5 伝送線路 - 計算問題で制す!電気通信技術の基礎

Download Report

Transcript 5 伝送線路 - 計算問題で制す!電気通信技術の基礎

第5章 伝送理論と伝送技術
5.1 電気通信設備の概要
5.2 アナログ伝送方式
5.3 ディジタル伝送方式
5.4 データ伝送方式
5.5 伝送線路
5.6 漏話・雑音など
5.5 伝送線路
5.5.1
5.5.2
5.5.3
伝送路特性
光ファイバケーブル
メタリックケーブル
5.5.1 伝送路特性
(1)基本方程式
ヘビサイドの電信方程式(lineman’s equation)によって,
伝送線路(electrical transmission line)を
分布定数回路(distributed constant circuit)として取り扱う
回路定数が回路全体に一様に分布しているものと考え,
一様な伝送線路の微小部分を取り扱う.
L
G
R
L
L
G
R
L
L
直接Maxwell方程式を解くよりも計算が非常に簡単になる
一次定数
回路定数R,L,C,Gを一次定数という.
① 抵抗
R [Ω] オーム
② 静電容量
C [F] ファラド
③ 自己誘導
L [H] ヘンリー
④ 漏洩コンダクタンス G [S] ジーメンス
L
G
R
L
L
G
(ohm)
(farad)
(henry)
(siemens)
R
L
L
回路の一次定数をR(Ω/m),L(H/m),C(F/m),G(S/m)とすると,
回路の直列インピーダンスおよび並列アドミタンスは,次のとおりである.
Z  R  jL  m
Y  G  jC S m
基本方程式の導入
dx
x
Ix
Vx
電源側
Ix + dx
Vx + dx
負荷側
微小区間 dx [m]の電圧降下 dV, 電流減少 dI はを計算して微分してみる。
dV  ZIdx
dI  YVdx
  ZY
2
,すなわち
  ZY と置く
dV
 ZI
dx
dI
 VY
dx
さらに微分して
d 2V
dI

Z
dx2
dx
d 2I
dV
Y
2
dx
dx
d 2V
dI
2

Z

ZYV


V
2
dx
dx
d 2I
dV
2

Y

ZYI


I
2
dx
dx
微分方程式を解くと
微分方程式を解くと(解き方については数学等の参考書を参照)
d 2V
2


V
2
dx
これを微分し,かつ
V  Ae x  Be x
dV dx  ZI
の形になる。
であるから


dV
  Ae x   Be x   Ae x Be x  ZI
dx

ZY
Y
 x
x
 x
x


I   Ae Be  
Ae Be  
Ae x Be x 
Z
Z
Z
整理すると,分布定数回路の基本方程式が得られる。
ここで,

1
Ae x Be x
Z0
  ZY , Z0  Z Y である。
V  Ae x  Be x , I  

基本方程式の意味
分布定数回路の基本方程式

1
V  Ae  Be , I  
Ae x Be x
Z0
ここで,   ZY , Z0  Z Y
 x
e x の項
e x の項
x

: X軸の正方向に伝播する波。すなわち入射波(incident wave)
: X軸の負方向に伝播する波。すなわち反射波(reflected wave)
無限長線路(1)
分布定数回路の基本方程式
ここで,

1
Ae x Be x
Z0
  ZY , Z0  Z Y
V  Ae x  Be x , I  
x 
とすると
V  0, I  0

でなければならないから
Vx  Ae  Be  Be  0,
1
B 


I x  Ae  Be    e  0
Z0
Z0
これらが成立するためには, B  0 すなわち,
 x
V  Ae
1
, I
Ae x
Z0
無限長線路(2)
分布定数回路の基本方程式
ここで,

