時性 肝転移の切除時期については、明確な結論 は得られていない。 2010年版 〔肝切除〕 3 転移巣の数,大きさおよび部位を評価し,転 移巣の完全切除が可能か否かを判定する。 5 同時性肝転移では,原発巣の切除を先行し, 原発巣の根治性を評価してから肝転移を切除 してもよい。 術後4~8週頃までに開始し、投与期間は6か月を原則とする。 化学療法 1)補助化学療法:レジメン・期間 推奨される療法(日本における保険適応収載 順) ・5-FU+LV ・UFT+LV ・Cape ・FOLFOX ・CapeOX 推奨される投与期間(CQ13) ・投与期間 6 カ月を 原則とする 2010年版 推奨される療法(日本における保険適応収載順) ・5-FU+LV 療法 ・UFT+LV 療法 ・Capecitabine療法 ・FOLFOX4療法またはmFOLFOX6療法(CQ-14) 推奨される投与期間(CQ13) ・投与期間 6 カ月を原則とする 補助化学療法:レジメン・期間 2014年版 • 5-FU+LV • UFT+LV • Cape • FOLFOX • CapeOX • 投与期間 6 カ月を原則とす る 2010年版 • • • • 5-FU+LV 療法 UFT+LV 療法 Capecitabine療法 FOLFOX4療法または mFOLFOX6療法 • 投与期間 6 カ月を原則とす る Stage 0〜Stage III大腸癌の治療方針 2)手術治療 〔括約筋間直腸切除術〕 ・括約筋間直腸切除術(ISR:Intersphincteric resection)は、肛 門に近い下部直腸癌に対し、内肛門括約筋を合併切除するこ とにより肛門側切離端を確保し、永久人工肛門を回避する術式 である。手技が高難度であること、根治性および術後排便機能 などの患者QOLに与える影響についてのエビデンスが十分でな いことから、癌の組織型や壁深達度などの腫瘍側要因、年齢 や括約筋のトーヌスなどの患者側要因だけでなく、術者の経験、 技量を考慮して慎重に適応を決定する。 Stage IV大腸癌の治療方針 肝転移を伴う場合 ・切除のタイミングについては、原発巣と肝転移巣との同時切除も安全 に行われるが,肝切除の難度や患者の全身状態等により,異時切除も 行われる。しかし、同時切除と異時切除のどちらが長期予後に寄与す るかは明らかではない。 遠隔転移巣切除後の補助療法 ・大腸癌遠隔転移巣切除後の補助化学療法の有効性と安全性は確立 されておらず、生存期間の延長を検証したランダム化比較試験はない。 適正に計画された臨床試験として実施するのが望ましい。 2010年版 肝転移を伴う場合 ・原発巣と肝転移巣との同時切除も安全に行われるが,肝切除の難度 や患者の全身状態等により,異時切除も行われる。 遠隔転移巣切除後の補助療法 ・再発高危険群であり,化学療法が一般的に行われているが,その治 療効果は確認されておらず,臨床試験で検討中である。 CQ 5:切除不能な遠隔転移を有する症例に原発巣切除は有用か? 切除不能な遠隔転移を有する症例に対する原発巣切除の有用性は、原 発巣による症状、遠隔転移の状態、全身状態等、個々の状況によって 異なる。 ①他の療法では制御困難な原発巣による症状があり、過大侵襲となら ない切除であれば、原発巣を切除して早期に全身化学療法を行うことが 推奨される。(推奨度・エビデンスレベル1C) ②ただし、原発巣による症状がない場合の原発巣切除の有用性は確立 されていない。 -------------------------------------------------------------------------------------------------2010年版 CQ 4:切除不能な遠隔転移例における原発巣切除 推奨カテゴリー B 原発巣切除の適否は,原発巣による症状,遠隔転移の状態,全身状態 等,個々の状況に応じて決定すべきである。他の療法では制御困難な 原発巣による症状があり,耐術能に問題がなく,過大侵襲とならない切 除であれば,原発巣切除が望ましい場合が多い。 5 化学療法 1)補助化学療法① 1 術後補助化学療法は,術後9週以降の開始では治療効果が減弱す るとの報告があるため、 4〜8 週頃までに開始することが望ましい。 