Transcript 休眠型細菌
「休眠型細菌」という名の 敵 ENEMIES CALLED “DORMANTERS” 抗生物質 …病原菌を殺す薬である。 多くの人々が、 これによって病気から救われてきた。 フレミングによるペニシリンの発見、 ワクスマンのストレプトマイシンの発見。 これらの功績により、人類は 病原菌に勝利したかのように思われた。 しかし 医者「抗生物質さえあれば 医者「くらえ!ゲンタマイシン!!!」 医者「休眠状態!?」c わたしにかなう敵などおらぬわ!!」 大腸菌X「仕方ない・・・ 大腸菌A「うわああ」 黄色ブドウ球菌A「や・・・やられた。」 休眠状態になるしかないな」 休眠状態 Dormancy state 休眠することで 抗生物質を取り込まなくなった状態。 抗生物質に高い耐性を示すようになり 「永続伝播状態」とも呼ばれる。 休眠型細菌に対する治療法は 未だ確立していない。 まさに、休眠型細菌とは A Sleeping Tiger 眠れる獅子 である。 c 医者「ゲ・・・ゲンタマイシンが効かないわ…」 ???「それはどうかな・・・」 黄色ブドウ球菌S「人間なぞ 大腸菌X「ふははは。 黄色ブドウ球菌S「誰だ貴様っ!?」 どうやら我々の勝ちのようだな。」 我々の敵ではないわ!」 James J.Collins ボストン大学の生物工学の教授 「合成生物学」という分野を開拓したうちの一人 システム生物学において先進的な研究を行っている ジェームス「できるのさ! c 代謝物質を使えばな!」 大腸菌X「患者の体を傷つけずして 大腸菌X「ふっ・・・誰が来ようと同じことだ。」 大腸菌X「何ィ!?」 我々“休眠型細菌”を倒すことなど…」 ジェームス「おっとこんなもので ジェームス「・・・仕方ない。 c ジェームス「どうやら効いてきたようだな。」 ジェームス「お前は自分を知らなさすぎる。」 安心してもらっちゃあ困るぜ。」 冥土の土産に教えてやろう。」 黄色ブドウ球菌S「マニトール? 大腸菌X「そんな体内にありふれた物質で 大腸菌X「き・・休眠状態なのにゲンタマイシンが 大腸菌X「ゲンタマイシン!? 黄色ブドウ球菌S「ぐわああっ」 大腸菌X「なぜ・・・なぜこのわたしが・・・」 どうしようっていうんだ?」 冗談のつもりか?」 体の中に入ってきやがる・・・!」 ふざけるのもいい加減に・・・」 2011年5月、J.CollinsはNature誌に ある論文を発表した。 その内容は 未だに根絶する方法が 見つかっていない “休眠型細菌”の大部分を 抗生物質とともに 身近な物質を用いることで 殺すことができた というものである。 論文の内容 ゲンタマイシンを含む、 結核菌や大腸菌、黄色ブドウ球菌などを殺す効果のある アミノグリコシド系抗生物質。 ←大腸菌の一種 O-157 抗生物質だけを 休眠状態の大腸菌や黄色ブドウ球菌に与えても 殺せるのはせいぜい1%ぐらいである 論文の内容 大幅に細菌の量が減ったのである。 マウスを使った実験では ゲンタマイシンとマニトールを用いて 休眠型の大腸菌を約5%にまで減らすことができた。 しかし、代謝物質とともに抗生物質を与えると・・・ 詳しく調べた結果 ある特定の代謝物質が病原菌の周りに存在すると 病原菌による アミノグリコシド系抗生物質の吸収が 促進されることが分かった。 なんとおおきな一歩なんだチュー ジェームス「人類への愛があれば、 c これくらいたやすいことだ!!」 大腸菌X「・・・お前の努力、 大腸菌X「じゃあな。あの世でまた会おうぜ…」 敵ながらあっぱれだ・・・」 こうして世界に 平和が訪れた・・・ ? ジェームス「否!」 たしかに大部分の“休眠型細菌”を殺すことはできたが、 まだ根絶には至っていない。 おい!ジェームス! まだ生きてるぞ! 無視すんな!! また休眠型細菌だけが根絶できないわけではない まだ世界には たくさんの種類の倒すべき敵がいるのだ!! 「まだ戦いは始まったばかりなのさ・・・」 完 作:佐々木 慎平