1
Ae x Be x
Z0
  ZY , Z0  Z Y
V  Ae x  Be x , I  
電源側電圧では, V0
 Vx0
V  V0e
 x
であるから, V0

 Ae0  A となるので,
1
, I  V0e x
Z0
特性インピーダンス
任意点の電圧と電流を求めることができるので
任意点のインピーダンスも求めることができる。
Vx
V0e x
R  jL
Zx  
 Z0 
1
Ix
G  jC
V0e x
Z0
無限長線路におけるすべての点でインピーダンスが一定
Z0
: 特性インピーダンス(characteristic impedance)
または,波動インピーダンス(surge impedance)という。
高周波線路では R  
L, G   C
L
Z0 
C
とすることができる。
とみなすことができるから
(2)二次定数
が複素数であるため, 
そこで,     j と置いて V
Z, Y
ZY も一般的には複素数である。
 V0e x に代入すると
V  V0e(  j ) x  V0e x  e j  x  V0e x cos x  j sin x
電源電圧が正弦波
V0  v0 sin  t  j cos t  で表されるものとすると
V  v0e x (cos  x  j sin  x)sin t  j cost 
 v0e x sin t  cos  x  cost  sin  x  jcost  cos  x  sin t  sin  x
 v0e x sin t   x  j cost   x
同様に電流についても
I  i0e x sint   x  j cost   x
式の意味
得られた式
V  v0e x sint   x  j cost   x
I  i0e x sint   x  j cost   x
電流,電圧共に



e x
x 分の位相遅れが生じる。
に比例して減衰し,
: 減衰定数(attenuation constant)
: 位相定数(phase constant)
: 伝播定数(propagation constant)
これらを二次定数(secondary constant)という
一次定数と二次定数の関係 ①
  ZY ,     j
から
 2  ZY  (R  jL)(G  iC)  RG   2 LC jLG  RC
 2    j 2   2   2  j2
両者を比較して
 2   2  RG   2 LC
(1)
一方,
  (R  jL)(G  jC)  R  jL  G  jC

すなわち
R2   2 L2  G 2   2C 2
  R2   2 L2  G2   2C 2
2

R
2

  2 L2 G2   2C 2

(2)
一次定数と二次定数の関係 ②

   
2
一方,
2
 
2
R
   
2
2
2
2
2
2

 L G  C
2 2
2
2
2

(3)
(2)+(3)により,
 R   L G   C   RG   LC
1


 
R   L G   C   RG   LC
2
1
 
2
2
2
2 2
2
2
2 2
2
2
2
2
2
2
2
(4)
(2)-(3)により,
 R   L G   C   RG   LC
1


 
R   L G   C   RG   LC
2
2 
1
2
2
2 2
2
2 2
2
2
2
2
2
2
2
2
(5)
一次定数と二次定数の関係 ③
まとめると
 R   L G   C   RG  LC
 R   L G  C   RG  LC
1

2
1

2
2
2 2
2
2
2
2
2
2 2
2
2
2
2
これでは使いづらいので,低周波のとき

1
2
 R  C 
2
高周波の場合,
2
2
RC
1
, 
2
2
R  L, G  C

の式を用いる。
G  C, L  R とみなし
 R  C 
2
として
R C G L

,    LC
2 L 2 C
2
2
RC
2
高周波の場合,次のように考えることができる。
[補足1]
R2 ( 2 L2 )  0, G2 ( 2C 2 )  0, RG ( 2 LC)  0
 2 LC

2
 1 R
2
 L 1 G  C   1 RG  LC
2 2
2
2
2

2

 2 LC

1  R2  2 L2  G2  2C 2   1  RG  2 LC
2
 2 LC  1 2 2 2

2
2 2
2











1

R

L

G

C

1

RG

LC


2  2

 2 LC  1 2 2 2

2
2 2
2









R

L

G

C

RG

LC


2 2

1
 LCR2 L2  G 2 C 2  2RG LC
2
2
1
LC  R G  R C G L
R G
 LC   

  
2
2 L C 2 L 2 C
L C
同様に
[補足2]
R2 ( 2 L2 )  0, G2 ( 2C 2 )  0, RG ( 2 LC)  0
 2 LC