2 補助化学療法期間中は,切除不能な進行再発大腸癌に対する全身 化学療法と同様の有害事象が起こり得る。少なくとも コース毎に,自 他覚症状の観察,臨床検査値の確認が必要である。 3 削除 2010年版 1 術後補助化学療法は, 4〜8 週頃までに開始することが望ましい。 2 補助化学療法期間中は,切除不能な進行再発大腸癌に対する全身 化学療法と同様の有害事象が起こり得る。少なくとも 2週ないし4週毎 に,自他覚症状の観察,臨床検査値の確認が必要である。 3 5-FU+LV 療法には,RPMI(Roswell Park Memorial Institute)法, Mayo 法,de Gramont 法,AIO 法などがある。わが国では RPMI の週 1 回投与法が保険の承認用法であった経緯から,現在までに汎用さ れてきたが,投与法による有効性の差はないと考えられている。なお, Mayo 法は日本の保険では未承認の用法である。 5 化学療法 1)補助化学療法② 4 Stage III結腸癌に対する術後補助化学療法として,静注 5-FU+LV に OXを併用した場合(FOLFOX,FLOXおよびCapeOX)の再発抑制および生存 期間に対する上乗せ効果が欧米の ランダム化比較試験で示されている。 ただしFLOXはGrade 3/4の下痢が38%と高頻度にみられたことから実地 診療での使用は推奨されない。日本の大腸癌の手術成績は概して海外 よりも良好であり、大腸癌全国集計(2003 -2004年度症例)ではpStage IIIa/IIIb結腸癌の5年生存割合はそれぞれ77.3%、68.1%、pStage IIIa/IIIb 直腸癌の5年生存割合は76.0%, 58.8%である。したがって海外臨床試験 成績をもとに、各患者の術後補助化学療法を決定する際には、期待され る生存期間の上乗せのみならず、OX併用による蓄積性末梢神経障害な どの有害事象、および医療コストについての十分なインフォームド・コンセ ントのもとに判断する必要がある。(*CQ-14は削除) 2010年版 6 Stage III結腸癌に対する術後補助化学療法として,静注 5-FU+LV 療法 に L-OHP を併用した場合(FOLFOX4 療法,FLOX 療法)の再発抑制および 生存期間に対する上乗せ効果が欧米の RCTで示されている。国内でも 2009 年 8 月に上記適応内容で承認され使用可能となった。しかし,経口 抗がん剤と L-OHP との併用は,欧米での有用性の報告はあるものの,国 内では 2010 年 7 月現在,未承認である。(CQ−14) 5 化学療法 1)補助化学療法③ 5 術後補助化学療法として,静注 5-FU+LV に IRI を併用した場合(IFL, FOLFIRI)の再発抑制 および生存期間に対する上乗せ効果は示さ れていない。術後補助化学療法としての分子 標的治療薬の上乗せ効果は,NSABP C08 試 験(FOLFOX±Bmab), AVANT試験 (FOLFOX±Bmab, CapeOX±Bmab)および N0147 試験(FOLFOX±Cmab), PETACC-8試験 (FOLFOX±Cmab)において示されなかった。 2010年版 術後補助化学療法として,静注 5-FU+LV 療 法に CPT-11 を併用した場合(IFL 療法, FOLFIRI 療法)の再発抑制および生存期間に 対する上乗せ効果は示されていない。 7 術後 補助化学療法としての分子標的治療薬の有 用性は,NSABP C08 試験 (FOLFOX±bevacizumab)および N0147 試験 (FOLFOX±cetuximab)において示されなかっ た。 5 化学療法 1)補助化学療法④ 6 Stage III直腸癌に対する術後補助化学療法 として,UFT 投与群は手術単独群よりも有意 に再発抑制効果および生存期間延長効果が 高いことが国内のランダム化比較試験で示さ れている。これら国内RCTはいずれもLVが国内 未承認時におこなわれた。LV が承認されてい る現状では、UFT+LV など上記「推奨される療 法」に記されたレジメンを使用することが望ま しい。 