2
 1 R
2
 L 1 G  C   1 RG  LC

2 2
2
2
2
2

 2 LC

1  R2  2 L2  G2  2C 2   1  RG  2 LC
2
 2 LC  1 2 2 2

2
2 2
2











1

R

L

G

C

1

RG

LC


2  2

 2 LC  2

  LC
2
(3)反射係数
反射係数 m =
基本方程式は,
e z
z
e
反射波の大きさ
入射波の大きさ
に依存する項と e
に依存する項:
 z
に依存する項から成立している。
Z が大きくなれば振幅が大きくなり,
小さくなれば振幅が小さくなる。
e z
入射波
に依存する項:
Vi , Ii
,反射波
Z が大きくなれば振幅が小さくなり,
小さくなれば振幅が大きくなる。
Vr , I r
Vl  Z0   z
Vl  Z0   z
Vi  1  e , Vr  1  e
2  Zl 
2  Zl 
Vl  Z0   z
Vl  Z0   z
1  e , I r 
1  e
Ii 
2Z0  Zl 
2Z0  Zl 
反射係数の定義
反射係数 m =
反射波の大きさ
入射波の大きさ
[受電端 Z = 0 の振幅割合]
電圧の反射係数
Vl  Z0 
1   1  Z0
Zl Zl  Z 0
V r 2  Zl 
mV 



Vi Vl  Z0  1  Z0 Zl  Z0
1  
Zl
2  Zl 
電流の反射係数
mi 
Z  Z0
Ir
 l
 mV
Ii
Zl  Z 0
(電圧の反射係数と符号が逆であることに注意)
透過係数の定義
透過係数 t = 1 + m
(電圧の透過係数)
Zl  Z 0 Zl  Z 0  Zl  Z 0
2Zl
tv  1  mV  1 


Zl  Z 0
Zl  Z 0
Zl  Z 0
(電流の透過係数)
tv  1  mi  1  mV  1 
Zl  Z 0 Zl  Z 0  Zl  Z 0
2Z0


Zl  Z 0
Zl  Z 0
Zl  Z 0
(電圧の透過係数とは分子が異なることに注意)
反射減衰量
入射電力が何dB減衰して透過電力になったかを示す数値
Pi
1
DR  10 log10  10 log10
Pt
1  mV2
 10 log

Z1  Z2 2
 10 log
2
2
2




Z

Z

Z

Z
 Z2  Z2 
1
2
1
2
1

1  
 Z1  Z2 

Z1  Z2 2
Z1  Z2
 10 log
 20 log
4Z1Z2
2 Z1Z2
Pi
: 入射電力
Pt
: 透過電力
DR
: 反射減衰量
計算例
通信路線
伝送方向
特性インピーダンス
接続点 伝送方向
特性インピーダンス
Z1  400
Z2  600
電圧反射率
600  400 200
mV 

 0.2
400  600 1000
電流透過率
ti  1  0.2  0.8
反射減衰率
1
1
DR  10log10
 10log10
 0.177
2
1 0.2
0.96
5.5.2 光ファイバケーブル
(1)光ファイバの原理
屈折率が異なる物質の境界面で光の一部は反射し,残りは屈折透過する。
θt
物質Ⅰ
透過光
物質Ⅱの物質Ⅰに対する屈折率
nは以下のとおり.
φt
物質Ⅱ
入射光
sinθi
sinθt
φi
θi
反射光
=
cosφi
cosφt
= n (一定)
通常,真空(≒空気)に対する値で
示す.
入射側の物質の屈折率を n1 ,透過側の物質の屈折率を n2 としたとき, n1  n2
となる2つの物質の入射角 i と屈折角 t の間に,次のような関係が成り立つ.
cosi n2

cost n1
(これをスネルの法則と呼ぶ)
全反射の考え方
屈折角 t  0 のとき,光は透過することなく,すべて反射することになる。
これを全反射という。(屈折率が大きい物質から小さい物質に光が入るとき)
全反射が起きる最小の入射角を臨界角と呼ぶ。
cosc n2
  t  0 cost  1
t  0 として
cost n1
だから cosc  n2 n1
したがって
臨界角
c  cos1 n2 n1
光ファイバ中の光伝播
光ファイバでは,この全反射という現象を利用して光を伝搬させる.
すなわち,屈折率の小さい物質(クラッド)で屈折率の大きい物質を包み込み,
その境界面で全反射を繰返し,ファイバ内を通過していく
クラッド
コア
全反射の繰返し
(2)伝搬モード
光ファイバでは全反射を利用しているので,
コアの太さやコアとクラッドの屈折率の差などから
特定の角度で反射する光だけが伝搬する.
この特定の角度で反射して伝搬する光を伝搬モードと呼ぶ.
① モードが複数あるもの
② モードがひとつだけのもの
:
:
マルチモード光ファイバ(MM型)
シングルモード光ファイバ(SM型)
コアとクラッド間の屈折率の変化による分類
① ステップインデックス光ファイバ(SI型)
コアとクラッド間の屈折率が階段状に変化
② グレーディッドインデックス光ファイバ(GI型)
屈折率が徐々に(graded)変化。
構造の違いによる光の伝わり型の違い
(a) SI型光ファイバ(MM型)
光の伝わりかた
屈折率
分布
コア径 :40~100μm
比屈折率差:0.8~3%
伝送帯域 :10~50MHz・km
(b) GI型光ファイバ(MM型)
コア径 :40~100μm
比屈折率差:0.8~1.5%
伝送帯域 :10~50MHz・km
(b) SM型光ファイバ
コア径 :数μm
比屈折率差:0.1~0.3%
伝送帯域 :10GHz・km
屈折率が大きい物質内の光速は比較的遅く,
屈折率が小さい物質内の光速は速い。
GI型について
GI型ではコア中心,
すなわち最も屈折率が高い部分を直進する光は伝搬距離が短く,
逆に屈折率の低いコアの外側で反射を繰り返しながら
伝搬する光の伝搬距離が長くなるので,
複数モードの光の到着時間はSI型に比べてばらつきが少ない。
GI型では光伝播距離と光速の違いが打ち消しあって
光の到着時間のばらつきが少なくなる
屈折率が小さい部分の
光速は比較的早いが,
光の伝播距離が長くなる
屈折率が大きい部分の
光速は比較的遅いが,
光の伝播距離が短くなる
光学系光損失要因体系
電気→光変換
雑音
光→電気変換
電気→光変換
固有の損失
立上り時間
立下り時間
光の散乱(代表例:レイリー散乱)
放射(構造不完全性)
吸収
モード分散
分散
材料分散
構造分散
マイクロベンディングロス
付加的損失
曲がり損失
符号誤り
ファイバ
線路
波形
劣化
(3)光損失
光雑音
LDモード雑音
暗電流雑音
ショット雑音
熱雑音
消光比劣化
光パルス変動
変調帯域
パラメータ差異
接続損失
光→電気変換
電子回路
符号間干渉
(すそひきなど)
波形等化偏差
タイミング位相推移
識別不確定幅
識別判定値変動
接続作業不良
符号間干渉
コア径の相違
屈折率の相違
軸ずれ
間隙
折れ曲がり
気泡混入
変形
(a)光ファイバ内伝搬時の損失
代表例
コア内不純物や
密度・組成の
不揃い
境界面の凹凸
(光の散乱・吸収)
(OH基による光の吸収)
(光の乱放射)
コア
クラッド
①光の散乱損失
光の散乱は,光の粒子群や媒体の濃度,密度等のゆらぎによって発生する.
波長変化しない散乱が多いが,以下のように波長が変化する散乱もある.
・ ラマン効果
: 散乱された光に入射光と異なる波長の光が含まれる現象.
波長差は,散乱分子によって特有な値をとる。
・ コンプトン散乱 : 波長の短いX線を媒体に入射したとき,
入射光より波長が長くなる現象
・ ブリュアン散乱 : 結晶格子の音響的振動による散乱.
波長範囲の広いレーザ光源として利用されており,
光ファイバー光源への応用に高い期待が持たれている.
波長変化しない散乱
■ 波長に比べて十分に小さい粒子によるレイリー散乱(Rayleigh Scattering)
■ レイリー散乱より大きい粒子によるミー散乱(Mie Scattering:弾性散乱),
回析散乱(Diffraction Scattering)
■ 自由電子が散乱体であるトムソン散乱(Thomson Scattering)
光ファイバ内での散乱では,レイリー散乱が代表的
[原因]
光ファイバの線引き時に高温から室温に一気に冷却されるため,
高温のときの密度や組成等のばらつきが光ファイバ内に残ってしまう.
これらのわずかな密度変化や組成等のばらつきでレイリー散乱が生じる.
[補足]
ミー散乱では,散乱前後の運動エネルギーと内部エネルギーが不変であるため,
量子力学的立場から弾性散乱と呼ばれる.
波長と散乱粒子径の関係
波長  と散乱粒子径 d の関係を表すパラメータとしては,
次の式で与えられる散乱係数αが用いられる.
d