2010年版 8 Stage III直腸癌に対する術後補助化学療法 として,UFT 投与群は手術単独群よりも有意 に再発抑制効果および生存期間延長効果が 高いことが国内の RCTで示されている。 5 化学療法 2)切除不能進行再発大腸癌 •強力な治療が適応となる患者と強力な治療 が適応とならない患者に分けて治療方針を選 択するのが望ましい。 •強力な治療が適応とならない患者とは,患者 因子と腫瘍の状態との両面から定義される。 すなわち、患者因子として,重篤な有害事象 の発生を好まない,または重篤な併存疾患が あり一次治療の OX,IRIや分子標的薬の併用 療法に耐容性がないと判断される、腫瘍の状 態としては、現在切除不能な多臓器(または 多発)転移があり将来的にも切除可能となる 可能性が乏しい、無症状かつ緩徐な腫瘍進 行と判断される(急速な悪化の危険性が少な い)患者などである。 •Cmab, PmabはKRAS野生型のみに適応され る。 (1)強力な治療が適応となる患者 • FOLFOX + Bmab •CapeOX + Bmab •FOLFOX •CapeOX •FOLFIRI + Bmab •FOLFIRI •FOLFOX + Cmab / Pmab •FOLFIRI + Cmab / Pmab •FOLFOXIRI 5 化学療法 2)切除不能進行再発大腸癌: 一次治療 •Infusional 5-FU + LV + Bmab •Cape+ Bmab •Infusional 5-FU + LV •Cape •UFT + LV (2)強力な治療が適応とならない患者 ・ Infusional 5-FU + LV+ Bmab ・Cape+Bmab ・ Infusional 5-FU + LV ・Cape ・UFT + LV 5 化学療法 2)切除不能進行再発大腸癌:二次治療 (1)強力な治療が適応となる患者 (a)OXを含むレジメンに不応・不耐となった場合 •FOLFIRI + Bmab •FOLFIRI •IRIS •IRI •FOLFIRI(またはIRI) + Cmab / Pmab (b)IRIを含むレジメンに不応・不耐となった場合 •FOLFOX + Bmab •CapeOX + Bmab •FOLFOX •CapeOX (c)5-FU,OX,IRI を含むレジメンに不応・不耐となった場合 •IRI + Cmab / Pmab •Cmab / Pmab •Regorafenib (2)強力な治療が適応とならない患者 •BSC •可能なら,最適と判断されるレジメンを考慮 5 化学療法 2)切除不能進行再発大腸癌: 三次治療以降 三次治療以降の化学療法として以下のレジメ ンを考慮する。 •IRI + Cmab / Pmab •Cmab / Pmab •Regorafenib 5 化学療法 2)切除不能進行再発大腸癌 5 強力な治療が適応となる患者であっても,緩徐な腫瘍進行と判断され る症例または重篤な有害事象の発生を好まない患者などに対しては, Infusional 5-FU+LV , Cape, UFT+LV , Infusional 5-FU+LV+Bmab, Cape +Bmabなども選択肢となり得る。 6 強力な治療が適応とならない患者には,Infusional 5-FU+LV , Cape, UFT+LV , Infusional 5-FU+LV+Bmab , Cape+Bmabなどを考慮する。 強力な治療が適応とならない患者への二次治療以降の治療は,可能 なら,最適と判断されるレジメンを考慮する。 5 一次治療の L-OHP または CPT-11 併用療法に耐容性(tolerability)が ないと判断される症例に対しては,UFT+LV 療法,5-FU+LV 療法(RPMI 法,de Gramont 法,sLV5FU2 法)を考慮する。bevacizumab 投与可能と 判断される場合は,5-FU+LV+bevacizumab 療法も考慮する。 6 bevacizumab の併用は,直近の大手術(通常 1 カ月以内)や動脈血栓 塞栓症の既往例(おおむね 6 カ月以内など)では避けるべきである。 5 化学療法 2)切除不能進行再発大腸癌 7 一次治療における FOLFOXIRI の国内での使用経験は少なく,安全性に 十分配慮する必要がある 。 