α<0.4
0.4<α<3
α>3
レイリー散乱
ミー散乱
回析散乱
レイリー散乱の散乱係数は次の式で与えることができる.
2 n d  m 1 

k
 4   2
3   m 2
6
ここで,
5
2
2
n :粒子数, m :反射係数, d :粒子径, :光の波長である.
波長が短い青色の光は,波長が長い赤色の光より多く散乱される.
[補足]
■ ミー散乱は,信号強度が分子数密度に比例し,
分光法より高強度であることから,光学計測等に応用されている.
■ 散乱の中で,散乱光が誘導放出効果によって
入射したコヒーレント光より強くなるケースを誘導散乱と呼ぶ。
誘導ラマン散乱や誘導ブリュアン散乱がその例である.
②吸収損失と構造不完全性損失
吸収損失
(光ファイバの材料自身によって吸収される損失)
■ ガラス自身の組成による吸収
■ ガラス内不純物による吸収
これらの中で水酸基(OH基)による吸収が最も大きい.
構造不完全性損失
(凹凸によって光の一部がコアの外に乱放射され生じる損失)
■ 実際の光ファイバのコアとクラッド間の境界は,理想的に滑らかな円筒面
ではなく,微小な凹凸が存在している.
■ この損失は製造技術の向上で0.02~0.2dB/km程度まで減少させることが
できる.
この他,曲げによる放射損失,不均一な圧力により軸がずれることによる
マイクロペンディングロスなどがある。
(b)光ファイバ接続部の損失
光ファイバの接続は,
コア部端面同士をぴったりと合わせて行うが,
必ずしも理想的ではないことことからおきる。
接続箇所での損失を接続損失と呼ぶ.
接続損失の要因には,以下の2種類がある。
■接続部機構によるもの
■光ファイバ自身の条件によるもの
①軸ずれ
②角度ずれ
③間隔ずれ
④ファイバ端面の不完全性(傾斜や粗さ)
機構による損失
一般には軸ずれの影響が最も大きく,
数μmオーダの軸合わせを行っても0.1dBオーダの接続損失が生ずる.
間隔ずれ
角度ずれ
光ファイバ
光ファイバ
軸ずれ
端面の
不完全性
接続時の気泡の混入
光ファイバ接続方法
A.永久接続(スプライシング)
①スリーブ法
袖状のガラススリーブに光ファイバ素線を両方から差込み
突合せて接着剤を注入。反射損失を少なくするために
光ファイバと同じ屈折率で経年変化が少ない接着剤を使用する必要がある。
②V溝法
V型溝の上に光ファイバを突き合わせて置き,
上から板で押えて接着剤で固定。反射損失を少なくするために
光ファイバと同じ屈折率で経年変化が少ない接着剤を使用する必要がある.
③融着法
光ファイバの端面同士をアーク放電等により高温加熱して融着。
余加熱によってファイバ端面が滑らかになり整形できるので,
接続損失が少なく経年劣化が少ない.
B.コネクタ接続
着脱可能なコネクタで接続。コア中心を一致させるための機構が重要であり,
着脱容易性,繰返し使用耐久性等が要求される。
光ファイバ自身の条件による損失
光ファイバ自身の条件による損失には,
①コアの直径および真円度の差
②コアとクラッドの中心のずれ(偏心度)
③屈折率の差などがある.
dmin
図では,ずれを
極端に強調して
表現している
x
dmax
Dmax
Dmin
5.5.3 メタリックバケーブル
通信ケーブルの種類と特徴
媒 体
ケーブルの種類
平衡対ケーブル
金 属
同軸ケーブル
マルチモード
光ファイバ
光ファイバ
シングルモード
光ファイバ
(1)通信ケーブルの種類
ケーブルの構造と特徴
往復2本の銅線を撚ったケーブル.
銅線を撚ることにより電磁誘導ノイズや
静電誘導ノイズの影響を少なくしている.
心線として銅線を用い,周囲を絶縁体で囲み,
その外側に金属メッシュで囲んで,
最も外側を塩化ビニルなどの保護材で囲んだ
ケーブル.シールドがあるためノイズに強い.
光の伝搬経路(モード)が複数存在する光ファイバ.
長距離伝送時に遅延時間差が発生するが,
安価である.
コア径を10μm程度に細くすることによって,
光伝搬経路(モード)をひとつにした光ファイバ.
(2)平衡対ケーブル
(a)より対線の効果
① 導線を撚ることで,フラットケーブルに比べて電磁誘導ノイズを少なくする。
② 往復2本の線と地面など外部媒体との間の浮遊容量が
ほぼ同じになるので,静電誘導ノイズの影響を少なくすることができる。
数10kHz以上の高周波伝送や遠距離伝送の場合,
ノイズの影響が無視できなくなる。
交換機と利用者宅までの加入者線や,
近距離で伝送容量が中・小規模の交換局間に
使用されることが多い.
(b)平衡対ケーブルの構成
構成の種類
対撚り
星型カッド撚り
DMカッド撚り
断面
構 成 方 法
延長方向
説明
2本の導体を直接撚り合わせた
ケーブル.
4本の導体を星状の四角に配列
して共通の軸周りに一括して
撚り合わせたケーブル.
撚り合わせた2本の導体一対を,
さらに撚り合わせたケーブル.
(注) 表中のカッド(quad)とは4本という意味である.
星型カッドは,同一絶縁厚さの対撚りに比べ静電容量が小さいので,
伝送損失の面で有利であり,ケーブル外径を10%カットでき経済的である.
しかし,カッド内の実回線相互間の漏話特性の面では劣るので
収容制限が必要である.
ただし,現在ではカッド内実回線相互間の漏話特性を改善した
星型カッドのケーブルが,公衆回線に使用されている.
(c)伝送損失減少対策
① 導体の電気抵抗を減らす。
② 導体間絶縁物を通じて流れる電流割合を示す
漏れコンダクタンスを減らす。
③ 導体間の静電容量を減らす。
④ 導体の自己インダクタンスを増やす。
電気抵抗の減少
① 電気抵抗が少ない良導体の金属を使用すること
良導体の金属としては,金,銀,銅,アルミニウム等があるが,
コスト面と実用性から一般には胴が使用されている.
② 導体を太くする方法
高周波になると導体表面に電流が集まって実質的な抵抗が増加する
表皮効果があり,コスト面から得策でないこと,
製造,工事,保守の面から導体をそれほど太くできないことから,
一般には直径0.32mm~0.9mmの導線が使用される.
導体間静電容量の減少
① 導体間隔を広げる方法
導体間隔を広げる方法はケーブル外径に制限されるので②の方法が有利。
② 導体間の絶縁物の誘電率を小さくする方法
身近な誘電率の小さな絶縁物とは空気である.
したがって絶縁物中の空気が多くなるような多孔質の紙,
最近では発泡ポリエチレン等が使用される.,
例えば,0.4mmの導体を0.09mmの25%発泡度のポリエチレンで覆った場合,
0.13mmの発泡させないポリエチレンで覆った場合と同等の静電容量を
実現することができる.
絶縁材料
絶縁材料の条件
①絶縁抵抗が大きい。
②誘電率が小さい。
③機械強度が強い
④安価である。
紙(クラフト紙)
プラスチック(ポリエチレン(PE)
発泡ポリエチレン(PEF)
ポリ塩化ビニール(PVC))等
[補足]PVCは,紙やPEに比べ誘電率が大きいが,
燃えにくく,表面着色が容易であることから
局内ケーブルの絶縁材料として用いられる.
絶縁材料の比較
性 質
紙絶縁
耐透湿性 非常に弱く,吸湿による
漏話性
プラスチック絶縁
浸水してもすぐに絶縁低下が生じない.
絶縁低下が著しい.
ただしケーブル内浸水速度が速い.
漏話対策としての心線間
カッドくずれが小さく断面・長さ方向共に
相対位置一定化が困難. 均一に保つことができる.
誘電率
小さい.
充実形では大きいので厚くする必要がある.
ただし発泡ポリエチレンは誘電率が小さい.
自己インダクタンスの増加
長さ方向に一様な平衡対ケーブルにおける任意の位置の電流に対する
電圧の比(特性インピーダンス)Z0は,次のように表現することができる.
Z0 
R  jL
G  jC
R:伝送路の抵抗,L:自己インダクタンス,G:漏れコンダクタンス,
C:静電容量,ω:角周波数,j:虚数単位( j 2=-1)である.
無ひずみ条件
R/L=G/C のとき
 G  j C 
LG
L