8 一次・二次・三次治療におけるBmab, Cmab およびPmabの使い分けの 明確なコンセンサスは得られていない。また,分子標的治療薬(Bmabと Cmab または BmabとPmab)の同時併用は, 一次治療例を対象とした2つ のランダム化比較試験から毒性増強と効果減弱が示されており, 同時 併用は行うべきでない。 7 一次治療における cetuximab または panitumumab の国内での使用経 験は少なく,安全性に十分配慮する必要がある。 8 bevacizumab, cetuximab および panitumumab の有効性や安全性を直 接比較した結果は報告されておらず,使い分けの明確なコンセンサスは 得られていない。 9 分子標的治療薬(bevacizumab, cetuximab および panitumumab)の同 時併用は, 一次治療例を対象とした 2 つの第III相試験から毒性増強と 効果減弱が示されており, 同時併用は行うべきでない。 5 化学療法 2)切除不能進行再発大腸癌 Regorafenibの有効性と安全性は,CORRECT 試験に基づいて評価されたもので,添付文書 にも記載されているように,一次治療および二 次治療※における有効性と安全性は確立して いない。また,PS 0またはPS 1のみで確認され, PS 2からPS 4の患者に対する有効性と安全性 は評価されていないことに留意する必要があ る。 ※CORRECT試験は,切除不能進行再発大 腸癌を対象として標準的な化学療法後(フッ 化ピリミジン剤, OX, IRI, Bmab, Cmab/ Pmab (KRAS 遺伝子野生型のみ)の病勢進行に対 するregorafenib単剤投与の有効性と安全性を BSCと比較検討した国際共同第III相臨床試験 である 。 5 化学療法 2)切除不能進行再発大腸癌 下記の10については、前版から十分に周知さ れたと判断し、削除する。 10 KRAS遺伝子変異の検査(PCR法, RFLP法, SSCP法, ダイレクトシークエンス法, 等)が保険 承認されている。 2010年版 CQ 15-1:二次治療におけるbevacizumabの投 与は有効か? 一次治療におけるbevacizumab投与の有無に 関わらず、二次治療としてbevacizumab併用 化学療法を行うことは有効である。(推奨度・ エビデンスレベル2B) -------------------------------------------------------------2010年版 CQ 15:二次治療における分子標的治療薬 推奨カテゴリー B 一次治療にbevacizumab投与がされていない 場合の二次治療においては、投与可能な症 例に対してはbevacizumabの適正使用に準拠 した投与を行うことが望ましい。この場合の至 適投与量(5mg/kgまたは10mg/kg)について の明確なエビデンスはない。 CQ15-2:二次治療における分子標的治療薬(抗EGFR抗体薬)の投与は 有効か? KRAS野生型において、二次治療としての抗EGFR抗体薬 (cetuximab/panitumumab)を用いた治療を行うことは有効である。(推奨 度・エビデンスレベル2B) -------------------------------------------------------------------------------------------------2010年版 CQ 15:二次治療における分子標的治療薬 推奨カテゴリー B 一次治療にbevacizumab投与がされていない場合のに時治療において は、投与可能な症例に対してはbevacizumabの適正使用に準拠した投 与を行うことが望ましい。この場合の至適投与量(5mg/kgまたは 10mg/kg)についての明確なエビデンスはない 化学療法追加CQ:肝転移に対する肝動注療 法は有用か? 切除不能肝転移に対して、フッ化ピリミジン単 独による肝動注療法と全身化学療法の比較 では生存期間に明らかな差は認められていな い。また、多剤併用全身化学療法に対する肝 動注療法の有用性は確立していない。(推奨 度・エビデンスレベル1C)