j

L
R  j L
L
C


C
Z0 



G  j C
G  j C
G  j C
C
特性インピーダンスが周波数に依存せず,ひずみがなくなる。
これを無ひずみ条件と呼ぶ.
無ひずみ : 伝送後の波形が,振幅,位相差以外は異ならない相似形となること
コイルの挿入
実際の伝送路では,通常 R / L が G / C に比べて非常に大きい。
比較的近距離の中継回線では,
コイルを一定間隔に挿入して,L を人工的に増加させる
(このためのコイルを装荷線輪と呼ぶ)
[注意]
ただし,この方法は,結果的に低周波フィルタとなり,
高周波部分が大きく低減されるので,
周波数が高くなると大幅に伝送損失が増加する.
加入者系平衡対ケーブルは,
4kHz帯域の電話伝送での品質を良好に保つように設計されているので,
これ以上の高周波については損失増加に注意しなければならない.
漏れコンダクタンスの減少
■ 心線間の相対位置関係の一定化が必要.
■ 紙絶縁に比べプラスチック絶縁では
カッド崩れが小さいので,
漏話特性を改善することができる.
(3)同軸ケーブル
(a)同軸ケーブルの効果
通常の導線の場合
2本の導体における近接効果
導体の隣に他の導体があると
電流は互いに近づいて流れ,
実効抵抗が大きくなる.
高周波における表皮効果
周波数が高くなると電流が導
体の表面に集まり,実効抵抗
が増加する.
(a)同軸ケーブルの効果
■ 中心導体に流れる電流と外部導体に流れる電流の向きが反対であるため
電磁気線が互いに打ち消しあって,外部導体の外側に漏れる磁力線や
電気力線が非常に少ない.
■ 高周波になるほど表皮効果と近接効果によって外部導体の外側に
ほとんど電流が流れないので,外部への影響が少なくなる.
表皮効果と近接効果の相乗効果
同軸ケーブルの電気力線と磁力線
外部導体
内部導体
電気力線
磁力線
電流
(b)同軸ケーブルの特徴
■ 平衡対ケーブルに比べて,非常に漏話特性が良い.
いわば,内部導体と外部導体の間の空間に電磁界が閉じ込められた形で伝送され,
このときの伝送形態をTEMモードと呼ぶ.
■ 同軸ケーブルの減衰量は,平衡対ケーブルと同様,周波数の平方根に
ほぼ比例するが,平衡対ケーブルより,はるかに伝送損失が少ない.
■ 外部導体径と中心導体径の比を最適値 3.59 (この理由については後述)にすると,
特性インピーダンスは約75Ωとなり,耐圧特性は 2 ~ 3 kVとなるので
耐電圧性が高い.
■ ポリエチレンの円板を中心導体に等間隔に固定した9.5mm標準同軸ケーブルは,
円板以外を除くとほとんどが空間であるため,耐電圧性はより高くなる.
同軸ケーブルを使った高電圧直流給電も可能である.
(c)同軸ケーブルの構造
中心導体(通常,軟銅の単線),絶縁体,外部媒体,鋼テープ,絶縁紙から構成される.
中心導体の電流の向きは外部導体と反対になる.
PEディスク
中心導体
PE充実形にしたものもある(海底,局内配線用)
絶縁体
外部導体
鋼テープ
絶縁紙
外部導体として銅線の網組みを
使用するものもある(屋内配線用)
(d)同軸ケーブルの構造分類
① PEディスクの替わりに,中心導体に突起付きの
PEテープを縦方向に巻いたもの(4.4mm細心同軸).
② 内外導体間をPE充実形としたもの
(海底同軸ケーブル,局内配線用コード).
③ 通常,外部導体としては,銅テープを縦添えにし
周りを鉄テープで固定するが,
この部分に銅線の網組みを使用して曲げやすくしたもの
(局内配線用コード.家庭でもより利用される).
(e)NTTで使用されている同軸ケーブル
通常,海底同軸ケーブル以外は,複数本の同軸心を集合して構成する.
上り回線,下り回線を一対とするので偶数本であり,
現在最高18心のケーブルが使用されている
.
ITU勧告に準じた標準同軸ケーブル
9.5 mm 18 心同軸
4.4 mm 12 心同軸
7
平衡対ケーブル
8
18
17
1
6
押え巻き紙
9
2
11
10
16
5
10
3
4
15
9
11
13
12
2
15 16
29
6 7 17
18
5
8
28
1
14 4
19
2 9
27
3
13
10 20
26
12 11
21
25
24 23 22
30
8
14
1
12
7
6
内層同軸心
外層同軸心
同軸心
3
4
5
(f)同軸心の減衰量
同軸心の減衰量は,抵抗減衰量と漏れ減衰量からなる.
通常は抵抗減衰量が大きい.
抵抗減衰量が最低となる条件は,以下の式で表現することができる.
d2  d2 
1
 log 1 
d1 
d1 
2
ここで,d1,d2はそれぞれ中心導体外径,外部導体内径,σ1,σ2は中心導体,
外部導体の導電率である.
(f)同軸心の減衰量
同一材料の場合,右辺は 1 となり,x = d2/d1 として
d2  d2 
1
 log 1  1  log x  1 
d1 
d1 
x
f (x)
log x
1
1
x
x
交点を数値計算すると x = 約 3.59,すなわち d2/d1 = 約3.59である.
(g)同軸ケーブルの特性インピーダンス
中心導体,外部導体の導電率が同じとき,
同軸ケーブルの特性インピーダンス ,減衰定数は,以下のように近似できる
 d2 
c2  1 1  12
Z0  c1 loge  ,       f
Z0  d1 d2 
 d1 
f
:周波数,c1 , c2 :定数,
d1 :内径,d2 :外径,
Z0 :特性インピーダンス,  :減衰定数
[補足1]
x  d2 d1 とおくと d1  d2 x だから
1
c2  x 1  12
c2
x 1 f 2
Z0  c1 loge x,       f 
Z0  d 2 d 2 
d2 Z0
c2  x  1  12

  f

d2c1  log x 
したがって,
x で微分して
d
c2  1 log x  x  1 1 x  12

  f

2
dx d2c1 
log x

 が最低となるには,微分値が0となることが必要である。したがって
x 1
x 1
1
log x 
 0  log x 
 1
x
x
x
これは,同軸心の減衰量最低を計算したときの式と同じである。
[補足2]
ちなみに
x 1
f ( x) 
log x
のグラフは以下のようになる。